『スカイライン -奪還-』:2017、アメリカ
ロサンゼルス市警の刑事であるマークは、アルコールで問題を起こして停職中だった。しかし息子のトレントが逮捕されたという知らせを受け、彼は警察署へ出向いた。相棒のガルシアはマークに、起訴されないよう手を回したことを告げる。トレントを連れ出したマークは車に乗るよう促し、一度くらい真剣に生きろと説教した。車のエンジンが掛からないのでトレントはタクシーを呼ぶよう告げるが、マークは金が無かった。トレントは「酒なんか買うからだ」と呆れ果て、地下鉄の駅へ向かった。トレントは目の見えないホームレスのサージが物乞いをしているのに気付き、小銭を渡した。
マークとトレントが地下鉄に乗っていると、駅に着く前に急停車した。車掌のオードリーは本部に連絡するが、応答は無かった。乗客が騒ぎ出す中、彼女は落ち着くよう説いた。改めて本部に無線を入れると、「光を見るな」という声が聞こえてきた。マークは乗客を降ろし、線路を歩いて移動する。駅に着いたマークたちが歩いていると、トレントは物音を耳にして勝手に出口へ向かい、1人の女性も後を追う。同じ頃、警察署ではガルシアと婦人警官のジョーンズの2人を除く面々が姿を消していた。
女性客が駅を出るためエレベーターに乗ると、トレントは呼び止めようとして後を追う。すると地上から差し込む青い光を見た2人の目が変貌し、正気を失ってしまう。駆け付けたマークはトレントに飛び付くが、女性は地上へ出てしまう。地上にいた人々は、青い光を放つ巨大宇宙船に吸い込まれた。マークは正気を取り戻したトレントを連れて、他の乗客たちの元へ戻る。警察署へ向かおうとしたマークたちは、サージを連れて歩くガルシア&ジョーンズと遭遇した。マークは警察署の他の面々が消えたことを明かし、マークは彼から拳銃を受け取った。
オードリーの提案で、一行は工事中の区域を通って街の外を目指すことにした。マークは「そこなら海兵隊もいる」と賛同し、一行は移動を開始する。マークが階段を上がって街の様子を確認すると、空軍の部隊が宇宙船を攻撃していた。ジョーンズが無線で本部に状況を報告すると、早く市街地から出てマリーナのH埠頭に行くよう指示された。部隊は全く歯が立たず、ステルス機は宇宙船に撃墜された。発射された核ミサイルの衝撃を避けるため、マークたちは慌てて地下鉄の構内に避難した。トンネルは破壊され、瓦礫の下敷きになった2名の乗客が命を落とした。
トンネルの奥からエイリアンが出現し、ガルシアを捕獲した。マークがショットガンで攻撃する中、エイリアンの放つ光を見たトレントの顔が変化する。銃弾を浴びたエイリアンが動かなくなると、トレントは元に戻った。ガルシアはマークに救出されるが、大量に出血していた。復活したエイリアンはジョーンズを捕まえ、脳を抜き取って殺す。マークは他の面々を地上に脱出させ、エイリアンを爆死させた。地上に出たマークたちは、撃墜された巨大宇宙船が再生していく様子を目にした。
マークたちは逃亡を図るが、巨大エイリアンが出現して襲い掛かる。ガルシアは自分が助からないと悟り、囮になってマークたちを逃がす。彼は巨大エイリアンをショットガンを攻撃するが、すぐに捕獲された。H埠頭に辿り着いたマークが無線で呼び掛けると、ヘリコプターが飛来する。しかし巨大エイリアンがヘリコプターを撃墜し、マークたちは宇宙船に吸い込まれた。サージは青い光の影響を受けなかったが、巨大エイリアンが彼を捕まえて宇宙船へ飛び込んだ。
巨大エイリアンが宇宙船に入ると、操縦していたエイリアンが中から現れた。マークが意識を取り戻すと、大勢の人々が粘液まみれの状態で倒れ込んでいた。船内には巨大な触手があり、人間の脳を引き抜いて死体を捨てていた。触手がトレントに狙いを定めたので、マークは息子を助けようと拳銃で発砲する。操縦席のエイリアンはマークの動きに気付き、捕獲した人間たちを一気に吸い上げる。マークは息子を止めようとするが、手が離れて落下してしまった。
船内を捜索したマークは、人間の脳を移植したマシーンが製造されている場所を目にする。彼はエイリアンに見つかるが、マシーンが来て彼を救った。トレントは意識を取り戻し、オードリーと並んで宙吊りにされていることを知った。サイボーグに怪我を治療してもらったマークは、妊娠中の女性と遭遇する。女性はエレインと名乗り、破水したので助けてほしいと言う。本来の予定日は半年も先だが、青い光を浴びて臨月を迎えていた。彼女はマークに、マシーン化した恋人のジャロッドが守ってくれていたことを話した。
無事に女児を出産したエレインだが、息を引き取ってしまった。マークはジャロッドに、息子を見つけてくれたら赤ん坊は必ず守ると約束した。ジャロッドは取引を承諾し、マークにエイリアンの武器を装着させた。拘束を解いたオードリーとトレントは、宙吊り状態のサージを発見した。ジャロッドはエイリアンに見つかると、マークと赤ん坊を逃がした。マークはトレントたちを発見し、赤ん坊を近くに置いて走った。トレントはマークの警告を聞かず、サージの救出に向かった。
ジャロッドはエイリアンと戦い、致命傷を負って倒れ込んだ。トレントはサージを救うが、怪物に脳を引き抜かれた。マークは怪物と戦い、オードリーを助けた。エイリアンが赤ん坊を発見すると、サージが立ちはだかった。サージはエイリアンに腹を刺されるが、オードリーが赤ん坊を抱き上げた。深手を負って倒れていたジャロッドは爆弾を使い、宇宙船をラオスのメコン川付近に墜落させた。地上ではタイの兵士たちがエイリアンと戦う様子を、反政府組織の指導者のスアと妹のカンニャが物陰から観察していた。そこへ警官が現れて襲い掛かると、スアは反撃して始末した。
マークとオードリーは、サージと成長した赤ん坊を連れて宇宙船から脱出した。カンニャは謎の卵を発見し、鞄に入れた。エイリアンは青い光を放出し、宇宙船の修復を開始した。スアとカーニャはマークたちを発見し、銃を突き付けた。マークは敵ではないことを訴えるが、スアは命令に従うよう要求した。大量出血したサージは息を引き取り、マークたちは彼を残してスアとカンニャに連行された。宇宙船の内部では、トレントの脳を取り込んだマシーンが誕生していた。
スアとカンニャはマークたちを引き連れ、組織の駐屯地へ赴いた。マークは警察手帳を見つけたスアとカンニャに、麻薬捜査官ではないことを説明した。オードリーは隙を見てカーニャに飛び掛かり、マークはスアと戦う。悪徳警官の接近に気付いたスアは、カンニャに呼び掛けて知らせる。マークはスアに、協力するから赤ん坊を医者の元へ連れて行くよう持ち掛けた。スアは取引を承諾し、4人はジャングルを移動した。野営した時にマークが宇宙船やエイリアンのことを説明するが、マークとカンニャは信じようとしなかった。
翌朝、マークは警官のチーフに銃を突き付けられ、目を覚ました。スアはチーフに発砲するが、殺害しようとするとオードリーが制止した。マークたちはチーフを拘束し、先へ進むことにした。スアとカンニャはマークたちを引き連れ、反政府勢力の拠点である神殿の遺跡に到着した。遺跡に入ったマークたちは、元科学者で麻薬密売人のハーパーに握手を求められた。スアはチーフを地下牢に収監し、ハーパーは赤ん坊の体温を測って血液を調べた。
ハーパーは様子を見に来たカンニャに、赤ん坊の遺伝子が人間の物ではないことを教える。カンニャは驚愕し、赤ん坊を始末しようとする。マークは彼女とスアに、赤ん坊は捕まった人々を救う鍵を握る存在なのだと説明した。ハーパーは彼らに、赤ん坊は輸血が必要だが人間の血は使えないと話す。そこでマークは、エイリアンの武器を装着した自分の右腕から血を採取するよう提案した。赤ん坊は輸血を受けて意識を取り戻すと、もう言葉が話せる少女に成長していた…。脚本&監督はリアム・オドネル、製作はマシュー・ショーズ&グレッグ・ストラウス&コリン・ストラウス、製作総指揮はアレン・リウ&アレン・ダム&ロマン・コプレヴィッチ&ピーター・K・K・リー&マグイ・コーエン&マシュー・ヘルダーマン、共同製作はロバート・ヴァン・ノーデン&ノラ・メディアナ&リンゼイ・マーティン&ジョン・“デューク”・デュケスネイ&スティーヴン・ホーバン&ピーター・Y・W・ラム&ジェイソン・ヒューイット、製作協力はジェニファー・コッチミグリオ&ベン・ブロック&コーディー・ハックマン&マリーノ・クラス、共同製作総指揮はジョセフ・リスサウス&ルーク・テイラー&ルーシー・チェン、撮影はクリストファー・プロブスト、美術はイアン・ベイリー&ローレン・フィッツシモンズ、編集はショーン・アルバートソン&バナー・グウィン、衣装はテニア・ソープラプト、クリーチャーFX監修はアラン・B・ホルト、アクション・コレオグラファーはイコ・ウワイス、音楽はネイサン・ホワイトヘッド。
主演はフランク・グリロ、ボヤナ・ノヴァコヴィッチ、ジョニー・ウェストン、イコ・ウワイス、ジェイコブ・ヴァルガス、カラン・マルヴェイ、アントニオ・ファーガス、ヤヤン・ルヒアン、パメリン・チー、リンゼイ・モーガン、サマンサ・ジーン、ベティー・ガブリエル、ノエル・グーリーエミー、ケヴィン・オドネル、ザラ・マーラー、トニー・ブラック、ローレン・マリン、カレン・グレイヴ、クリステン・アリザ、ヴァレンティン・ペイエン、ダーラ・キナンティー・アクマッド、キャサリン・ヘイデン、アライナ・ジャヤラス他。
2010年の映画『スカイライン -征服-』の続編。
前作の脚本を手掛けたリアム・オドネルが、初監督を務めている。
前作の監督を務めたストラウス兄弟は、プロデューサーに回っている。今回も彼らが創設したVFX会社のハイドラックスが製作している。
前作から続投しているキャストはいない。マークをフランク・グリロ、オードリーをボヤナ・ノヴァコヴィッチ、トレントをジョニー・ウェストン、スアをイコ・ウワイス、ガルシアをジェイコブ・ヴァルガス、ハーパーをカラン・マルヴェイ、サージをアントニオ・ファーガス、チーフをヤヤン・ルヒアン、カーニャをパメリン・チーが演じている。エレインとジャロッドは前作の登場人物だが、演じている役者が異なる。
ただ、1作目も2作目も、エレインとジャロッドを演じている俳優は決して有名とは言えない。
だから、前作のエレインとジャロッドの顔をハッキリと覚えている人は、そんなに多くないんじゃないか。
何が言いたいかっていうと、今回のエレインを見た時に「お前は誰だよ。前作と別人になってるじゃねえか」とツッコミを入れたくなる人は少数だろうってことだ。前作を見ていれば、巨大宇宙船やエイリアンによる攻撃は「御馴染みの光景」だろう。
ただ、今回はそれに加えて、巨大エイリアンも登場する。
「戦隊ヒーロー物の怪人かよ」と言いたくなったが、そいつの中から通常サイズのエイリアンが出現する。つまり巨大エイリアンは、エイリアンが操縦するロボットやモビルスーツみたいな存在ってわけだ。
ただ、どっちにしても、マジに緊張感を煽るSFではないことをハッキリと示してくれるキャラだ。ストラウス兄弟が監督を務めた1作目は、「とにかくハイドラックスの特殊視覚効果をアピールしたい」という意識が顕著に出ている内容になっていた。しかし今回の続編では、同じことをやっているだけでは意味が無い。
そこで新たにどんな方針を打ち出すのかと思ったら、バカSFとしての方向が強まっている。
見た目が完全にエイリアンと化したジャロッドが人間性を失わず、マークたちの味方になって行動してくれるってのも、バカっぽさはあるけど楽しい。そういうB級スピリットは嫌いじゃないので、「バカだなあ」と言いながらニヤニヤして観賞するタイプの映画として振り切ってくれれば、存分に楽しめたかもしれない。
ところが「マジな顔してバカをやる」ってのを貫いてくれればいいものを、そっちで思い切り突き抜けているわけではなくて、緊迫感のあるシリアスなSFアクションとしての意識も捨て切れていない。
そのことが、どっち付かずの中途半端な仕上がりに繋がっている。マークがエイリアンの武器を右腕に装着するのも、ワクワクさせてくれる。
そこからマークとジャロッドがコンビになってエイリアンと戦う荒唐無稽で爽快感のあるアクションが展開されるのかと期待したが、そんなことは無かった。
すぐに2人は別れてしまい、ジャロッドは簡単に倒されてしまう。マークが手に入れたエイリアンの武器も、そんなに役には立たない。
せっかく膨らんだ期待感が、あっという間に萎んでしまうのである。そして映画開始から50分ほど経過すると、なぜか舞台はラオスに移り、格闘アクションが始まる。
しかも、それは人間とエイリアンの戦いではない。人間と人間の格闘アクションなのだ。
いやいや、なんでだよ。
「エイリアンが地球に襲来し、次々に人間を捕獲して云々」という話を、前作から引き続いて延々と描いてきたはずで。そんな中で用意されるアクションが「人間同士の戦い」って、どう考えても感覚がおかしいだろ。
そんなモノを期待している観客はいないだろうし、意外性の喜びを感じる人も皆無に等しいと思うぞ。しかも、その格闘アクションですら、申し訳程度に過ぎないんだよね。
舞台がラオスに切り替わった直後と、マーク&オードリーがスア&カンニャに抵抗して戦う時と、その2つだけなのよ。
ラオスに移動してから最終決戦が始まるまでの時間帯は、基本的には休憩なのだ。
「赤ん坊にはこんな意味がありますよ」みたいな説明のための手順もあったりするけど、しばらくエイリアンは絡んで来ないし、マークやオードリーたちは一息つくことが出来る時間が大半なのだ。「最初から最後まで延々とアクションが続く」という構成にした場合、感覚が麻痺して退屈になっちゃう恐れはあるだろう。
それは構成に問題があるんじゃなくてシナリオや演出が下手なだけである可能性が濃厚だけど、それはひとます置いておくとして、途中でアクションを休んでチェンジ・オブ・ペースを入れるのは悪いことでもない。
ただ、これはデタラメなハッタリだけで成立しているような映画なので、どんどん畳み掛けて勢いとパワーで突っ切った方が良かったんじゃないかと。
で、そんな風に畳み掛けて行く上で最も重要なのは、「格闘アクションの見せ方」にあるのよ。イコ・ウワイスとヤヤン・ルヒアンを起用しているんだから、「ってことは格闘アクションをやるんだよね。じゃないと宝の持ち腐れになるよね。ってことは、まさかエイリアンとステゴロで戦うのか」と期待しても、何も不思議ではない。
そして実際、そういう展開はある。
ただし、それは終盤の15分ぐらいしか無いのよね。それはあまりにも寂しいわ。
その最終決戦ではエイリアンの武器が役に立つけど、もっとそういうのを増やせば良かったのよ。最終決戦では、エイリアンの操縦する巨大ロボットとマシーン化したトレントが操縦するロボットの戦いもある。まさに戦隊ヒーロー物のロボット戦と同じようなモノだよね。
ただ、そこは1作目と同じく「VFXを見せる」という意識が強く出たシーンで、そういうモノと格闘アクションを見せようとする意識の相乗効果は今一つに感じる。
あと、マシーンが後ろ回し蹴りを出すシーンがあるけど、それは違う。
エイリアンやマシーンは「いかにもエイリアンやマシーンっぽい動き」で襲い掛かって、それにイコ・ウワイスやヤヤン・ルヒアンがマーシャルアーツで対抗するという形でバトルを描くべきだよ。(観賞日:2020年5月29日)