『クレイジー・パーティー』:2016、アメリカ

2016年のクリスマス。大手IT企業ゼノテック社シカゴ支所のCTOを務めるジョシュは弁護士と会い、1年の交渉を経て離婚が成立したという報告を受けた。全財産を失うことになったジョシュだが、何も抗議せず書類に署名した。出社したジョシュは人事部長のメアリーから、服務規程違反を犯しているメーガンへの不満を聞かされる。社員のジェレミーがメアリーに嫌味を浴びせると、ジョシュは穏やかに仲裁して立ち去った。
社員のネイトがベッカという恋人のことを同僚のドリューとティムに語るが、妄想の相手だろうと馬鹿にされる。彼から「本当に恋人がいるんです」と言われたジョシュは、「ああ、分かってるよ」と軽く受け流した。社員のジョエルは、自販機の値上げを知って腹を立てる。ジョシュはシステム・エンジニアのトレイシーが勝手に暗証番号を変えたと知って、抗議に出向いた。トレイシーは「極秘資料を覗き見されたくないから」と、全く悪びれる様子を見せなかった。彼女はジョシュの離婚に気付き、「おめでとう」と告げた。
ジョシュは秘書のアリソンに声を掛けてから、支店長のクレイに会った。ジョシュは仕事の話をしようとするが、クレイはゲームに夢中だった。彼は「社員にスタッフミーティングのクリスマスプレゼントを買いに行こうぜ」とジョシュを誘い、外に連れ出した。ジョシュは商品券を勧めるが、クレイは「亡き父親が経営していた頃、クリスマスは大イベントだった」と言う。彼は当時のパーティーについて語り、自分も同じようにしたいのだと話す。
百貨店で商品を見ていたクレイは、ジョシュを誘って遊び始める。しかし巨大クリスマスツリーを倒して壊してしまうと慌てて逃げ出し、ジョシュは後を追った。クレイの姉で会社のトップであるキャロルがシカゴ支店に現れると、アリソンや社員のフレッドたちは緊張した様子を見せる。クレイの居場所を問われたアリソンは、「会議に出ていて連絡が取れません」と説明する。しかし嘘を見抜いたキャロルに改めて質問されると、クリスマスの買い物に出ていることを白状した。
キャロルはアリソンに、各部署の部長を5分以内に会議室に集めるよう指示した。買い物から戻ったクレイは、能天気な様子でアリソンに挨拶した。アリソンが「ここ3ヶ月の売り上げを見てた」と言うと、ジョシュは「目標の7%アップには満たなかったけど、秋には6%アップを達成できた」と釈明する。するとアリソンは「目標は12%よ」と告げ、自分がトップになってから目標が変更されていることを話す。彼女は「この支所は破綻してる」と指摘し、さらに成績の悪かったオーランド支所は閉鎖させたことを明かす。
新たな稼ぎ口は無いのかアリソンが問い掛けると、トレイシーが「あります」と告げる。ジョシュは「まだ早い」と止めるが、アリソンは説明を求めた。トレイシーはワイヤレスと送電線の技術を結合させるエニイウェアについて解説するが、開発に4年を費やしたと聞いたアリソンは「現実味が無い」と一蹴した。午後にはクリスマスパーティーが用意されていることを知った彼女は、鼻で笑って「中止にするから」と通告した。「全支所のパーティーは中止よ。出費がかさむ」と言われたクレイは、苛立った様子を見せた。
支社長室に移動したクレイに、アリソンは「ボーナスはカットよ。貴方の部下4割はカットする」と告げる。「父さんは多めに見てたけど、私は違う。クビが嫌なら今年の売り上げを12%上げて」と彼女が言うと、同席したジョシュはウォルター・デイヴィスのいるデータ・シティー社と契約できる可能性を口にする。午後に面会の約束があることを言うと、アリソンは「今夜、ロンドンに発つの。もしも契約が取れたらクビは無しよ」と告げて立ち去った。
クビの噂を知った社員たちはクレイとジョシュに詰め寄り、「誰もクビにしない」と約束しても信用されなかった。クレイとジョシュはトレイシーを伴ってウォルターと会うが、「デルと一緒にやる。君たちは企業体質に問題がある。支所を閉めて解雇するという噂がある」と契約を断られた。クレイは「ウォルターをパーティーに招待して楽しんでもらおう」と提案し、トレイシーも賛同する。「キャロルが支出を抑えてクビを切ると言っていたのを思い出せ」とジョシュが反対すると、クレイは「姉はクビなんか切らない。戦意を喪失させて、逃げないようにするだけだ。ウチが社員思いの会社だとわかれば、ウォルターは契約してくれる」と説得した。ウォルターはパーティーに招待されると、興味を示した。
会社に戻ったジョシュたちは、社員と共にパーティーの準備を進めた。クレイが「ボーナスも出す」と安易に約束したので、ジョシュは困った様子を見せた。夜、一時帰宅したジョシュがパーティーの支度を整えていると、キャロルがやって来た。彼女はニューヨーク本社で働かないかと誘い、給料は倍額で長期契約を保証すると約束する。「クレイは裏切れないし、今の仕事が楽しいんだ」とジョシュは断るが、キャロルは「楽しそうには見えないけど。とにかく考えておいて」と告げて去った。
支所に戻ったジョシュは警備員のカーラにウォルターの写真を渡し、姿を見せたら連絡するよう頼んだ。クレイはサンタクロースの扮装で皆の前に現れ、服に隠している大量の札束をジョシュに見せる。「何だよ、これは」とジョシュが告げると、クレイは「俺が借りた金だ。ボーナスになる」と説明する。「やり過ぎじゃないか。すごく金が掛かっているみたいだけど」とジョシュが不安そうに言うと、クレイは「クリスマスなんだぞ」と告げる。
アリソンは経理部員のフレッドと楽しく話し、トレイシーはNBA選手のジミー・バトラーを連れて来た。ドリューとティムからベッカを連れて来るよう要求されたネイトは、デート嬢の派遣サイトに連絡を入れた。経営者のトリーナはサヴァンナという女性を派遣してネイトから200ドルを受け取り、拳銃を突き付けて脅しを掛けた。ウォルターが来ると、ジョシュとトレイシーは丁重に出迎えた。ウォルターが「来たのが間違いだった」と早々に去ろうとするので、ジョシュたちは慌てて引き留める。
社員たちに囃し立てられたジョシュはウォルターの機嫌を取るため、苦手なエッグノックを一気飲みする。しかしウォルターは全く喜ばず、焦るジョシュにクレイは「刺激が必要だ。去年のアレをやってくれ」と促した。アリソンはフレッドと保育室でキスするが、彼が幼児プレーを始めようとしたので幻滅して立ち去った。ネイトはサヴァンナにドリューとティムを紹介しようとするが、一日の相手をするなら2000ドルの別料金が必要だと言われてしまう。ネイトは金を卸すため、慌てて支所を飛び出した。
仮装したジョシュとトレイシーが音楽に合わせて踊り出すと、社員たちは盛り上がった。サヴァンナはドリューとティムに、コカインをやらないかと持ち掛けた。クレイはウォルターに「リスクは必要だ。怖いことをやって生きてることを実感しよう」と言い、電飾を掴んでダーザンごっこをするよう提案する。しかしウォルターは全く興味を示さず、支所を去ろうとする。メアリーはサヴァンナの鞄から落ちた袋の中身がコカインではなく人工雪だと誤解し、スノーマシンに投入する。ウォルターは何も知らず、コカインを顔に浴びた。ウォルターはコカインのせいで豹変し、興奮してパーティーを楽しんだ。
ジョシュとトレイシーは屋上帆へ行くが、扉が閉まって戻れなくなってしまった。キャロルは吹雪で飛行機の運航が中止になったため、空港を後にした。ジョシュとトレイシーは屋上で会話を交わし、キスしようとする。そこへジェレミーが立ち小便にやって来たので、2人は屋内に戻ることが出来た。マイクを握ったウォルターが「君たちと一緒に仕事をしたい」と叫ぶのを聞いたジョシュは、クレイがハートを掴んだ」と喜んだ。キャロルはタクシーを拾って家に戻ろうとするが、運転手の言葉を聞き、ゼノテック社でパーティーが開かれていることを知る。彼女は憤慨し、すぐにシカゴ支所へ向かった…。

監督はウィル・スペック&ジョシュ・ゴードン、原案はジョン・ルーカス&スコット・ムーア&ティモシー・ダウリング、脚本はジャスティン・マレン&ローラ・ソロン&ダン・メイザー、製作はスコット・ステューバー&ガイモン・キャサディー&ダニエル・ラパポート、製作総指揮はボー・ボーマン&リチャード・ヴェイン&マシュー・ハーシュ&ジョシュ・ゴードン&ウィル・スペック、共同製作はホリー・バリオ、製作協力はケヴィン・K・ヴァフィー、撮影はジェフ・カッター、美術はアンドリュー・ロウズ、編集はジェフ・グロス&エヴァン・ヘンケ、衣装はカレン・パッチ、音楽はセオドア・シャピロ、音楽監修はジョナサン・カープ。
出演はジェイソン・ベイトマン、オリヴィア・マン、T・J・ミラー、ジェニファー・アニストン、ケイト・マッキノン、ジリアン・ベル、ヴァネッサ・ベイアー、コートニー・B・ヴァンス、ロブ・コードリー、アビー・リー、サム・リチャードソン、ジェイミー・チャン、ランドール・パーク、オリヴィア・クーパー、アンドリュー・リーズ、ダヴァイン・ジョイ・ランドルフ、カレン・ソーニ、マット・ウォルシュ、クロエ・ウェッパー、ベン・ファルコーン、エイドリアン・マルティネス、フォーチュン・フェイムスター、エリック・チャヴァリア、ジミー・バトラー、ニック・ペイン、マイケル・トーレック、ヴィンス・ピサーニ、ソニー・ヴァリセンティー他。


『俺たちフィギュアスケーター』『アラフォー女子のベイビー・プラン』のウィル・スペック&ジョシュ・ゴードンが監督を務めた映画。
脚本は、これが初めての映画となるジャスティン・マレン、初長編映画のローラ・ソロン、『アリ・G 』『ブルーノ』のダン・メイザー。
ジョシュをジェイソン・ベイトマン、トレイシーをオリヴィア・マン、クレイをT・J・ミラー、キャロルをジェニファー・アニストン、メアリーをケイト・マッキノン、トリーナをジリアン・ベル、アリソンをヴァネッサ・ベイアー、ウォルターをコートニー・B・ヴァンス、ジェレミーをロブ・コードリーが演じている。

能天気なコメディーなので、序盤から「ジョシュやクレイが善玉で、キャロルは憎まれ役」というように分かりやすくキャラ造形されている。
ただ、キャロルの冷徹な態度には問題もあるが、そんなに間違ったことばかり言っているわけでもない。
営業成績の悪い会社を閉鎖するのは、企業の経営者として当然の判断だ。
また、他の社員はともかくクレイに関しては遊ぶことしか考えていないグータラ男にしか見えないので、「これで支所はホントに大丈夫なのか」という疑問も湧く。

仮にクレイが経営者としての能力が低くて遊ぶことしか考えていない男だったとしても、社員から愛される存在であれば、それはそれで悪くない。
「担がれる神輿」として優秀であれば、経営や営業は優秀な部下たちが全てやってくれるので、それで支所は上手く回るだろう。クレイは会社の邪魔さえしなければ、「愛すべきバカ」でも構わない。
ただ、社員はクビの噂が広まると、クレイが「クビにしない」と約束しても全く信用せずに反発するのだ。
つまり、クレイは社員から全く信用されていないし、愛されていないってことになってしまう。完全に「金の切れ目は縁の切れ目」というドライな関係性なのだ。
それはダメでしょ。

ただし、クレイが社員から信用されていないってのは、しばらく話が進むと「そりゃ信用できないわな」と納得できるようになってしまう。
彼は単に「遊んでばかりで全く仕事に取り組もうとしない支所長」というだけでなく、経営を悪化させるリスクの高い男だ。パーティーの費用は予算内に収めると言っているけど、まるで信用できたものではない、借りた金で社員にボーナスを払うと言っているけど、それを返済できる保証なんて無いだろうし。
終盤に入り、「実はクレイが支所のために自分の財産を投入して破産していた」ってのが明らかになるけど、「彼は社員のことを愛して献身的だた立派な人物」なんて思わないよ。
自分の財産を投入しなきゃいけないってことは、つまり経営状態を考えていなかった意味であり、支所長としての能力の無さを自分の金で誤魔化していたってことになるんだから。

キャロルが目標を達成できなかったことを指摘していたが、それは単純に「クレイに経営者として大いに問題があったのが原因」としか思えないのだ。
だから、キャロルのリストラ方針は厳しすぎるけど、少なくともクレイを排除しようとするのは当然だなと感じるのだ。
彼に支所長を続けさせても、支所の成績が向上するとは到底思えない。むしろ破綻してしまう危険性の方が圧倒的に高いので、今の内に手を打っておくのが賢明だろうと。
これが「ボンクラに見えるけど実は優秀」とか、「遊んでばかりに見えたけど、それがビジネスに繋がっていた」みたいな真相でも隠されていればともかく、ホントにただのボンクラな遊び人なのだ。

また、「キャロルがクレイを攻撃したり、排除しようと目論んだりする気持ちも分からんではない」という問題もある。
幼い頃から父親がクレイばかり可愛がって自分に冷たくしていたら、そりゃあ弟への嫉妬心や憎しみが芽生えても仕方が無い。
死んだ後も、遺言で「遺骨はクレイと一緒に」と残しているぐらいで、クレイの支所長室に遺骨は置いてあるのだ。
分骨もさせてもらえないんだから、そりゃキャロルが怒りを覚えるのも無理は無い。

キャロルに関しては、後半に「空港に1人でいた少女を見て、サンタに電話してプレゼントをキャンセルを頼む芝居をするという嫌がらせをする」というシーンまで用意して憎まれ役としての存在をアピールしている。
ただ、それによって彼女の悪玉っぷりは強まっているが、違和感を覚える。そもそもダーシーが勝手にシナモンを食べたのに「食べてない」と嘘をついているという非があるのだが、それは置いておくとしても、キャロルの不快指数を高めるために無理をしているような印象を受ける。
何しろキャロルは25分ぐらい登場していないし、全体を通しても出番はそんなに多くないので、限られた時間で憎まれっぷりをアピールする必要があるのだ。それって、ようするに時間配分に失敗しているってことなんじゃないかと。
後述するが、社員たちにスポットを当てるシーンなんて用意するぐらいなら、そこを全て削ってキャロルの出番を増やせばいいんじゃないかと。

キャロルがパーティーの中止を通告しても、それをクレイが絶対に受け入れないってのは誰でも分かるだろう。そして実際、クレイたちはパーティーを開こうとする。
ただ、その経緯には大いに無理がある。
彼らは「ウォルターに契約してもらうため、パーティーに招待して楽しんでもらおう」ってことでパーティー開催を決定するのだが、そこの軽薄さは厳しいなあ。
そんなことで契約が取れるとクレイが思ったとしても、なんでジョシュやトレイシーまで賛同しちゃうのか。

「ジョシュが契約を取るための奮闘」「クレイとキャロルの関係」とが本作品の2本柱と言っていいと思うのだが、この2つの要素だけでも全く手に負えず、薄っぺらくてスッカスカになっている。
能天気なコメディーではあるが、だからと言って何でもかんでも軽薄でOKってことではない。
当然っちゃあ当然だが、コメディーとしての充実は必要だ。
見終わってから「何も残らない」という感想になるのは、コメディーから有りだけど、見ている間から「中身が薄いな」と感じさせちゃあダメなわけで。

しかも、その2つの要素だけでは足りないと思ったのか、社員たちの人間関係にまで手を広げている。
それらを全て上手く処理して融合させることが出来るのなら、それは全面的に歓迎できる。しかし実際には、メインの柱が薄い上に、他の要素が余計に邪魔しているという始末だ。
ネイトが商売女を呼んで恋人に見せ掛けるとか、アリソンがフレッドと親しくなるとか、何のつもりで持ち込んでいる描写なのかと言いたくなる。
そういうのって、メインの2本柱に何の関係も無いわけで。そこの恋愛劇が成功しようとしまいと、極端に言っちゃうと(いや極端に言わなくても)、どうでもいいでしょ。

クリスマスパーティーの内容を大まかに言うと乱痴気騒ぎであり、尻のコピーを取ったり、チンコを3Dプリンターで複製したり、トイレで風俗嬢にチンコをしごいてもらったりと、そりゃあ酷いモンだ。
高所から地上へ向かってコピー機が落下するシーンがあるが、これに関しては一つ間違えば死亡事故に繋がるわけで、「クリスマスパーティーだから大目に見よう」とは言えないでしょ。
女がコカインを持ち込んだのも、それをウォルターが浴びてしまったのも、彼がターザンごっこをやろうとして転落事故を起こすのも、同じことだ。
しかもウォルターは会社をクビになっており、契約の権限など無い。キャロルが支所の閉鎖を決めるのは、当然のことだ。

屋上に締め出されたジョシュとトレイシーの様子を描くパートも、「後半に入ってから、ここで恋愛劇を始めようとしてもタイミングが遅すぎるし、もはや邪魔でしかない」と感じるだけ。
そんな風に手を広げ過ぎたせいで、もっと丁寧に扱うべきクレイとキャロルの関係が、ものすごく雑な処理になっている。
もちろん最終的には「互いが寄り添って和解する」という誰もが予想できる着地に至るんだけど、何がどうなって関係が修復されたのか良く分からない。残り時間が少なくなって、過程を無視して強引にゴールへ突っ込んだ感じだ。
トレイシーがエニイウェアを完成させてキャロルが支所閉鎖を撤回するというのも、同じことが言える。

(観賞日:2019年4月11日)

 

*ポンコツ映画愛護協会