『GO!GO!ガジェット』:1999、アメリカ

警備員のジョン・ブラウンは、姪のペニーと2人で暮らしている。彼はリバートン警察の警官になることを夢見ているが、警備員2年の経歴では無理だと断られる。ブラウンは普段、年配女性のテルマと共にブラッドフォード研究所の警備を担当している。彼はブラッドフォード教授の娘で助手のブレンダに惹かれているが、その気持ちを打ち明けたことは無い。
ブラッドフォード教授とブレンダは、アンドロイドを作るガジェット計画を進めていた。2人はアンドロイドの足を製作し、それを心の動きで操作することに成功した。だが、悪党スコレックスの手下サイクスが研究所に乱入し、教授を殺してアンドロイドの足を奪った。ブラウンは侵入者を追跡するが、攻撃を受けて重傷を負ってしまう。
ブレンダや市長らが見守る中、意識不明のブラウンはガジェット計画の実験体として改造手術を施される。目を覚ました時、ブラウンは専用チップで動くサイバー警官第一号となっていた。サイバー警官は専用のガジェット・スーツを着用し、体に内蔵された仕掛けを「ゴー・ゴー・ガジェット」の言葉によって操作する。
ブレンダはブラウンに、言葉を話す車“ガジェット・モービル”を用意した。ブラウンはガジェット・モービルの協力により、脱獄囚を逮捕した。しかし警察のクインビー署長は、ブラウンを宣伝用としか考えていなかった。ブラウンは教授殺しの犯人捜査をさせてほしいと頼むが、署長は交通整理や猫の救助といった簡単な仕事しかさせなかった。
ハイテク兵士を使った世界征服を企むスコレックスは、頼りない手下クレイマーを無視し、教授のデータを拝借してブラウンの偽者を作り出した。偽者のブラウンは町で好き放題に暴れ回り、ブラウンの評価を貶める。ブラウンはスコレックスが教授殺害犯だと推理し、彼のビルへ侵入する。しかしブラウンはスコレックスに捕まり、チップを抜いて捨てられてしまう…。

監督はデヴィッド・ケロッグ、キャラクター創作はアンディ・ヘイワード&ジーン・チャロピン&ブルーノ・ビアンキ、原案はダナ・オルセン&ケリー・エーリン、脚本はケリー・エーリン&ザック・ペン、製作はジョーダン・カーナー&ロジャー・バーンバウム&アンディ・ヘイワード、共同製作はルー・アーコフ&ジーン・チャロピン、製作総指揮はジョン・アヴネット&バリー・ベルナルディー&ラルフ・ウィンター&アーロン・メイヤーソン&ジョナサン・グリックマン、撮影はアダム・グリーンバーグ、編集はトム・ノーブル&アラン・コーディー、美術はマイケル・ホワイト&レスリー・ディリー、衣装はメアリー・ヴォイト、視覚効果監修はリチャード・フーヴァー、special animatronic effectsはスタン・ウィンストン、音楽はジョン・デブニー、音楽監修はピーター・アフターマン。
出演はマシュー・ブロデリック、ルパート・エヴェレット、ジョエリー・フィッシャー、ミシェル・トラクテンバーグ、ダブニー・コールマン、マイケル・G・ハガーティー、アンディ・ディック、ルネ・オーベルジョノワ、チェリ・オテリ、フランセス・ベイ、ミスター・T、リチャード・キール、リチャード・リー=サン、ロバート・N・ベル、ハンク・バレラ、キース・モリソン、ジョン・キム、ジェシー・ヨシムラ、アーロン・メイヤーソン他。


1980年代にアメリカで放送されたTVアニメを基にした実写映画。
ブラウンをマシュー・ブロデリック、スコレックスをルパート・エヴェレット、ブレンダをジョエリー・フィッシャー、ペニーをミシェル・トラクテンバーグ、クインビーをダブニー・コールマン、サイクスをマイケル・G・ハガーティー、クレイマーをアンディ・ディック、ブラッドフォード教授をルネ・オーベルジョノワ、ウィルソン市長をチェリ・オテリ、テルマをフランセス・ベイが演じている。
ガジェット・モービルの声はマイケル・G・ハガーティー。最後にブラウンの飼い犬ブレインとして声を発するのは、TV版でブラウンの声優だったドン・アダムス。

エンディング・ロール、サイクスが「子分更正集会」を開いているが、そこに集まっているのは様々な作品の子分達。ミスターT、007のジョーズ(実際にリチャード・キールが演じている)やオッド・ジョブ、『ローン・レンジャー』のトント、フランケンシュタイン博士の助手イゴール、『グリーン・ホーネット』のカトーなどがいる。
「Tattoo」は、たぶんTVシリーズ『Fantasy Island』(日本では未公開)のキャラだろう。製作総指揮のアーロン・ヘイヤーソンも、本人として座っている(映画会社の子分ってことだろうか)。
そこまでは分かったが、「Number One Son」が何の作品のキャラクターか、私には分からなかった。

さて、これはディズニーの映画である。
「ディズニーだったら、子供も楽しめる健全なコメディーなのだろう」と貴方は予想するかもしれない。しかし、この映画は違う。もちろんコメディーではあるのだが、かなりのトゲや毒を含んでいる。かなり悪趣味な映画だ。
例えば教授の死。
本当に子供向けにするなら、そこは笑いに包んで描くだろう。ところが、この映画では完全に「悲しい死、笑いは何も無い死」として表現される。そして、その上で、しばらくして市長が「教授の死をお悔やみ申し上げます。良く知らないけど」と軽く言うシーンを持ってくる。
つまり死をシリアスに見せておいてコケにするという、ブラックな味になっているのだ。

さらには、ブラウンの改造手術が行われるシーン。
あっけらかんと、ご陽気にブラウンを本人の承諾無しにアンドロイドに改造してしまう連中の態度には、どこかしら洗脳された新興宗教の信者のような空恐ろしさがある。表面的にはコミカルなテイストを装っているのだが、その奥にはグロテスクな雰囲気が漂っているのだ。
大好きなブラウンがアンドロイドに改造されたのに、ペニーは平然と受け入れている。
「ブラウンが改造されても、本人も周囲も平然としている」という部分は、普通にやれば違和感が残る。そこを乗り越えるためには、例えば主人公をアクの強いキャラにして徹底的に大げさにするとか、逆にスカした芸を見せる人にするといった方法が考えられる。
しかし、この映画ではそういった演出をせずに、あえて悪趣味な部分を剥き出しのままで提示している。
ディズニーとしては、かなりの冒険だ。
意図的かどうかは知らないが。

劇中、『600万ドルの男』や『ピンク・パンサー』、『ドラグネット 正義一直線』や『3バカ大将』、『ゴジラ』など映画やTV作品ネタが何度か挿入される。
前述したエンディング・ロールの子分大集合も、その一環だ。
映画全体が、パロディー作品となっているわけではない。
それでも監督は、話の流れをブツブツと切る犠牲を支払ってでも、映画ネタを盛り込むサービス精神を示しているのだ。

ブラウンに内蔵された仕掛けは、頭からタケコプターもどきが生えたり、足からスプリングが出たり、指からライターが出たり、とにかく思ったモノは自由に飛び出すような感じで、その気になれば制限は何も無いぐらいアイテムは豊富だ。それを使ってブラウンが活躍したりヘマしたりする様子を見せるだけでも大変なのだが、それだけでは終わらない。
この映画では、ガジェット・モービルという喋る車を登場させる。そして、モービルにも遠慮無くガンガンとトークをさせる。さらに、シリーズ続編というわけでもないのだが、まだ本物が出てきて間もないのに偽者ブラウンまで登場させるサービスもある。とにかく、惜しみなく次々とアイデアを投入しているのだ。

「ブラウンが悪党と戦う」という基本プロットに、ブラウンの様々なガジェットと悪党のキャラクターで装飾するだけでも、やり方によっては上映時間を全て使ってしまうだろう。
だが、この映画は、それだけでは終わらない。ブレンダの偽者を登場させたり、ペニーに活躍させたり、たくさんの要素を盛り込んでいる。
ここで何よりも凄いと思うのが、溢れるほど多くの要素を詰め込みまくっているにも関わらず、「密度が濃い」ではなく「薄っぺらい」と感じさせてしまうところである。


第22回スティンカーズ最悪映画賞

ノミネート:【最悪の作品】部門
ノミネート:【最悪の演出センス】部門[デヴィッド・ケロッグ]

ノミネート:【最も痛々しくて笑えないコメディー】部門
ノミネート:【最悪なTV番組の映画化】部門
ノミネート:【最も無様なコメディー・リリーフ】部門[喋る車(D・L・ヒューリーが声を担当したガジェットモービル)]
ノミネート:【チンケな“特別の”特殊効果】部門

 

*ポンコツ映画愛護協会