『君への誓い』:2012、アメリカ&フランス&オーストラリア&イギリス&ドイツ

雪が降り積もる夜、映画館から出て来た新婚夫婦のペイジとレオは、車に乗り込んだ。運転していたレオが一時停止すると、ペイジはカーセックスを持ち掛ける。シートベルトを外したペイジがレオとキスをした直後、後ろからトラックが突っ込んで来た。雪で路面が凍結し、ブレーキを掛けても停止しなかったのだ。2人の乗った車は電柱に激突し、ペイジの体はフロントガラスを突き破って外へ飛び出した。ペイジとレオは救急車で病院に担ぎ込まれた。
4年前、レオとペイジは偶然に出会い、互いに相手のことが気になった。レオはペイジに声を掛け、彼女がシカゴ美術館の付属大学に通っていることを知った。レオが飲みに誘うと、ペイジは笑顔でOKした。そして2人は付き合うようになった。やがてレオは親友たちがいる前で、「一緒に住まないか」とペイジにプロポーズした。2人はシカゴ美術館で親友のジムやリリー、カイル、ジョシュ、ソニアたちに囲まれ、使用許可を取らずに結婚式を挙げた。警備員に見つかったので、ペイジたちは慌てて逃げ出した。
レオは意識を取り戻し、すぐに歩けるようになった。しかしペイジは外傷性脳損傷で意識不明となっていた。ようやく意識を取り戻したペイジは、レオを見て主治医だと勘違いする。レオが「君の夫だ」と告げて触れようとすると、ペイジは拒否反応を示した。レオは主治医のフィッシュマンから「意識が戻っても、記憶に障害が起きるのは良くあることよ」と説明されても、苛立ちを隠せなかった。
ペイジはレオに話し掛け、自分のことを尋ねる。レオは、ペイジがアトリエを持つ彫刻家であること、トリビューン・タワーのロビー用に4作品を制作中であることを教える。だが、ペイジは困惑するばかりだった。翌日、レオが病院へ行くと、ペイジは特別室に移っていた。ペイジの両親が事故を知り、移動させたのだ。ペイジの父ビルと母リタは、「なぜ何週間も連絡しなかったの」とレオを責めた。レオが両親と初対面だと知り、ペイジは「なぜ会っていなかったの?」と当惑の表情を浮かべた。
フィッシュマンが「日常生活に戻った方が回復が早いでしょう」と言うと、ビルとリタは娘を自宅へ連れ帰ろうとする。レオが自分との日常生活に戻るべきだと意見すると、2人は「記憶にある家族と暮らした方がいい」と主張する。ペイジと2人きりになったレオは彼女の質問を受け、「君は何年も家族と話していない」と教える。その理由について問われたレオは、「シカゴで美術大学へ行きたかった君を、親父さんはロースクールへ入れると決めていた」と教える。「私はロースクールの生徒で、ジェレミーと婚約してたわ」と、ペイジは納得できない様子を見せた。
レオは「現時点で最善の方法は、僕らの日常生活に戻ることだ。先生もそう言ってた」と話すが、ペイジは「貴方を知らないのに?」と同意しない。レイク・フォレストの実家へ戻ろうとするペイジに、レオは彼女が自分に話し掛けているボイス・メールを聞かせる。彼は「僕に会う前、君はロースクールを辞めて婚約を解消した。家に帰って、2人で乗り越えよう」とペイジを説得した。ペイジは記憶を取り戻せるかもしれないと考え、レオと一緒に暮らしてみることにした。
レオがペイジを自宅へ連れ帰ると、大勢の仲間たちがサプライズ・パーティーで迎えた。だが、ペイジは誰のことも思い出せず、混乱するばかりだった。みんなが帰った後、ペイジはレオに「私にとって、知らない人と知らない家に住むのは重圧。それに、大勢の人が私の知らない話で泣いたりするのは最悪よ」と苛立ちをぶつける。翌朝、レオはお詫びとして朝食を用意する。ペイジは「私の方こそ。私のことは気にしないで、普段通りに生活して」と言う。仕事を訊かれたレオは、録音スタジオを経営していることを告げる。
「私は平気だから」とペイジが言うので、レオは彼女のキーと携帯電話を置いてスタジオに出掛ける。ペイジは結婚式のビデオを見た後、常連だったカフェに出掛ける。帰り道が分からなくなった彼女は近くの店で電話を借り、リタを呼んで迎えに来てもらった。彼女が帰宅すると、レオが心配して待っていた。彼が「なぜ電話しなかった」と尋ねると、ペイジは「携帯を忘れて。それに番号も分からないし。ママに電話したの。楽しかったわ」と笑顔で話す。
ペイジがリタから夕食に誘われたというので、レオは乗り気ではなかったが、仕方なく同行する。実家に戻ったペイジは、婚約したという姉グウェンや両親と過ごし、とても楽しそうな様子を見せた。夕食の後、グウェンと婚約者のライアンは、ペイジとレオをクラブへ連れて行く。そこにはペイジの高校時代の友人たちが待ち受けていた。再会を喜ぶペイジの前に、ジェレミーが現れた。嬉しそうなペイジとは対照的に、レオは居心地の悪さと苛立ちを感じた。
翌朝、録音スタジオに出掛けたレオは、スタッフであるリリーに愚痴をこぼす。リリーから「彼女はベッドにいる時、何に興奮した?」と問われ、レオは「くすぐる。リラックス効果があるんだ」と答える。するとリリーは、「くすぐってみたら?ダメで元々よ」と提案した。一方、ペイジはジェレミーの仕事場を訪れ、別れた理由を尋ねた。ジェレミーは結婚直前に自分が捨てられたことを明かすが、振られた理由は分からないという。
ジェレミーは「君は変わった。進路のことで悩み、僕との関係で悩み、話し方も着る服も変わった」と話し、グウェンの同級生のローズと1年前から交際していることを明かした。ペイジはジェレミーにキスをして、「5年も絶縁なんて納得できないの」と泣きそうな表情になる。レオが帰宅すると、ペイジは記憶にある写真を時系列順に並べていた。レオがくすぐると、ペイジは嫌がって飛び退いた。
次の日、ペイジがアトリエを見たがるので、レオは案内する。ペイジはレオの説明を聞きながら、自分が制作していた彫刻を眺める。だが、ペイジは道具の使い方さえ分からない。そして2人は、些細なことで言い争いになってしまった。ペイジはグウェンの結婚式を手伝うため、迎えに来たビルと共に帰郷する。フィッシュマンの診察を受けたペイジは、「思い出すことを恐れたら過去の影に悩まされ続ける」とアドバイスされる。
レオはレイク・フォレストへ行き、グウェンとライアンの結婚式1週間前のパーティーに参加する。レオはペイジに「今日が初対面だと思って、デートに付き合ってほしい」と持ち掛け、OKを貰う。レオは彼女を初デートの場所へ連れて行き、楽しい時間を過ごし、そしてキスを交わした。レオは友人たちから時間を掛けてペイジとの関係を作っていくよう忠告されるが、はやる気持ちを抑え切れなかった。一方、ペイジはビルから、ロースクールへの復学を申請したことを告げられる。ペイジは何も聞かされていなかったが、それを拒む気持ちは無かった。
グウェンたちの結婚式に出席したレオは、ビルから「そろそろ私たちに任せてくれ。ペイジと離婚しろ」と要求される。レオは「偽善者め。娘のことを思うなら、なぜ今まで和解しなかった」と彼を厳しく批判した。その後、ジェレミーから挑発的な言葉を告げられたレオは、「彼女から君のことは聞いてた。君といると不安だったそうだ。夜中に目を覚ましてパニックになる」と告げる。するとジェレミーは「それだけか?数日前、僕の気を引こうとしたことは?」と勝ち誇ったような微笑を浮かべる。「彼女は君に未練がある。だが、彼女は成長した。また去って行くぞ」とレオが言うと、ジェレミーは「ベッドで聞いてみるよ」と口にする。カッとなったレオは、ジェレミーを殴り倒す。レオはその様子を見ていたペイジと話し、別れることを決意した…。

監督はマイケル・スーシー、原案はスチュアート・センダー、脚本はアビー・コーン&マーク・シルヴァースタイン&ジェイソン・ケイティムズ、製作はジョナサン・グリックマン&ポール・タウブリーブ&ゲイリー・バーバー&ロジャー・バーンバウム、共同製作はキャシディー・ラング&レベッカ・ラッド、製作総指揮はJ・マイルズ・デイル&オースティン・ハースト&スーザン・クーパー、撮影はロジェ・ストファーズ、美術はカリーナ・イワノフ、衣装はアレックス・カヴァナー、編集はナンシー・リチャードソン&メリッサ・ケント、音楽はレイチェル・ポートマン&マイケル・ブルック、音楽監修はランドール・ポスタ&ステファニー・ディアス=マトス。
出演はレイチェル・マクアダムス、チャニング・テイタム、ジェシカ・ラング、サム・ニール、スコット・スピードマン、ウェンディー・クルーソン、ジャシカ・マクナミー、タチアナ・マズラニー、ジョー・コブデン、ルーカス・ブライアント、ジョーイ・クライン、ジャニーン・グーセン、ディロン・ケイシー、シャノン・バーネット、リンジー・エイムス、クリスティーナ・ペシック、ブリット・アーヴィン、サラ・カーター、アンジェラ・ヴィント、レイチェル・スカーステン他。


キムとクリキットのカーペンター夫婦が実際に体験した出来事を基にした作品。
メガホンを執ったマイケル・スーシーは、これが映画デビュー作。
監督デビュー作である2009年のTV映画『グレイ・ガーデンズ 追憶の館』で、数多くの賞を獲得している人物だ。
ペイジをレイチェル・マクアダムス、レオをチャニング・テイタム、リタをジェシカ・ラング、ビルをサム・ニール、ジェレミーをスコット・スピードマン、フィッシュマンをウェンディー・クルーソン、グウェンをジャシカ・マクナミー、リリーをタチアナ・マズラニー、ジムをジョー・コブデンが演じている。

あくまでも「実話を基にしたフィクション」だから、実話をそのまんまトレースして描かなきゃいけないわけではない。
ただ、私は実話を事細かく知っているわけではないし(夫婦を取り上げたテレビ番組を見たことはある)、だから「どこまでが事実、どこからが創作」ということもハッキリとは分からないが、おそらく創作であろうと思われる部分が、ことごとくマイナスになっていると感じる。
それが事実だったとしても、脚色した方がいいんじゃないかと思える部分が幾つもある。

まず冒頭、事故の原因が「カーセックスをしようとしてペイジがシートベルトを外した直後、凍結した路面でスリップしたトラックが突っ込んで来た」というものなんだけど、何故そんな内容にしたのかと。
もちろん事故に遭ったのは不憫だけど、カーセックスを始めようとしていたってのが、どうにもマヌケに思えて仕方が無い。
ただ欲情して急にセックスしたくなったのではなく、子作りのためとは言え、よりによって、何故そんな状況設定にする必要があったのか。
仮に実話の通りだったとしても、そこは脚色すべき箇所だわ。
そういう形だと、夫婦にも落ち度があったということになっちゃうし、落ち度を用意する意味が全く見当たらない。そのことでレオが負い目を感じるとか、そんな展開になっていくわけでもないんだし。
あと、ペイジがフロントガラスを突き破って頭から飛び出す様子をスローモーションで見せているけど、それも全く必要性が無い。そんな のを丁寧に見せるのは、なんか妙にマヌケで、マイナスでしかない。

ペイジの家族を「娘の記憶喪失を利用して都合のいい関係を構築しようと企む」という悪役チックなポジションに設定しているのは、いかがなものかと思う。
障害が多ければ多いほどペイジとレオの恋愛劇が盛り上がるという考えだったのかもしれないし、もちろん2人が幸せになるまでの過程に様々な障害や苦難を用意することには反対しない。
ただ、既に「ペイジが記憶を失った」というだけで充分な障害だと思うし、そこに付け加えるとしても、悪役を用意するのは方向性が違うと思うのだ。
実話の内容を考えた時に、レオとペイジを取り巻く人々は善意に満ちた存在にしておいて、優しさに包まれた映画に仕上げた方が感動的なんじゃないかと思うのよ。
ぶっちゃけ、両親を悪役にしても、ただ不愉快なだけだし。

ジェレミーというペイジの元婚約者を登場させているのも上手くない。
そうやって恋敵を登場させることで、ペイジ&レオの恋愛劇を盛り上げようという狙いがあるんだろうってのは分かる。ただ、この映画に恋のライバルは要らない。
しかもジェレミーって、「ペイジが記憶喪失になったから、レオから奪い取ってヨリを戻してやろう」と目論んで卑劣な手を使うようなこともないし、嫌味なことを言う場面はあるけど、それほど悪い奴ではない。ペイジが記憶を失ってジェレミーに最接近し、そのせいで振り回されているという感じが強い。
で、ジェレミーは現在の恋人と別れてペイジとヨリを戻そうとまで考えるのだが、最終的にはフラれてしまう。でも、ペイジを非難したりせず、穏やかに受け入れる。
だから、なんか不憫な奴に見えちゃうのよね。

大半の場面をレオの側から物語を描いて行くのは構わないんだけど、ペイジがちょっと不愉快な女に見えて来るのは問題がある。
もちろん彼女はレオと過ごした頃の記憶を失っており、だからレオに対してよそよそしくしたり、両親やジェレミーと仲良く接したりするのだ。
そういう仕方のない事情があることは重々承知しているのだが、ペイジに対する同情心は全く沸いて来ない。見ている内に、懸命に頑張るレオの気持ちを踏みにじる嫌な女に見えて来てしまう。
それを解消するには、彼女の家族やジェレミーを排除するか、両親を善玉にしてしまえばいい。そうすれば、ペイジがレオと別れても、それは「卑劣な両親の企みに乗っかる」とか「前の男とヨリを戻そうとする」ということではなくなる。
それによって、印象もグッと良くなるはずだ。
とにかくペイジの家族とジェレミーは邪魔なのだ。

ただし、ずっとペイジが不愉快な奴ってわけじゃなくて、レオと楽しそうにデートするシーンもあったりするんだよね。
でも、それはそれで不可解に見えちゃう。デートするだけならともかく、湖で下着姿になって泳ぐってのを、なんで普通にOKしちゃうのか。
しかも、すげえ楽しそうにしているんだよな。それは変だろ。
レオのことを全く覚えておらず、触られると拒否反応を示すぐらいの関係性だったのに、つまり「最近になって存在を知った、まだ良く分からない男」に過ぎないのに、そんな奴の前で平気で下着姿になって一緒に泳ぐってのは、かなり変。
そこまでに「少しずつ関係が良好になっている」という経緯があるならともかく、そうじゃないんだし。

で、その流れでペイジはレオとキスまでしているし、それ以上の行為も許そうとしているぐらいなんだよな。
それは展開に違和感を覚えるなあ。
ジェレミーにキスをした場面から、レオとキスをする場面までに、それを納得させるだけの「ペイジの心境の変化」が描かれていない。
むしろ、デートの場面の前はレオと言い争いになっているし、結婚式の準備で実家へ帰るのも「レオと距離を置く」という目的が明らかに含まれていたし。

レオがペイジとの離婚を決意するきっかけがジェレミーを殴り倒す事件ってのも違和感が否めないが、もっと違和感が強いのは、ペイジがレオとヨリを戻そうと考えるきっかけとなる出来事だ。
彼女は父が自分の親友と浮気し、それがきっかけで家を出たことを知って、それでレオとヨリを戻そうと考えるのだ。
いやいや、なんでだよ。
父の浮気って、レオへの愛情とは全く無関係じゃねえか。

そこは「レオが自分をどれだけ愛してくれていたか、どれだけ大切にしてくれていたか知って、最初から関係を始めようとする」という流れにしなきゃいけないはず。それなのに、レオは無関係の出来事がきっかけってのは、そりゃ違うだろ。
父の浮気や、それを家族が隠していたことを知っても、それは「家族への信頼が消える」ということには繋がるだろうけど、レオへの感情には直結しないでしょ。
そこは「ペイジのレオに対する愛情」に直結するようなエピソードが欲しいのよ。
それが無いから、ペイジが家族と離れて自分自身を見つけ出そうと決意するのは理解できるけど、レオとヨリを戻すのは、流れが上手くないと思ってしまう。

(観賞日:2013年5月3日)

 

*ポンコツ映画愛護協会