『ゴンゾ宇宙に帰る』:1999、アメリカ

マペットの下宿で暮らすゴンゾは、ある夢を見た。ノアの方舟に乗せてもらおうとするが、何者か分からないことを理由に追い払われてしまうという夢だ。一人で置き去りにされたゴンゾは叫び声を上げて飛び起き、ルームメイトのリゾを窓の外へ弾き飛ばしてしまった。翌朝、下宿を営むカーミットや住人のペペ、フォジー・ベア、ロルフ、スタトラーとウォルドーフの老人コンビといった面々が起きてきた。カーミットや甥のロビンたちが朝食を食べる中、ミス・ピギーは「人気キャスターは忙しいわ」と言いながら出掛けて行く。
食卓に現れたゴンゾだが、まるで元気が無い。ユダヤ教会で大好きな大砲に入るパフォーマンスをやることになっていたが、バンドのドクター・ティースやアニマルたちに交代してもらった。ゴンゾがアルファベットのシリアルを食べようとすると、「WATCH THE SKY(空を見ろ)」という順番に並んだ。驚いたゴンゾはリゾを呼ぶが、視線を戻すとシリアルはバラバラになっていた。だが、リゾが離れると、今度は「R U THERE(君はそこか)」という文字列をシリアルが作った。
トップ・シークレットの国防機関であるコヴネット(C.O.V.N.E.T)の任務は、地球外生物による攻撃の心配が無いかどうか調べることだ。普段はセメント会社を装っている。そのコヴネットの所長であるエドガー・シンガーはラフト将軍を呼び、決定的な証拠を入手したことを告げる。シンガーは「数ヶ月前から不可思議なメッセージを探知しており、その発信源は地球ではありません。エイリアンから地球へ潜入させたスパイへの連絡です」と説明し、世界の各地で出現した「R U THERE」の文字列の写真を見せた。シンガーは「エイリアンは地球へ向かっています」と告げるが、ラフトは相手にしなかった。
ゴンゾは昼間から屋根の上に座り込み、空を眺めていた。夜になり空から降って来た雷が彼を襲った。電撃を浴びたゴンゾは幻影の中で宇宙の魚たちと出会い、「芝生を刈って、宇宙から見えるようにメッセージを書いて伝えるのです」と告げられる。ゴンゾはカーミットやリゾたちの元へ行き、「僕は宇宙から来た宇宙人だ」と興奮した様子で語る。彼は芝刈り機を使い、庭に「I AM HERE(僕はここだ)」というメッセージを大きく書いた。
翌朝、シンガーは助手のレントロから見せられた衛星写真で、ゴンゾが作ったメッセージを知った。彼はメッセージを書いた人物が宇宙人のスパイだと確信する。シンガーは確たる証拠を掴むため、しばらく様子を見ることにした。疲れて眠り込んだゴンゾに、ペペとリゾは宇宙人のフリをして「ジャクージを作ったら来てやろう」と吹き込んだ。仲間からのメッセージだと信じ込んだゴンゾは目を覚まし、ジャクージ(ジャグジー)を作って宇宙人を歓迎するパーティーを開く。だが、もちろん宇宙人は来なかった。
次の朝、カーミットたちはギャラクシー・チャンネルの『UFOマニア』という生放送のテレビ番組を視聴する。一方、地下室で研究している科学者のブンゼンは、ゴンゾに協力を申し出た。彼は「電気の通りを良くすれば宇宙人とコンタクトできるはず」と言い、ゴンゾの頭部に装置をセットする。助手のビーカーが電極を繋ぐと、テレビ番組の司会者シェリーが「スタジオへお越し下さい」と呼び掛ける声が聞こえてきた。それをゴンゾは「マザーシップが呼んでる」と思い込み、テレビ局へ向かう。
ピギーはテレビ局でコーヒー係をしていたが、シェリーが空港で足止めを食らって『UFOマニア』の放送時間に間に合わないと知り、代役に名乗りを挙げた。だが、いざ本番が始まると、緊張で上手く話せない。そこへゴンゾが乱入し、カメラに向かって「僕は宇宙人だ。仲間に連絡しに来た」と語る。面白がったプロデューサーは、ピギーにインタビューを指示した。ゴンゾは「僕はここだよ。ぜひ君たちに会いたい」と、仲間たちに呼び掛けた。番組を見ていたシンガーは、レントロに「こいつを連れて来い」と命じた。
番組がコマーシャルに入った時、カーミットとリゾがスタジオへ現れた。コンゾはカーミットから「今回の宇宙人騒ぎはやり過ぎだよ」と優しく諌められ、「信じられないのは仕方が無いけど、僕も好きで宇宙人になったわけじゃないんだ」と説明する。そこへ黒服の男たちが現れ、「宇宙人虐待防止委員会の者だ。彼を渡してもらおう」と告げた。「君の苦しみは分かる。手助けしよう」と言われたゴンゾは、彼らに付いて行くことにした。リムジンが用意されていると知ったリゾは、通訳係と称して同行する。
ピギーはプロデューサーに「特ダネを取って来るから、キャスターにして」と取引を持ち掛け、黒服たちの後を追う。黒服の一人バーカーはゴンゾたちを先に行かせ、ピギーを制止する。バーカーから脅しを受けたピギーは、宇宙人虐待防止委員会というのが嘘だと悟った。ピギーはバーカーと戦い、そして退治した。一方、カーミットが下宿へ戻ると、ゴンゾの名を叫ぶ大勢の人々が集まっていた。カーミットが一人の女性に話し掛けると、彼女は宇宙人から呼ばれてゴンゾの住まいに来たのだと説明した。
ピギーはバーカーを拘束して脅し、コブネットが秘密施設へゴンゾを連行したことを聞き出した。彼女は着替えるために下宿へ戻ってカーミットたちに事情を語り、「大スクープよ」と興奮した様子で告げる。カーミットはゴンゾを助け出そうと考えるが、一緒にいたフォギー・ベア、ペペ、アニマルは、役に立ちそうになかった。そこでカーミットはブンゼンとビーカーに協力を依頼し、発明品を幾つか貸してもらった。
ゴンゾとリゾを本部で待ち受けたシンガーは、エージェントのハルク・ホーガンを呼び寄せた。彼はホーガンに、リゾをタッカー博士のラボへ連行するよう指示した。ホーガンによってシューターに投げ込まれたリゾは、地下研究室のケージに落下した。そこにはブッバ、エディー、トロイ、シックス、バードマンというネズミたちがおり、タッカーの実験台にされようとしていた。
シンガーはゴンゾを捕まえ、「奴らは何人来る?いつ来る?」と問い詰める。ゴンゾが「分かりません」と答えると、シンガーは「脳を取り出して調べる」と言い、部下たちを呼んで連行させた。カーミットたちは車に乗り込み、ゴンゾの救出に向かう。途中でブンゼンとビーカーを置き去りにしてしまう失態はあったが、彼らはコヴネットの施設へ向かった。リゾやブッバたちはタッカーによって、様々な装置を使った実験を強いられた。
ゴンゾは手術を受けさせられる前に、独房へ入れられた。レントロはゴンゾにサンドウィッチを差し入れた。するとサンドウィッチは、「我々は今夜、午前0時に到着する」という宇宙人の言葉を喋った。そこでゴンゾは、破滅岬のビーチに来てほしいと告げた。その会話を耳にしたレントロだが、シンガーには内緒にした。カーミットたちは施設に到着し、ピギーが発明品のスプレーを門番に浴びせてゲートを開けさせた。カーミットたちはアヒルのスプレーを使い、透明になった。
ゴンゾが手術室へ連行されて手術室に括り付けられていると、コヴネットのヴァン・ニューター博士がやって来た。フォギー・ベアは手を洗ったため、その部分だけが見えるようになってしまった。それを女性警備員に気付かれるが、アニマルが体に触りまくると逃げ出した。効力が切れて全身が見えるようになったカーミットたちは、白衣を来て医者に扮した。リゾはケージに穴を開け、ブッバたちと共に脱出した。リゾはゴンゾを救うため、ブッバたちと別れた。
ヴァン・ニューターがゴンゾの脳を取り出そうとしているところへ、リゾが現れた。さらにブッバたちも駆け付け、ネズミ嫌いのヴァン・ニューターは狼狽する。手術室で騒ぎが起きているところへ、カーミットたちもやって来た。カーミットたちはゴンゾを救い出し、施設から逃亡した。ピギーはカメラマンのマイキーに電話を掛けて状況を説明し、「特ダネだからビーチへ来て」と告げる。下宿の前で張り込んでいたマイキーが大声で話したため、集まっていた野次馬たちもビーチへ向かう。シンガーはレントロを脅してゴンゾの行き先を聞き出し、強力な銃を持ってビーチへ向かう。ゴンゾと仲間はビーチに到着し、待ち受けていた野次馬と共に空を見上げる。だが、約束の午前0時を過ぎても、宇宙人は現れない。野次馬たちが帰ろうとした時、巨大な宇宙船が出現した…。

監督はティム・ヒル、脚本はジェリー・ジュール&ジョセフ・マッザリーノ&ケン・カウフマン、製作はブライアン・ヘンソン&マーティン・G・ベイカー、共同製作はティモシー・M・ボーン&アレックス・ロックウェル、製作総指揮はクリスティン・ベルソン&ステファニー・アラン、撮影はアラン・カーソ、編集はマイケル・A・スティーヴンソン&リチャード・ピアソン、美術はスティーヴン・マーシュ、衣装はポリー・スミス、視覚効果プロデューサーはトーマス・G・スミス、音楽はジャムシード・シャリフィー。
声の出演はデイヴ・ゴールズ、スティーヴ・ホイットマイア、ビル・バーレッタ、フランク・オズ、ジェリー・ネルソン、ブライアン・ヘンソン、ケヴィン・クラッシュ他。
出演はジェフリー・タンバー、F・マーレイ・エイブラハム、デヴィッド・アークエット、ジョシュ・チャールズ、キャシー・グリフィン、パット・ヒングル、ハリウッド・ホーガン(ハルク・ホーガン)、レイ・リオッタ、アンディー・マクダウェル、ロブ・シュナイダー、出演はヴェロニカ・アリシーノ、デヴィッド・レンサル、リチャード・フラートン、マーク・ジョイ、カール・エスピー、デロン・バーネット、クリスティーナ・マリンズ、エレン・ナリー他。


ジム・ヘンソン・プロダクションの製作したテレビ番組『マペット・ショー』及び『マペット放送局』のマペット(操り人形)が登場する映画。
監督のティム・ヒルはテレビ番組の脚本や演出を務めていた人で、これが映画デビュー作。
シンガーをジェフリー・タンバー、ノアをF・マーレイ・エイブラハム、タッカーをデヴィッド・アークエット、バーカーをジョシュ・チャールズ、女性警備員をキャシー・グリフィン、ラフトをパット・ヒングル、門番をレイ・リオッタ、シェリーをアンディー・マクダウェル、番組プロデューサーをロブ・シュナイダーが演じている他、ハルク・ホーガンがエージェントになった本人として登場する。

『マペット・ショー』以降、この作品までに、番組のマペットが出演する長編劇場映画は5本作られている。
1979年の『マペットの夢みるハリウッド』、1981年の『マペットの大冒険/宝石泥棒をつかまえろ!』、1984年の『マペットめざせブロードウェイ!』、1992年の『クリスマス・キャロル』(『マペットのクリスマス・キャロル』)、1996年の『マペットの宝島』だ。
ただし、今回の主人公であるゴンゾの初登場は、『マペット・ショー』が放送される以前の1975年に作られた『Muppet Picker Upper』だ。

マペットのキャラクターは何人もいて、なるべく大勢の面々を登場させたり喋らせたりしたいという意識があるんだろう。
だけど、そのせいで物語がスムーズに進行せず、ちょっと寄り道が多くなっているかなあという印象は否めない。
もっと「ゴンゾの物語」としての意識が強くあってもいいような気がするけど、そこに集中しないから散らばっちゃう。
「カーミットが下宿に帰ったら野次馬が集まっていた」とか、一応は後の展開に野次馬たちが関わって来るものの、あまり上手く流れに乗っていないなと。リゾがブッバたちと知り合うってのも、やや手を広げ過ぎかなと。
色んなところに気を配っているせいで、肝心なゴンゾの存在感が薄くなっているように感じるし。

劇中では1970年代のソウル・ミュージック、ファンク・ミュージックが使われている。
Billy Prestonの『Outa-Space』やThe Isley Brothersの『It's Your Thing』、James Brownの『Get Up Offa That Thing』、Brickの『Dazz』(G. Love and Special Sauceによるカバー・バージョン)などの楽曲だ。
1970年代のソウルやファンクといったジャンルにこだわって挿入される曲の数々が、果たして映画の内容と上手くリンクしているのかというと、それは微妙なところだ。
やっぱり、オリジナル・ソングを色々と散りばめた方が良かったんじゃないかという気がしないでもない。
ただ、それよりも感じるのは、「ちゃんとしたミュージカル映画や音楽映画にすれば良かったんじゃないかなあ」ということだ。

序盤、朝が来て目を覚ましたマペットたちの様子が写し出され、The Commodoresの『Brick House』が流れるシーンがある。
そこでは、マペットの何人かはリズムに合わせて体を動かしているし、ミュージカルっぽい雰囲気も感じられる。
ただ、全員が踊ったりリズムを取ったりしているわけじゃないし、歌っているような口パクは無い。
やや半端な形になっていて、勿体無いように思えてしまう。

その後は歌が流れても、ただのBGMとして使われるだけで、マペットたちがそれに合わせて口や体を動かすようなことは無い。
既存の曲を使うのであれば、有名な歌、ヒットした歌に合わせてマペットたちが歌い踊るミュージカル・シーンを作っていけば、それだけでも充分に楽しめるんじゃないかと思ったりするんだけどね。
終盤、宇宙人たちがゴンゾと再会できた喜びを表すためにバンドの演奏と歌唱という形でKool & The Gangの『Celebration』を当てブリするシーンなんて、単純に楽しいんだし。せっかくソウル&ファンクの曲を使っているのに、ファンキー度数がイマイチ低いんだよなあ。
あと、この邦題はJAROに叱られるレベルだと思うぞ。
だって、『ゴンゾ宇宙に帰る』という題名だけど、ゴンゾは宇宙へ帰らず地球に留まるんだから。

(観賞日:2013年5月2日)


第22回スティンカーズ最悪映画賞(1999年)

ノミネート:【最悪の続編・前編】部門

 

*ポンコツ映画愛護協会