『シティ・オブ・エンジェル』:1998、アメリカ
舞台はロサンゼルス。病院に運び込まれた幼い女の子の近くに、黒い服を着た男が寄り添っている。だが、女の子以外の人々には、彼の姿が見えていない。やがて女の子は亡くなり、男は彼女の手を引いて天国へと導いていく。男の名はセス。彼は天使なのだ。
ある日、セスは心筋梗塞で病院に運び込まれた患者の近くにいた。その男が死ぬ運命にあったからだ。男の手術を担当したのは、マギーという名の女性医師だった。マギーは患者を死なせたことで自分を責め、医師としての自信を無くしてしまう。
そんなマギーの様子を見たセスは、彼女に希望を与えて立ち直らせようとする。セスは彼女の前に姿を現し、言葉を掛ける。セスは彼女に恋をしていた。やがてセスは、かつて天使だったという患者ネイサンに出会う。彼によると、その気になれば誰でも天使から人間になれるというのだ…。監督はブラッド・シルバーリング、 脚本はデイナ・スティーブンズ、製作はドーン・スティール&チャールズ・ローヴン、共同製作はダグラス・セガール&ケリー・スミス= ウェイト、製作協力はジェフ・レヴィン&アラン・G・グレイザー、製作総指揮はアーノン・ミルチャン&ロバート・カヴァロ&チャールズ・ニューワース、撮影はジョン・シール、編集は リンジー・クリングマン、美術はリリー・キルヴァート、衣装はシェイ・カンリフェ、音楽はガブリエル・ヤーレ、音楽監修は ダニー・ブラムソン。
出演はニコラス・ケイジ、メグ・ライアン、デニス・フランツ、アンドレ・ブラウアー、コルム・フィオーレ、ロビン・バートレット、 ジョアンナ・マーリン、サラ・ダンフ、ロンダ・ドットソン、ナイジェル・ギブズ、ジョン・パッチ、ローリー・ジョンソン、クリスチャン・オーバート、ジェイ ・パターソン、シシー・カラップ、ブライアン・マーキンソン、ヘクター・ヴェラスケス他。
ヴィム・ヴェンダース監督の作品『ベルリン・天使の詩』をハリウッドでリメイクした作品。ニコラス・ケイジがセス、メグ・ライアンがマギーを演じている。
そもそもヴィム・ヴェンダース作品をリメイクしようとする時点でおかしいと思うのだが、やっぱり今作品はおかしなことになっている。この作品の本質だけを抜き出すと、「社会への適応能力に欠けるコミュニケーションのヘタな男が、女に惚れてまとわりつく」という話である。
つまり、「セスは天使だ」というファンタジックな設定に観客は誤魔化されがちだが、基本的には、変質者のストーカー物語なのだ。図書館ではマギーに目を閉じさせ、いきなり手を触る。
マギーが行く場所にどこまでも付いていき、果ては入浴シーンまで覗き見する。
完全に犯罪者である。
それでもマギーは彼を好きになる。
社会への適応能力に欠ける男にとって、彼女は理想的な女性として描かれている。つまり、これはオタク的な人種の、恋愛に関する妄想を実写化したような話なのだ。
だから一部のマニアと、ムードに惑わされて美しい恋愛劇だと感じた人々以外の観客は、セスにもマギーにも共感できずに終わってしまうのだ。
ちなみに私も基本的にはオタクだが、全く共感できなかった。この作品は生死を扱っているのだが、その扱いは非常に軽い。それは、終盤に無駄死にする奴が出ることでも分かる(脇見運転というのが情けない)。
「天使が人間になるとはどういうことか」という部分も、かなり浅い。
だから、ますます単なる“オタクによる理想像との妄想恋愛劇”になってしまう。
それをキレイなイメージで描かれても、そりゃ違うだろうと言いたくなってしまう。