『ザ・デプス』:1989、アメリカ

海面下1万メートルに設置された海底基地、ディープスター6。ゲルダー隊長に率いられたクルーは、ミサイル発射基地の建設に携わっていた。そんな中、バーシアガ博士は建設予定地に大きな洞窟を発見し、調査の必要性を訴える。
しかし、これ以上作業が遅れて海軍からプロジェクトを打ち切られることを恐れ、ゲルダーは洞窟を爆雷で塞いで建設を急ぐよう指示。爆破のために2人の隊員ホッジスとオズボーンが洞窟に向かうが、謎の生物に襲われて命を落とす。
建設現場に設置されたシートラックにはバーシアガ博士とジョイス隊員がいた。謎の生物に襲われてシートラックは崖から落ちそうになり、ディープスター6との連絡も取れなくなったが、レイドロー艦長やケヴィン隊員が救出にやって来た。
安全処置が取られることになり、コンピュータの指示に従ってシュナイダー隊員がミサイル基地を爆破する。しかし、その衝撃でディープスター6が破損してしまう。圧力装置が故障する中、謎の生物はディープスター6に襲い掛かってくる…。

監督はショーン・S・カニンガム、脚本はルイス・アバナシー&ジェフ・ミラー、製作ショーン・S・カニンガム&パトリック・マーキー、製作総指揮はマリオ・カサール&アンドリュー・ヴァイナ、撮影はマック・アールバーグ、編集はデヴィッド・ハンドマン、美術はジョン・レインハート、音楽はハリー・マンフレディーニ。
出演はナンシー・エバーハード、グレッグ・エヴィガン、ミゲル・フェラー、マット・マッコイ、シンディ・ピケット、トーリン・ブラック、マリウス・ウェイアーズ、ニア・ピープルズ、ロン・キャロル、トム・ブレイ、エリア・バスキン他。


『13日の金曜日』のショーン・S・カニンガム監督作品。オープニングでスタッフロールが通常とは逆に上から下に流れて行くのは、深海映画ということを考えてのことだろうが、なかなか面白い効果を出している。
でも、本編は何の工夫も感じられないチープな出来映え。

クルーの所属や人間関係がほとんど説明されず、話の基本部分が今一つ飲み込めない。そもそも、彼らはどういう計画に携わっているのだろうか。ミサイル発射基地を作る仕事のようだが、研究員みたいな人はいるけど、建設作業員は少なそうだし。建設用の機械も見当たらないぞ。

シートラックからの救出劇の際は怪物が襲ってこないので、特に危機も無く、普通に救出作業が行われる。崖からシートラックが落ちそうだという部分で緊張感を出しているようなのだが、それってポイントが外れてるだろうに。

で、救い出したと思ったらバーシアガ博士は息を引き取る。だったら怪物に襲われた時点で死ぬべきだろ。おまけにレイドロー艦長はハッチに体が挟まって死んじゃうし。怪物に襲われたわけでもないのに、勝手に死ぬのはイカンだろ。

ミサイル爆破の衝撃で基地にパニックが生じるのも、明らかにポイントが外れてる。波乱や惨劇は怪物によって引き起こされるべきなのに、別の要因で緊迫のシーンを作りすぎている。
展開はユルいし、人の死に方もユルい。とにかくユルい。

開始から30分ぐらいで登場した怪物だが、それから40分ぐらい経たないと再び襲ってこない。で、ようやくそれなりに暴れ始めてくれた怪物は、なんとなく『リトルショップ・オブ・ホラーズ』のモンスター深海バージョンといった感じ。

結局、この話で起こる危機の数々って、ほとんどシュナイダーの人為的なミスが原因なんだよな。おまけに誤ってゲルダーを銛で刺し殺してしまう。
で、シュナイダーは精神がイカれて独りで脱出装置に乗って逃亡を図る。ま、減圧できてないから死んじゃうんだけどさ。

連絡艇や基地が完全にオモチャなのは、予算の関係で仕方が無いのかもしれない。
しかし、それに輪を掛けてシナリオも演出もチープなんだから、もはや映画自体が深海直行である。

 

*ポンコツ映画愛護協会