『火龍』:1987、中国&香港
1967年10月17日、北京の反帝病院で清朝最後の皇帝だった溥儀が死んだ。彼は歴史上で初めて火葬にされた皇帝だったため、“火龍”と呼ばれることになった。彼の死を見届けたのは最後の夫人、李淑賢であった。
溥儀は清朝の皇帝として1922年に皇后と4人の妾を持ち、紫禁城で裕福な生活を送っていた。しかし戦争によって1924年に紫禁城を追われ、日本の策略で1935年に満州国の皇帝となる。そして日本の敗戦と共に彼は戦犯管理所に送られることになった。
管理所に面会にやって来た第二夫人の李玉琴は皇后が悲惨な死を遂げたことを伝え、溥儀を非難する。皇后は落ちぶれて阿片に狂い、最後はボロ布のようになって死んでいったのだ。溥儀は全ての夫人と離婚する。
年月は過ぎた。管理所で自己改造を行った溥儀は完全に市民に溶け込もうとしていた。ある日、彼は知人の紹介で看護婦の李淑賢と出会った。お互いに惹かれあった2人は結婚。普通の結婚生活を送ろうとする2人だったが、やがて文化大革命が起こり…。監督はリー・ハンシャン、原作はリー・スーシェン、脚本はワン・チンシャン&ツォ・チーユエ、製作総指揮はツァン・ツィンイン&ツァオ・ホェイ、製作はホワン・ツォン・ハン&ツゥイ・ヤオ、撮影はヤン・リン、音楽はツェン・チンロン。
出演はリャン・ジャーホー、パン・ホン、マーガレット・リー、メリー・リー他。
ベルトリッチの『ラストエンペラー』と同じく溥儀を描いた作品だが、こちらは彼の後半生を描いている。
とってもスケール感の小さいお話。まず序盤は管理所に送られるまでを、ダイジェストとナレーションで簡単に終わらせる。で、管理所を出て結婚してからがメインの話。献身的な妻と役立たずの夫のヌルいホームドラマが展開される。異常なほどビクビクして臆病な溥儀の姿は、ホントに主人公かと疑いたくなる。
自己改造した結果、バカになったらしい。バカといえば、革命軍もバカグループにしか見えないよな。中国が製作してるのに、よくもここまで自分達をバカ扱いする映画を作ったよなあ。気付いてないのかな、この作品に登場する革命軍がバカにしか見えないことを。
コミカルな場面(といってもヌルいけど)でシリアスな音楽が流れるのが、これまた珍妙な味わい。まあ珍妙な味わいは映画全体において言えることだけど。
せっかく皇帝を主人公にしてるのに、ここまでショボクレた作品にしてしまうってのは、ある意味では凄いよな。