『クリスタル殺人事件』:1980、イギリス

1953年。推理を得意とする老婦人ミス・マープルは、お手伝いのチェリーと共にロンドン郊外のセント・メアリー・ミード村に暮らしている。村にはアメリカの映画監督ジェイソン・ラッドと妻で大女優のマリーナ・グレッグが、撮影のために訪れている。
ジェイソンとマリーナが借りている屋敷でパーティーが行われることになった。2人の秘書エラ・ジーリンスキー、執事ベイツ、村人のドリー・バントリー、ヘザー・バブコック、チェリーを含む多くの人々が、屋敷に集まった。
そこへ、マリーナと敵対関係にある女優ローラ・ブルースターと夫でプロデューサーのマーティン・N・フィンが現れた。バブコックの長話に付き合わされていたマリーナは、やって来たローラと互いに敵意を剥き出しにする。
パーティーの途中、ダイキリを飲んだバブコックが死亡する。死因はアメリカ製の睡眠薬を使った毒殺と断定された。ロンドン市警の主任警部でミス・マープルの甥にあたるデルバート・クラドックは、捜査を開始して関係者から話を聞く。
捜査が進められる中、エラが屋敷の外の公衆電話を何度も使用するという不審な動きを見せ始める。だが、彼女は何者かによって殺害されてしまう。やがてミス・マープルは、今回の事件と過去の出来事の関連性に気付き、犯人を突き止める…。

監督はガイ・ハミルトン、原作はアガサ・クリスティー、脚本はジョナサン・ヘイルズ&バリー・サンドラー、製作はジョン・ブラボーン&リチャード・グッドウィン、撮影はクリストファー・チャリス、編集はリチャード・マーデン、美術はマイケル・ストリンガー、衣装はフィリス・ダルトン、音楽はジョン・キャメロン。
出演はアンジェラ・ランズベリー、ジェラルディン・チャップリン、トニー・カーティス、エドワード・コックス、ロック・ハドソン、キム・ノヴァク、エリザベス・テイラー、モーリーン・ベネット、ウェンディ・モーガン、マーガレット・コートネイ、チャールズ・グレイ、マレラ・オッペンハイム他。


アガサ・クリスティーの推理小説“ミス・マープル”シリーズの一編『鏡は横にひび割れて』を映画化した作品。『オリエント急行殺人事件』『ナイル殺人事件』に続く、オールスター・キャストによる“アガサ・クリスティー・ミステリー”シリーズの第3弾。
ミス・マープルをアンジェラ・ランズベリー、エラをジェラルディン・チャップリン、マーティンをトニー・カーティス、クラドックをエドワード・コックス、ジェイソンをロック・ハドソン、ローラをキム・ノヴァク、マリーナをエリザベス・テイラーが演じている。アンクレジットだが、ピアース・ブロスナンが少しだけ出演している。

殺人が起きるまでは、田舎の風景の中で、非常にのどかな雰囲気で進行していく。やがてバブコックが殺害されるが、毒殺の瞬間は描かれない。殺人の後はどうなのかといえば、やはりノンビリした雰囲気は変わらない。
ミス・マープルが主役であるはずなのだが、実は出番はそれほど多くない。そもそも、関係者に事情を聞いて回るのは彼女ではなく、クラドック警部である。主役の動きの弱さをカバーするだけの緊迫感やスピード感があるわけでもない。

最も怪しくないように描かれている人物を疑えというのは、ミステリーの鉄則だ。この作品は、その鉄則に忠実だ。よって、キャラクターの描写のされ方や役者の芝居を見ていれば、多くの人は前半の内に犯人を絞り込むことが可能だろう。
そんなわけだから、原作を読んでいなくても、犯人探しの面白さを期待してはいけない(キャスティングの時点でバレているという話もあったりして)。では代わりに人間ドラマが厚くなっているのかというと、別にそういうわけでもない

犯人の動機に弱さがある。恨みは持つかもしれないが、かなり昔の出来事であるし、殺人に至る動機としては弱い。しかも、犯行の動機について語ることで補足すべき犯人は、最後の場面では喋ることが不可能な状態にある。
そもそも、一連の“アガサ・クリスティー・ミステリー”シリーズは、豪華なキャスティングを楽しむというのが正しい鑑賞方法なのである。ただし、前2作に比べるとキャスティングでは落ちるかもしれない(これは個人的な嗜好もあるだろうが)。


1980年スティンカーズ最悪映画賞

ノミネート:【最悪の助演女優】部門[エリザベス・テイラー]

 

*ポンコツ映画愛護協会