『ギャンブラー』:1971、アメリカ
ワシントン州とカナダの国境近くにある、プレスビテリアン・チャーチという小さな町。パトリック・シーハンの営むサルーンにジョン・マッケイブが現れ、客を相手にスタッド・ポーカーを始めた。名前を知ったシーハンが「ならず者のパジーか」と確認すると、マッケイブは「ただの商売人だよ」と告げた。しかしシーハンは、彼がビル・ラウンドトゥリーを撃った乱暴者だと確信した。マッケイブは常連客のスモーリーから、こちら側の地主がシーハンであること、水門側は彼とジョーとJJとビルであることを聞き出した。
マッケイブは娼婦を買い集め、仲間のバートたちに酒場兼賭博場を建てさせた。シーハンが共同経営を持ち掛けると、マッケイブは冷淡に拒否した。バートは町に妻のアイダが来たので、マッケイブに紹介した。娼婦のコンスタンス・ミラーは、マッケイブに「宿があれば必ず稼げる。アンタは資金を出すだけ。店の女の面倒も経営も全てこっちでやる。儲けは折半で」と持ち掛けた。マッケイブが「その商売を始めたんだ」と言うと、ミラーは「あれで商売する気?私のは上品な娘と清潔さを備えた店よ」と告げる。マッケイブは「俺にも商売の知恵はある」と反発するが、ミラーが具体例を挙げて適切な対処が出来るのかと尋ねると、言葉に窮して取引を承諾した。
ミラーは新しい娼婦たちを呼び集め、宿に作った風呂で体を洗わせた。マッケイブが「勝手に宿を建てて風呂を作り、調度品を買った。店の酒は全く売れてない」と怒ると、ミラーは「町の男は、その風呂に入って、その宿で女を抱いてる」と反論した。彼女が充分すぎる稼ぎを見せたので、マッケイブは満足そうな表情を浮かべた。ミラーから帳簿を正しく付けていないことを指摘された彼は、「そんなことで偉そうにするな」と苛立った。バートはアイダを商売女だと誤解した男に腹を立てて殴り付け、反撃を受けて重体に陥った。
鉱山会社「ハリス&ショーネシー」のシアーズとホランダーが町に来て、マッケイブに「町の鉱床を買いたい。一括で買い取ります」と説明した。マッケイブが「幾ら出す?」と質問すると、シアーズは「会社の上限は5500ドルです」と答えた。マッケイブが「充分な額とは言えないな」と言うと、彼は「シーハンは1600で合意した」と告げる。マッケイブは「下手な取引をしたな。俺と商売をしたいなら、それに見合った金額を提示しろ」と告げ、シアーズたちを帰らせた。
マッケイブはミラーの元へ行き、シアーズが来たことを話した。彼が「5500ドルで土地を買いに来た。悪くない金額だが、断ったから値を上げて来る」と語ると、ミラーは「その会社を知ってる?戻って来たら殺されるわ」と警告した。戻って来たシアーズは、マッケイブに会社を説得させて750ドルを上積みさせると約束した。しかしマッケイブは納得せずに大幅な上積みを要求し、翌朝に出直して来れば相談に乗ると告げて追い払った。彼はミラーに「予想通り、あいつらは戻って来たぜ」と勝ち誇った態度を示し、翌朝に戻って来ると自信を見せた。しかしシアーズはマッケイブの説得を諦め、もう会おうとしなかった。
バートが死亡したので、マッケイブたちは葬儀を執り行った。若いカウボーイが女目当てで町に来たので、マッケイブは歓迎した。アイダはミラーの仕切る店で、娼婦として働き始めた。バトラーという男が鉱山会社から派遣され、ライフルを携えて町に入った。マッケイブはシーハンの店へ赴き、バトラーに金額を提示して取引をまとめようとする。しかしバトラーは交渉を拒否し、脅しを掛けた。マッケイブは弁護士事務所を訪れ、上院議員を目指す弁護士のクレメントに相談する…。監督はロバート・アルトマン、原作はエドマンド・ノートン、脚本はロバート・アルトマン&ブライアン・マッケイ、製作はデヴィッド・フォスター&ミッチェル・ブロワー、製作協力はロバート・エッゲンワイラー、美術はレオン・エリクセン、撮影はヴィルモス・スィグモンド、編集はルー・ロンバード、衣装はイルゼ・リクター、音楽はレナード・コーエン、歌はレナード・コーエン。
出演はウォーレン・ベイティー、ジュリー・クリスティー、ルネ・オーベルジョノワ、ウィリアム・ディヴェイン、ヒュー・ミレー、ジョン・シャック、コリー・フィッシャー、マイケル・マーフィー、キース・キャラダイン、バート・レムゼン、シェリー・デュヴァル、アントニー・ホランド、マンフレッド・シュルツ、ジェイス・ヴァンダー・ヴィーン、ジャッキー・クロスランド、エリザベス・マーフィー、ケアリー・リー・マッケンジー、トム・ヒル、リンダ・ソーレンセン、エリザベス・ナイト、ジャネット・ライト、メイジー・ホイ、リンダ・クーペセク他。
エドマンド・ノートンの小説『McCabe』を基にした作品。
監督は『M★A★S★H マッシュ』『BIRD★SHT バード★シット』のロバート・アルトマン。
脚本はロバート・アルトマン監督と、これが映画デビューとなるブライアン・マッケイの共同。
マッケイブをウォーレン・ベイティー、ミラーをジュリー・クリスティー、シーハンをルネ・オーベルジョノワ、クレメントをウィリアム・ディヴェイン、バトラーをヒュー・ミレー、スモーリーをジョン・シャック、シアーズをマイケル・マーフィー、カウボーイをキース・キャラダイン、バートをバート・レムゼン、アイダをシェリー・デュヴァルが演じている。表向きのジャンルとしては西部劇だが、明らかにニューシネマの影響を強く受けている。ジョン・ウェインが主演を務めていたような、「正義の味方である保安官が、悪いガンマンやアパッチを退治する」という図式は影も形も見当たらない。
説明不足で曖昧なことが多く、無駄に分かりにくい話になっている。まず、どれぐらいの時代設定で、どの辺りが舞台の物語なのかがサッパリ分からない。
粗筋では最初に「ワシントン州とカナダの国境近くにある、プレスビテリアン・チャーチ」と書いたが、そんなことは映画の中で全く説明されていない。町の名前すら、なかなか出て来ない。
そもそも町と呼んでいいのかも微妙な景色で、ボロい小屋が幾つかあるだけだ。木材が無造作に転がっているが、これが「開拓中の町」みたいなことなのかってのも分からない。マッケイブがシーハンに酒場に来ると拳銃を用意する客がいるが、なぜなのかは分からない。
そして銃を用意したことが話の展開に生きてくるのかというと、それは全く無い。
マッケイブがシーハンに博打の件で取引を持ち掛けてOKを貰う会話シーンは、ちょっと何を言っているのか良く分からない。
マッケイブがチンケなギャンブラーなのかガンマンなのかも良く分からない。マッケイブのギャンブラーとしての能力も、どれぐらいなのかは全く分からない。マッケイブは酒場兼賭博場を建て始めるが、大きな元手をどうやって工面したのかも分からない。
もしもギャンブルで稼いだってことなら、超一流の腕前ってことになる。ただ、その資金をシーハンの店で稼いだのだとすれば、恨みを買うこともあるだろうが、そんな様子は全く見られない。
あと、そんなに日数が経過しているようにも感じないので、そこでも引っ掛かる。
ただ、最初から酒場兼賭博場を建てる計画で資金を調達し、その上で町に来たのだとしたら、シーハンの店で賭博をする必要性が無いので、そう解釈しても引っ掛かる。ともかく、マッケイブがギャンブラーであろうとガンマンであろうと、チンケな男であることを明確にアピールしておく作業が重要になる。そんな奴が分不相応にもデカい商売を初めて、手に負えないので女にペースを握られて云々、という流れがあるからだ。
そこがハッキリと見えなきゃいけないのに、前提条件がボンヤリしているんじゃあ話にならない。
「マッケイブはミラーを舐めていたが、向こうの方が遥かに頭が切れて商売人としても優秀だった」という形がクッキリと見えるべきだろうに、雑な作業で終わっている。
しかも、「ミラーが関与して商売が軌道に乗り、町も発展していく」という部分があってこそ土地を巡るトラブルが勃発するのに、そこも「商売が順調で町も発展して」という部分が充分に描かれているとは到底言い難いし。
何もかもが、あまりにも適当すぎる描写に留まっている。バートが殴られて死ぬ出来事は、何のために用意されているのかサッパリ分からない。彼の死を受けて、マッケイブが酷く悲しんだりするわけでもないし。
バートが死ぬとアイダが娼婦として働き始めるが、これも話の展開に全く影響を及ぼさないし。
途中でカウボーイが町に来るが、こいつも存在意義が全く分からない。バトラーの仲間の少年が町を去ろうとするカウボーイを射殺するけど、これも何のためのエピソードなのかサッパリ分からないし。
少年がカウボーイを殺す必要性は皆無だし、その出来事がマッケイブの心情や行動に何らかの影響を及ぼすことも無いし。
何しろ、マッケイブもミラーも全く知らない内に起きている出来事だからね。マッケイブがシーハンの店でバトラーと会う前に、ミラーが「ウェブスターが山を下りる。フォート辺りなら、まだ商売が出来るそうよ。下見に行かなきゃ」と話している。だけど、ちょっと何言ってんのか良く分からない。
マッケイブが拒むとミラーは「言う通りにして」と頼んでいるけど、必死になる理由も良く分からない。
その後の会話の内容からすると、どうやら「このままだと鉱山会社に殺されるので、それを避けるための行動を取って」とミラーは懇願しているようだ。
でも、そのためにマッケイブに頼む行動が「下見に行く」ってのが、どういう意味なのかサッパリなのよ。そもそもウェブスターが何者なのかも分からないし。マッケイブはクレメントに相談し、「無料で引き受ける。独占トラストを打破するため、新聞で大きく扱ってもらう。裁判にすれば会社は指一本触れられない」と言われる。
この相談でマッケイブは安堵したはずなのに、なぜかバトラーたちとの対決に向かう。
ミラーは「連中はアンタを捕まえて酷い目に遭わせる」と警告しているが、まだマッケイブはバトラーたちが自分を捕まえようとする行動を目にしたわけではない。
ミラーが「それなら私の1500ドルを返して。私が掛け合う」と感情的になるとマッケイブは「君には無理だ」と言い、その後で対決に挑むのだが、ってことは「ミラーが行くのを止めるため」という設定なのか。
どうにも良く分からない。マッケイブがライフルを用意して教会から様子を観察した時、確かにバトラーたちは彼の命を奪うために動き出している。ただ、向こうのの動きを知ったから、マッケイブが対決を決意したという流れではないんだよね。
バトラーは交渉を拒否した時点で脅しているんだから、その時点でマッケイブは腹を括ってもいいわけで。「弁護士に相談して云々」という手順が、無駄になっている。
クライマックスに向けた話の進め方が上手くないから、ちっとも気持ちが高まらない。悲劇的な結末として見せたいんだろうけど、まるで心に刺さらない。
教会の消火活動と対決をカットバックで描く演出は、たぶん「皆が知らない所でマッケイブが同士討ちで死ぬ」という形で見せたかったんだろう。ただ、町における教会の意味合いをちゃんとアピールできていないので、仕掛けとしては不発に終わっている。(観賞日:2025年7月30日)