『クイーン・オブ・ザ・ヴァンパイア』:2002、アメリカ&オーストラリア

ニューオリンズの地下墓地で100年の眠りに就いていたヴァンパイア・レスタトは、ハード・ロックの音で目を覚ました。彼は埠頭で男の血を吸った後、建物で練習していたロックバンドの元へ行き、その演奏に合わせて歌ってみた。何者か質問された彼は、「ヴァンパイアのレスタトだ」と名乗った。レスタトは彼らのバンドにヴォーカリストとして参加し、たちまちスターダムを駆け上がった。
バンドはロサンゼルスのデスヴァレーで行う1日限定のライブを直前に控え、ロンドンで記者会見を開く。だが、レスタトだけは別の場所から映像で参加した。一人の記者が、歌詞にヴァンパイアの秘密が隠されているという噂について質問した。するとレスタトは「昔の仲間を呼び起こすためだ」と言い、その噂が事実であることを認めた。さらにレスタトは、他のヴァンパイアに対して「隠れてないで、出て来ればいい」と挑発した。レスタトが仮住まいにしている豪邸に、彼の使用人ロジャーが若い女2人を伴って現れた。レスタトはロジャーを帰らせた後、女たちを相手に楽しんだ。
超常現象研究集団「タラマスカ」のメンバーであるジェシーは、幼い頃から同じ夢ばかり見ていた。血の涙を流す叔母のマハレットから、「貴方とは一緒に暮らせないの」と宣告され、孤児院に送られた時の夢だ。彼女はレスタトの存在を知り、強い関心を抱いた。ジェシーはロンドンにあるタラマスカのセンターで、レスタトの歌詞に関する研究発表を行う。歌詞を分析したジェシーは、かつてヴァンパイアの集会が行われていた場所をレスタトが教えようとしているのだと推測した。彼女は詳しく調査するため、その現場であるプライヴェート・クラブにも足を運んでいた。
まだ見習いの身分であるジェシーに対し、リーダーのデヴィッド・タルボットは前のめりで行動することへの自制を促す。デヴィッドはレスタトを生み出したヴァンパイア、マリウスのことを彼女に教える。「レスタトの日記を持っている」と言う彼に、ジェシーは読ませてほしいと頼む。デヴィッドは二度と現場へ行かないよう約束させ、ジェシーに日記を見せた。そこには、レスタトがマリウスに拉致されてヴァンパイアにされたこと、教えを受けてヴァンパイアとしての生き方を学んだことなどが綴られていた。
マリウスはレスタトに、「種族を守るため、人間に素性を知られてはならない」というヴァンパイアの掟を説いていた。しかしレスタトは不用意な行動で素性を知られ、ソフィアという女を始末しなければいけなくなった。レスタトは同じ過ちを繰り返さないために、慎重な行動を心掛けるようになった。ある日、レスタトはマリウスが外出している時、彼の屋敷で地下の隠し通路を発見した。通路を進むと、その奥には椅子に腰掛ける女性の石像があった。その前でヴァイオリンを演奏すると、石像の手が動いた。その手に噛み付いて血を吸ったレスタトの脳内に、膨大な記憶の波が押し寄せた。
異変を察知したマリウスが地下の隠し部屋に駆け付けると、レスタトは意識を失って倒れていた。マリウスはレスタトの両手を鎖で拘束し、意識を取り戻した彼に「お前は最も純粋な血を吸った。まだ早すぎる」と非難めいた口調で告げる。レスタトが血を吸った相手は、全てのヴァンパイアの母である女王アカーシャだった。いつの間にか眠り込んだレスタトが目を覚ますと、マリウスは屋敷から姿を消し、アカーシャの石像も無くなっていた。
ジェシーはデヴィッドとの約束を破り、クラブへ赴いた。客たちからホストの名を訊かれた彼女は、怯えながらマリウスの名を出した。その様子を、レスタトが目撃していた。店を出たジェシーはヴァンパイアたちに襲われるが、レスタトが助けに入った。ジェシーは彼と会話を交わし、「まだ貴方はヴァイオリンを持ってるでしょ」と告げる。レスタトは答えずに去るが、ジェシーの指摘は当たっていた。ジェシーはデヴィッドの警告を聞かず、レスタトのコンサートへ行くことを決めた。デヴィッドは、他のヴァンパイアたちがレスタトの行動に激怒しており、彼の命を狙いに行くだろうと推測していた。
コンサートを控えてロサンゼルスに移動したレスタトの前に、マリウスが現れた。マリウスは彼に、王の血を飲んだアカーシャが目覚めたことを教える。レスタトはコンサートの中止を求められるが、挑戦的な態度で拒絶した。クラブに姿を現したアリーシャは、圧倒的な力で店にいたヴァンパイアたちを全滅させた。ジェシーは獲物の女を探していたロジャーに接触し、レスタトの仮住まいに赴いた。ジェシーは彼に日記を渡し、貴方の全てを教えて欲しいと頼む。レスタトは苛立った様子で「見せてやる」と言い、彼女を公園へ連れて行く。そして公園にいた女の血を吸って殺害する様子をジェシーに見せ付けた。
コンサート当日、会場入りしたレスタトは、観客の中に紛れているヴァンパイアたちの姿を確認した。会場にやって来たマハレットは、仲間たちにジェシーを見つけ出すよう指示する。コンサートが始まると、ヴァンパイアたちはレスタトに襲い掛かった。バンドのメンバーが逃げ出す中、レスタトはステージに駆け付けたマリウスと共に戦う。すると、襲ってきたヴァンパイアたちが一瞬にして燃え上がり、塵となって消えた。それはアカーシャの仕業だった。
ステージに出現したアカーシャは、レスタトを抱いて空高く飛び去った。アカーシャはレスタトを伴侶として選び、世界を支配しようと目論んでいた。その誘いを、レスタトは何の迷いも無く受け入れた。一方、ジェシーはマハレットと再会し、彼女が人間と共存しようとするヴァンパイアたちの指導者であることを知る。マリウスもマハレットの仲間だった。やがてマハレットたちのアジトに、アカーシャがレスタトを伴って現れた。アカーシャは力を見せ付けた後、レスタトにジェシーを殺すよう命じた…。

監督はマイケル・ライマー、原作はアン・ライス、脚本はスコット・アボット&マイケル・ペトローニ、製作はジョーグ・サラレグイ、共同製作はチャニング・ダンゲイ、製作総指揮はスー・アームストロング&アンドリュー・メイソン&ビル・ガーバー&ブルース・バーマン、撮影はイアン・ベイカー、編集はダニー・クーパー、美術はグレアム・“グレース”・ウォーカー、衣装はアンガス・ストラシー、視覚効果監修はグレゴリー・L・マクマリー、音楽はリチャード・ギブス&ジョナサン・デイヴィス、オリジナル・ソングはジョナサン・デイヴィス&リチャード・ギブズ、音楽監修はリッチ・ディッカーソン&フランク・フィッツパトリック。
出演はスチュアート・タウンゼント、アリーヤ、レナ・オリン、ヴァンサン・ペレーズ、マーガリート・モロー、ポール・マッギャン、クリスチャン・マノン、クローディア・ブラック、ブルース・スペンス、マシュー・ニュートン、ティリエル・モラ、ミーガン・ドーマン、ジョナサン・デヴォイ、ロバート・ファーナム、コンラッド・スタンディッシュ、リカエル・タナー他。


アン・ライスの小説「ヴァンパイア・クロニクルズ」シリーズの第2作『ヴァンパイア・レスタト』と第3作『呪われし者の女王』を ベースにした作品。スタッフもキャストも全く異なるが、「ヴァンパイア・クロニクルズ」シリーズ第1作『夜明けのヴァンパイア』を基 にした1994年の映画『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』の続編に当たる。
監督は『エンジェル・ベイビー』『PERFUME パフューム』のマイケル・ライマー。
前作でトム・クルーズが演じていたレスタトを、今回はスチュアート・タウンゼントが演じている。
アカーシャを演じた歌手のリアーナは本作品を撮影した後、飛行機事故によって22歳の若さで命を落としたため、これが遺作となった。 他に、マハレットをレナ・オリン、マリウスをヴァンサン・ペレーズ、ジェシーをマーガリート・モロー、デヴィッドをポール・マッギャンが演じている。
前作でアントニオ・バンデラスが演じていたアルマンがマハレットの仲間として登場するが、演者はマシュー・ノートンに交代している。

「100年の眠りに就いていたヴァンパイアがハード・ロックに魅了されてロックシンガーになる」という導入部で、「ああ、この映画ってマジじゃないんだ」と感じさせられる。
雰囲気からしてコメディーじゃないことは分かるが、かなり荒唐無稽の度数が高い話なんだろうという印象は受ける。
ただ、これって原作からして、そういう話なんだよね。
ってことは、私は未読だけど、原作シリーズは少女漫画チックなテイストなのかもしれない。
この映画から伝わる漫画チックなテイストは、漫画の中でも、特に少女漫画を強く感じさせる。

素性を訊かれて、何の迷いも無く「ヴァンパイアのレスタトだ」と自己紹介するレスタトには、前作のトム・クルーズが醸し出していた耽美性やゴシックな雰囲気は全く無い。
ものすごくナンパで軽い男に見える。
この映画のレスタトって、せいぜい「熱狂的なファンを持つロックスター」という程度の存在でしかないんだよな。例えばマリリン・マンソンとか、そんな感じなのよ。
ヴァンパイアとしての異様なオーラとか、底知れない不気味さとか、そういうスペシャリティーが弱い。

で、そのバカバカしくて軽い導入部からすると、こっちは例えば『クイック&デッド』のような、「ニヤニヤしながら楽しむ映画」として意識してしまう。
だが、そのまま観賞していると、「どうやら違うみたいだな」と気付かされる。
もっとマジな吸血鬼映画として作られているようなのだ。
だけど、幾らマジなテイストで進められても、もう最初に「ヴァンパイアがロックシンガーになる」というところから始めている時点で、ちょっと無理があるんじゃないかと思ってしまうんだよなあ。

ただ、そこは「これを少女漫画だと仮定したら」ということで、受け入れなきゃいけない。
少女漫画だとしたら、そういう設定であっても、マジなテイストを強めに描いていくというのは、有り得ないことじゃない。
なんか、そんな感じの少女漫画って、すげえハッキリとしたイメージが浮かぶのよね。
ただ、それを何とか受け入れたとしても、レスタトに対する「なんか重々しさが無いし、スケールのデカさにも欠けているなあ」という印象は打ち消すことが出来ないけど。

レスタトがロックシンガーになる理由は、「ロックに惹かれたから」という以外に、特に見当たらない。
「楽しそうだったからバンドを始めた」とか、そういうことをハッキリと言っているわけじゃないが、他に理由が見当たらない以上、そう解釈するしかないだろう。
あと、彼がヴァンパイアの秘密を歌詞に込めて、他のヴァンパイアを「出て来い」と挑発する理由も、サッパリ分からない。
ヴァンパイアを誘い出して、何をやろうとしているのか。その目的が全く見えない。
単なる愉快犯みたいにしか見えん。

ジェシーが命懸けでレスタトを追い掛ける理由も、イマイチ良く分からん。
「超常現象に対して強い興味があって、だから少々の危険は顧みずに真実を突き止めるために追い掛ける」というのは、特に珍しいことでもないから、それは分からんでもない。
ただ、今回の場合、ジェシーは早い段階でヴァンパイアに殺されそうになっているのに、それでも追い掛けるんだよね。
「レスタトに魅了されたら」ということなんだろうけどさ。
で、そういう「普通の感覚では理解不能なほど夢中になり、命懸けで男を追い掛ける」という辺りも、繰り返しになるけど、やっぱり少女漫画チックなノリなんだよな。

ヴァンパイアの悲哀が、色濃く描かれているわけでもない。
アクションはチョロッとしか用意されていない。
コンサート当日になるまではレスタトを狙う連中も現れないから、緊張感も出ない。
そんなわけで、色々と薄味。
ジェシーの見た目があんまり美人じゃないとか、アカーシャに大物としての威厳やスケール感がまるで感じられないとか(しかもレスタトに騙されて簡単にやられちゃうし)、そんなアカーシャの従順な伴侶になったレスタトがますます小物になっちゃうとか、色々と弱い。

(観賞日:2013年3月27日)


第25回スティンカーズ最悪映画賞(2002年)

ノミネート:【最悪の助演女優】部門[アリーヤ]

 

*ポンコツ映画愛護協会