『クロスボー作戦』:1965、イギリス&イタリア

イギリス軍需大臣代理のサンディスは首相のチャーチルに呼び出され、戦局が変わる重要な任務を指示された。ドイツ軍が長距離ロケットで爆撃を計画している情報が入っていたが、報告書には曖昧な点もあった。そこでロケット弾の真偽を確かめ、対処法を戦時内閣に見解を伝えてほしいというのがチャーチルの説明だった。同じ頃、ドイツではジーマン将軍やリンツ中将たちが無人機の飛行爆弾を開発していた。しかし飛行中に右へ逸れる傾向にあり、その原因は不明だった。そこで操縦席を付け、テスト飛行を実施することになった。
サンディスは諜報部の報告に目を通し、有識者に意見を求めた。物理学者のリンデマン教授はドイツ軍の技術を軽視し、ロケット開発には否定的な見解を示した。サンディスはバルト海でテスト飛行が実施されていると推理するが、それは的中していた。しかし飛行爆弾は右に逸れる原因が分からないまま墜落を繰り返し、4人のテストパイロットが命を落とした。イギリスでは写真解析班のバビントン・スミスが航空写真を確認し、バルト海沿岸ペーネミュンデに巨大施設があるのを発見した。報告を受けたサンディスは発射基地ではないかと推察するが、リンデマンは「ロケットの写真を見るまで信じられない」と否定した。
イギリス海軍は10回の撮影を続け、スミスはロケットと思わしき物体が映る写真の存在を報告した。リンデマンは「気球だろう」と言うが、サンディスは施設の爆撃を戦時内閣に提案した。ドイツ軍の飛行隊長を務めるハンナ・ライチェは飛行爆弾が右に逸れる原因に気付き、無事に帰還した。しかしイキリス軍の爆撃によって、施設は破壊された。サンディスとボイド将軍はドイツ軍がロケット工場に技術者を集めているという情報を掴み、調査のためには工作員を潜入させる必要があると考えた。
ボイド将軍は工作員を募集し、面接を行った。ドレスデンにいたことをアピールするバンフォードが不合格になる一方で、カーティス中尉、ヘンショー海軍兵曹、ブラッドリー大尉が工作員に選ばれた。3人はドイツ占領国の技術者に化け、オランダ人の協力で地下工場へ潜入する任務を命じられた。カーティスとヘンショーがオランダに入り、ブラッドリーはブリュッセルに留まって必要な情報を選別することになった。3人は身分証を渡され、それぞれエリック・ファン・オスタムゲン、ヤコブ・ビユス、ジャン・マルセルという既に死去した人物に成り済ますことになった。ヘンショーとヤコブは、顔も良く似ていた。
カーティスとヘンショーは、成り済ます相手の個人情報を頭に叩き込んだ。2人は輸送機に搭乗し、オランダ上空からパラシュートで降下した。その直後、サンディスは作戦の中止を伝えられた。ヤコブの指名手配が判明したためだ。ブラッドリーはボイドから、エンゲル博士という人物に成り済ましてドイツヘ向かうよう指示された。ドイツに入国したカーティスとヘンショーは、フリーダという女性が受付係を務めるホテルに宿泊した。フリーダは警察の規則だと説明し、彼らの身分証を預かった。
カーティスとヘンショーが部屋に入った直後、ゲシュタポがホテルにやって来た。身分証を確認したゲシュタポは、ヤコブの名を見て様子が変わった。ゲシュタポはヤコブの身分証を没収して立ち去り、フリーダはカーティスとヘンショーに事情を知らせた。彼女はヘンショーに部屋を移るよう促し、「それで1人は助かる」と告げた。カーティスの部屋には、エリックの妻であるノラがやって来た。彼女は夫の死を知らず、そこに泊まっていると思い込んで訪問したのだ。
カーティスはノラにエリックの友人だと嘘をつき、彼を待っていると説明した。ノラは子供とイタリアに行くのにエリックの同意が必要で、署名を貰うために来たのだと語った。フリーダは部屋へ行き、「エリックの荷物をまとめて倉庫に保管しないと。労働省からの指示で彼を異動させると」と嘘をついた。そこへ警官が来て名を訊かれると、カーティスはエリックを詐称した。ノラは驚いて否定しようとするが、カーティスは警官に気付かれないよう口を塞いだ。一方、ヘンショーは警官たちに囲まれ、ホテルから連行された。ノラが「夫はどこなの?」と騒ぎ出したので、カーティスは「死んだ。恐らく4ヶ月前の空襲で」と告げた。フリーダはノラを部屋から出さないようカーティスに指示し、ドアを施錠して去った。
ノラが「家に帰らせて。子供に会いたい」と訴えると、カーティスは「君に選択肢は無い。私を信じるしかない」と述べた。ヘンショーは警察署で取り調べを受け、ヤコブの殺人容疑を知った。彼は殺人を認め、死刑を覚悟した。署長が裏切り者を通報するための協力者になるよう持ち掛けると、ヘンショーは「義務を果たす」と了承した。しかしドイツの刑事だったバンフォードが警察署に戻り、ヘンショーに気付いた。彼は工作員の情報を探るため、面接を受けて潜入を図ったのだ。バンフォードから仲間の情報を教えるよう迫られたヘンショーはヤコブだと言い張り、すぐに銃殺された…。

監督はマイケル・アンダーソン、原案はドゥイリオ・コレッティー&ヴィットリアーノ・ペトリッリ、脚本はリチャード・イムリー&デリー・クイン&レイ・リグビー、製作はカルロ・ポンティー、撮影はアーウィン・ヒリヤー、美術はエリオット・スコット、編集はアーネスト・ウォルター、音楽はロン・グッドウィン。
出演はソフィア・ローレン、ジョージ・ペパード、トレヴァー・ハワード、ジョン・ミルズ、リチャード・ジョンソン、トム・コートネイ、ジェレミー・ケンプ、アンソニー・クエイル、リリー・パーマー、ポール・ヘンリード、ヘルムート・ダンティーネ、バーバラ・リュティング、リチャード・トッド、シルヴィア・シムズ、ジョン・フレイザー、モーリス・デンハム、パトリック・ワイマーク、ウルフ・フリース、モレイ・ワトソン、リチャード・ワッティス、アラン・キャスバートソン他。


『八十日間世界一周』『メリー・ディア号の難破』のマイケル・アンダーソンが監督を務めた作品。
ノラをソフィア・ローレン、カーティスをジョージ・ペパード、リンデマンをトレヴァー・ハワード、ボイドをジョン・ミルズ、サンディスをリチャード・ジョンソン、ヘンショーをトム・コートネイ、ブラッドリーをジェレミー・ケンプ、バンフォードをアンソニー・クエイル、フリーダをリリー・パーマー、ジーマンをポール・ヘンリード、リンツをヘルムート・ダンティーネ、ハンナをバーバラ・リュティング、スミスをシルヴィア・シムズが演じている。

ビリングトップはソフィア・ローレンだが、映画開始から50分ほど経過しないと登場しない。おまけに、あっさりと途中退場してしまう。
そもそも軍の動きを描く話だから、民間人が主役として扱うのは難しい。脇で少し絡む程度ならともかく、よっぽど無理をしないと主役というのは厳しい。実際、そんな短い出番で退場する人物を主役とは言えないだろう。
それなのにビリングトップなのは、もちろん知名度ってのもあるけど、それよりも「プロデューサーであるカルロ・ポンティーの妻だから」ってことが大きい。
旦那が自分の妻をゴリ押しでネジ込んだようなモンだと思っておけば、そんなに大きく外れてはいないだろう。

では実際の主役は誰なのかというと、一応はカーティスってことになるだろう。
ただし最初にサンディスが登場して任務を命じられ、そこから施設の爆撃が終わるまでは彼が主役のように扱われている。
しかし工場を調べる作戦が開始されると、どうしても現場に潜入する人員の動きがメインになるため、サンディスを主役のまま扱い続けることは出来なくなる。
なので第二章とも言うべき潜入作戦に入ってからは、主役の座がカーティスに交代している。

物語の途中で主役が交代する作品もあるし、それがダメだとは言わない。しかし本作品がバトンタッチを上手くやれているのかと言うと、そこは大いに疑問だ。
最初から潜入作戦だけに絞り込んで物語を構築しておけば、主役の交代劇は不必要だ。なので、そっちで良かったんじゃないかと。
施設爆撃までを描く第一章は会話劇が多いし、そこで緊張感が高まることも無いので、あまり面白くないんだよね。
あえて緊迫感のある個所を挙げるなら、飛行爆弾のテスト飛行のシーンってことになる。
でもドイツ軍のシーンで盛り上げてイギリス軍のシーンで停滞させるって、どういう計算なのかと言いたくなるし。

粗筋でも触れたように、飛行爆弾は当初、無人機を使っていた。
しかし操縦席を付けることになり、そこからテスト飛行で4人が死亡する。
ハンナが問題の原因を突き止めて無事に戻り、お祝いのパーティーが開かれる。
しかし爆撃の音が聞こえて来たので全員が防空壕に移動し、その後で「施設の破壊が成功した」ってことがイギリス軍サイドの会話で説明される。
そこまでの流れを順番に描いているけど、それは本当に必要なのかと思っちゃうし、

ただし第二章に関しても、やっぱり無駄は多いと感じる。
例えば工作員の面接シーンは、ものすごくダラダラした印象になっている。
主要キャストの紹介に時間を割くのは、もちろん悪いことじゃない。ただ、そこでの描写が、以降の展開に活用されているとは全く感じない。
バンフォードだけは後で絡んで来るけど、彼の使い方も充分とは言い難いし。
そんな面接の後に用意されているのはパラシュート降下の練習シーンだけど、これも丸ごとカットで全く支障は無い。

ノラはカーティスたちの任務に巻き込まれただけであり、レジスタンスとして協力するわけではないし、逆に窮地に陥れるために動くわけでもない。
家に帰って子供と会うためにカーティスの芝居に付き合うけど、そういう形での協力も厚く描かれるわけではない。
その位置で出番の短いヒロインを置くぐらいなら、もっとフリーダを丁寧に扱った方が幾らかマシだよ。
そのフリーダは、なぜカーティスを手助けするだけでなく英語がベラベラなのかと思ったけど、どうやら「連合軍の協力者」という設定のようだ。
ただ、そこのアピールがボンヤリしている上に、扱いも良くないんだよね。

バンフォードがドイツの刑事だと判明すると、「カーティスとブラッドリーの正体もバレるかも」という状況になる。
しかし、その状況を使ったサスペンスは、一向に高まらない。
バンフォードが刑事として再登場した後、「工場で技術者の素性を調査させる」という展開に入るまで30分ぐらい掛かるんだよね。
そこまでは、「カーティスたちの素性がバレるかも」という危機感は皆無。
工場で調べるのもバンフォードじゃないから、「バンフォードがカーティスとブラッドリーの顔を知っている」という要素は全く活かされていない。

工場で働き始めたカーティスが長距離ロケットの情報を入手したら、そこからは「情報を本国に伝えて、計画を阻止するための作戦を遂行する」という流れに入っていく。
でも実際に計画を阻止するまでに、多くの犠牲が出ているのだ。
カーティスが情報を知った5分後には、飛行爆弾がロンドンの街を次々に爆撃する。
サンディスが大量の砲台を並べて対処するけど、今度はV2ロケットで爆撃される。英国の動きは、常に後手後手に回っているのだ。

もちろん最終的には、サンディスの指揮下でドイツの計画を阻止している。完全ネタバレだが、地下工場を空爆して長距離ロケットを破壊するのだ。
だけど今回の物語に判定があるとすれば、連合軍の判定負けじゃないかと感じるのよ。それぐらい、その作戦成功には「勝利」の印象が薄い。だからって反戦のメッセージを訴える重厚な社会派映画ってわけでもないし。
勝利のカタルシスが必要不可欠とは言わないが、心に刺さる重さがあるわけでもない。それならハリウッド的なハッピーエンドでも良かったんじゃないかと。
まあ史実がベースなので、そこは難しい部分もあるんだろうけどさ。

(観賞日:2025年10月20日)

 

*ポンコツ映画愛護協会