『恋するブロンド・キャスター』:2014、アメリカ

地方局のKZLAでキャスターを務めるメーガンは、動物虐待防止協会からレポートした時に猫に襲われた過去がある。彼女はプロデューサーのダンに付き合ってもらい、大手ネットワーク局のCNB本社を訪れた。メーガンの目的は面接試験を受けることであり、ステップアップのチャンスとしてダンも応援している。面接試験を受けたメーガンは堂々とした態度で自分をアピールし、2週間前に婚約したことに触れた。幹部社員は彼女に、2週間以内に結論を出すと告げる。「私たちが知っておくべき過去は何かあるかね」と質問されたメーガンは、何も無いと答えた。
2週間後。メーガンは本番前の準備中、ダンから「ネットワークの知り合いに探りを入れた。君かウェンディー・チャンに絞られた。今日の内に決まりそうだ」と聞かされた。興奮したメーガンは、親友であるローズからの電話を受けた。「今晩は出掛けるわよ」と言われたメーガンは、キャッチが入ったので切り替えた。すると相手は母で、彼女に服装のアドバイスをした。スタジオへ赴いたメーガンは、最初に交通渋滞のニュースを伝えた。彼女は今週末に10箇所の高速道路が工事で閉鎖されることを語り、レポーターのチョッパー・スティーヴがヘリコプターからの中継でレポートした。
その夜、ローズと親友のデニースがメーガンの家を訪ねると、家財道具がゴッソリと無くなっていた。メーガンは落ち込んでおり、恋人のカイルが愛犬のデイジーを連れて出て行ったことを話した。そこへダンから電話が入り、メーガンはウェンディーが採用されたことを知る。ローズとデニースはメーガンを慰め、男を逆ナンするよう勧める。2人はメーガンをセクシーな服に着替えさせ、クラブヘ連れ出した。クラブに入ったメーガンは酒を煽り、男性グループに誘われて一緒に飲んだ。
トイレへ行こうとしたメーガンは、誤って2階の外にある踊り場へ出てしまう。おまけに床板にヒールが挟まり、抜けなくなってしまった。するとバーテンダーのゴードンが現れ、メーガンに声を掛けた。彼は非常階段を下ろし、冗談を言いながら彼女を助けた。メーガンはローズたちに「先に帰る」とメールを送り、車で帰ろうとする。ゴードンは泥酔している様子を見て「無理だと思うよ」と言い、「君ので家まで送って、タクシーで帰るよ」と提案した。
「まだ仕事があるでしょ」とメーガンが告げると、ゴードンは「今日は終わったし、バーテンダーは本業じゃない。ポストモダン恋愛小説を書いてる」と語った。メーガンはゴードンのアパートへ行き、一緒に酒を飲んで盛り上がった。ゴードンと関係を持ったメーガンは、深夜に目を覚ました。携帯電話が見つからなかったので、彼女はゴードンの固定電話で自宅の留守電メッセージを確認した。するとダンからメッセージが入っており、ウェンディーのヤバい画像が流出して不採用になったことをメーガンは知った。メーガンは第一候補に返り咲き、ネットワークの担当者たちは翌日の生放送を現場で見て最終判断を下すことに決めていた。
事情を知ったメーガンが服を取ろうとすると、嫌いな猫が現れた。彼女はダンボール箱に猫を閉じ込め、服を着た。いつの間にか外に出ていた猫が襲って来たので、メーガンは慌てて逃げ出した。すると車はレッカー移動されており、ゴードンの元へ戻ろうにも部屋の場所が分からなかった。タクシーを見つけた彼女は車の保管場所まで乗せてもらおうとするが、運転手は拳銃を向けて「もう仕事は終わりだ」と冷たく言う。メーガンは3倍の代金を払うと約束し、タクシーに乗せてもらった。 外国人の運転手は行き先を正確に理解しておらず、「タトゥー」というクラブへ案内した。メーガンは「お金が入っているバッグは、車にあるの。だから車がある場所まで行ってほしいの」と説明するが、運転手は納得せずクラブでラップダンスを踊るよう要求した。運転手が拳銃を向けて脅すので、仕方なくメーガンは承知する。しかし運転手が拳銃を下ろして車を出ると、メーガンは隙を見て逃亡した。彼女は通り掛かった車をヒッチハイクしようとするが、売春婦だと誤解された。
メーガンが間違いだと否定すると、車の男は去ってしまう。しかも通り掛かったパトカーのデイヴとウォルターにも売春婦と決め付けられ、「客引きの現場を録画した。今回は警告にしてやる。また見たら刑務所に入れるぞ」と凄まれた。メーガンが説明しようとしても彼らは耳を貸さず、パトカーで去った。その辺りで商売をしている売春婦の面々に睨まれ、メーガンは仕方なく歩き出した。彼女は公衆電話を見つけるが、電話線は切断されていた。
スクリラという麻薬の売人が電話で商売の話をしている現場を目撃したメーガンは、彼に声を掛けて「助けてほしい。電話を借りたいの」と頼む。パトカーの音がすると、スクリラは近くにいた仲間から「サツが来るぞ」と知らされる。スクリラが慌てて逃げ出すと、メーガンが付いて来た。スクリラは追い払おうとするが、メーガンは隠れ家まで付いて来る。隠れ家にいた売人のハルクが怒鳴ると、スクリラが落ち着くよう告げた。
「ただの娼婦だ」とスクリラが言うと、ハルクは「こいつは潜入捜査官だ」と主張する。そこへ売人のプーキーが来て、メーガンがKZLAのキャスターであることをスクリラたちに教えた。プーキーはメーガンに、「アンタはニュースの伝え方がロボットみたいだ。もっと温かみがあってもいいんじゃないか」と助言した。メーガンが事情を説明すると、スクリラは携帯電話を貸した。しかしメーガンが覚えている番号は、実家と自分の携帯、それとカイルの携帯だけだった。
両親と連絡を取りたくないメーガンは、自分の携帯に「スラムにいる。誰か助けて」とメールを送信した。メーガンは助けを求めるため、カイルに電話を掛けた。眠っていたカイルは、苛立って「諦めろ」と告げる。彼が小声だったことから、メーガンは他の女と一緒にいると悟った。メーガンが迎えに来てほしいと頼んでも、カイルは拒否した。スクリラとハルクは憤慨し、カイルを罵った。3人のギャングが乗り込んできて発砲したため、メーガンたちは慌てて身を隠した。
スクリラはメーガンに、裏口から逃げるよう指示した。プーキーはメーガンの後を追い、安全な場所まで案内した。デイヴとウォルターは発砲事件の現場に黄色い服の女がいたと知り、「あの女か」と口にする。無視しようとした2人だが、同僚から上司に報告するよう指示された。プーキーはメーガンに問われた車の保管場所を教え、「これを売れば金になる」とコカインを渡す。メーガンは自分と仲間の名前をニュースで言ってほしいとプーキーに頼まれ、承諾して別れた。
デイヴとウォルターは上司のドライアーから「2つのギャングの抗争は沈静化していた。しかし黄色い服を着た白人の女が現れて、こんな騒ぎが起きた」と言われ、その女を見つけて連行するよう命じられた。メーガンの携帯を見つけたゴードンは、彼女が送信したメールを読んだ。ゴードンはメールのアドレスに電話を掛けるが、「もう彼女はいない。二度と電話するな」と切られてしまった。大通りを歩いていたメーガンは商店主に気付かれ、写真を撮影された。
ゴードンはローズがメーガンに連絡しようとした電話を受け、「どうやら彼女は何かのトラブルに巻き込まれたらしい」と伝える。しかしローズはゴードンが何かしたと決め付け、住所を尋ねて「そこにいなさいよ」と鋭く言い放った。ローズはデニースに電話を入れ、一緒にゴードンの部屋へ向かうことにした。麻薬の売人を見つけたメーガンはコカインを買ってもらおうとするが、スクリラから貰ったことを話すと激怒される。売人が仲間を呼んで痛め付けようとしたので、メーガンは慌てて逃げ出した。
通り掛かったバスに乗り込んだメーガンだが、乗客の婦人に娼婦呼ばわりされて罵られる。代金を払う小銭が無かったため、メーガンは運転手に催涙スプレーを浴びせられてバスから追い出された。水飲み場で目を洗っていたメーガンは、近くの礼拝所から響く歌声を耳にした。礼拝所に入った彼女は、庭に座っていたモシュという男に声を掛けて助けてもらおうとする。モシュは「誘惑する気だな。ここから出て行ってくれ。この場所は女人禁制だ。女性の歌を聴くことさえ禁じられている」と、メーガンに告げた。
メーガンがバス代だけでも貸してほしいと頼むと、モシュは「実は女性の歌声が好きだ」と打ち明け、歌ってくれたら金を渡すと約束する。メーガンが歌うと、モシュは恍惚の表情を浮かべた。そこへ指導者の面々が現れると、モシュは慌てて「彼女が金をくれと言うんです」と釈明する。メーガンは指導者たちに魔女呼ばわりされ、礼拝所から逃げ出した。KZLAにはCNBの幹部たちが訪れ、ダンと挨拶を交わした。メーガンの居場所を問われたダンは、「いつもは来ている時間なんですが、取材に行っているので」と誤魔化した。
公衆電話を見つけたメーガンは、フリーダイヤルでKZLAの視聴者窓口に繋げてもらう。しかしダンに繋げてほしいと頼むと、担当者は個人の番号に掛けるよう促す。メーガンだと言っても信じてもらえず、冷たく電話を切られてしまう。ローズとデニースはゴードンの家に行き、事情の説明を要求した。メーガンの携帯にメールが入ったので、ゴードンは内容を確認した。送り主はダンで、「ネットワークが来てる。早く来ないと大チャンスを逃すぞ」というメッセージだった。ゴードンたちはメーガンを見つけるため、車の鍵に付けられている追跡サービスを利用することにした…。

脚本&監督はスティーヴン・ブリル、製作はシドニー・キンメル&トム・ローゼンバーグ&ゲイリー・ルチェッシ、製作総指揮はエリック・リード&テッド・ギドロウ&ジム・タウバー&ブルース・トール&マット・ベレンソン&ピーター・シュレッセル、撮影はジョナサン・ブラウン、美術はペリー・アンデリン・ブレイク、編集はパトリック・J・ドン・ヴィト、衣装はリンゼイ・アン・マッケイ、音楽はジョン・デブニー。
出演はエリザベス・バンクス、ジェームス・マースデン、ジリアン・ジェイコブズ、サラ・ライト、ケヴィン・ニーロン、イーサン・サプリー、ビル・バー、ローレンス・ギリアードJr.、アルフォンソ・マコーレー、ケン・ダヴィティアン、オリヴァー・ハドソン、ウィリー・ガーソン、ブライアン・カレン、ティグ・ノタロ、ニーシー・ナッシュ、ジェリー・マイナー、リズ・ケアリー、P・J・バーン、ダヴォーン・マクドナルド、エリック・エテバリ、ジェイコブ・ティモシー・マノーン、キャロル・マンセル、エリン・シーガル、クリス・コナー、ブランドン・スコット、イアン・ロバーツ、ダン・キャラハン他。


『リトル・ニッキー』『Mr.ディーズ』のスティーヴン・ブリルが脚本&監督を務めた作品。
メーガンをエリザベス・バンクス、ゴードンをジェームス・マースデン、ローズをジリアン・ジェイコブズ、デニースをサラ・ライト、スティーヴをケヴィン・ニーロン、デイヴをイーサン・ウォルターサプリー、をビル・バー、スクリラをローレンス・ギリアードJr.、プーキーをアルフォンソ・マコーレー、カイルをケン・ダヴィティアン、ダンをオリヴァー・ハドソンが演じている。

映画の冒頭、キャスターが失敗をやらかしたり、トラブルに巻き込まれたりする映像が次々に写し出される。その最後に、メーガンが猫に襲われる映像が用意されている。
ここでオープニングが終了し、本編に入るとメーガンがダンに付き添われて面接試験に赴いている。
この導入部には、大きな問題がある。それは、先にメーガンの失態を見せてしまっていることだ。
そのことが、面接試験のシーンにおいて重要な意味を持っている。

面接試験でメーガンは、自信に満ちた態度で堂々と話す。その様子は、いかにも「有能なキャスター」といった印象だ。最後に「知っておくべき過去は何かあるかね」と質問された彼女は、何も無いと告げる。で、「でも観客は猫に襲われた過去を知っている」という仕掛けになっているわけだ。
でも、それは先に明かしたら効果が薄くなるでしょ。「有能なキャスター」と観客に思わせておいて、「かつて猫に襲われて病院送りになった失態がありまして」という事実を示し、「実は有能じゃない」ってのを明かす流れにした方がいいんじゃないか。
っていうか、幹部社員の尋ねている「知っておくべき過去」ってのは、よからぬスキャンダル関係のことを言っているだけであって、何かヘマをやらかしてしても大して意味は無いんだよね。そんなのは、大抵のキャスターにはあることだから。
つまり、実は先に描こうが後に描こうが、「猫に襲われて病院送りになった」というエピソードは、有効とは言えないのよね。

面接試験の時、メーガンは2週間前に婚約したことを嬉しそうに話す。ローズとデニースが家を訪ねた時、彼女はカイルが出て行ったことを話す。つまり婚約者ってのがカイルで、「君のことが分からない」と別れを告げて去ったわけだ。
さて、粗筋を読んでも、きっと貴方は「どこでカイルは出て来たんだろう」と思ったかもしれない。
なんと、メーガンが「カイルが出て行った」と話す時点で、まだカイルは姿を見せていないのである。
それは誰がどう考えたって、キャラの出し入れを間違えている。
少なくとも別れを告げるシーンで、彼を登場させておくべきでしょ。そのシーンを省略しても、何のメリットも無いぞ。

っていうかさ、2週間前に婚約しておいて、「君のことが分からない」と別れを告げるなんて、よっぽどのことが無いと考えにくいだろ。だったら、カイルのメーガンに対する愛情が急激に冷めるような出来事が、何か無いとダメだろ。
だけど、そんなモノは何も無いのよね。
だったら、ただ「同棲中の恋人」ってだけで済ませておけば良かっただろうに。
そうすりゃ「実は以前からカイルは浮気していて、そっちと一緒になることを決めて」みたいな流れへスムーズに移行できるし。
ただ、どっちにしても、その時点でカイルが登場していないのは、絶対に間違っていると断言できるぞ。

それと、「カイルが出て行ってショックを受けていたら、ネットワークの不採用を知らされて追い打ち」という手順も、あまり上手くないと感じるんだよな。
「何か1つの出来事でショックを受けて、さらに追い打ちが」という手法自体が、間違っているわけではない。ただ、この映画の場合、そこの処理を失敗していると感じる。
まず、カイルとラブラブだったことも、別れを切り出された出来事も描いていないため、メーガンのショックが今一つ伝わらないという問題がある。
それに加えて、「カイルとの別れによるショックが大きくて、不採用のショックが薄まる」という問題もある。
ホントは「ショック倍増」という状態にならなきゃダメなのに、お互いを打ち消し合う形になってんのよね。

それを解決するには、例えば「少し間を置いてメーガンを落ち着かせる」という方法が考えられる。
まずカイルに振られて失意のメーガンを見せて、ローズたちが「ネットワークのキャスターになって見返してやれ」と励ます。ここでメーガンが「そうね」と気丈にカイルを吹っ切ろうとしていたら、ダンからの電話で不採用を知るという流れにするのだ。
ただし、「ウェンディーと2人に絞られた」という状態は半端だ。
そこは「ほぼ確実にメーガンが採用される」という事前情報を流しておかないと、不採用のショックが弱くなってしまうでしょ。

もっと言ってしまうと、「恋人に捨てられる」という手順そのものの必要性に疑問があるんだよね。
それを受けて彼女はクラブへ繰り出し、ゴードンという男と出会って関係を持つ。つまり、新たな恋の始まりを予感させる出来事もあるわけだ。
でもね、この映画って、「泥酔してハメを外してしまったヒロインが、何とか生放送に間に合わせようとするけど色んなトラブルに巻き込まれる」というドタバタ劇であって。それを考えると、「恋人に捨てられて新しい男と出会って」という要素は邪魔なだけなのよ。
恋の相手を出すのはいいけど、それは婚約者だけでいいし、捨てられる手順は要らない。その方向での余計な発展は要らない。
邦題には「恋する」と付いているが、この映画における恋愛要素の重要性は著しく低いのよ。

メーガンがゴードンと寝て翌朝を迎えてからの展開は、どうやら「真っ当に暮らしているように見える面々の方が偏見が酷くて、犯罪に手を染めているギャングの方が遥かに人間味があって優しい」ってのを描きたかったようだ。
しかし、それが痛烈な風刺になっているかというと、そこまでの方向性が明確に見えてくるわけではない。
また、根本的な問題として、コメディーとしての弾けっぷりも足りないのよ。変にエレジー的な匂いが漂ってきちゃうんだけど、そういうのが邪魔なんだよね。
もっと徹底してバカバカしいノリを貫いた方がいい。
中途半端にメーガンが哀れに思えるような描写なんて要らないわ。

(観賞日:2020年1月11日)

 

*ポンコツ映画愛護協会