『グランパ・ウォーズ おじいちゃんと僕の宣戦布告』:2020、アメリカ

ガーフィールド中学に入学したピーター・デッカーは、最悪の1年になることを覚悟した。校舎に入った途端、彼は上級生に目を付けられ、リュックをゴミ箱に捨てられた。ピーターは友人のビリー、スティーヴ、エマに、「去年は最上級生で、僕らが学校を支配してた。今年はやられる側だぞ」と話す。スティーヴは「最悪なのは僕だ」と言い、姉のリサから拷問を受けていると語る。ピーターは「僕は爺ちゃんに部屋を取られた」と言い、祖父のエドが万引きをしてからだと告げた。
エドはスーパーマーケットへ買い物に出掛けた時、顔馴染みの店員であるマリアがいないことに気付いた。店長はマリアのことを問われ、セルフレジが導入されて辞めたと答えた。セルフレジが上手く使えなかったエドは苛立ち、清算をせずに店を出て行く。店長が「止まってください」」と声を掛けると、エドは買い物袋を振り回して殴り付けようとする。空振りした彼が転倒すると、店長は手を差し伸べようとする。しかしエドは蹴りを浴びせて「失せろ」と罵り、周囲にいた老人たちが店長を攻撃した。
エドの家を娘のサリーが訪れ、免許を失効しているのに運転したことに気付いた。エドは全く反省の態度を示さず、「更新を忘れただけだ。再試験を受けるなど御免だが、車が無いと死ぬ」と主張した。サリーが「2時間掛けて様子を見に来るなんて、もう無理よ」と施設への入居を勧めると、エドは「俺は自分が建てた家で死ぬ」と拒否した。サリーが「だったら同居は?」と提案すると、彼は「嫌気が差して終わるだけだ」と語る。サリーは「私だってママが恋しい。一緒に偲びましょう」と言い、エドを説得した。
サリーは夫のアーサー、子供のミア&ピーター&ジェニファーの5人で暮らしていた。サリーとアーサーは、ピーターの部屋をエドに提供することにした。屋根裏部屋に移るよう告げられたピーターが反発すると、サリーはミアとジェニファーが1つの部屋を使っていることを話す。エドが来ると彼を慕うジェニファーは大喜びし、ミアも歓迎した。エドはアーサーのことを、「アーティー」と呼んだ。ピーターは本心を隠して笑顔で挨拶するが、部屋を奪われた恨みが言葉の端々に込められていた。
屋根裏部屋に移ったピーターは、コウモリやネズミに生活を邪魔されて苛立った。彼は「24時間以内に部屋を返還しなければ報いを受ける。秘密の戦士より」と手紙を書き、エドの部屋に入れた。エドは手紙を読むが、無視を決め込んだ。翌朝、エドは友人のジェリーから遊びに来るよう電話で誘われ、「行きたいが出られない」と嘘をついて断ろうとする。しかしサリーが勝手に「行けるわ」と約束し、自分が車で送って行くことを告げた。
エドがジェリーの家を訪れると、彼はミニ四駆のサーキットや電動スケボーなど様々な遊び道具を部屋に置いていた。ジェリーは友人のダニーをエドに紹介し、3人で散歩に出掛けた。エドがピーターの手紙について話すと、ジェリーとダニーは攻撃するべきだと告げる。エドは「ほんの終わりだ。これで終わりさ」と軽く言うが、終わりではなかった。ピーターは夜中にラジコンをエドの部屋へ向かわせると、大音量で音楽を流して睡眠を妨害した。エドはピーターの部屋へ乗り込んで説教し、「もう戦争は終わりだ」と通告した。
翌日、ピーターはエドが大事にしているビー玉を入れている瓶に細工を施し、棚に貼り付けた。何も知らすにエドが持ち上げようとすると瓶は割れてしまい、大量のビー玉を失う羽目になった。ピーターが「ママに部屋を交換したいと言えば終わるよ」と言うと、エドは「本物の戦争はゲームとは違うぞ」と告げた。彼は「家族を巻き込まず、口外しない」というルールを設けてピーターに守るよう約束させ、戦争を始めることにした。
ピーターはエドのレコードプレーヤーに細工を施して聴けなくした後、髭剃りのクリームを泡状シール剤に入れ替えた。彼はコーヒーに辛いソースを入れるが、それはエドではなくサリーが飲んでしまった。エドは作文の中身を入れ替え、学校で発表したピーターは笑い者になった。サリーが帰宅すると、ミアが恋人のラッセルを連れ込んでいた。彼女はラッセルを帰らせ、ミアを注意した。エドは屋根裏部屋に侵入し、机や椅子、ベッドのネジを外して壊れるように細工した。さらに彼は、ピーターのスニーカーに落書きした。
エドは家電量販店へ行き、店員のダイアンからドローンを購入した。夜、ミアは友人のスカイラーと勉強すると言って外出するが、サリーはラッセルと会うのだと確信して苛立った。エドが「彼氏のことで怒るな。お前の時は2年も続いた。家では俺と全く話さなかった」と語ると、サリーは当時の態度を詫びた。エドが「間違ってたのは俺だ。俺が彼をどう思っても、お前が良ければいい」と言い、当時の彼氏だったアーサーは「その言葉はありがたいよ」と口にした。しかしエドが「仕事の話は別だ。アーティーには悪いが、夢を捨てて甘んじた人間は幸せになれない」と言うので、アーサーは腹を立てて反論した。
エドはジェニファーに操縦方法を教えてもらい、ドローンでピーターに嫌がらせしようとする。しかし操縦を誤り、サリーの後頭部に激突させてしまった。夜、ピーターはエドの部屋に、大蛇を放り込んだ。さらに彼は、クッキーに歯磨き粉を挟んで瓶に戻した。アーサーは何も知らずにクッキーを食べ、すぐに吐き出した。エドは大蛇に気付いて窓から脱出し、アーサーに見られて庭に落下した。アーサーから話を聞いたサリーは、エドに救急ボタンを持たせた。
大蛇は車に入り込み、サリーは何も気付かずに運転する。途中で大蛇が這い出して来たので、サリーは慌てて外へ放り出した。すると大蛇は、車の隣にいた白バイ警官の体に絡み付いた。ピーターが話し合いを申し入れると、エドはジェニファーを同席させて和平交渉に入ろうとする。しかしエドがジェニファーにクッキーを与えて味方に付けていると知ったピーターは、怒って「交渉決裂だ」と立ち去った。エドは彼に「戦闘を終わらせないと」と言い、最終決戦で決めたらどうだと提案した。
エドはピーターに、何でも好きな勝負を選ぶよう告げた。4人1組で女性を1人入れるよう言われたエドは、ダイアンを誘った。ピーターはビリー&スティーヴ&エマとチームを組み、エドは&ジェリー&ダニー&ダイアンと組んだ。ピータが対決に選んだのは、トランポリン施設でのドッジボールだった。1回戦はピーターたちが圧勝し、2回戦はエドたちが知恵を使って勝利した。3回戦はエドとピーターが残り、試合は同点で終了した。
翌朝、ピーターはエドが眠っている間に救急ボタンを押し、素知らぬ顔で学校へ向かった。エドは駆け付けた救急隊員に包囲され、病院へ搬送された。ピーターが授業を終えて下校しようとすると、エドが運転手付きの車で待ち受けていた。彼はピーターをクリア湖へ連れて行き、ボートで一緒に釣りをした。2人は魚を釣り上げて興奮するが、カヌーの男性から「ここでの釣りは違法行為だ」と言われる。そこへ監視員が近付いて来たので、エドとピーターは魚を捨てて逃亡した。
エドは自分が建てた家へピーターを案内し、「ここ何年も、気分が落ち込んだ時に見に来る。人々が生活している様子を見ると、気分が良くなる」と話す。さらに彼は「建築士は建てた家に、見えないサインを残す」と言い、自分は妻との写真を暖炉の壁に忍ばせたと語った。帰宅したエドが部屋に入ろうとすると、ピーターが細工しておいたドアが外れて転倒した。翌日、エドが登校すると、いつもの上級生が昼食の時間に嫌がらせをしようとする。上級生が鞄を開けると、エドの仕込んでおいたソースが爆発した。ソースを顔に浴びた上級生は、ピーターを殴り付けた。エドはジェリーに頼まれ、彼の冒険仲間の葬儀に参列した。するとピーターが細工しておいたスマホから場違いな音楽が流れ、エドは参列者から白い目で見られた…。

監督はティム・ヒル、原作はロバート・キンメル・スミス、脚本はトム・J・アッスル&マット・エンバー、製作はマーヴィン・ピアート&フィリップ・グラッサー&ローザ・モリス・ピアート、製作総指揮はソウル・P・“ソニー”・シュワルツ&マット・サロウェイ&クリスティーナ・パパージカ&エリザベス・クリー&ジミー・ソマーズ&ランドール・エメット&ジョージ・ファーラ&ジョー・ゲルシオン&テッド・フォックス&デヴィッド・ルボッタ&マイルズ・ネステル&クレイグ・チャップマン&ウェイン・マーク・ゴッドフレイ&ロバート・ジョーンズ&ジェーン・ローゼンタール&ベリー・ウェルシュ&トレ・ピアート、共同製作はマンディー・スペンサー=フィリップス&トム・プリンス&アラン・ステインマン、共同製作総指揮はジョン・ケネディー・フィッツジェラルド&ブライアント・パイク、製作協力はヴェロニカ・アリシノ&カミッド・モスビー&サモーン・ノースワージー&フランチェスカ・ダットン&アルノー・ラニック&デヴィッド・ハドリー&アラステア・バーリンガム&チャーリー・ドンベク、撮影はグレッグ・ガーディナー、美術はジョン・コリンズ、編集はクレイグ・ハーリング&ピーター・S・エリオット、衣装はクリストファー・ハーガドン、音楽はアーロン・ジグマン、音楽監修はローレン・マリー・ミクス。
主演はロバート・デ・ニーロ、共演はユマ・サーマン、ロブ・リグル、クリストファー・ウォーケン、オークス・フェグリー、ローラ・マラノ、チーチ・マリン、ジェーン・シーモア、ジュリオセザール・チャヴェス、アイザック・クラグテン、T・J・マクギボン、ポピー・ギャグノン、リディア・スティスリンガー、ジョー・ゲルチオン、コリン・フォード、フェイゾン・ラヴ、ラターニャ・アルダ、ドリュー・シェイド、ベッツィー・ランディン、ヴェロニカ・アリシノ、オーウェン・ストーン、ジェームズ・マーティン・ケリー、レオン・ラマー、ジョー・フォーリー、ローレン・デニス、キャメロン・ウォーゼン他。


ロバート・キンメル・スミスの児童小説『ぼくはおじいちゃんと戦争した』(旧題は『おじいちゃんとの戦争』)を基にした作品。
監督は『アルビン 歌うシマリス3兄弟』『イースターラビットのキャンディ工場』のティム・ヒル。
脚本は『ゲット スマート』『メアリーと秘密の王国』のトム・J・アッスル&マット・エンバー。
エドをロバート・デ・ニーロ、サリーをユマ・サーマン、アーサーをロブ・リグル、ジェリーをクリストファー・ウォーケン、ピーターをオークス・フェグリー、ミアをローラ・マラノ、ダニーをチーチ・マリン、ダイアンをジェーン・シーモアが演じている。

粗筋を読んで分かるだろうが、ジャンルとしてはコメディー映画だ。しかし残念ながら、のっけから全く笑えない。
セルフレジのシーンで笑いを取る方法は色々とありそうだが、ただ「エドが機械を上手く使えず苛立つ」というだけに終わっている。
しかも、彼は痴呆で良く分からないまま店を出るとか、清算したと思い込んで店を出るとか、そういうことではない。「腹が立ったので金を払わずに店を出る」というだけなのだ。
完全な故意犯であり、それの何をどう笑えばいいのか良く分からない。

しかも彼は、自分が悪いことをしているのに、店長が声を掛けるといきなり暴力を振るおうとする。転倒して店長が助けようとすると、無理を浴びせて「失せろ」と怒鳴り付ける。
もうさ、ただのドイヒーで厄介なだけのクソジジイじゃねえか。
で、そこに大勢の老人が来て店長を非難し、攻撃を仕掛けるんだよね。
でも、店長がエドを馬鹿にするような態度を取ったとか、高慢な性格が滲み出ているとか、そういうわけではない。普通に仕事をしているだけでなく、エドを心配して助けようとしたぐらいなのだ。
それなのに一方的に責められて攻撃を浴びるんだから、それの何をどう笑えばいいんだか。どこにも笑いのネタは落ちていないぞ。

ピーターがエドに部屋を譲れと言われて嫌がるのは、聞き分けの無いガキンチョのワガママだとは全く思わない。
急に自分の部屋を奪われ、不用品置き場になっていた屋根裏部屋に移るよう命じられたら、そりゃあ腹を立てて反発するのは当然だろう。
他に選択肢が無いのは分かるが、両親にしろエドにしろ、ピーターへの思いやりに欠けているんだよね。「部屋を譲るのは当然」という感じなのだ。
自分たちは何も失わず、ピーターだけが大事な物を失うんだから、そこの気遣いは考えた方がいいでしょ。

ピーターの学校生活を描くシーンが何度か挿入されており、3人の友人との関係や、上級生に目を付けられて嫌がらせを受ける様子が描写される。だけど、それが「エドとピーターの戦争」というメインの物語と上手く絡み合っていない。
サリーがミアとラッセルの関係に納得せず、エドが彼女とアーサーの関係に重ねて諭すシーンなんかもあるが、そういう要素も「エドとピーターの戦争」というメインの物語と上手く絡み合っていない。
今もエドがアーサーを認めていないとか、そういうのも上手く消化できていない。エドとダイアンの関係も同様。
結局、どの要素も上手く扱い切れず適当に投げ出しているから、「だったらエドとピーターの幼稚な戦争に集中すれば良かったんじゃないか」と言いたくなる。

エドとピーターの戦争に、サリーやアーサーが巻き込まれることもある。
でも、こういう要素ですら、上手く扱えているとは全く感じない。タイミングが悪いし、そんなに笑いを取れているわけでもないし。
上手く使えば笑いのバリエーションを増やせていたかもしれないが、「無くても良くねえか」と思うほどだ。
「家族に戦争がバレそうになって、それを誤魔化す時だけはエドとピーターが結託する」みたいな使い方も、1つの方法ではあったと思うけどね。

例えばアーサーがクッキーを食べてしまうシーンなんかは、どう考えてもタイミングが悪い。
なぜ「ピーターがエドの部屋に大蛇を放り込む」→「クッキーに細工を施す」→「エドが大蛇を見つける」→「アーサーがクッキーを食べて吐き出す」という順番なのか。
そこは大蛇のイタズラとクッキーのイタズラを、完全に分けて描くべきでしょ。
大蛇が車に入り込み、サリーが見つけて慌てるってのも、「大蛇のイタズラは翌朝まで引っ張る要素じゃないわ。その日の内に片付けるべきだわ」と言いたくなる。

戦争が始まると、「どっちもどっち」という感じになる。エドにしろピーターにしろ、やり過ぎなので全く笑えない。
宝物を奪ったり大事な物を破壊したりするので、イタズラというレベルを遥かに逸脱している。取り返しの付かないことをやっているんだよね。
あと、やるならやるで、逆に徹底して戦うべきだろうに、ピーターの攻撃に対してエドの手数が少ない。なんか手加減しているようにも見えてしまう。
中途半端に手心を加えるぐらいなら、最初から戦争とか言い出すなよ。

そもそも、エドがそこまでムキになって喧嘩を買う必要があるのかと。これが分からず屋の頑固ジジイというキャラならともかく、そういうことでもないからね。サリーへの反発は見せるけど、ジェニファーのことは甘やかしているし。
決して偏屈ジジイというわけではないし、サリーに「ピーターが部屋のことで不満を抱いている」ってことぐらい、言ってもいいんじゃないかと。
そもそも彼は自分の家から離れたくないと思っていたんだから、それを理由にして「だから家に戻る」と言い出すぐらいでも良さそうなモノだし。
最後になってエドが「戦いが楽しかった。お祖母ちゃんのことを忘れられた」と言い出すけど、そんなのは全く表現できていなかったし。

救急ボタンの件で酷い目に遭った時も、学校まで迎えに来るから反撃するのかと思ったら、ただ一緒に釣りをして楽しむだけ。
それはエドだけに限らずピーターにしても、そこの遊びは普通に楽しんでいるんだよね。ずっと敵対しているわけでもないのよ。
どっちの立ち位置も、ものすごく半端に感じてしまう。
ベタかもしれないけど、「最初は激しく敵対していたが、互いの立場や考えを知って少しずつ変化していく」みたいな話でも良かったんじゃないかと。

ジェニファーのクリスマスパーティーのために休戦協定を結んだにも関わらず、ピーターはエドを攻撃するための仕掛けを用意している。それだけじゃなく、その場で思い付いた嫌がらせもする。
でも、そこはマジで休戦協定を守るべきだろ。その協定を平気で破るのは、ただ不愉快なだけで何も笑えないぞ。
そのパーティーでの騒動の後、エドが家を出て行くとピーターが謝罪して戻るきてほしいと頼むのは予定調和の結末だけど、そこに行き着く過程が雑すぎて乗れないわ。
ピーターが本当にエドへの愛を感じて行動しているわけじゃなくて、単に一時的な罪悪感を抱いているだけにしか見えないし。

(観賞日:2023年11月16日)

 

*ポンコツ映画愛護協会