『疑惑の幻影』:1998、アメリカ

ロサンゼルスの高級住宅地で、大富豪ノーマン・キャロウェイの娘ジャナの惨殺死体が発見された。ロス市警は現場から名前の書かれたマッチを発見し、前夜にブリジットと一緒にいるところを目撃されたCDデビュー直前のラップ歌手ボビー・メディーナを逮捕する。
ボビーはブリジットと性交があったことは認めたが、殺害に関しては否認。ボビーは所属レコード会社を通じ、敏腕女性弁護士として注目を浴びているキット・デヴローに弁護を依頼する。事件を担当する検事補は、キットの元夫ジャック・キャンピオーニ。
キットは上院議員ポール・サクソンのパーティーに招かれる。ポールはノーマンの友人で、次期大統領候補を目指す人物だ。ジャックも彼を支持している。ポールの母シルヴィアに呼び出されたキットは、裁判から手を引くよう脅しを掛けられる。
キットが調査を進める中、過去に彼女が弁護したレイプ犯レアード・アトキンスが付きまとうようになる。キットはレアードの無罪を勝ち取り、彼と肉体関係を持った。しかし後になってレイプ犯だと白状したレアードに襲われ、暴行罪で告発したのだった。
キットは部下のアル・ゴードンにジャナの部屋を調べさせる。アルは置き時計の中にデジタルカメラが隠されているのを発見。カメラの映像には下着姿のジャナがポールと一緒にいる現場が写っていた。キットはジャナとポールの間に肉体関係があったことを確信する…。

監督はランダル・クレイザー、脚本はマイラ・ビヤンカ&レイモンド・デ・フェリッタ、製作はアダム・クライン、共同製作はダグラス・カーティス&フランク・K・アイザック、製作総指揮はバル・ポッター、撮影はクレイグ・ハーゲンセン、編集はジェフ・ゴーソン、美術はカーティス・A・シュネル、衣装はリタ・リッグス、音楽はジョエル・ゴールドスミス。
主演はメラニー・グリフィス、共演はトム・ベレンジャー、クレイグ・シェーファー、ヒューイ・ルイス、ウェイド・ドミンゲス、ジェームズ・モリソン、リサ・ペリカン、ニーナ・フォッチ、トニー・プラナ、ヴィクター・ラヴ、リチャード・ポートナウ、キンバリー・ケイツ、ダニエル・ニコレット、ジェームズ・カレン他。


『グリース』や『青い珊瑚礁』のランダル・クレイザーが監督した作品。
キット役がメラニー・グリフィス、ジャック役がトム・ベレンジャー。
幾つも“使える”設定を用意しておきながら、それを全く生かそうとしない作品。
そんなわけだから、三流のサスペンス劇になっているのは仕方が無い。

キットとジャックは元夫婦という設定。
だが、2人の間にある微妙な感情が物語に厚みを生むことはない。
つまり、元夫婦という設定は生かしていないのだ。
シルヴィアがキットに圧力を掛けるという流れがあるが、軽く触れられるだけ。
ここも生かしていないということだ。

キットにレアードが連絡してくるという下りがある。
だが、物語進行に関して、ほとんど意味を持たない。
レイプ犯人で、キットと肉体関係があって、しかもキットを襲って暴行罪で告発された過去を持つという“使える”設定だが、三流サスペンスなので、それを使わないのだ。

レアードは知的な異常者ではなく、単なるアーパーなストーカー男だ。
そんな男と自分から進んで肉体関係を持つのだから、キットまでアーパーに見えてくる。
彼女は有能な弁護士という設定だが、裁判シーンでも大して有能ぶりは発揮しない。

アルがパソコンを駆使してキットの調査に協力するのは、“使える”設定だ。
しかし、それが物語を進める上で重要なポイントになることはない。
デジタルカメラが隠されているのは、“使える”設定だ。
しかし、アルがあっさりと見つけてしまうので、大したポイントにはならない。

事件そのものに深さは無い。
ポールをキットが尋問する下りは、ツメが甘くて追い詰めていく感じに欠ける。
終盤では真犯人に迫っていくという下りがあるが、その流れはあまりに緩い。
もちろん犯人に意外性は無い。

 

*ポンコツ映画愛護協会