『親愛なるきみへ』:2010、アメリカ

サーフィンをしていたジョン・タイリーが海から上がった直後、サヴァナ・リン・カーティスが仲間のランディーたちと浜辺にやって来た。ランディーがサヴァナのバッグを海へ落としてしまったのを見ていたジョンは、すぐに飛び込んで拾い上げた。これが2人の出会いで、2001年春のことだった。サヴァナはジョンをバーベキューに誘った。ジョンは陸軍特殊部隊の所属でドイツに赴任していたが、2週間の休暇でチャールストンに帰省していた。サヴァナに好意を寄せるランディーは、2人が話す様子を気にしていた。
バーベキューには大勢の人々が参加しており、その中にはサヴァナが赤ん坊の頃から知っている6歳のアランと父親のティムもいた。家族と自分にしか話さない内気なアランが立ち去る時に「さよなら、ジョン」と告げたので、サヴァナは驚いた。夜になり、ジョンは帰ることにした。「明日の夜は食べに行こう」とジョンが誘うと、サヴァナはOKした。夜道を歩いていると、ティムが車で通り掛かって同乗を促した。親切に甘え、ジョンは車に乗せてもらった。ティムはジョンの質問を受け、妻は旅行中だと告げた。
次の日、ジョンはサヴァナを連れて、かつて通っていたというレストランへ赴いた。彼はオーナーのスティーヴから「トラブルは困る」と言われ、「もう3年前のことだ。トラブルは起きない」と告げた。サヴァナに「何か訳有りなの?」と訊かれたジョンは、「いや、古い知り合いだ」と答えた。両親のことを問われたジョンは、「親父は無口だ。母親はいない。親父と2人暮らしだ」と告げる。「お父さんに会いたいわ、今夜」と彼女が言うので、ジョンは自宅へ連れて行くことにした。
ジョンは「親父は何も話さないかも。悪く思わないで」と説明してから、サヴァナを家に入れた。ジョンの父親はサヴァナが挨拶しても目を会わさず、どこか怯えたように握手した。ジョンはサヴァナに、父がコイン集めを趣味にしていることを話した。サヴァナがコインに興味を示すと、父は詳しい説明を始めた。ジョンが家まで送ると、サヴァナは「素敵なお父さんね。大切にしてあげて」と頬にキスをする。「すぐに会おう」とジョンが言うと、彼女も同意した。
次の日、サヴァナはジョンを連れて、仲間と共にハリケーンで倒壊した家を再建している現場へ赴いた。春休みにボランティア活動をしている彼女に、ジョンは「君は寛大だ」と告げる。目の上の傷を見つけたサヴァナに、ジョンは「5年前に酔っ払って喧嘩した時、目を狙われた」と明かす。「だからレストランであんな言われ方をしたのね」と彼女が言うと、ジョンは「昔の俺を怖がってる」と告げる。「入隊して変わった?」と問われ、彼は「ある部分は」と答えた。雨が降り出す中、2人はキスをした。
次の日から、ジョンは家の再建作業を手伝い、サヴァナは彼にサーフィンを教わった。春休みの最終日、サバァナは仲間たちが浜辺でパーティーを開いく中、一人だけ離れた場所に佇んでいた。それを見つけたジョンが近付いて話し掛けると、彼女は「会えなくなったら寂しくて死ぬわ。明日、私は大学へ戻る。貴方は任地へ行く」と言う。ジョンは「兵役は残り1年だし、帰国したら除隊する」と告げるが、サバァナは不安を隠せない様子だった。「軍は辞める。約束する」とジョンが言うと、彼女は強く抱き付いた。
サバァナはジョンに、「貴方のお父さんと出会って、特別クラスを教えたいと思った」と語る。「アランの隣に住んでいたのに、今頃になって気付くなんて」と彼女は告げ、「親父とどんな関係が」と尋ねるジョンに「自閉症の子を見てたから分かるの」と言う。するとジョンは、「親父をずっと観察してたのか。確かに親父は変わり者だが、それを指摘する必要があるのか」と腹を立てた。ランディーに声を掛けられたジョンは、いきなり殴り倒した。ティムが後ろから止めに入ると、ジョンは顔面に裏拳を浴びせた。
次の日、ジョンはサヴァナの家を訪ねるが、ティムが来て彼女は不在だと教える。ジョンが謝罪すると、ティムは「気にするな」と軽く告げる。訪ねて来たことを伝えるよう頼むと、ティムは紙を渡してメッセージを書かせた。ジョンが自宅にいるとサヴァナが来て、「手紙を読んだわ。短いけど最高よ」と告げた。ジョンが抱き締めると、彼女は「私が悪いの。私の言ったことには何の根拠も無いわ」と謝った。サヴァナはジョンに、自分が書いた手紙を渡した。そこには「1年間離れるけど、この2週間があれば大丈夫。貴方は除隊すると約束してくれたけど、もう1つだけ約束して。何でも話して」と綴られていた。
休暇を終えたジョンは、新たな任地へ赴いた。そこは郵便制度が整っておらず、インターネットも無い田舎の村で、ジョンは航空便で手紙を送る。彼は手紙に、任地は機密で教えられないことを書いた。サヴァナは両親の農場を訪れたこと、アランと馬に乗ったこと、自閉症専用のサマーキャンプを作る目標が出来たことを手紙に綴った。手紙のやり取りが続く中で、ジョンは次の任地へ移動した。手紙の交換は続き、サヴァナはジョンの父を訪ねたことを綴った。ジョンの父が最も気に入っているのは、1978年のエラーコインだった。
ジョンは彼女の質問を受け、コインに関する逸話を手紙に書いた。それは7歳のジョンがアイスを買った時に手に入れた物で、骨董品店の店主から「今は4千ドルの価値がある。ずっと持っていれば、遥かに超える価値が出る」と言われた。それがきっかけで、ジョンと父はコイン収集を始めた。しかし青年に成長したジョンは反抗期に入り、父と話すことも少なくなった。それがコインに関する逸話だと、ジョンは手紙に書いた。
同時多発テロ事件が勃発し、ジョンの同僚たちは口々に任務期限の延長を願い出た。指揮官のストーン大尉は、「月曜日に作戦命令が下る。週末にゆっくり考えろ。俺は妻子のことを考える」と述べた。「大尉は延長しなくても」と言われたストーンは、「俺たちはチームだ。延長するなら全員で」と告げた。わずか2日間の休暇を利用し、ジョンはチャールストンに戻った。ジョンはサヴァナと再会し、緊張する父を連れて彼女の両親を訪ねようとする。しかし父が車内で「降ろしてくれ」と苦しそうな様子を見せたので、自宅に戻った。
ジョンはサヴァナと共に、彼女の両親が主催するホーム・パーティーへと赴いた。ジョンはサヴァナの両親と挨拶を交わし、参加していたティムと再会する。サヴァナの親にも、ティムは「妻は旅行中で」と言っていた。ジョンは彼に、「アランにはどう話しているんですか」と質問する。ティムが「上手く説明できなくて」と言うと、ジョンは「俺は子供の頃、母親の帰りを待ちわびていました。もっと早く父が話してくれたらと思いました」と語った。
ジョンはサヴァナに、任務延長を願い出ることを明かした。「あと2年も?私の意見は?」と泣きそうな表情で責めるサヴァナに、ジョンは「どうしてほしい?除隊してほしいのか。状況が変わった。俺も君と一緒にいたいが、戸惑ってる。答えてくれ。どうしてほしい?」と問い掛ける。サヴァナはジョンを誘い、一夜を共にした。軍へ戻る日、見送りに来たサヴァナに、ジョンは「俺たちは変わらないよね」と確かめる。「危険は避けてね」と心配するサヴァナに、彼は「分かった」と答えてキスを交わした。
ジョンが新たな任地へ赴いてからも、手紙の交換は続いた。しかし、いつしかサバァナからの手紙が届かなくなった。不安になったジョンは衛星電話を密かに拝借して連絡しようとするが、サバァナには繋がらなかった。そんな中、久しぶりにサヴァナからの手紙か届く。だが、そこには2ヶ月間悩んで別れを決意したこと、別の男と婚約したことが記されていた。戦闘で重傷を負った彼は、ドイツの病院へと運ばれた。3ヶ月で回復したジョンは、任務期限の延長を望む。ストーンから保養休暇を取って帰省するよう促されても、彼の決意は変わらなかった。ジョンは「キャリアを積みたい」と言い、激戦地へと赴いた。2007年、カタールに赴任していたジョンは父が脳卒中で倒れたとの知らせを受け、チャールストンへ戻った…。

監督はラッセ・ハルストレム、原作はニコラス・スパークス、脚本はジェイミー・リンデン、製作はライアン・カヴァナー&マーティー・ボーウェン&ウィク・ゴッドフリー、共同製作はケネス・ハルスバンド&ジェイミー・リンデン、製作協力はマイケル・ディスコ、製作総指揮はジェレマイア・サミュエルズ&トビー・エメリッヒ&ミシェル・ワイス&タッカー・トゥーリー、撮影はテリー・ステイシー、編集はクリスティーナ・ボーデン、美術はカーラ・リンドストロム、衣装はデイナ・キャンベル、音楽はデボラ・ルーリー、音楽監修はハッピー・ウォルターズ&シーズン・ケント。
出演はチャニング・テイタム、アマンダ・サイフリッド、ヘンリー・トーマス、リチャード・ジェンキンス、デヴィッド・アンドリュース、スコット・ポーター、D・J・コトローナ、ダン・ルーニー、ギャヴィン・マッカレー、ホセ・ルセーナ、キース・ロビンソン、レスリー・フィッシャー、ウィリアム・ハワード、メアリー・レイチェル・ダドリー、ブライス・ヘイズ、R・ブリーデン・リード、ルーク・ベンワード、トム・スターンズ、マイケル・ハーディング、ブレット・ライス、デヴィッド・ドワイヤー、アンソニー・オスメント、ジム・ウェンザ、マット・ブルー他。


ニコラス・スパークスの小説『きみを想う夜空に』を基にした作品。
脚本は『マシュー・マコノヒー マーシャルの奇跡』のジェイミー・リンデン、監督は『シッピング・ニュース』『HACHI 約束の犬』のラッセ・ハルストレム。
ジョンをチャニング・テイタム、サヴァナをアマンダ・サイフリッド、ティムをヘンリー・トーマス、ジョンの父をリチャード・ジェンキンス、サヴァナの父をデヴィッド・アンドリュース、ランディーをスコット・ポーターが演じている。

この映画までに、ニコラス・スパークスの小説は『メッセージ・イン・ア・ボトル』『ウォーク・トゥ・リメンバー』『きみに読む物語』『最後の初恋』『ラスト・ソング』と5作も映画化されている。ハリウッドの映画人からすると、「稼げる原作」という感覚なのだろう。
ただし、いずれの映画も、あまり高い評価は受けていない。映画化してダメになったのか、そもそも小説がその程度なのか、その辺りは原作を読んでいないので良く分からない。
原作は知らないが、ニコラス・スパークス作品を使った映画に共通しているのは「ロマンスと感動」という要素だ。「映画で涙を流して癒されたい」と思っているF1層の女子に受けそうな要素であり、それを考えると、ハリウッドがニコラス・スパークス作品を使うのは納得できる。
その辺りは、日本もアメリカも変わらないんだろう。日本でも、2000年代は『黄泉がえり』に『世界の中心で、愛をさけぶ』、『いま、会いにゆきます』、『この胸いっぱいの愛を』、『そのときは彼によろしく』、『余命1ヶ月の花嫁』など、お涙頂戴の恋愛劇が何本も作られていた時期があったしね(おっと、挙げたのは全てTBS制作だな)。

ジョンとサヴァナは出会った瞬間から、もう互いに好意を抱いている。それは「軽い好意」というレベルではなく、早い段階で恋愛感情が芽生えている。
まだ内面を知るような交際期間など全く無い状態なので、ジョンは「見た目で惚れた」ってことになるし、サヴァナは「肉体を含む見た目&海に飛び込んでバッグを拾ったカッコイイ行動で惚れた」ってことになる。
そういう恋の始まりが全面的にダメとは言わないが、何となく軽いモノを感じてしまう部分は否めない。
「出会って4秒で合体」とまでは行かないまでも、出会った瞬間から互いに惹かれ合うという恋愛劇の始まりを、ニコラス・スパークス、もしくは製作サイドも「ちょっと軽いんじゃねえか」と感じていたのかどうかは知らないが、そこを補うための要素を用意している。
ジョンの方には「家族&サヴァナとしか話さない自閉症のアランが挨拶する」というシーン、サヴァナの方には「自閉症であるジョンの父が彼女とは饒舌に喋る」というシーンを用意し、互いに相手が「この人は特別な存在である」と感じるように仕向けている。
ただ、それもまた早い段階から軽く描いているという印象があるし、あざとさを感じることは否定できない。

出会った直後から惹かれ合っていたジョンとサバァナは、すぐに深い関係へと発展する。
最初のキスを交わした後、一緒に過ごしている休暇の風景が、BGMに乗せてダイジェスト的に処理される。そして浜辺に佇むサバァナが、「会えなくなったら寂しくて死ぬわ」と言うシーンに至る。
しかし、そのシーンがあるのは、映画開始から約25分後だ。
最初から惹かれ合っていたとは言え、まだ出会って2週間しか経過していないわけで、そこで「会えなくなったら寂しくて死ぬわ」と言われても、あまり重みのある言葉には感じない。

ただし、たった2週間であっても、その期間で2人が関係を深めて行く様子を、たっぷりと時間を使って丁寧に描けば、「濃密な2週間」として伝わるだろう。だから「2週間」という期間の問題ではなく、描写している時間の問題だ。
もちろん、それ以降の展開が色々と用意されているから、「出会った時の2週間」に多くの時間を費やすことが出来ないという事情は理解できる。
しかし、例えば回想シーンとして、2週間の出来事を何度かに分けて挿入するとか、そういう形を取れば、もう少しマシにはなったんじゃないかな。
ただ、ジョンとサヴァナが過ごした2週間の内容って、そんなに濃密な印象は受けないから、ちょっと厳しいかなあ。

その2週間のシーンで引っ掛かるのが、不安を吐露するサヴァナにジョンが「軍は辞める。約束する」と言っていることだ。
そりゃあ軍人として赴任していたら、なかなか会えないのは当然のことだ。
ただ、それを言っちゃうと、「軍人は恋愛できない」ってことになるでしょ。で、そうなると、それは「米軍の在り方を否定する」ってことにも繋がって来るんじゃないかと。
「軍の仕事が恋愛の障害になる」という使い方は良くあるし、特に引っ掛かることも無いんだけど、そこまでハッキリとサヴァナが恋愛のために除隊を希望し、ジョンも除隊を約束するってのは、何となく違和感が残る。

ジョンが「父親は自閉症である」ってことをサバァナに指摘されて腹を立てるのは、器が小さいなあとは感じるが、受け入れるには何の問題も無い。
しかし、その後でランディーとティムに暴力を振るう行動は、完全にアウト。翌日になってティムには謝罪しているが、ランディーへの謝罪は無い。そりゃあランディーの態度にも問題が無いわけじゃないが、殴っちゃダメ。
っていうか、どうやらジョンって「孤独を抱えている」というキャラ設定らしいけど、それを暴力衝動で表現している時点で「どうなのよ」と思ってしまう。
少女漫画なんかだと「荒っぽい男」というのがヒロインの恋愛対象になることも良くあるけど、それを「孤独を抱えているから」という言い訳で許しちゃうのは違うと思うんだよなあ。
この映画だと、暴力沙汰の翌日に手紙を見たサヴァナがすぐにジョンを許しているどころか「私が悪いの」と謝っているけど、明らかに悪いのはジョンだからね。

「同時多発テロ事件が勃発して同僚たちが任務期限の延長を志願し、ジョンも同調せざるを得なくなる」という展開には、「そういう形で同時多発テロを利用しちゃうのね」と思ってしまう。
書き方で分かるだろうが、それは決して好意的な感想ではない。
日本人はともかく、アメリカ人からすると、まだ9・11の同時多発テロ事件ってのは、そういうことに利用すべき題材になるような出来事じゃないような気がするんだよなあ。
例えば邦画で、「東日本大震災の影響で男が原発の作業を続けることになり、それが理由で女と疎遠になりました」みたいな恋愛劇を作ったとしたら、やっぱり引っ掛かるモノを感じると思うのよね。

「ジョンの父親が自閉症」という設定は、もちろん物語に厚みを与えるための要素ではあるんだけど、残念ながら邪魔な要素になっている。
「父親の自閉症がジョンの精神形成や行動にも大きな影響を与えている」ということではあるんだけど、ジョンと父親の関係を描写する必要があるために、最も重要な「ジョンとサヴァナの恋愛劇」が薄くなっているという印象を受けるのだ。
2日間の休暇で帰省した時も、ジョンとサヴァナの関係を充実させるべきだろうに、それよりも「ジョンの父がサヴァナの家へ行くのを嫌がって云々」というエピソードが大きく扱われている。
だったら、むしろジョンと父の親子ドラマをメインに据えればいいんじゃないかと思ってしまう。ヒロインは登場させてもいいけど、ジョンの幼馴染や隣人にでもしておいて、恋愛劇は二の次にすればいいんじゃないかと思ってしまう。

後半、「ジョンの元にサヴァナが他の男と婚約したという手紙が届く」という展開があるが、「まあ2週間しか付き合っていなかった相手だし、そんなこともあるだろう」と思ってしまう。
だから、そのショックでジョンが任期延長を志願して激戦地へ赴くってのは、まるで同情を誘わない。「たかが失恋しただけで、何をヤケになってんだよ」と思ってしまう。
そこまでの時間で「ジョンにとってサバァナは特別な存在だった。初めて心を許せる相手だった」ということを描いているつもりではあるんだろうけど、前述した「父の自閉症」といった要素が邪魔になっていることも手伝って、あまり恋愛劇の充実度が高くないんだよなあ。
ただし、サバァナの行動にも大いに問題があって、なぜ別れの理由、他の男と婚約した事情を説明しなかったのかと。ジョンには「何でも話して」と約束させておきながら、テメエはデカすぎる嘘をついちゃうのかと。
そのせいでジョンはヤケ酒やヤケ食いならぬ、ヤケ戦闘を始めちゃうんだぞ。それで仮にジョンが戦死でもしたら、間接的な殺人と言ってもいいようなことをサヴァナはやっているんだぜ。

終盤、「ティムが癌と診断され、症状が悪化して入院し、アランを一人に出来ないと考えたサヴァナが結婚を承諾した」ってことが判明する(ティムはサバァナに惚れていた)。
しかし、それが分かっても、「だったら仕方が無いね」とサバァナを擁護する気持ちは沸かない。ジョンへの裏切り行為に関しては、情状酌量の余地は全く無いぞ。
まず、「アランを一人に出来ないからティムと結婚する」ってのが間違った慈善行為だ。
別にティムと結婚しなくても、彼の死後にアランを引き取って面倒を見ることぐらい出来るでしょ。アランは家族以外でもサバァナに対しては心を開いていたんだから、結婚しようがしまいが、それは変わらないんだし。

また、そういう事情をジョンに話していないってのも批判されるべき行為だ。
「何でも話して」という約束を破っているし、ジョンが任務期間の延長を決めた時には「私の意見は?相談もせずに?」と責めていたのに、同じことをやっているんだぜ。
っていうか、そういう事情を明かさない理由は何なのかと。
そりゃあ、打ち明けたところで納得してもらえるとは思えないけど、いきなり「他に男が出来たから婚約しました」と通告されるよりは遥かにマシだと思うぞ。

「貴方の声を聞いたら心が揺らぐから電話は出来なかった」とサバァナは釈明しているけど、そんな言い訳をしても同情心は誘われない。
その上、彼女はそういう言い訳を語った後、「戦地は大変で、こっちは楽だと思ったの?貴方のいない毎日は、本当に耐え難かった」と逆ギレしたような態度で喋る。
だけど、「戦地の大変さ」と「恋人がいなくて孤独な日々の大変さ」を同列に並べるなよ。
それは戦地で頑張ってる軍人さんに失礼だわ。どれだけ大変でも、アンタの大変さは死の危険と隣り合わせじゃないでしょうに。

ともかく、終盤のサヴァナの行為に関しては不愉快なことだらけであり、何一つとして同情を誘う要素が無いので、そこに「悲恋」を感じ取ることが出来ない。
おまけに、彼女はティムと結婚している状態なのに、ジョンとヨリを戻そうとするんだぜ。
それは絶対にダメだろ。
「事情があったから仕方が無い」と釈明し、簡単にヨリを戻そうとするぐらいなら、最初から間違ったボランティア精神でティムと結婚なんかするんじゃねえよ。

ジョンとサバァナの恋愛劇にも、別れることになったことに対しても、まるで惹き付けられるモノは無いが、せめて綺麗な形で着地させるには、「悲しい別れで関係は終わりました」という形にすべきだと思うんだよね。
ジョンがサバァナのために父のコインを売却し、匿名で寄付金を贈って戦地へ戻り、サバァナからの手紙が届く展開があるけど、その辺りで終わらせちゃってもいいと思うんだよね。
ところが、この映画は「ティムの死後、戦地から戻ったジョンがサバァナとヨリを戻す」という着地にしてあるのだ。
いやいや、それは形としてはハッピーエンドかもしれんけど、そんな祝福できないハッピーエンドは願い下げだわ。

(観賞日:2015年1月8日)

 

*ポンコツ映画愛護協会