『ジム・キャリーはMr.ダマー』:1994、アメリカ

ロイド・クリスマスとハリー・ダンは古アパートで同居生活を送りながら、ミミズ専門のペットショップを開くための資金稼ぎをしている。ロイドはリムジンの運転手、ハリーは車を使った犬の移動美容室でアルバイトを続けている。
上流階級のお嬢様メアリー・スワンソンを空港まで送ることになったロイドは、彼女に一目惚れしてしまう。メアリーがスーツケースを空港に忘れたことに気付いたロイドは、彼女を追い掛けるが見失ってしまう。
ロイドはハリーと共に犬を模した車に乗り込み、彼女のいるカリフォルニアのアスペンへと向かうことにした。しかし、実はスーツケースには身代金が入っており、メアリーは誘拐された夫ボビーを救うために犯人に指定された場所に置いたのだ。
ロイドとハリーは誘拐犯ニックの手下ジョーとJ・Pに追われていたが、事情など知るはずも無い。ジョーはヒッチハイカーに成り済ましてロイドとハリーに近付くが、毒薬を飲ませて2人を殺害するはずが、ハリーの勘違いから自分が毒死してしまう。
アスペンに到着したロイドとハリーは、スーツケースの中身が大金だと知り、その金を使って豪遊する。新聞でメアリーがホストを務める野生保護協会のパーティーのことを知った2人は会場に出掛け、ようやく彼女と出会うのだが…。

監督はピーター・ファレリー、脚本はピーター・ファレリー&ベネット・イェーリン&ボビー・ファレリー、製作はチャールズ・B・ウェスラー&ブラッド・クレヴォイ&スティーヴン・ステイブラー、共同製作はボビー・ファレリー&トレイシー・グラハム=ライス&ブラッドリー・トーマス、製作協力はブラッドリー・ジェンケル&チャド・オーマン&エレン・デュムシェル、製作総指揮はジェラルド・T・オルソン&アーロン・メイヤーソン、撮影はマーク・アーウィン、編集はクリストファー・グリーンバリー、美術はシドニー・J・バーソロミューJr.、衣装はメアリー・ゾフレス、音楽はトッド・ラングレン、音楽監修はドーン・ソーラー。
出演はジム・キャリー、ジェフ・ダニエルズ、ローレン・ホリー、カレン・ダフィー、ヴィクトリア・ローウェル、マイク・スター、チャールズ・ロケット、フェルトン・ペリー、ハーランド・ウィリアムズ、テリー・ガー、カム・ニーリー、ロブ・モーラン、ハンク・ブラント、ジョー・ベイカー、ブレイディ・ブラーム、ブラッド・ロッカーマン、キャスリン・フリック、ゼン・ゲスナー他。


ピーター&ボビーのファレリー兄弟の映画デヴュー作。
元々はTVシリーズだったものを、キャラクターの創作者であるファレリー兄弟が映画化した。
ロイドをジム・キャリー、ハリーをジェフ・ダニエルズ、メアリーをローレン・ホリーが演じている。

ロイドとハリーのバカをスカしたりツッコミを入れたりしてくれる人物は、ほとんど存在しない。基本的には、ボケたらボケっ放しである。ジョーが相手をして怒鳴ったりする場面はあるのだが、それも少しの時間で終わってしまう。
身代金入りのスーツケースを巡るドタバタ劇が展開するのかと思いきや、そのラインは最初から非常に弱く、しかも途中でフェイドアウトに近い状態になる。
終盤に突入した辺りで、ようやく思い出したようにラインが見えてくる。

ロイドとハリーのバカ2人組の面白さは、徹底的に心底からバカであるからこそ生きてくる。スカすにせよ受け止めるにせよ、とにかく全面的にバカを爆発させる必要があるのだ。
しかし、この作品は、2人にどこか悲しみや切なさを漂わせる部分がある。
例えばロイドが古アパートで、うだつの上がらない自分を嘆くという場面。例えば人気の無い道で1人でヒッチハイクをするハリーをロイドが迎えに来る場面。
そういったシーンを挿入することで、バカであることを全面的に笑えなくなってしまう。

ロイドとハリーの色分けが、あまりハッキリと見えてこない。原題の通り、バカと大バカというだけだ。
しかも、キャラクターが一貫しているようで一貫していない。
例えばジョーが車に乗り込んで来た途端、ロイドとハリーのバカっぷりが急にパワーアップしたりする。
バカなはずのロイドが、チンピラ4人組を騙して食事代を払わせるという利口な一面を見せたりもする。ハリーにしても、FBIに協力する際にはバカっぷりが全く無い。
利口な面を見せてしまうと、「バカのフリをしている」ようになってしまう。

笑いの1つ1つがシーンごとにバラバラになっており、同じ方角を向いていない。
バカを徹底しているわけでもなく、シーンごとにバカの意味合いが微妙に違っている。
時に無知であるというバカ、時に勘違いによるバカ、時に興味を示さないというバカ。
例えば、あれだけ女に興味を示していたロイドとハリーがビキニ集団の誘いに全く乗らないというのは、明らかに笑いのためにバカの内容を変えている。
バカの内容がグラグラすることによって、笑いのリズムを崩してしまうのだ。


第15回ゴールデン・ラズベリー賞

ノミネート:最低新人賞[ジム・キャリー]
<*『エース・ベンチュラ』『ジム・キャリーはMr.ダマー』『マスク』の3作でのノミネート>

 

*ポンコツ映画愛護協会