『クリスティーナの好きなコト』:2002、アメリカ

サンフランシスコ。28歳のクリスティーナは、恋愛を気軽なゲームとして楽しんでいる。ある日、彼女が親友コートニーと共にマンション へ戻ると、もう1人の親友ジェーンが泣いていた。付き合っていた恋人にフラれたのだ。クリスティーナはジェーンに、「相手に近付き すぎたのよ。いちいち本気にならず、遊びの恋を楽しむべき」とアドバイスした。
クリスティーナとコートニーは、ジェーンを連れてクラブへ繰り出した。コートニーはカウンターにいたレザー・コートの男に狙いを付け 、すぐに親しくなる。クリスティーナは通り掛かったピーターという男の尻をつねり、コートニーとくっ付けようとする。しかしクリスティーナ とピーターは、ささいなことで言い合いになる。その間に、コートニーは別の男と仲良くなった。
トイレに行ったクリスティーナは、コートニーから「ピーターに本気になっている」と指摘される。即座に否定したクリスティーナだが、 ピーターのことが気になった。2人は仲直りし、一緒に酒を飲む。ピーターは兄ロジャーと共にクラブへ来ていた。サマセットに住んで いるというピーターは、「ロジャーの結婚式があるので良かったら来て欲しい」と告げ、立ち去った。
クリスティーナはコートニーに背中を押されたこともあり、ピーターが宿泊しているフォー・シーズンズ・ホテルに電話を掛ける。だが、 彼はチェックアウトした後だった。それを聞いたコートニーは、ロジャーの結婚式に行こうと誘う。及び腰だったクリスティーナだが、 結局はコートニーと共に車でサマセットへ向かう。
幾つかの騒動がありつつも、クリスティーナとコートニーはサマセットに到着した。ヴェラの洋品店で派手な衣装に着替えた2人は、 ベンチの広告を見てピーターが不動産屋だと知った。式場の教会へ出向いた2人は、花嫁ジュディーと結婚する花婿の姿を目にして驚いた。 花婿はロジャーではなく、ピーターだったのだ…。
監督はロジャー・カンブル、脚本はナンシー・M・ピメンタル、製作はキャシー・コンラッド、製作協力はディキシー・J・キャップ、 製作総指揮はリッキー・ストラウス&スチュアート・M・ベッサー、撮影はアンソニー・B・リッチモンド、編集はウェンディ・グリーン ・ブリックモント&デヴィッド・レニー、美術はジョン・ゲイリー・スティール、衣装はデニース・ウィンゲイト、音楽はエドワード・ シェアマー、音楽監修はジョン・ホウリマン。
主演はキャメロン・ディアス、共演はクリスティーナ・アップルゲイト、トーマス・ジェーン、セルマ・ブレア、ジェイソン・ベイトマン、 パーカー・ポージー、フランク・グリロ、エディー・マックリントック、リリアン・アダムス、ジョニー・メスナー、シビル・ティムチェン、ジョー・ベラン、 チェルシー・リー・ボンド、リチャード・デニ、ジョージア・エンゲル、アン・E・フィールズ、ジェニファー・ジメネス、シエナ・ ゴーインズ、トリア・カッツ他。


『クルーエル・インテンションズ』のロジャー・カンブルが監督を務めた作品。
脚本を執筆したナンシー・M・ピメンタルはTVシリーズ『サウスパーク』にライターで携わり、スタンダップ・コメディーの経験もあるようだ。この脚本は、自身とTV女優の親友ケイト・ ウォルシュの関係をモチーフにして執筆したらしい。
クリスティーナをキャメロン・ディアス、コートニーをクリスティーナ・アップルゲイト、ピーターをトーマス・ジェーン、ジェーンを セルマ・ブレア、ロジャーをジェイソン・ベイトマン、ジュディーをパーカー・ポージーが演じている。
また、クラブのレザー・コートの男役でクリスティーナ・アップルゲイトの夫ジョナサン・シェック、終盤にコートニーが交際している医師役で映画監督のジェームズ・ マンゴールドが出演している。

キャメロン・ディアスは下ネタ満載のコメディー映画『メリーに首ったけ』で人気がブレイクした人だが、それほどコメディー映画ばかり に出演しているわけではない。本人に役者としての幅を広げたいという意識がどれぐらいあるのかは知らないが、この映画を見て改めて感じる のは、「キャメロン・ディアスはラブコメ映画の人だなあ」ということだ。
ただし、メグ・ライアンが得意としていたような、「ちょっとシャレた雰囲気の都会的なロマコメ」の人、というわけではない。もっと バカっぽいテイストの強いコメディーの人という印象だ。坂道を滑稽なステップで腰を振りつつ歩いてくる登場シーンからして、もう 「なんてドンピシャなキャスティング」と思わされる。『メリーに首ったけ』にしろ本作品にしろ、こんな下ネタやゲスいネタをやっても カラッとした雰囲気にさせるというのは、一種の才能だろう。
しかし、こういう路線ってのは、ある程度の年齢になってくると厳しくなってくる(メグ・ライアンが年齢と共に「ロマコメの女王」で いられなくなったのと同じように)。なので、いくらキャメロン・ディアスが「バカコメの女王」にふさわしい女優であっても、 いつまでも、そこに安住していられないという問題はあるんだけどね。

お手軽なスナック感覚のコメディー映画で、結婚式という仕掛け以外には起伏も波乱も無い一本調子。 ギャグの大半は下ネタ、全てがおバカ丸出しのネタ。
良識派を自称する人々は嫌悪感を剥き出しにして批判するようなネタがたっぷりと用意されている。
そういう下品なネタ、お下劣なギャグをキャメロン・ディアス、クリスティーナ・アップルゲイト、セルマ・ブレアという3人の女優が ノリノリでやってくれるのは素晴らしい。

キャメロン・ディアスはピーターに向かって「ジェーンと一発ヤれば良かったのよ」と言い放つ。ピーターとベッドインしている夢の シーンで、クンニされて悶える芝居をする。公衆トイレで覗き穴を発見して目をファックされる。ヴェラの店の試着室では「昔より乳の 位置が落ちた」と示すため、オッパイを掴んで持ち上げ、手を離してオッパイがダランと下がるのを見せる。
クリスティーナ・アップルゲイトはトイレのシーンで「ニセモノよ」と言ってオッパイを女性たちに揉ませる。ザーメンが付着したジェーン のドレスを掲げて「ドレスにザーメン」と浮かれたように言う。公衆トイレでは男性用に入り、小便器に中腰となって用を足そうとする。
ヴェラの店の試着室では、二の腕の弛んだ肉をブルンブルンと振るわせる。ちなみに、この2人は公衆トイレで水浸しになった後で Rupert Holmesの『Escape (The Pina Colada Song) 』を歌いながら着替えたり、ヴェラの店で着替えたりと、お色気サービスのショット もある。

何よりも素晴らしいのがセルマ・ブレアで、なんせロマンスには全く関与せず、式場にも行かないわけだから、完全に下ネタをやるためだけに登場しているのだ。
まずは前半、マーティンのクリーニング店にザーメンがこびり付いたドレスを持って行く。さっさと去りたいが、マーティンはドレスを 広げて「シミの正体が何か思い出せ」と言う。そこへ恩師であるフランクリン先生が子供たちを連れて現われ、さらにフリン神父も現われ 、皆がザーメン付きのドレスを目にするハメになる。
デカマラの男とセックスした後でアソコを痛がりながら「鎮静剤はどこ?」と探す。
メンズ洋品店で働くジェーンの元へ、子供病院で働いているという恋人が現われ、象の着ぐるみ姿の彼と2階でファックする。
他の2人がサマセットに到着するとしばらく消えているが、マンションに戻ってきたところで最後の見せ場(もちろん下ネタとしての)が用意されている。
キャメロン・ディアスとクリスティーナ・アップルゲイトが帰宅すると、警官や野次馬が集まっている。何かと思って部屋に入ると、 セルマ・ブレアが恋人にフェラしたままチンコのピアスがノドに引っ掛かって抜けなくなっている。そこでキャメロンとクリスティーナが Frankie Goes To Hollywoodの『Relax』を歌い、続いて皆でAerosmithの『I Don't Want To Miss A Thing』を歌って抜けるように応援するという次第。
つまり、セルマは「チンコをくわえたまま抜けない」という芝居をやっているのだ。
すげえよ。

84分という上映時間は、かなり短いと思うかもしれない。だが、この内容であれば、それぐらいで充分だろう。
何しろ、それでもまだ長いと思うぐらい薄い内容しか用意されていない。
クリスティーナとピーターの惚れた腫れたを描くだけでも時間はそれなりに掛かるはずだが、なんせクラブでの初対面の後は、後半に 入って式場で再会するまで全く接触が無いのだ。

式場へ行く間に、クリスティーナとコートニーの式場までの珍道中や、店で仕事をしているジェーンの様子を挿入している。
しかし、珍道中にしろジェーンの話にしろ、メインのロマンスとは何の関係も無い。ただコントをやりたいがための場面だ。
ロマンスの重要なポイントであるクリスの心の動きに関する描写はペラペラだ。
そもそも、ピーターが兄の結婚式だとウソをついているのも、何の必要性も見当たらないので無理を感じるし。

ナンシー・M・ピメンタルは、物語にはほとんど興味が無かったんじゃないだろうか。
「ゲーム感覚だったクリスがピーターに出会って初めて本気の恋をする」という恋愛の話はどうでもよくて、ようするに下ネタだらけの 複数のコントを描きたかっただけなのではないかと。
で、それを繋げて1本の映画にするために、とりあえずクリスの話を仕立て上げただけじゃないのかと。
パッチワーク感覚溢れるスッカスカの話にするぐらいなら、最初からコントのスケッチ集としての映画にすりゃいいのにと思ったりもする が、それだと企画が通らないかもしれんなあ。「下ネタのコント集」を映画化してくれる製作者なんて、まあ見つけるのは難しいか。
そりゃ「キャメロン・ディアス主演の、下ネタだらけのラブコメ」の方が、企画が通りやすいよなあ。


第25回スティンカーズ最悪映画賞

受賞:【最悪の歌曲・歌唱】部門[キャメロン・ディアス&クリスティーナ・アップルゲイト&セルマ・ブレア]「The Penis Song」

 

*ポンコツ映画愛護協会