『スパイダー』:2001、アメリカ

ワシントン警察の犯罪心理捜査官アレックス・クロスは、相棒トレイシーと共に連続殺人犯を追っていた。トレイシーは囮捜査官として犯人の車に同乗し、アレックスは仲間と共に追跡した。犯人にトレイシーの素性がバレたため、アレックス達は慌てて逮捕に踏み切ろうとする。しかし犯人の車が事故を起こし、トレイシーは命を落とした。
8ヵ月後、ワシントンDCのセント・カテドラル小学校。そこにはロシア大統領の息子ドミトリやローズ上院議員の娘メーガンが通っており、シークレット・サービスのジェジー・フラナガンが責任者として学校警備を仕切っている。ドミトリとメーガンはインターネットを使った授業中、教師ゲイリー・ソンジの目を盗んでメール交換をする。
ソンジはメーガンを部屋に呼び、注射を打って眠らせた。同僚教師エイミーが現れたため、ソンジは彼女を絞殺した。ジェジー達が異変に気付いてメーガンを探すが、ソンジは彼女を連れて逃亡する。ソンジはアレックスに電話を掛け、郵便受けに贈り物があると告げた。アレックスが郵便受けを探すと、そこにはメーガンの靴が片方入っていた。
アレックスはローズ家に行き、捜査に当たっているFBIのクレイグ特別捜査官と顔を合わせた。捜査の指揮を執るマッカーサー捜査官に面会したアレックスは、メーガンの両親に引き合わせてもらう。マッカーサーは身代金目的の誘拐だと考えていたが、アレックスはソンジが別の目的を持っており、時間稼ぎをしているのだと認識していた。
アレックスはジェジーから相棒にしてほしいと強く頼まれ、承諾した。小学校に出向いたアレックスは、メーガンが画像で暗号化したメッセージをやり取りしていたこと、ソンジが彼女のコンピュータに監視ウイルスを入れていたことを知る。アレックスは警備システムのスーパーバイザーを務めるディヴァイン捜査官に話を聞くが、彼はソンジと一度も話したことが無いという。
アレックスはリンドバーグの写真が小学校から無くなっていることに気付き、それを使ってソンジがゲームを仕掛けていると察知した。ソンジの自宅を突き止めたアレックスは、彼がリンドバーグの息子の誘拐事件を模倣していることに気付いた。一方、メーガンは監禁されているソンジのヨットで火災を起こして逃亡を図るが、失敗に終わった。
アレックスはジェジーから「なぜメーガンなの?」と質問され、同様の疑問を抱く。アレックスはソンジの目的がドミトリではないかと考え、ジェジーと共に張り込みをする。ソンジはドミトリを誘拐しようとするが、アレックスとジェジーに阻止される。ソンジはヨットに戻るが、そこにメーガンの姿は無かった…。

監督はリー・タマホリ、原作はジェームズ・パターソン、脚本はマーク・モス、製作はデヴィッド・ブラウン&ジョー・ワイザン、製作総指揮はモーガン・フリーマン&マーティー・ホーンスタイン、撮影はマシュー・F・レオネッティー、編集はニール・トラヴィス、美術はアイダ・ランドム、衣装はサーニャ・ミルコヴィッチ、音楽はジェリー・ゴールドスミス。
出演はモーガン・フリーマン、モニカ・ポッター、マイケル・ウィンコット、ペネロープ・アン・ミラー、ディラン・ベイカー、マイケル・モリアーティー、ミカ・ブーレム、ジェイ・O・サンダース、ビリー・バーク、アントン・イェルキン、キンバリー・ホーソーン、アンナ・マリア・ホースフォード、スコット・ヘインドル、クリストファー・シャイアー、ジル・ティード、イアン・マーシュ他。


アレックス・クロスが活躍するジェームズ・パターソンの小説シリーズの1つ『多重人格殺人者』を基にした作品。
同シリーズの『キス・ザ・ガールズ』が1997年に映画化されており(邦題は『コレクター』)、その続編ということになる。そのため、ビデオでは『スパイダー/コレクター2』とサブタイトルが付く。
ただし、原作では『多重人格殺人者』がシリーズ第1作である。

監督は『ザ・ワイルド』のリー・タマホリ。マーク・モスは、これが初脚本。
「続編はやらない」という主義を変えてまで2度目のアレックス役を演じるモーガン・フリーマンが、今回は製作総指揮も担当している。
他に、ジェジーをモニカ・ポッター、ソンジをマイケル・ウィンコット、ローズの両親をマイケル・モリアーティーとペネロープ・アン・ミラー、マッカーサーをディラン・ベイカー、メーガンをミカ・ブーレム、クレイグをジェイ・O・サンダース、ディヴァインをビリー・バークが演じている。

プロローグとして、トレイシーが車ごと転落死するシーンを持って来ている。最初に派手な見せ場を用意して観客の目を惹き付けようとしたのかもしれないが、そのハッタリは大失敗していると言い切っていいだろう。
ハッタリそのものは否定しないが、やるのであれば、もっとキッチリとやるべきだ。チープなCGでは完全に逆効果で、観客の気持ちが萎えてしまうぞ。
というか、アレックスが相棒を死なせた心の傷ってのは、本編で全く活かされてないし、要らないんじゃないの。

ソンジは2年前から教師として変装までして学校に潜入し、綿密に計画を進めていていたという設定だ。で、拉致のシーンは、皆に分かる形でメーガンを部屋に呼び出し、同僚教師に発見されたので絞殺し、メーガンを学校から連れ出すというかなりリスキーと思えるモノ。
2年間の集大成が、それかよ。
シークレット・サービスが見逃してくれなかったら、簡単に捕まってるよな。
その後も、ソンジは夜中にライトを点灯させずにヨットを走らせていて規則違反で連行されそうになったり、その役人に素顔をさらしていたりと、隙だらけの犯罪者だ。アレックスにゲームを仕掛ける「恐るべき挑戦者」としての凄みは、全く無い。
かなり初期の段階から、ソンジは大したことが無い人物だということを露呈してしまっている。

メーガンはとてもオツムのキレる少女で、ヨットで火災を起こして逃亡を図っている。しかし、そういう形でのスリルの起こし方は、なんか違う気がするぞ。それはアレックスじゃなくてソンジがピンチに陥る形でのスリルだもんな。前述の規則違反で連行されるシーン
といい、前半でソンジ側のスリルが2つも続くってのは、どうなのよ。
アレックス側にスリルが無いのでソンジ側で作っておこうということなのかもしれないが、主人公が犯人の底知れなさに焦ったり、凶悪さに恐怖したりということが無い一方で、主人公の関与しない所で犯人の計画にどんどんボロが出てくるってのは、サスペンスとしては厳しいモノがあるなあ。
しかも、犯人のポカが多いわけだし。

後半に入ると、ソンジ以外に別の犯人がいることが明らかになる。そして誘拐事件は、ソンジの手を離れてしまう。
なるほど、ソンジは単なる噛ませ犬だから、前半から情けない姿を見せていたんだな。納得だね。
って納得できるかい。
真犯人が誘拐事件を利用するにしても、ソンジはソンジで恐るべき知能犯にしておいた方が良かったんじゃないのかねえ。
そんで真犯人がメーガンを横取りした後は、なぜソンジが事件を起こしたのか、なぜアレックスを巻き込んだのか、なぜメーガンを誘拐した後にドミトリを狙ったのか、など、ソンジに冠する不可解な点が完全にポーンと放り出されているし。
リンドバーグ事件の模倣だということも、無意味になってるよな。マザー・グースになぞらえた誘拐事件のはずなんだけど、全く関係が無いよな。

メーガンがソンジの手を離れた後には、「真犯人が電話でアレックスに指示を出し、タイムリミット以内に次々と場所を移動させる」という展開でサスペンスフルなシーンを作りに行っている。この辺りは、『ダーティハリー』やら『ダイ・ハード3』やら邦画『誘拐』やらTVシリーズ『特捜最前線』やらで使い回されてきたパターンだね。
終盤の展開は、意外なドンデン返しと言うよりは唐突でムチャなモノ。別の意味で謎だらけ、ハッキリ言って不可解な点が多すぎる。
(完全ネタバレだが)犯人はジェジーとディヴァインなのだが、なぜジェジーたちがソンジの計画を事前に知っていたのか、どうやってソンジのヨットからメーガンを奪ったのかは、説明が無い。さらに、どのようにしてアレックスがジェジーたちの犯行を察知したのかも、良く分からない。
アレックスがジェジーのパスワードを「aces&eights」と知るのは、彼女の「ポーカーで銃を手に入れたことが、父に関する唯一の思い出」という言葉を思い出したからだが、それもムチャな感じがするなあ。

クライマックス、メーガンが迎えに来たジェジーを怪しいと睨んで扉を開けないのも、あまりに利口すぎるよな。そこは普通に「信用して扉を開けたらメーガンに殺されそうになるが、アレックスが間一髪で駆け付ける」という形でいいんじゃないの。
アレックスの行動力が乏しい分、メーガンに重荷を背負わせすぎてる感じがするぞ。
ただ、ここまで文句ばかり付けてきたけど、モーガン・フリーマンの存在感だけは充分すぎるほどあるんだよなあ。
そこだけで何とか持ち堪えているようなモノだけど。

 

*ポンコツ映画愛護協会