『キューティ・ブロンド/ハッピーMAX』:2003、アメリカ

エル・ウッズはハーバード・ロースクールを優秀な成責で卒業し、ボストンの大手法律事務所の一員となっていた。彼女はロースクールで 講師を務める婚約者エメットとの結婚を3ヶ月後に控え、幸せな日々を過ごしていた。そんな彼女のために、美容師のポーレット、親友の マーゴットとセリーナがサプライズ・パーティーを開いた。エルは結婚しても仕事を辞める気が無いことを語った。
エルはエメットに電話を掛け、レッド・ソックスの本拠地であるフェンウェイ・パークで結婚式を挙げられることになったと語った。彼女 は結婚式に、愛犬ブルーザーの母親も招待したいと考えた。そこで探偵フィンチレーの元を訪れ、母親捜しを依頼した。エルが法律事務所 を訪れると、秘書のケヴィンたちが部屋をバルーンで飾り付けていた。近い内にエルが昇進することが確実視されているからだ。
フィンチレーがエルの元を訪れ、調査結果を渡した。エルが資料に記されていた場所へ行くと、そこには「ヴェルサーチ」という会社が あった。エルが入ろうとすると、警備員に制止される。ブルーザーが急に走り出したので、慌ててエルは後を追った。するとブルーザーが 辿り着いた部屋では、動物が実験台にされていた。そこは有名なファッション・ブランドのヴェルサーチとは無関係の会社で、化粧品を 開発するための動物実験施設だった。そして、ブルーザーの母親も実験台にされていた。
エルが調べると、実験施設のオーナーは法律事務所が顧問弁護士を務めている会社だった。そこで彼女はVTRを作成し、事務所経営者の ブレインたちに動物実験反対を訴える。しかしブレインや幹部たちは、「依頼人の利益を守るのが弁護士だ」と賛同しない。エルが「考え の違う人とは一緒に仕事が出来ません」と話すと、ブレインは「それはそうだな」と言い、彼女にクビを通告した。
エルはエメットに慰められ、結婚式の準備を進めた。ウェディング・ドレスの仮縫いの際、彼女は「ドレスの生地が破れてしまうので、 飾りを付けるのは無理です」と言われる。エルは「生地を変えればいい」というところから、「動物の監禁が違法でないのなら、法律を 作ってしまえばいい」と思い付いた。そのために彼女は、ワシントンへ乗り込むことに決めた。彼女は大学時代の女子社交クラブ「デルタ ・ヌウ」の大先輩であるヴィクトリア・ラッド下院議員の事務所で働かせてもらう段取りを付けた。
エルはワシントンへ行き、デルタ・ヌウが用意してくれた高級アパートメントでドアマンのシドに迎えられた。彼女はラッドの事務所を 訪れ、主任補佐官のグレースや補佐官のリーナ、ティモシーたちと会った。グレースとティモシーが言い争いを始めたので、エルは匿名で 同僚を誉めるメッセージを書いてカップに入れる「スナップカップ」を提案する。これで職場の面々が仲良くなれると自信を見せるエル だが、カップには彼女をクズ呼ばわりするメッセージが入れられた。
ラッドの事務所で立法補佐官として働き始めたエルは、エネルギー・商業委員会の公聴会に参加し、下院議員のコールと挨拶を交わした。 彼女はグレースに紹介され、委員に意見陳述を行うことになった。しかし動物実験の廃止について語ったため、議長のリビー・ハウザーに 「燃料問題とは関係が無い」と叱られた。落ち込んだ彼女がアパートに戻ると、ウェディング・シューズが届いていた。
リーナはグレースに、「祖母の処方薬の問題を担当議員の補佐官に話してほしい」と頼んだ。しかしグレースは「もっと重要な案件が多く ある」と冷淡に却下した。その会話を聞いていたエルは、リーナに「あなたが法案を書くべきよ」と促した。ブルーザーの散歩で公園に 出掛けたエルは、シドと遭遇した。シドはエルに、「公聴会を開きたければハウザーを味方に付けるといい。数字や統計を見せることだ。 彼女の次は、共和党員で頑固者の委員長スタンフォード・マークスを落とす必要がある」と語った。
エルは書物を読んで勉強し、ハウザーとマークスの補佐官に当たる。だが、まるで相手にしてもらえず、グレースにも協力を断られた。 「ここにはワシントン流のやり方がある」と言うグレースに、エルは「だったら私はエル・ウッズ流でやる」と告げた。彼女はシドと ポーレットの協力を得て、ハウザーの行き付けのヘアサロンを突き止めた。ヘアサロンを訪れたエルはハウザーに話し掛けるが、冷たく 拒絶される。だが、エルはハウザーの指輪を見て、デルタ・ヌウ出身だと知り、そのことを話すと、2人は意気投合した。エルが数字と 統計を語ると、ハウザーは動物実験禁止法案に関心を持ってくれた。
ブルーザーを公園で散歩させていたエルは、愛犬が糞をして困っている中年男性に気付き、自分のエチケット袋を貸した。エルが仕事を していると、ブルーザーを預けたドッグ・スパから緊急呼び出しの電話が入った。慌てて駆け付けると、公園で出会った男性も呼ばれて いた。双方の犬が相手に突進したらしい。エルと男性はドッグ・スパの職員から、2人の愛犬がゲイだと知らされた。男性と話したエルは 、彼がマークスだと知った。
ハウザーとマークスを味方に付けたエルは、公聴会に出席することが決定し、化粧品のための動物実験を禁止するブルーザー法案を提出 した。しかし公聴会ではクロフト委員を始めとして反対意見が多く、エルは落胆した。だが、彼女はシドが犬を散歩させながら集めた情報 を渡され、元気付いた。それは委員の個人的な情報で、エルが公聴会で、そのことを盛り込みながらスピーチした。するとマークスは 「この法案を成立させる」と宣言し、他の委員も賛同した。
会場からは拍手が沸き起こり、エルは大いに喜んだ。ところが、そこに飛び込んできたラッドが、「法案への支持を取り下げる」と告げる 。彼女はエルに、「グレースが住宅所有者優遇措置の法案を進めていた。今朝、ブルーザー法案を取り下げれば、そちらを採決するという 取引が持ち掛けられた。だから、それに応じた」と説明して詫びた。だが、それは嘘だった。ラッドの一番の支持者が化粧品会社の株を 保有しており、電話で資金援助の停止を告げてきたのだ。ラッドは選挙で勝つために、法案の支持を取り下げたのだ。
法案が取り下げられて落ち込んでいるエルに、グレースを除く事務所の仲間たちが声を掛けてきた。リーナやティモシーたちは、218人の 議員の署名を集めて法案を本会議に持ち込む計画を提案した。それは難しいことだったが、エルたちは行動を起こすことにした。グレース を除く補佐官はラッドの事務所を辞め、議員の説得に奔走する。エルはマーゴットとセリーナを呼び寄せ、協力してもらうことにした。 少しずつ署名は増えていくが、なかなか218人には届かない…。

監督はチャールズ・ハーマン=ワームフェルド、キャラクター創作はアマンダ・ブラウン、原案はイヴ・アーラート&デニス・ドレイク& ケイト・コンデル、脚本はケイト・コンデル、製作はマーク・プラット&デヴィッド・ニックセイ、共同製作はジェニファー・シンプソン &スティーヴ・トラックスラー、製作総指揮はリース・ウィザースプーン、撮影はエリオット・デイヴィス、編集はピーター・ テッシュナー、美術はミッシー・スチュワート、衣装はソフィー・デ・ラコフ・カーボネル、音楽はロルフ・ケント、音楽監修はアニタ・ カマラタ。
出演はリース・ウィザースプーン、サリー・フィールド、レジーナ・キング、ジェニファー・クーリッジ、ブルース・マッギル、ダナ・ アイヴィー、ルーク・ウィルソン、ボブ・ニューハート、メアリー・リン・ライスカブ、ジェシカ・コーフィール、アラナ・ユーバック、 J・バートン、スタンリー・アンダーソン、ブルース・トーマス、ルース・ウィリアムソン、ジャック・マッギー、アミール・タライ、 ジーア・ハリス、サム・パンケーキ、オクタヴィア・L・スペンサー、ジェームズ・アーバニアク、ジャン・デヴロー、ローレン・ コーン他。


2001年の映画『キューティ・ブロンド』の続編。ビデオでは『キューティ・ブロンド2/ハッピーMAX』というタイトルになっている。
監督は前作のロバート・ルケティックから、『Kissing ジェシカ』でロサンゼルス映画祭の観客賞を受賞したチャールズ・ハーマン=ワームフェルドにバトンタッチ。
エル役のリース・ウィザースプーン、ポーレット役の ジェニファー・クーリッジ、エメット役のルーク・ウィルソン、マーゴット役のジェシカ・コーフィール、セリーナ役のアラナ・ ユーバック、ポーレットの夫となったUPSの社員役のブルース・トーマスは、前作から引き続いての登場。
他に、ラッドをサリー・フィールド、グレースをレジーナ・キング、マークスをブルース・マッギル、ハウザーをダナ・アイヴィー、シド をボブ・ニューハート、リーナをメアリー・リン・ライスカブ、ティモシーをJ・バートン、ブレインをスタンリー・アンダーソンが 演じている。

エルの昇進をケヴィンたちがお祝いしている段階で、彼女が有能な弁護士だという描写が薄い。
派手なファッションも、結婚式に招待すため愛犬の母親捜しを依頼するという行動も、「利口な女性」とは真逆のイメージなので、「なぜ 昇進確実なのか」と違和感を覚えてしまう。
そこはエルが弁護士として優れた実績を挙げる場面を何か用意しておくべきだろう。
それが巧みな弁舌や知的なセンスによる実績じゃなくて、おバカな方法による問題解決であっても構わないから、弁護士として結果を出す 場面が欲しい。
長く時間を割く必要は無くて、「結果を出しました」という最後の部分だけをチラッと見せれば、それが充分だ。

エルが「考えの違う人とは一緒に仕事が出来ません」と言った途端、ブレインがクビを通告するのは無理がある。
激しく非難するように言ったのならともかく、そうじゃないし。
エルは昇進が確実視されていたほど有能な弁護士だったんでしょ。厄介者ならともかく、有能な人間を、そんなに簡単にクビにするのは 不可解だ。
そこは例えば、エルが「だったら辞めます」と啖呵を切るが、「残念だが君の意志を尊重しよう」と言われてしまい、引っ込みが付かなく なって辞めるハメになるとか、そういう形の方がいいんじゃないか。

「生地を変えればいい」というところから、「動物の監禁が違法でないのなら、法律を作ってしまえばいい」と思い付くのは、かなり飛躍 していて無理を感じるなあ。
あと、ワシントンで仕事を始めたエルに、シドが協力するようになるのも無理を感じる。
同じ犬好きだから協力する気になったということなんだろうか。
シドがエルを特別扱いするだけの理由が、イマイチ見えてこないんだが。

エルがラッドの法律事務所に入るのは、軽いノリではない。不純な動機があるわけじゃないし、そこで働くことの意味が分かっていない わけでもない。彼女は最初から「動物実験を禁止するために法律を作る」という、大きな目的に向かって真剣に取り組むつもりで訪れて いる。
ところが、派手な服を選び、着飾って出勤する様子を見ると、チャラチャラしていて遊び半分のように見えてしまう。
そして、そんなチャラい格好で出勤するエルをラッドが歓迎するのも違和感を覚えてしまう。
しかも格好が派手でチャラいだけじゃなくて、事務所で結婚式の準備まで進めているんだぜ。
そこは、むしろ「社交クラブの後輩だから歓迎するつもりだったが、アーパーっぽい女が来たので困惑する」という反応の方が、スンナリ と受け入れられる。

エルがハウザーやマークスを味方に付けるためのプランを練っても、それは何の役にも立っていない。
彼女がハウザーを味方に付けたのは、「たまたまハウザーがデルタ・ヌウの出身だった」という偶然だ。
マークスにしても、「たまたまドッグ・スパで2人の犬が仲良くなったから」という偶然だ。
そりゃ運の実力の内とは言うけれど、もうちょっと自分の力で引き寄せる形の方がいいなあ。

署名を集めるためにエルは親友とデルタ・ヌウに手助けを求めているが、親友はともかく、デルタ・ヌウに関しては彼女が依頼するのでは なく、デルタ・ヌウがエルのピンチを知って手伝ってくれるという形の方がいいなあ。
なんか、エルが何かに付けてデルタ・ヌウ出身ということに頼りすぎている気がするんだよなあ。
あと、最終的にエルがアメリカ合衆国の正義を問うスピーチで議員たちの心を打つ展開になるのは萎える。
アメリカ人って、「アメリカの素晴らしさを演説して感動させる」という展開が好きだよなあ。

(観賞日:2011年1月7日)


第26回スティンカーズ最悪映画賞

ノミネート:【最悪な総収益1億ドル以上の作品の脚本】部門
ノミネート:【最悪の続編】部門

 

*ポンコツ映画愛護協会