『恋の骨折り損』:2000、イギリス&フランス&カナダ

ナヴァールの若き国王は、これから3年間は学業に専念するため、宮中を家庭教師の婦人ホロファニアを除いて女人禁制にすると発表した。 さらに国王は学友であるビローン、ロンガヴィル、デュメインの3人と共に、学業に専念する誓約書に署名をすることにした。しかし ビローンは、他の条件はともかく女人禁制は難しいと主張する。ビローンは、もうすぐフランス王女が父王の代理で訪れることになって いることも告げて躊躇するが、結局は国王の強い意思に負けて署名した。
フランス王女は侍従のロザライン、マリア、キャサリン、それに従者ボイエを連れてナヴァールに到着した。国王たちの誓約を知った フランス王女と侍従3人は、そのことをバカにしていた。彼女たちを出迎えた国王と学友は、女人禁制の誓いがあるため野外での宿泊を要求 した。だが、国王たちは女性陣に会い、皆が恋に落ちていた。国王は王女に、ビローンはロザラインに、ロンガヴィルはマリアに、 デュメインはキャサリンにと、それぞれが別の女性に心を奪われたのだ。
スペインの軍人ドン・アルマンドは、従者モスと共に罪人として田舎娘ジャケネッタを国王の元に連れて来た。事件の背後には、女癖の 悪い道化のコスタードがいた。アルマンドはコスタードが法令に背いてジャケネッタを宮中に連れ込んで交わっているのを発見し、 ダル巡査に連行を要請したのだ。裁定を求められた国王は、断食の罰を下した。
ジャケネッタに恋をしたアルマンドは、コスタードに彼女への恋文を渡すよう頼んだ。一方、ビローンもロザラインへの恋文を届けるよう コスタードに依頼する。コスタードは2通の恋文を取り違え、王女達にアルマンドの恋文を、ジャケネッタにはビローンの恋文を渡して しまう。字の読めないジャケネッタは、ホロファニアとナサニエル神父に代読を頼んだ。ホロファニア達はビローンの謀反の証拠品だと して、恋文を国王に届けるようジャケネッタに指示した。
国王の部屋では、国王、ロンガヴィル、デュメインが次々に現われ、愛の詩を口にした。それを覗き見ていたビローンは、誓約を破った ことを嬉しそうに責める。そこへ恋文を持ったジャケネッタが現われ、ビローンも恋をしたことが明るみに出た。しかし結局、国王と 学友たちは全員で力を合わせて恋を成就させようということで意見が一致した。
王女と侍従3人は、国王たちから贈られたプレゼントを見せ合った。プレゼントを頼りに男性陣がダンスの申し込みに来ると知った彼女たちは 、それがイタズラだと考える。女性陣は逆にイタズラを仕掛けようと話し合い、プレゼントを交換して仮面を付けて待ち受けることにした。 何も知らない男性陣は、目当てとは別の女性と楽しく踊る。
仮面を外して女性陣の前に再登場した男性陣は、自分たちが騙されたと知った。コスタードやホロファニアたちの余興が始まったため、国王たち も王女たちも一緒に観賞する。そんな中、フランスからの使者メルカドが訪れる。王女はフランス国王が崩御したことを知らせれ、深い 悲しみに襲われた。帰国することになった女性陣に、男性陣は改めて愛の告白をする…。

監督&脚本はケネス・ブラナー、原作はウィリアム・シェイクスピア、製作はデヴィッド・バロン&ケネス・ブラナー、製作協力は アンドレア・カルダーウッド&リック・シュウォーツ、製作総指揮はハーヴェイ・ワインスタイン&ボブ・ワインスタイン&ガイ・ イースト&ナイジェル・シンクレア&アレクシス・ロイド、撮影はアレックス・トムソン、編集はニール・ファレル&ダン・ファーレル 、美術はティム・ハーヴェイ、衣装はアンナ・ブルマ、コレオグラファーはスチュアート・ホップス、音楽はパトリック・ドイル。
出演はアレッサンドロ・ニヴォラ、アリシア・シルヴァーストーン、ナターシャ・マケルホーン、ケネス・ブラナー、カルメン・イジョゴ、 マシュー・リラード、エイドリアン・レスター、エミリー・モーティマー、リチャード・ブリアーズ、ジェラルディン・マキューアン、 ステファニア・ロッカ、ジミー・ユイル、ネイサン・レイン、ティモシー・スポール、トニー・オドネル、ダニエル・ヒル、リチャード・ クリフォード他。


ウィリアム・シェイクスピアの同名戯曲を基にしたミュージカル映画。
ケネス・ブラナーが監督・脚本・製作・出演の4役を兼ねている。
ナヴァール国王をアレッサンドロ・ニヴォラ、フランス王女をアリシア・シルヴァーストーン、ロザラインをナターシャ・マケルホーン、 ビローンをケネス・ブラナー、マリアをカルメン・イジョゴ、ロンガヴィルをマシュー・リラード、デュメインをエイドリアン・レスター、 キャサリンをエミリー・モーティマーが演じている。
他に、ナサニエルをリチャード・ブリアーズ、ホロファニアをジェラルディン・マキューアン、ジャケネッタをステファニア・ロッカ、 ダル巡査をジミー・ユイル、コスタードをネイサン・レイン、アルマンドをティモシー・スポール、モスをトニー・オドネル、メルカドを ダニエル・ヒル、ボイエをリチャード・クリフォードが演じている。

ケネス・ブラナーは本作品をミュージカル化するに辺り、オリジナル曲を用意するのではなく、過去のハリウッド・ミュージカルで使用 された既存の曲を持ち込む形を取った。ジョージ・ガーシュインやアーヴィング・バーリン、コール・ポーターらのペンによる名曲 (『I Get A Kick Out of You』や『Cheek to Cheek』、『They Can’t Take That Away From Me』など)を、出演者が自ら歌っている。
ミュージカル・シーンは全部で10回登場する。
シェークスピアの原作は1598年に初めて出版されているが、この映画では1939年9月という戦争直前から始まり、終盤には戦争が勃発する という時代設定にしてある。国王が勉学に励む目的は「戦争の愚かさを世界に示す」というものであり、終盤も戦争に絡めて政治的な主張 が入ったりするんだが、それは「ロマンティック・ミュージカル・コメディー」の色を壊す。

この映画の致命的な欠点は、とても分かりやすい。
本作品がダメになった最大の要因は、ミュージカル映画にしたことである。
何しろ、ミュージカル俳優がエイドリアン・レスターとネイサン・レインの2人しかいないのだ。
他の面々は3週間に渡って歌とダンスの練習を積んだらしいが、そんな「時代劇に出演するアイドルが行う殺陣の練習」と同レヴェルの 付け焼刃のレッスンで、歌と踊りが簡単に上達するはずもない。
しかも、ミュージカルの素人が集まっていることを逆手に取ってパロディーをやろうというのではなく、真剣に上質なロマンティック・ ミュージカル・コメディーを作ろうとしているのである。ハリウッド・ミュージカル黄金期のミュージカル映画を、生真面目に再現しよう と試みているのである。
実際は完全に「新春かくし芸大会」になっているのだが、どうやら監督も出演者も、かくし芸大会をやっているという意識は全く無いようだ。

で、ミュージカル俳優が少ないからミュージカル映画としてダメだというのであれば、キャスティングに問題があったという捉え方も出来る。
何しろミュージカルであることを考えなくても、フランス王女がアリシア・シルヴァーストーンだったり、ケネス・ブラナーが 若き国王の学友だったりと、それこそ新春かくし芸大会レヴェルのムチャな配役だからだ。
しかし、仮にミュージカル俳優ばかりを揃えたとしても、これが上質なミュージカル映画に仕上がったかどうかは疑問だ。
なぜなら、ミュージカル・シーンのカメラワーク、演出にも魅力が無いのだ。
エイドリアン・レスターやネイサン・レインが歌ったり踊ったりするマトモなミュージカル・シーンでさえ、ウキウキワクワク感が欠けているのだ。

全編がセット撮影なのだが、セットを広く見せるべきトコロで狭く撮ったり、大きく動くべきトコロで小ぢんまりと使ったりする。 踊りがダメなのを細かいカット割りやアングルの変化で誤魔化すのかと思ったら、そこを徹底しているわけでもない。
例えばホロファニアがナサニエルやジャケネッタ達を従えて歌うシーンでは、正面からのアングルで少しカメラが左右に動くのみ、しかも ワンカット撮影だ。
せっかくカットを割っても、アングルが変わっていない箇所もあったりする。
終盤、ネイサン・レインがメインのミュージカル・シーンは、一緒に登場する他のメンツのダンスが全く合っていないのが気になって仕方が無い。
まだ歌は何とか形になっても(まあユニゾンばかりだが、基本的に男性陣の歌はそれほど酷くはない)、踊りの方はやはり 素人にやらせるとボロが出やすい。
あと、明らかに手抜きのシーンがあるよな、これって。
前述のホロファニアがメインで踊るシーンって、どう考えても手抜きでしょ。


第23回スティンカーズ最悪映画賞

受賞:【最悪の助演女優】部門[アリシア・シルヴァーストーン]

 

*ポンコツ映画愛護協会