『仮面の男』:1998、アメリカ

1662年のパリ。国王ルイ14世の横暴な振る舞いは国民を苦しめていた。前国王の時代に活躍した四銃士の内、アラミスは司祭となり、アトスとポルトスも平穏な隠居生活を送っていた。ダルタニアンだけは銃士隊の隊長となり、ルイ14世に仕えていた。
飢えに苦しむ民衆は暴動を起こすが、ルイ14世は腐った食糧を配給して民衆の怒りを増長させる。イエズス会はルイ14世の始めた侵略戦争が無謀なものだと批判する。ルイ14世はアラミスを呼び、イエズス会の指導者を探し出して抹殺するよう指示する。
アトスの息子ラウルは恋人クリスティーヌと結婚するつもりだったが、クリスティーヌに興味を持ったルイ14世はラウルを前線に送る。息子が戦死したことを知らされたアトスはルイ14世の命を狙うが、ダルタニアンに妨害される。
アラミスはアトス、ポルトス、ダルタニアンを集め、イエズス会の指導者が自分だと明かす。彼は国王を変えるという計画を話して協力を求めるが、ダルタニアンは「命に代えてもルイ14世を守る」と宣言し、計画への協力を拒否する。
アラミス、アトス、ポルトスの3人は、バスティーユの牢獄に鉄仮面を付けて幽閉されていたフィリップを救い出す。フィリップはルイ14世の双子の弟なのだ。アラミスの計画とは、ルイ14世とフィリップを入れ換えることだったのだ…。

監督&脚本はランダル・ウォレス、原作はアレクサンドル・デュマ、製作はランダル・ウォレス&ラッセル・スミス、製作総指揮はアラン・ラッド・ジュニア、撮影はピーター・サシツキー、編集はウィリアム・ホイ、美術はアンソニー・プラット、衣装はジェームズ・エイクソン、音楽はニック・グレニー=スミス。
出演はレオナルド・ディカプリオ、ジェレミー・アイアンズ、ジョン・マルコヴィッチ、ジェラール・ドパルデュー、ガブリエル・バーン、アンヌ・パリロー、ジュディット・ゴドレーシュ、エドワード・アタートン、ピーター・サースガード、ヒュー・ローリー、デヴィッド・ロウ、ブリジット・バウチャー、マシュー・ジョスリン他。


アレクサンドル・デュマの小説を基にした映画。
ジェレミー・アイアンズがアラミス、ジョン・マルコビッチがアトス、ジェラール・ドパルデューがポルトス、ガブリエル・バーンがダルタニアンを演じる。
レオナルド・ディカプリオがルイ14世とフィリップの二役を演じたことが話題となった。

皇太后をアンヌ・パリローが演じていたり、クリスティーヌをジュディット・ゴドレーシュが演じていたりと、女性陣もかなり豪華なのだが、どちらのキャラクターも凡庸。
別にいてもいなくても良いと思える程度の薄い印象に終わっている。

製作者の意図するところがそうなのかどうかはともかくとして、結果としてはレオナルド・ディカプリオのファンに向けた作品となっている。
年老いた三銃士の渋い味わいが出ていないわけでは無いのだが、それは低空飛行を続ける演出の中で、すっかり薄められている。

まず序盤は、誰が主役なのかがハッキリしない。
最初の内は、ダルタニアンがメインのように感じられる。
だが、ルイ14世への忠誠を誓う彼の姿は、ほとんど悪の手先だ。どんな理由があるにせよ、横暴な国王を守るという彼の姿に主役としての価値を見出すことは、ちょっと難しい。
例えば最初からアトスやアラミスをメインにして物語を進行させれば、印象は大きく変わっていたことだろう。あるいはダルタニアンの「ルイ14世との秘密の関係」という設定を無くしておけば、もっと英雄劇としての面白さを出せたことだろう。

四銃士それぞれのキャラクター分けは出来ているのだが、あまり個性の際立つような活躍は見せない。なんだかウダウダと喋ったりしているだけの時間が長い。
壮大な音楽が盛り上げようとするが、物語は大して盛り上がっていなかったりする。

ラウルが死んだ直後、ルイ14世に誘われてノコノコと彼の部屋まで付いていくクリスティーヌ。体まで許してしまうのだから、完全に尻軽女である。あの場面はルイ14世が強引に体を奪うという形にして、彼の横暴さをアピールすべきではなかったのか。

中途半端なリアリズムではなく、もっと思い切って英雄の活躍する夢物語として描けば良かったのだ。若い客層に向けたアプローチをしながらも、一方で原作の複雑な世界を描こうとしたことで、どっちつかずの曖昧なテイストになっている気がする。

もともと全てを収めるには原作が長すぎるのだから、強引に押し込んでダイジェストにしてしまうのではなく、部分的なエッセンスだけを抜き出した方が良かったのでは。
原作を忠実に映像化しようとする必要は無く、例えば活劇の面白さを全面に打ち出すなどした方が良かったのでは。そんなことを思ったりする。

この作品の最大の失敗は、ディカプリオが二役を演じたことだろう。
ルイ14世もフィリップも、実は主役では無いのだが、ディカプリオが両方の役を演じることによって、主役だと勘違いしてしまいそうになるのだ。ディカプリオに二役を演じさせるなら、フィリップを中心にした話にすべきだったのでは。


第19回ゴールデン・ラズベリー賞

ノミネート:最低スクリーン・カップル賞[レオナルド・ディカプリオ(双子役!)]


第21回スティンカーズ最悪映画賞

ノミネート:【最悪の助演男優】部門[ジョン・マルコヴィッチ]

 

*ポンコツ映画愛護協会