『クイック&デッド』:1995、アメリカ

女ガンマンのエレンはリデンプションの街にやって来た。明日から早撃ち大会が行われるため、世界中から腕に自信のある者達が集まってきている。主催者で街の顔役のヘロッドも大会への参加を表明。銃を捨てて牧師となっていたコートも、ヘロッドに脅されて強引に参加させられる。
エレンも参加を表明するが、彼女の目的は優勝者に送られる賞金ではなかった。実は連邦保安官だった父を殺したヘロッドに復讐するためにやって来たのだ。そんな彼女に若きガンマンのキッドが言い寄り、2人は一夜を共にする。翌朝、エレンはキッドがヘロッドの息子だと知る。
大会が始まった。トーナメント方式で次々に脱落者が出ていく中、最後に4人が勝ち残る。ヘロッド、キッド、コート、そしてエレンだ。エレンはヘロッドと準決勝を戦うつもりだったが、キッドがヘロッドに戦いを挑み、エレンはコートと戦うことになるのだが…。

監督はサム・ライミ、脚本はサイモン・ムーア、製作はジョシュア・ドーネン&アレン・シャピロ&パトリック・マーキー、共同製作はチャック・ビンダー&シャロン・ストーン、製作総指揮はトビー・ジャッフェ&ロバート・G・タペート、撮影はダンス・スピノッティ、編集はピエトロ・スカリア、美術はパトリシア・フォン・ブランデンスタイン、衣装はジュディアンナ・マコフスキー、音楽はアラン・シルヴェストリ。
主演はシャロン・ストーン、共演はジーン・ハックマン、ラッセル・クロウ、レオナルド・ディカプリオ、トビン・ベル、ロバーツ・ブロッサム、ケヴィン・コンウェイ、キース・デヴィッド、ランス・ヘンリクセン、パット・ヒングル、ゲイリー・シニーズ、マーク・ブーン・ジュニア、オリヴィア・バーネット、フェイ・マスターソン、レイナー・シェイン、ウディ・ストロード他。


シャロン・ストーンが共同製作にも携わった作品。エレンをシャロン、ヘロッドをジーン・ハックマン、コートをラッセル・クロウ、キッドをレオナルド・ディカプリオが演じている。なお、チャーリー・ムーンライトを演じたウディ・ストロードは、これが遺作となった。

サム・ライミが西部劇を作るというだけで、妙にニヤニヤしてしまうのだ。何しろサム・ライミなのだから、マトモな西部劇なんて作るわけが無い。ガンアクションの迫力とか、渋い男の世界とか、そういうのを期待してはいけないのである。

というわけで、これはバカテイストの高い西部劇なのである。最初から、それを狙って作られているのである。西部劇をマンガチックにするとこうなりました、という感じだ。ようは単なる早撃ち大会だが、サム・ライミの風味の味付けで映画に仕上げている。

しかし、痛快無比で荒唐無稽なバカ魂の爆裂映画になっているのかというと、そこまでの境地には到達していない。話の展開が単純なので、どこまで演出がバカっぽいかというのがポイントだったのだが、どうもバカに成り切れていない印象がある。

ジーン・ハックマン、ラッセル・クロウ、レオナルド・ディカプリオといった豪華キャストの面々は、「これは荒唐無稽なバカ映画」ということをキッチリと理解して、分かっている芝居を見せている。当然、ランス・ヘンリクセンは分かりまくっている。

中途半端な印象となった最大の原因は、おそらくシャロン・ストーンにあるのではないだろうか。男優陣がバカ映画のキャラクターを演じている中で、唯一、主演のシャロン・ストーンだけが、妙に真面目なのである。
それは監督の意図なのか。
それともシャロンだけが、これがバカ映画なのだと気付いていないのか。

まず、監督の意図ということは有り得ないだろう。
となれば、シャロンが気付いていないということになる。
しかし、サム・ライミが監督という時点で、マトモな映画じゃないってことは気付きそうなものだが。サム・ライミ監督を知らなかったはずは無いのだし。
いずれにせよ、主演女優が作品を分かっていないというのは、どうしようもない。

 

*ポンコツ映画愛護協会