『グランド・イリュージョン 見破られたトリック』:2016、アメリカ

ディランが子供の頃、父のライオネル・シュライクは脱出マジックに挑戦した。見届け人としてサディアスがリポートする中、ライオネルは脱出に失敗して命を落とした。現在。フォー・ホースメンのメンバーはサディアスを刑務所へ送って姿を消し、秘密結社“アイ”からの連絡を待っていた。1年が経っても全く再始動の連絡が来ないため、ダニエルは我慢できずに単独で“アイ”との接触を図った。しかし、間もなくディランから連絡があると告げられ、彼は仕方なく立ち去った。
サディアスを刑務所へ送った後もFBI捜査官として活動しているディランは、局長のナタリーに「フォー・ホースメンがオクタ社のことで動き出している」と告げる。捜査官のコーワンは「2ヶ月前に人を送ったのに誤報だった」と言うが、ディランは「ホースメンは鳩で連絡を取っている」と主張する。ナタリーは呆れた様子を見せ、「この件に人員は回せない」と冷たく通告した。ディランはコーワンにフォー・ホースメンの仲間だと疑われていたが、もちろん無関係を主張した。
ダニエルが自宅へ戻ると、ルーラという女が待ち受けていた。ダニエルが不法侵入に腹を立てても、ルーラは平然とした態度を取った。ルーラは「アイに入りたい。貴方やメリットのように。ジャックは死んだと見せ掛けて生きてる」と言い、ヘンリーが抜けたことも知っていた。ついにディランから連絡が入ったため、ダニエルは久々にメリット&ジャックと会った。3人がディランの元へ行くと、ルーラが一緒にいた。ディランはルーラの才能を買っており、ホースメンの新メンバーに加えるとダニエルたちに告げた。
ディランはダニエルたちに、オクタ社を標的とする仕事を説明する。オクタ社はCEOのウォルター・メイブリーが1年前に死亡し、後釜にオーウェン・ケースが座っていた。オクタ社は次世代携帯を発売するが、利用者の情報を闇市場に流す計画を立てていた。そこでアイはオクタ社の陰謀を暴くことに決定し、ディランたちはプレゼンを乗っ取る仕事を任されたのだ。イベント当日、ダニエルたちは催眠術や手品を使い、順調に作戦を進めて行く。メリットはオーウェンを操り、ホースメンを紹介させた。
ホースメンがステージに登場する中、ナタリーやコーワンたちが部下を引き連れて駆け付けた。ディランは平然と芝居をするが、コーワンは「1時間前に匿名の電話があった。私の睨んだ通りだった」と冷淡に告げる。ステージの映像は何者かに乗っ取られ、ジャックは生きていること、ディランがホースメンの仲間であることが観客に暴露される。ディランはFBIから逃亡し、ホースメンは屋上のシューターを使って脱出した。だが、なぜかダクトを抜けた先は、マカオの中華料理店だった。
困惑するダニエルたちの前に、メリットの双子の弟であるチェイスが現れた。チェイスのせいで全てを失ったため、メリットは彼と長きに渡って連絡を取っていなかった。チェイスはボスに雇われていることを明かし、武装した大勢の手下を使ってダニエルたちを脅した。一方、途方に暮れるディランはサディアスからの電話を受け、「狙いは何だ」と問い掛ける。サディアスは「ゲームを先に仕掛けたのは君だ。私を刑務所に入れた時に。こっちの駒は動かした。次はそっちだ」と言い、電話を切った。
チェイスはホースメンを車に乗せ、ボスの所へ案内した。その道中、チェイスは1ヶ月前にピザ配達員に化けてメリットを催眠術に掛けたこと、ホースメンの個人情報を入手したことを明かした。彼が案内した場所にいたボスの正体は、ウォルターだった。彼は死んだと見せ掛けて、複数の会社を密かに操っていた。ウォルターは「世界中の情報網から姿を消すのが自分の目的だ」と言い、種明かしを説明する。ダニエルたちが使ったのは偽物のシューターであり、そこに催眠術の仕掛けが施してあったのだ。
ウォルターはホースメンに、オーウェンが成果を独占するため自分を陥れて会社から追い出したことを話す。彼は全ての暗号を解読して世界中のシステムをコントロールできるチップが競売に掛けられることを告げ、南アフリカのギャングが来る内覧会に潜入して盗み出す仕事を要求した。「従わなければ殺す」と脅されても、メリットたちは「ディランの承諾が無ければ引き受けない」と拒否する。しかしダニエルは「マカオには世界最古のマジック店がある。必要な道具はそこで揃う」と言い、仕事を引き受けると告げた。
ディランは連邦刑務所へ行き、コーワンの身分証を使ってサディアスと面会する。サディアスはディランに「今回の件と私は無関係だ」と言い、ホースメンの捜査という名目で外へ連れ出すよう要求した。「黒幕の所へ案内できるのは私だけだ」と彼に決断を迫られたディランは、書類に署名して彼を連れ出した。ダニエルはメリットたちに独断を責められ、「チップを渡しても奴らは解放しない。信用できるのはアイだけだ。彼らにチップを渡して逃がしてもらう」と述べた。
ダニエルたちは見張り役のチェイスと共に老婆のイヨンが営むマジック店へ行き、金属探知機を通るための特注品を作るよう依頼した。イヨンは英語が分からないため、孫のリーが通訳を担当した。メリットはチェイスを飲みに連れ出し、ダニエルは電話でアイに連絡する。サディアスはディランに、「古い友人の情報だと、彼らはマカオにいる」と教える。ダニエルはアイとの電話を終え、市場で青い帽子の男にチップを渡す約束を交わしたことをジャックたちに話した。
サディアスはディランに、「君は私がけしかけたせいで父親が死んだと思っているが、それは間違いだ」と告げる。しかしディランは彼の言葉を受け入れず、「仲間の元へ案内しなかったら、刑務所どころじゃなくなるぞ」と凄んだ。ダニエルはメリットたちに、内覧会のあるラボで本物のチップと偽物を摩り替える計画を説明した。そのために彼らは、チップを入れたカードを隠す練習を積む。内覧会に来るのはギャングの息子であるハネス・パイクで、博士と護衛2人、愛人のバフィーが一緒だった。
ダニエルたちはカジノへ赴き、ハネスたちの行動を追う。メリットがハネスに催眠術を掛け、ダニエルたちは他の面々が警察に連行されるよう罠を仕掛けた。ダニエルたちはハネスの同行者を装い、彼の車でラボへ行く。操られているハネスは車に待機し、ダニエルたちはラボに入った。4人は警備の隙を見てチップを摩り替え、厳重な身体検査と金属探知機をクリアして外へ持ち出した。ディランはサディアスに連れられ、イヨンの店を訪れた。ディランがライオネルの息子だと知ったイヨンは、倉庫へ案内した。そこには、かつてライオネルが注文し試作品が置かれていた。イヨンはディランに、ライオネルが残した腕時計を渡した。
ディランが仲間の情報を訪ねると、リーはダニエルが「市場で人に会う」と言っていたことを教えた。サディアスはディランが目を離した隙に姿を消し、「君の番だ」と書かれたメモが残されていた。ディランはタイパ市場へ行き、アイの人間を待つダニエルを発見した。露骨に迷惑そうな態度を示したダニエルは、「助けは要らない」と告げる。「誰と会う?」と訊かれた彼は、「アイの人間にチップを渡して助けてもらう」と答えた。「なぜアイと話したんだ?チップを渡せ」とディランが言うと、ダニエルは「もうアンタはリーダーじゃない。放っておいてくれ」と鋭く告げた。
ディランが立ち去った後、ウォルターが部下を伴ってダニエルの元へやって来た。彼は勝ち誇った様子で「電話の相手は僕だ」と告げ、単独で接触を図った時の声も自分だと明かした。ウォルターがチップを渡すよう迫っているとディランが戻り、ダニエルに掴み掛かってチップを取り上げたフリをする。彼はダニエルを扉の向こうへ押しやり、ウォルターの部下たちと戦うが捕まって連行される。ダニエルはメリットたちと合流し、ウォルターの部下がライオネルの金庫をトラックに積み込む様子を目撃して後を追う。ディランは船に連行されて暴行を受け、ウォルターがアーサー・トレスラーの非嫡出子だと知った…。

監督はジョン・M・チュウ、キャラクター創作はボアズ・イェーキン&エドワード・リコート、原案はエド・ソロモン&ピーター・チアレッリ、脚本はエド・ソロモン、製作はアレックス・カーツマン&ロベルト・オーチー&ボビー・コーエン、製作総指揮はケヴィン・デ・ラ・ノイ&ルイ・ルテリエ&エド・ソロモン&ロン・シウユン、共同製作はデヴィッド・カッパーフィールド&シェン・ボー&ロン・ヤン、製作協力はカール・マクミラン&メレディス・ウィーク、撮影はピーター・デミング、美術はシャロン・シーモア、編集はスタン・サルファス、衣装はアンナ・B・シェパード、視覚効果監修はマット・ジョンソン、音楽はブライアン・タイラー、音楽監修はランドール・ポスター。
出演はジェシー・アイゼンバーグ、マーク・ラファロ、ウディー・ハレルソン、デイヴ・フランコ、ダニエル・ラドクリフ、モーガン・フリーマン、マイケル・ケイン、リジー・キャプラン、ジェイ・チョウ、サナ・レイサン、デヴィッド・ウォーショフスキー、ツァイ・チン、ウィリアム・ヘンダーソン、リチャード・レイン、ヘンリー・ロイド=ヒューズ、ブリック・パトリック、ザック・グレゴリー、ベン・ラム、ファン・フェンフェン、アーロン・ライ、シド・カサドス、ジェム・ウィルナー、ジェームズ・リチャード・マーシャル、アレクサ・ブラウン他。


2013年の映画『グランド・イリュージョン』の続編。
脚本は、前作にも参加していたエド・ソロモンが単独で担当。
監督は、前作のルイ・リテリエから『G.I.ジョー バック2リベンジ』のジョン・M・チュウに交代。
ダニエル役のジェシー・アイゼンバーグ、ディラン役のマーク・ラファロ、メリット役のウディー・ハレルソン、ジャック役のデイヴ・フランコ、サディアス役のモーガン・フリーマン、アーサー役のマイケル・ケインは、前作からの続投。
ウォルターをダニエル・ラドクリフ、ルーラをリジー・キャプラン、リーをジェイ・チョウ、ナタリーをサナ・レイサン、コーワンをデヴィッド・ウォーショフスキー、イヨンをツァイ・チンが演じている。

ジェイ・チョウやツァイ・チンが主要メンバーとして出演していることから「ひょっとしてアレかな?」と思った人、それは大正解だ。
この続編は香港のTIK Filmが製作に参加しているので、そういうことだ。ホースメンが拉致される場所がマカオなのも、そういうことだ。
中国や香港の資本が入っていても、それを露骨に感じさせないような作品も無いわけではない。
でも、大抵の場合、何かしらの形で中国を感じさせるよね。

前作でフォー・ホースメンのヘンリーを演じていたアイラ・フィッシャーは、妊娠中だったので出演していない。
事情が事情だから仕方が無いことだが、「前作のメンバーが揃わない」ってのは大きなマイナスだ。
「ヘンリーは秘密結社を抜けた」という設定にされ、代わりにルーラが新たなホースメンとして参加しているが、初登場なのに何の準備運動も無い内から「新しいフォー・ホースメンです」と紹介されても、そう感嘆には受け入れられないよ。
ルーラの得意分野が何なのかさえ、まるで説明が無いし。

オープニングでは、少年時代のディランが父であるライオネルの脱出マジックを見守る様子が描かれる。見届け人のサディアスがリポートする中、ライオネルは脱出に失敗して命を落とす。
そんな様子が描かれるのだが、前作ではライオネルをイライアス・コティーズが演じていたのに今回はリチャード・レインなので、「だったら、そのシーンを無理に入れなくてもいいんじゃないか」と言いたくなる。
決して必要不可欠なシーンというわけではないよ。
「父の死に悲嘆するディラン」とか「見届け人のサディアス」ってのを見せておきたかったとしても、ライオネルを出さずに描くことは可能だし。

そのシーンの後、サディアスがフォー・ホースメンに向かって「良く覚えておけ。君たちは報いを受ける。当然の報いだ」と言うシーンがある。
前作でフォー・ホースメンの罠に落ちて刑務所送りになっているので、もちろん彼が復讐を目論んでいるんだろうと思わせる台詞だ。
しかし完全ネタバレになるが、終盤に入って「実はサディアスはライオネルと親友であり、わざと敵対関係を演じていた」という事実が明かされる。
もちろんサプライズを狙った仕掛けだが、「いや無理があるわ」と全力で言いたくなるぞ。

前作でサディアスは、「ライオネルを含む大勢のマジシャンのトリックを暴露したきた男」として描かれていた。そこについては、この続編で全く否定されていない。
だったら、その時点で「実はマジシャンの味方」という仕掛けと整合性が取れないでしょ。
まさか、「彼が暴いたのは大したトリックじゃないから、マジシャンに迷惑は掛かっていない」とでも言いたいのか。それとも、「ライオネルとは結託していたけど、他のマジシャンのことは全く考えちゃいなかった」ってことなのか。
どうであれ、今さら「サディアスは善玉でした」という設定にされても「前作と辻褄が合わない」という問題からは逃れられないぞ。

今回の話だけを取ってみても、サディアスはアーサーと組んでディランをマカオへ連れ出している。そのせいでディランは、アーサーたちに殺されそうになっているのだ。
たまたまアーサーたちが脱出のチャンスがある殺害方法を選んでくれたから助かったものの、下手すりゃディランは死んでいたんだぞ。ナイフで刺し殺すとか、銃で撃ち殺すとか、そういう方法だったら逃げるチャンスも無かったんだぞ。
そうなっていたら、サディアスはどう責任を取るつもりだったのか。
あと、殺そうとする前には激しい暴行も受けているけど、それで死ぬまで治らない大怪我でも負っていたら、サディアスはどうするつもりだったのかと。
「アーサーとウォルターを利用してホースメンの成長を促した」と彼は説明するけど、ふざけんじゃねえぞと。

前作を作った時点ではシリーズ化なんて全く考えていなかっただろうから、続編が決まった時に第1作から上手く話を繋げることが難しいという事情はあっただろう。
だけど、そんなのは何の言い訳にもならないわけで。
あと、前作との違いを付けたかったのかもしれないが、フォー・ホースメンが何の仕事も成功させない内に、「敵に騙され、脅しを受けて仕事を強要される」という展開に入ってしまうのは、まるで気持ち良くないんだよな。
尺の都合はあるだろうけど、そこは何とかならんかったのかと。

ダニエルたちは第1作で秘密結社に入会して表舞台から姿を消したため、「マジックショーの出演者」という表向きの稼業を失っている。
前作からの続きなので仕方が無いことだが、これも大きなマイナスになっている。
また、今回はフォー・ホースメンがマジックショーを披露しないので、「マジシャンの能力を持った面々」という設定の意味も無くなっている。ただの工作員なので、工作員としての技能さえあれば事足りるのだ。
もちろん任務遂行にマジシャンの技能は使っているが、「他の方法でもいいよね」と思っちゃうのだ。

前作のメリットは「メンタリスト」という設定で、「催眠術も使える」ということになっていた。しかし今回は、完全に「催眠術師」という設定になっている。
そこの引っ掛かりは置いておくとして、相変わらず「メリットさえいれば他の奴らは要らなくねえか」という印象になっているのよね。
何しろメリットの能力を使えば、周囲の人間を自由に操ることが出来るわけで。ダニエルたちが手品を使って細工を施す様々な作業は、全て「メリットがメンタリズムや催眠術で人を操る」ということで代用できてしまうのよ。
メリットの能力が強すぎて、まるでパワー・バランスが取れていないのよね。

前作で感じたのは、VFXや編集で何とでも出来ちゃうので、どれだけ凄い手品を劇中で披露したとしても「手品の凄さ」は感じないってことだった。
実際、映像を細工していたり、エキストラの演技に頼っていたりという手品ばかりだった。
どうやら今回は「本物の手品」にこだわったらしく、出演者は撮影前に手品を猛練習したそうだ。
でも、そうであったとしても、「VFXや編集でどうにでもなるし」という印象は全く変わらない。

実際、「出演者が猛練習して実際に手品が出来るようになった」という成果が出ているとは、到底言い難い。
初めて手品を披露するシーンからして、完全に見せ方を間違っている。
それはルーラがダニエルと初対面するシーンで、「頭部に斧が落下するが服を残して姿を消し、別の場所に移動する」という手品だ。
ところが、カットを切り替える編集に頼っているので、「そりゃ瞬間移動できるだろ」と言いたくなるのだ。
本物の手品にこだわるのなら、そこはワンカットで見せなきゃ意味が無いでしょ。

ラボのシーンでは、ホースメンがチップを入れたカードを警備員の身体検査で見つからないよう、隠しながら順番に受け渡す様子が描写される。
ここではホースメンがカードを掌や手の甲に素早く移動させるなど、練習の成果が披露されている。
ただし、それだけでなく映像の加工や編集を使っている部分もある。
その両方を混在させることによって、せっかく本物の手品のテクニックを使っているのに、価値が無くなってしまうんだよね。

ラボのシーンにも、別の問題もある。それは、ホースメンの全員がカードを隠すテクニックを使うことだ。
その前に練習を積むシーンは用意されているけど、メリットなんかはメンタリズムが専門だから普段とは全く違う技術のはず。それなのに、そんな付け焼刃の練習だけで簡単に会得できてしまうのかと。
もっとマズいのは、全員が同じ技術を使うってことだ。
今回はダニエルが催眠術を使うシーンもあるんだけど、なぜ同じ技能を複数のキャラに共有させるかね。その人ならでは異なる技能を持った面々が集まっているからこそ、ホースメンが一緒に行動する意味があるはずでしょうに。
わざわざ個性を薄めて、似通った方向へ持って行く狙いは何なのかと。

終盤に入ると、ようやくホースメンが街のあちこちでマジックショーを披露する展開が訪れる。
そのショーが、ウォルターとアーサーを罠にハメる結末へと繋がっている。
「敵に動きを読まれて捕まり、殺されそうになったかと思いきや、実は全て計画通りでした」という展開になっており、大勢の観客の前で「大成功、チャッチャラーン」という着地になる。
だけど見事なぐらい御都合主義を感じさせる作戦だし、種明かしになっても「華麗なコン・ゲーム」みたいな爽快感は全く味わえないのよね。

(観賞日:2018年2月4日)

 

*ポンコツ映画愛護協会