『コレクター』:1997、アメリカ

アレックス・クロスはワシントン警察の刑事で、心理法学医でもある。ノースキャロライナ州の学園都市ダーハムで、彼の妹の娘ナオミが行方不明になった。美しい地元大学生の連続誘拐事件が発生しており、ナオミもその犯人に誘拐されたようだ。
ダーハムに向かったクロスは、連続誘拐事件の捜査を担当するニック・ラスキン刑事とデイヴィ・サイクス刑事に会う。これまでに2人の死体が発見されており、ちょうど3人目の死体が発見されたところだった。クロスは彼らと共に現場に向かった。
2番目の犠牲者の近くに「カサノバ」という文字があったことや、誘拐された順番に殺されていないことから、クロスは犯人が殺人を目的としているのではなく、コレクターだと推察。殺されたのは何かの約束を破ったからであり、他の女性たちは生きているはずだと彼は考えていた。
そんな中、9番目に誘拐された外科医ケイト・マクティアナンが監禁場所からの脱出に成功。重傷を負ったケイトだったが、クロスの捜査に協力を申し出る。やがてウィリアム・ルドルフという整形外科医の名が捜査線上に浮かぶのだが…。

監督はゲイリー・フレダー、原作はジェームズ・パターソン、脚本はデヴィッド・クラス、製作はデヴィッド・ブラウン&ジョー・ワイザン、撮影はアーロン・シュナイダー、編集はウィリアム・ステインカンプ&ハーヴェイ・ローゼンストック、美術はネルソン・コーテス、衣装はアビゲイル・マーレイ、音楽はマーク・アイシャム、音楽監督はピーター・アフターマン。
主演はモーガン・フリーマン、共演はアシュレイ・ジャッド、ケイリー・エルウェス、トニー・ゴールドウィン、ジェイ・O・サンダース、ビル・ナン、ブライアン・コックス、アレックス・マッカーサー、リチャード・T・ジョーンズ、ジェレミー・ピヴェン、ウィリアム・コンヴァース=ロバーツ、ジーナ・ラヴェラ、ローマ・マフィア他。


『セブン』で刑事を演じたモーガン・フリーマンが、再び刑事役に挑んだ作品。1964年のウィリアム・ワイラー監督作品に同名の映画があるが、全く別物。
“『セブン』を越えた怖さ”という宣伝文句もあったが、全く比べ物にならないほどの失敗作。

まず、犯人がケイトにたやすく逃げられすぎ。あの場面では、逃走劇の成功までに、もう少しポイントを作っても良かったのでは。
で、かなりの重傷だったはずだが、脅威の回復力を見せるケイト。
で、そのケイトの逃走とクロスの捜査が、ストーリーの中で上手く絡んでいない。

あまりにケイトが精神的に強すぎるのも問題だ。いくら勝ち気な女性でも、あれだけの恐怖を体験しながら犯人に立ち向かうのは容易ではないはず。怯えるケイトからクロスが少しずつ犯人のヒントを聞き出していくというのが普通ではないだろうか。

クロスは「私には20年の経験がある」と偉そうに言うのだが、その割には勝手な行動のせいで仲間が犯人に撃たれてしまい、おまけに犯人を取り逃がす。で、それで懲りたと思いきや、またも勝手な行動で犯人を取り逃がす。
どうやら無駄にキャリアを積み重ねてきたらしい。

クロスに全ての役割を任せたのは失敗では。犯罪心理学者のクロスは頭を使うのが仕事であり、肉体を使う役割を受け持つ相棒が必要だったのでは。
その役目をケリー・エルウェス演じるニック・ラスキン刑事に割り振っておけば、終盤の展開も生きてきただろうに。

登場人物の印象付けが下手なので、どのキャラクターに重点を置いていいのかが分からない。例えば犯人は前半から登場しているのだが、印象が薄いから、終盤で正体が判明した時にも「誰だっけ?」ということになってしまう。

その犯人の判明に持って行く流れも下手。犯人につながるようなヒントが全く提示されていないのだ。伏線を張っていないので、正体が判明した時に唐突さしか感じない。
いっそのこと、最初から観客には犯人を明かしてしまった方が面白くなったのでは。

犯人のキャラクター設定もイマイチ。犯人の残虐さは全く伝わってこないし、そもそもコレクターとしての特徴があまり強く見られない。犯人の行動心理がハッキリしないのもマイナス。犯人がリスクを犯してまでケイトに会いに行く理由も分からない。

 

*ポンコツ映画愛護協会