『13日の金曜日PART2』:1981、アメリカ
クリスタル・レイクのキャンプ場で起きた連続殺人事件の犯人は、かつて息子のジェイソンを殺されたパメラだった。逆恨みを抱いた彼女によって次々に指導員候補生が殺され、アリスだけが生き残った。アリスはパメラを撃退し、ジェイソンによって湖に引きずり込まれたが救助されたのだ。それから月日が経ったが、今もアリスは悪夢にうなされていた。1人で暮らしている彼女は、母からの電話に苛立った様子を見せた。彼女がシャワーを浴びて浴室を出ると、また電話が掛かって来た。アリスは母からだと思って受話器を取るが、相手は無言だった。不安を抱いた彼女はアイスピックを手に取り、家の中を調べた。するとパメラの生首が冷蔵庫に入っており、アリスは何者かにアイスピックで殺害された。
5年後、上級指導員の試験を受けるジェフとサンドラはクリスタル・レイクへ向かう途中で電話ボックスを見つけ、仲間のテッドに連絡して道順を尋ねる。そこへ老人のラルフが現れ、「奴らも言ったが、信じなかった。みんな呪われた。お前らも呪われてる」と告げて立ち去った。ジェフとサンドラは全く気にせず、悪戯を仕掛けたテッドと合流した。車に乗って山道を進んだ3人は、落ちていた「キャンプ・クリスタル・レイク」の看板を見つける。テッドが「血のキャンプだ。俺たちも同じ場所に行く」と言うと、サンドラは「あの場所」と興奮するが、ジェフは何のことか知らなかった。森の中から何者かが観察していたが、3人は全く気付かなかった。
キャンプ場の指導員訓練センターに集まったのはテッドたちの他、テリー、マーク、ヴィッキー、スコットといった面々で、指導を担当するポールがメンバーに挨拶した。助手を務める恋人のジニーが遅刻したので、ポールはロッジに呼び出して注意した。ジニーは謝罪し、車の調子が悪かったこと、キャンプ場に電話したが通じなかったことを釈明した。その夜、ポールは「怖がらせるつもりはない」と前置きした上で、ジェイソンについて候補生たちに話した。
ポールは候補生たちに、「少年のジェイソンは湖で溺れたが遺体は発見されず、大人になった姿を見たという者もいる。血のキャンプで生き残った女の子も見たらしい。その2ヶ月後、大量の血痕を残して彼女は消えた。伝説では、母親を殺されたジェイソンが復讐を始めたらしい。そして彼の土地に入る者がいれば、復讐の対象になる。血のキャンプ以降、ここに来たのは俺たちが初めてだ」と語った。そこへ覆面を被ったテッドが急に現れて仲間を脅かした。ポールは笑いながら、「この話は二度とするなよ。昔のことだ」と告げた。ジニーとポールが部屋でキスしている様子を覗いていたラルフは、背後から有刺鉄線で首を絞められて死亡した。
次の日、候補生たちがジョギングを終えて森を移動する様子を、何者かが観察していた。いつの間にか愛犬のマフィンがいなくなったので、テリーは昼食の時間に捜索した。サンドラは好奇心から血のキャンプへ行きたがり、渋るジェフを説得する。湖で遊ぶ仲間の元を抜け出す2人を、何者かが尾行した。血のキャンプに足を踏み入れたサンドラたちは、惨殺された小動物の死骸を発見した。そこへ保安官が現れ、立ち入り禁止区域に入った2人を注意した。保安官はポールを保安官事務所に呼び出し、「君がやっていることは素晴らしいが、隣の郡でやれ。あそこは近すぎる。この5年間は何も起きなかった。今後も守りたい」と話した。
巡回に出た保安官は人影を発見して後を追い、森の中を走る。古びたプレハブ小屋を発見した彼は中に入り、何者かに襲われて死亡した。夜、食事を終えたポールは候補生たちに、「最後のチャンスだ。街へ繰り出したい奴はいるか」と呼び掛けた。ただし過去に抜け出した経験がある者は残るよう促されたため、サンドラとジェフは街へ行くのを諦めた。テリーもマフィンが戻るのを期待し、残ることにした。マーク、ヴィッキー、スコットの3人も、それぞれの理由でキャンプ場に留まることを選んだ。
ジニーやポールたちは車で出発し、地元のバーへ赴いた。テリーはマフィンの捜索に行くが見つからず、湖で裸になって泳いだ。サンドラはジェフを誘って部屋へ行き、ヴィッキーはマークを口説いた。スコットはテリーの服を隠し、ズボンを返して「取りに来れば?」と笑いながら走り去る。スコットは罠に掛かり、ロープに両足を拘束されて逆さ吊りになった。テリーはスコットに反省させてシャツを取り戻し、ロープを切るためのナイフを取りに行く。その間にスコットは殺害され、戻って来たテリーは死体を見て絶叫した。
ジニーはバーで「もしもジェイソンが本当にいたら?今も母親が生き返るのを待っているのかも」と真剣に言うが、ポールとテッドは馬鹿にして笑った。サンドラとジェフは服を脱ぎ、セックスを始める。ヴィッキーはマークに「今夜は一緒にいたい。取ってきたい物があるから待ってて」と言い、部屋に戻る。服を着替えて香水を付けた彼女はブラシが無いのに気付き、車へ向かう。彼女が車内のブラシを発見した直後、落雷と共に大雨が降り出した。ヴィッキーを捜しに出たマークは、何者かに襲われて死亡した。セックスを終えたサンドラとジェフも、同じ犯人に殺された…。製作&監督はスティーヴ・マイナー、キャラクター創作はヴィクター・ミラー、脚本はロン・カーズ、製作総指揮はトム・グルーエンバーグ&リサ・バーサミアン、共同製作はデニス・マーフィー、製作協力はフランク・マンキューソJr.、撮影はピーター・スタイン、美術はヴァージニア・フィールド、編集はスーザン・E・カニンガム、特殊メイクアップ効果はカール・フラートン、衣装はエレン・ラッター、音楽はハリー・マンフレディーニ。
出演はエイミー・スティール、ジョン・フューリー、エイドリアン・キング、カーステン・ベイカー、ステュー・チャーノ、ウォーリントン・ジレット、ウォルト・ゴーニー、マータ・コーバー、トム・マクブライド、ビル・ランドルフ、ローレン=マリー・テイラー、ラッセル・トッド、ベッツィ・パーマー、クリフ・カドニー、ジャック・マークス、スティーヴ・ダスカウィッツ、ジェリー・ウォレス他。
シリーズ第2作。
1作目に製作協力とユニット・プロダクション・マネージャーで参加していたスティーヴ・マイナーが、初監督を務めている。
脚本は『毒ガス学園・スカンクス』『他人の眼』のロン・カーズ。
前作のキャストからアリス役のエイドリアン・キングとラルフ役のウォルト・ゴートニー、パメラ役のベッツィー・パーマーが続投している。
他に、ジニーをエイミー・スティール、ポールをジョン・フューリー、テリーをカーステン・ベイカー、テッドをステュー・チャーノ、ジェイソンをウォーリントン・ジレット、サンドラをマータ・コーバー、マークをトム・マクブライドが演じている。続編の製作が決定した時点では、アリスの出番はもっと多いはずだった。
しかし前作のヒットを受けてエイドリアン・キングがストーカーに狙われるようになったため、命の危険を感じて出番を大幅に削ってもらったのだ。そして彼女は、本作品を最後に女優業を引退している。
もしもイカれたストーカーがいなかったら、このシリーズの方向性は大きく違っていたかもしれない。
アリスは本作品でも生き延びて、3作目以降もジェイソンと戦うヒロインとして登場したかもしれない。念のために書いておくと、1作目の殺人鬼はジェイソンではない。
犯人はジェイソンの母親であるパメラで、ザックリ言うと逆恨みによる連続殺人だった。
殺人鬼のジェイソンが初登場するのは、この2作目だ。
そんなジェイソンと言えば、ホッケーマスクを付けた連続殺人鬼というイメージを持っている人が多いだろう。
しかし今回のジェイソンは、まだズタ袋を頭から被った格好だ。ホッケーマスクを初めて装着するのは、次の3作目だ。ジェイソンの武器がチェーンソーだと思っている人も多いが、これは大きな勘違いだ。ジェイソンの武器は基本的にマチェーテであり、チェーンソーはシリーズを通して1度も使ったことが無い。
チェーンソーを武器にするのは、『悪魔のいけにえ』のレザーフェイス。
また、ジェイソンがツナギを着ているというイメージも間違いで、それは『ハロウィン』のマイケル・マイヤーズ。
ジェイソンが不死身の怪物というイメージを持っている人もいるだろうが、これはシリーズの途中からであり、2作目の段階では普通の人間だ。トータルの上映時間は87分だが、冒頭の約5分は「アリスが見ている悪夢」として前作の映像が流用されている。
エンドロールもあるので、2作目の本編は80分程度ってことになる。長編映画としては、短めの尺で収まっている。
映画を見ていて「盛り込んだ分量に対して時間が全く足りていない」と感じることも多いのだが、この作品に関しては全く無い。そんなに中身が濃いわけじゃないので、80分で充分だ。
そもそもの分量だと尺を埋め切れないから、前作の映像でカサ増ししているという部分もあるんだろうし。このシリーズでは、肩透かしが1つのお約束になっている。
まずは若者が不安を抱いている様子を描いたり、何者かが近付いている雰囲気を漂わせたりする。そうやって「これからジェイソンが現れて若者を襲うんだな」と思わせておいて、その予想を裏切って何も起きないという展開を用意するってことだ。
開始から30分ほど経過した辺りで、定番の演出が訪れる。ジニーが部屋にいると不安を煽るBGMが流れ、誰かがドアをノックする。ジニーがドアを開けると誰もいないが、部屋に戻るとポールが忍び込んでいるというシーンだ。
あっさり風味ではあるが、仮に濃い味付けだとしても、どうせ肩透かしだからね。前述したように、ジェイソンの基本装備はマチェーテだ。
しかし最初の殺人で使うのは、粗筋でも書いたようにアイスピックだ。しかも、その殺害シーンは、「アリスの右こめかみにアイスピックを突き刺す」というカットで終わってしまう。
このシリーズは「スプラッター映画」というジャンルに属するのだが、最初の殺人では残酷描写が附随していないのだ。血がブシャーと飛び散るような映像は無いのだ。
そして2人目のラルフも、これまた残酷描写は無い。有刺鉄線で首を絞められる様子は、かなり淡白に片付けられている。この淡白さは3人目以降も続き、保安官の時は「背後からハンマーで頭を突き刺す」という描写をスパッと切り上げ、すぐに別のシーンへ移ってしまう。保安官の頭部から血が噴き出るような描写さえ無い。
ではショッカー演出で観客を脅かそうとしているのかというと、そこの意識も弱い。
例えば保安官のシーンでも、「いきなり後ろから現れてワッと脅かす」という形ではない。保安官の背後から誰かが近付く足元を、襲撃の前にカメラが捉えている。そしてハンマーで殴り掛かる前にも、「犯人の手が見えてハンマーを振り上げる」という一連の動きを描いている。
そのため、ショッカー風味も薄い。スコットの時に、初めて被害者の体から血が流れる。しかし、ここも血がブシャーではなく申し訳程度だし、すぐにカットは切り替わる。
ちなみに、この時に初めて、ジェイソンはマチェーテを使用している。
そうそう、「湖で泳ぐテリーを誰かが覗いている描写があるけど、スコットか服を盗む悪戯をする」とか、「部屋に戻ったテリーを誰かが見ているっぽい描写があるけど、実際は誰も見ていない」とか、そういう肩透かしも盛り込まれている。
肝心の殺人描写や残酷表現が弱いのに、肩透かしへの意識だけは充分だ。たぶん映画を見る全員が、「キャンプ場に集まったメンバー全員がジェイソンの標的になり、最後に1人か2人が生き残る」という展開を予想するのではないだろうか。
それはスラッシャー映画における定番だし、この映画はシリーズの雛型を確立させた2作目なので、そこでベタな展開を裏切っても何の得も無いはずだ。
ところが、1つだけ大きなポイントを外してくる。
なんと、テッドはバーに行ったまま翌朝まで戻らず、だからジェイソンに襲われずに済むのだ。ジェイソンに襲われた上で生き残るのは1名だが、テッドもジェイソンの襲撃さえ知らないままで生き残るのだ。
そんなキャラを作るメリットはゼロであり、大きな計算間違いにしか思えない。『13日の金曜日』シリーズを見たことが無くても、どういう話なのかは何となく知っている人も少なくないだろう。そんな「見たことが無い人でも知っているパターン」を確立したのが、この2作目だ。
なぜパターンを確立した作品と断言できるのかというと、1作目と同じことを繰り返しているだけだからだ。
ハッキリ言って、2作目で早くもマンネリズムが生じていると取れなくもない。
しかし、パターンを確立したことによって、シリーズ化への道筋が作られたという部分もあるだろう。実は『ハロウィン』と類似点も多い作品なのだが、こちらの方が知名度の高いシリーズになった。
幾つかの要因が考えられるが、何よりもジェイソンというキャラクターの貢献度が大きいのではないかと思われる。
これまた映画を見ていなくても、ジェイソンは知っているという人も多いはず。それぐらい、キャラが1人歩きして有名になっている。
「映画の連続殺人鬼と言えば?」というアンケートを取れば、間違いなく上位に来るはずだ。そんなジェイソンを登場させたという意味でも、この2作目は重要だ。「サマーシーズンに湖畔にある別荘へ若者グループが来て、逆恨みの連続殺人鬼によって次々に惨殺されていく」ってのが大まかな内容だ。
つまりザックリ言うと、やっていることは前作と全く同じだ。殺人鬼が母親から息子に交代しただけで、ほぼ焼き直しと言ってもいい。
前作で監督と製作を務めたショーン・S・カニンガムや脚本家のヴィクター・ミラーは、同じことの繰り返しを嫌って手を引いた。
しかし、それと引き換えに長いシリーズとしての第一歩を踏み出せたのだから、痛くも痒くもない。ちなみにホラー映画ではあるが、ただ怖がらせることだけに意識を傾けているわけではなく、お色気サービスも用意してある。
ヴィッキーは下着姿になり、テリーは裸になる。
ただ、もはや今の時代だと、その程度のお色気サービスだけで観賞意欲を湧き上がらせることは無理だろう。そもそも、1981年の映画だしね。
なので正直に言って、単独で見る意味は見出せない。
しかし「パターンが確立された2作目」「ジェイソンの初登場」など資料的な価値はあるので、シリーズをコンプリートしたい人なら見てもいいんじゃないかな。(観賞日:2019年9月2日)