『世界侵略:ロサンゼルス決戦』:2011、アメリカ

2011年8月12日、世界各国が宇宙から飛来した未知の敵による攻撃を受けた。その24時間前、キャンプ・ペンデルトンのミリタリー・ビーチでは、マイケル・ナンツ二等軍曹と部下たちが体力トレーニングに励んでいた。ラジオのニュースでは、大規模な流星群が明朝には大気圏に突入することが報じられている。海兵隊基地に戻ったナンツは、友人であるジョン・ロイ一等軍曹から、退役願のことを訊かれた。これまでに多くの勲章を貰っている優秀な海兵隊員のナンツは、「もう20年も勤務した。そろそろ潮時だ」と口にした。
ロイのように管理職として残ることも、ナンツは考えていなかった。そんなナンツが前回の作戦を気にしていることを、ロイは分かっていた。ロイは書類にサインし、今回の訓練が終われば退役することを承諾した。ケヴィン・ハリス伍長とニック・スタヴロー伍長は、花屋にいた。ハリスが結婚するので、式で使う花を選びに来たのだ。テレビのニュース番組では、流星群が驚異的なスピードで地球に迫っていることが報じられている。高額な花を恋人からねだられたハリスは悩むが、スタヴローに「一生に一度のことだぞ」と言われ、それを買うことにした。
ナイジェリア出身のジブリル・アドゥクゥー衛生下士官、通称「ドク」は、インターネットを使って祖国の妹と話していた。そこへ来たリチャード・ゲレロ上等兵が「お前の彼女か。美人じゃないか」と軽く言ったので、ドクは険しい顔で「妹だ」と告げた。ピーター・カーンズ上等兵は、精神科医のボイドに診察を受けていた。「症状は改善してる?」と質問された彼は、「良く眠れてる。帰還した当初は発砲音に怯えていたけど、今は平気だ」と答える。「もう実戦に戻っても大丈夫?」とカーンズが訊くと、ボイドは「来週、また面談して話し合おう」と述べた。
ジェイソン・ロケット伍長は出征を控え、兄の墓参りに来ていた。彼は墓石に笑顔で話し掛け、「今夜は隊の連中と伝統行事だ。楽しんで来るよ」と述べた。その夜、ロケットたちがゴルフ場にいると、複数の女性たちがやって来た。一番の新人であるショーン・レニハン一等兵は、仲間たちにからかわれた。明朝、8つの都市の沖合に流星群が落下することが確実視される中、南カリフォルニアの沿岸地域では住民たちの避難が始まっている。ウィリアム・マルティネス少尉は妊娠中の妻キャシーを家に残し、基地へ向かった。
ナンツの部隊がキャンプ・ペンデルトンで訓練を行っていると、ロイが来て「全員、トラックに乗れ」と命じた。彼はナンツに、「流星群の落下で全基地に動員命令が出た」と説明した。「中隊に戻ってくれ。お前が必要だ」と依頼されたナンツは苦渋の表情を浮かべるが、承諾するしか無かった。海兵隊2-5小隊の隊長であるマルティネスは、リー・イムレイ伍長に「君を分隊長に命じる。ベック二曹の代理はナンツ二曹だ」と告げた。前回の作戦でナンツが部下を死なせたことを知っているイムレイは、微妙な表情を浮かべる。だが、それを見透かしたマルティネスに指摘された彼は、「でも指揮するのは少尉ですから」と告げた。
ナンツはロイから、「マルティネスの小隊に入れ。彼は士官学校を出たばかりで、任官して1ヶ月だがキレ者だ。ただの避難誘導だし、大丈夫だろう」と告げた。ナンツが配属されたことを知ったレニハンが「彼は前回の作戦で大活躍したんだろ?」と言うと、ロケットは激しい苛立ちを示す。レニハンは仲間たちから、ロケットの兄が前回の作戦で命を落としたことを聞かされた。隕石が落下したのは大都市の沖合ばかりで、いずれも中心に機械的な物が見つかっていた。その正体が流星群ではなく、地球が侵略の脅威にさらされていることが明らかとなった。
飛来した物体からは未知の生物が大挙して現れ、人々を襲い始めた。海兵隊は敵と戦うため、出撃することになった。ヘリで出撃する際、ロケットはナンツに嫌味を言う。サンタモニカ空港の前線基地に到着したマルティネスの部隊は、空軍機が防衛線から海まで総攻撃することを司令官から聞かされる。敵は航空機を持っておらず、空爆で制圧できるというのが司令官の考えだった。住民の避難はほぼ終わっていたが、まだ救助要請も入っていた。
マルティネスは司令官から、防衛線を越えた警察署へ行くよう命じられた。司令官は「逃げ遅れた人がいる。発見したら連絡しろ。救助ヘリを行かせる。空爆まで3時間しか無い。避難の成否に関わらず、空爆は実行される」と述べた。ロサンゼルスの街に出た小隊は、防衛線を越えて先へ進む。煙で視界が遮られる中、小隊は敵の待ち伏せ攻撃を受けた。未熟なマルティネスは、指示が出来ずに呆然としてしまう。ナンツが指示を待たずに行動し、それを受けてマルティネスが「そこだ。全員、退避しろ」と指示を出した。
小隊は家屋に逃げ込み、負傷者の治療が行われた。本部と連絡が取れずにマルティネスが「指示が無いと動けない」と焦る中、ナンツは「貴方が指示して下さい」と促した。マルティネスは「救助ヘリを呼ぶ。負傷兵の搬送が先だ」と告げた。レニハンの姿が見えず、ナンツは2人の隊員を連れて捜索に出た。怪我を負ったレニハンは、アパートのランドリー室に逃げ込んでいた。無線連絡を受けたナンツたちは、救助に向かう。レニハンはエイリアンと遭遇するが、必死に攻撃してプールに落下させた。
ナンツたちがレニハンの元へ到着した直後、エイリアンがプールから浮上した。ナンツたちは一斉に銃撃し、再びプールに落下させた。ナンツはイムレイに指示し、手榴弾をプールへ投げ込ませた。合流した小隊は、警察署へ向かって慎重に歩みを進める。しかし敵の攻撃を受けたため、銀行へ逃げ込んだ。正面に第40歩兵師団の兵士4名が現れたので、ナンツたちは銀行に入るよう促した。他の隊員は死亡か行方不明だという。兵士の中には、空軍の情報偵察師団所属のエレナ・サントス技能軍曹もいた。敵の電波を追跡中に待ち伏せされ、1人だ生き残った彼女は逃亡途中で他の3名と出会ったのだ。
エレナたちを加えた小隊は、銀行を出て警察署を目指す。署内に入ったナンツたちは、獣医のミシェル、ジョー・リンコンとヘクターの父子、キルステンとエイミーという少女たちを発見した。警察署の外には救助ヘリが到着したが、乗ることが出来るのは4名だけだった。負傷したゲレロたち4名が搭乗し、ヘリは民間人を残して離陸した。その直後、ヘリはエイリアンの飛行物体にょって撃墜された。
ナンツたちは民間人を連れて、ひとまず署内に避難した。4名の部下を失ったマルティネスが感情的になるのを見たナンツは、自分にも経験があることを明かし、「指揮官の宿命です。感傷的にならないで下さい。みんなが命令を待っています」と告げた。そこへ、敵の飛行物体が空域を制圧したため、救助ヘリが来ないという知らせが届く。マルティネスたちは徒歩で脱出し、民間人を連れて前線基地まで戻らざるを得なくなった。
マルティネスの指示を受けたロケットとカーンズは屋上から周囲を監察し、脱出ルートを検討する。2人は近くに放置されていたバスを発見し、マルティネスに報告する。ナンツは「徒歩の方が安全では?」と意見するが、マルティネスは「前線基地までは遠い。空爆まで残り1時間ほどしか無い。急がないといけない。私が決める」と言う。彼はハリスとスタヴローに、バスを調べて来るよう命じた。
警察署の外でエイリアンの死体が見つかり、ナンツたちが駆け付けた。まだエイリアンは息があったが、ナンツは殺さず、瀕死の状態で警察署に運び込む。彼はドクに、どこが急所なのか調べるよう指示した。獣医のミシェルは、手伝いを申し出た。ミシェルたちが調べている間に、エイリアンの集団が北口から署内に侵入した。ナンツたちは民間人を南口に移動させる。ハリスとスタヴローはバスを動かし、南口に付けた。マルティネスたちは、すぐに民間人を連れて外へ飛び出した。
ナンツとサントスは署内に留まり、エイリアンの急所を調べ続けていた。右胸の部分に急所があることを突き止めた2人は、急いで警察署から脱出する。全員を乗せたバスは、前線基地へと急ぐ。しかし異様な音を耳にしたナンツは、バスを停車させた。直後、敵の飛行物体が連隊を成して東へ飛んで行った。スティーブン・モトーラ上等兵が無線で前線基地へ連絡すると、飛行物体の1機がそれに対応した動きを見せた。ナンツは電波が探知されていると気付き、「無線を切れ、携帯もだ」と全員に指示した。
ナンツは無線機を奪い取り、バスを飛び出した。彼は無線機のスイッチを入れ、それをガソリンスタンドに置いて逃走した。飛行物体がガソリンスタンドに近付いたところで、彼は手榴弾を投げ込んだ。飛行物体はガソリンスタンドと共に大爆発した。飛行物体の残骸を調べたナンツはバスに戻り、マルティネスに「無人でした。遠隔操作で動いているんです」と報告した。サントスはナンツに、自分が敵の司令部を探っていたことを明かす。軍の上層部は司令部を突き止め、ミサイル攻撃を仕掛けようと考えていたのだ。
マルティネスは高速道路を使うが、最初の出口はエイリアンの攻撃によって消失していた。次の出口へ向かおうとした時、エイリアンが攻撃して来た。敵が戦車を狙っている間に、ナンツたちはバスを降りた。ナンツはマルティネスに、墜落したヘリコプターを盾にして、ロープを使って民間人を高速道路から下ろすよう促した。彼はロケットとカーンズを引き連れ、援護射撃を行う。サントスたちも敵を攻撃する。戦いの中でスタヴローとモトーラが犠牲となった。
マルティネスはC4爆弾を仕掛けた後、敵の攻撃で重傷を負った。彼はナンツに、「早く逃げろ。隊を頼む。生き延びるんだ。バスごと吹き飛ばす」と告げる。マルティネスはナンツに、妻への手紙を託した。ナンツはマルティネスに「命令だ」と言われ、苦渋の表情で退避した。マルティネスはC4爆弾を入れたリッュクから起爆装置を取り出し、起動スイッチを押してバスを爆破した。マルティネスの犠牲により、小隊を襲っていた敵は全滅した。
指揮官となったナンツは全員を連れてスーパーマーケットに入り、そこで待機することにした。空爆までは、あと6分しか残っていない。彼はサントスとカーンズに、有線の通信機器を探すよう指示した。サントスはパソコンを発見し、ネットでニュース映像を見た。そこには敵の司令部が写し出されていた。彼女はナンツを呼び、「これを破壊すれば、空域は制圧できるわ」と述べる。ナンツたちは空爆を待つが、予定の時刻になっても爆撃音は聞こえて来なかった。前線基地に戻った彼らは、そこが破壊されているのを目にした…。

監督はジョナサン・リーベスマン、脚本はクリストファー・バートリニー、製作はニール・H・モリッツ&オリ・マーマー、製作総指揮はジェフリー・チャーノフ&デヴィッド・グリーンブラット、撮影はルーカス・エトリン、編集はクリスチャン・ワグナー、美術はピーター・ウェナム、衣装デザインはサーニャ・ミルコヴィッチ・ヘイズ、視覚効果監修はエヴァレット・バーレル、音楽はブライアン・タイラー。
出演はアーロン・エッカート、ミシェル・ロドリゲス、ラモン・ロドリゲス、ブリジット・モイナハン、ニーヨ、マイケル・ペーニャ、ルーカス・ティル、コリー・ハードリクト、アデトクンボー・マコーマック、ジム・パラック、ウィル・ロスハー、ニール・ブラウンJr.、ノエル・フィッシャー、テイラー・ハンドリー、ジェームズ・ヒロユキ・リャオ、ジーノ・アンソニー・ペシ、ジョーイ・キング、ブライス・キャス、ジェイディン・グールド他。


『黒の怨(うらみ)』『テキサス・チェーンソー ビギニング』のジョナサン・リーベスマンが監督を務めた作品。
脚本は『将軍の娘/エリザベス・キャンベル』のクリストファー・バートリニー。
ナンツをアーロン・エッカート、サントスをミシェル・ロドリゲス、マルティネスをラモン・ロドリゲス、ミシェルをブリジット・モイナハン、ハリスをニーヨ、リンコンをマイケル・ペーニャ、グレイストンをルーカス・ティル、ロケットをコリー・ハードリクト、ドクをアデトクンボー・マコーマック、カーンズをジム・パラック、イムレイをウィル・ロスハーが演じている。

前半はエイリアンも飛行物体も、ほとんど描かれない。エイリアンはテレビのニュース映像で小さくボンヤリと、あるいは手持ちカメラのブレまくる映像で一瞬だけ見える程度。
30分ぐらい経過したところで、ようやくレニハンを襲うエイリアンがハッキリと写し出される。ただしエイリアンっていうより、なんかロボットっぽいけどね。
飛行物体に関しては、40分ぐらい経過し、救助ヘリが撃墜されるシーンで、ようやくチラッと写る。
出し惜しみなのか何なのか、前半はエイリアンや飛行物体をバンバンと登場させて「SFらしさ」をアピールしようという意識が薄い。
それらが画面に登場する時間が多くなるのは、後半に入ってからだ。

これは壮大なスケールで描くSFアクション映画ではなく、ミリタリー・アクション映画だ。
まあザックリと言っちゃうなら、『ブラックホーク・ダウン』もどきだ。
「現代の最新兵器を使った市街戦を描きたいけど、実在する国を敵として登場させるのは難しい御時世だし、架空の国を設定するのも陳腐になっちゃうから、だったら宇宙人ってことにしちゃえ」
ということで作られたんじゃないかと邪推したくなるような作品である。

で、仮にそういう事情があったとしても、それは別に構わない。この映画の問題点は、そこにあるわけじゃない。
この映画の致命的な欠陥は、「敵が宇宙人である意味が全く無い」ってところにある。
見た目が異形ってだけで、やってることは人間の兵隊と何ら変わらないのだ。
サイズは人間と大して変わらないし、市街戦と空爆で攻めて来る。
エイリアンらしい武器とか、エイリアンらしい攻撃方法とか、「人間とは大きく異なる特徴」ってのがこれっぽっちも無いのだ。

敵は普通に市街で待ち伏せし、銃火器で攻撃して来る。その威力も、一応は人間の武器より強い設定らしいけど、そんなに圧倒的な差があるようには見えない。
だから、仮に敵が「どこかの国の軍隊」であっても、全く同じ描写になるんだよね。
なのでナンツたちも、人間を相手にした時と異なる戦い方をする必要性が全く無い。
監督は「戦争映画のスタイルでエイリアンによる侵略を描く」ってのを意識したらしいけど、敵がエイリアンである意味を欠いたら本末転倒でしょ。

一応は最初に1人ずつのキャラクター紹介があるんだけど、なんせ全員がお揃いの軍服を着てしまうので、誰が誰だか見分けを付けるのは難しい。
ただし、これはたぶん「日本人だから」ってのが大きなハンデになっていて、アメリカ人だったら何の問題も無く見分けが付くんだろうと思う。
それは「大抵のアメリカ人が日本人を見たら、みんな似たような顔に見える」ってのと同じだ。
それと、日本に比べれば北米の方が出演者の認知度も高いから、「知っている俳優」ってことで見分けを付けることも出来るし。

ただ、小隊がロサンゼルスの市街に出た後も、ほぼ休みなく敵との交戦状態が続くので、それぞれの個性を発揮するような余裕は、あまり与えられていない。
だから、最初に描いたキャラクター設定も、なかなかドラマの中で有効活用することが出来ていない。ナンツに対して激しい敵対心を見せていたロケットも、いざ戦闘が始まったらゴチャゴチャ言っている場合じゃないので、素直に従っているし。
終盤に入り、自分のキャラ設定を思い出したかのように、「もう民間人は死なせない」と口にしたナンツに「では兵士は?我々は消耗品ですか」と食って掛かる。
しかしナンツが自分の気持ちを語り、前回の作戦で死んだ部下たちの名前と階級と識別番号を暗唱すると、あっさりと受け入れる。
反抗的だったのは、わずか3分程度だ。

戦いの中で兵士が何人か犠牲になるのだが、どんな奴が死んだのか良く分からない。
救助ヘリが撃墜された時にはグレイストン、ゲレロ、レニハン、シモンズが死んだらしいけど、そこにドラマが全く付随していないので、そいつらが死んでも心に響くモノは何も無い。「中身の見えなかった奴が、いきなり死んだ」というだけなのでね。
その後も高速道路の戦闘でモトーラやスタヴローが死ぬが、やはり感情はピクリとも動かない。
死ぬシーンでドラマを盛り上げるための演出があるのは、マルティネスの自己犠牲ぐらいだろう。
ひょっとすると、その辺りは「リアルな戦争では映画のようにドラマティックな死なんて無い」ということを示しているのだろうか。

前述のように、敵の武器は海兵隊が太刀打ちできないほど圧倒的な破壊力を持っているわけではない。エイリアン自体の身体能力やパワーも、普通の攻撃では歯が立たないほど凄いわけじゃない。
人間よりは強いけど、海兵隊の武器で普通に倒すことは出来る。
また、数で圧倒して来るわけでもない。むしろ海兵隊の方が多いんじゃないか。
何が言いたいかっていうと、パワーバランスが悪いのだ。
最初は「圧倒的な攻撃力を持つ敵」として登場したはずのエイリアンが、話が進むにつれて、「こいつら、意外に弱くねえか」という印象に変わっていく。
ロケットランチャーで司令部が破壊できるぐらいだし。

しかも武器や身体能力で海兵隊を圧倒できていないだけでなく、オツムの方もイマイチだ。
エイリアンは強力な破壊兵器を持っており、飛行物体からの攻撃だけで地球を制圧することも出来るはずなのに、なぜか地上に降りて来る。「海兵隊よりちょっと強いだけのバカな奴ら」ってことなんだよな。
母星から地球まで大勢&驚異的なスピードで移動できるだけの科学力を持っているのに、軍事に関しては頭が悪いってことなのか。
とにかく、海兵隊にとって都合の良すぎる設定になっているのだ。

なぜエイリアンがわざわざ地上に降りるという愚かな行動を取るのかというと、その理由は簡単で、監督が市街戦を描きたいからである。
エイリアンの都合ではなく、製作サイドの都合だ。
もちろん、どんな映画だって登場人物は監督や脚本家の都合に応じて動かされているわけだが、それが露骨に見えちゃったらダメでしょ。
それを見えなくするには、「そういう行動を登場人物が取る理由(もちろん観客が納得できる理由)」が必要なんだけど、この映画には用意されていないのだ。

この手の映画では、メインとなる複数のキャラクターを登場させる場合、バラエティー豊かな顔触れにしておくのがセオリーだ。
主人公が軍人であれば、他には女子学生であったり、主婦であったり、メカに詳しいオタク青年であったり、神父であったりと、そんな具合にね。
ところが本作品では、複数のキャラクターを全て「海兵隊の一個小隊」に中に収めてしまう。
だから、大まかに言えば「みんな一緒」ということになってしまうのだ。

民間人も登場するが、それは「救助される人々」に過ぎず、あくまでもメインはナンツの所属する一個小隊だ。
様々な立場、様々な職業、様々な考えを持った連中で集団を構成した方が、物語を盛り上げるには絶対に好都合だ。
にも関わらず、どうして軍人ばかりのグループにしたのかというと、それは本作品がアメリカ海兵隊のプロパガンダ映画だからだ。
「海兵隊は強い、海兵隊は正義、アメリカ万歳」というメッセージを声高に訴えるのが、この映画の目的なのである。

敵が何者か、地球を攻撃する目的は何なのか、そういうことについては掘り下げない。
詳しいことは良く分からない状態で、マルティネスが隊員たちに「我々は国のため、家族や故郷のために戦うのだ。海兵隊の力を見せろ」と熱く語って出撃する。
リンコンがヘクターを連れて挨拶に行くと、ナンツはヘクターに「軍は誰も見捨てないよ」と告げる。
「息子にも何か手伝えることがあれば何でも言って下さい」とリンコンが言うと、ナンツはヘクターに「何かあったら言うよ」と告げて軍隊式に敬礼する。
マルティネスはC4爆弾で死ぬ時、無線に向かって「海兵隊第5連隊第2大隊E中隊、万歳!」と叫んで起爆スイッチを押す。

極め付けは、重症を負っていたリンコンが死亡し、ヘクターが泣き出した時にナンツが取った行動だ。
ナンツは「残念だよ、辛いよな」とヘクターを慰めて抱き締めた後、「パパは君を愛していた。いいか、勇気を出して部隊の一員になってくれ。みんなを勇気付けるんだ」と言い出す。
「なぜ?」と訊かれたナンツは、「海兵隊員は決して屈しない」と告げ、ヘクターにも復唱させる。
どういうことなのか、ワケが分からん。
なんじゃい、その励まし方は。

飛行物体を単独行動で倒したナンツに対して、マルティネスが「ジョン・ウェインだな」と告げるシーンがある。
そのセリフは、「西部劇のヒーロー役」としてのジョン・ウェインを意味している。
そこで彼の名前が出るってのが、「いかにもだな」と感じる。
と言うのも、ジョン・ウェインはバリバリのタカ派であり、ベトナム戦争におけるアメリカの介入を全面的に肯定した『グリーンベレー』という米軍プロパガンダ映画も製作している人なのだ。

(観賞日:2013年9月2日)


2011年度 HIHOはくさいアワード:3位

 

*ポンコツ映画愛護協会