『恋にあこがれて in N.Y.』:2001、アメリカ

アマンダ・ピアースは、ニューヨークのメトロポリタン美術館で絵画の修復をしている。レズビアンの同僚リサは、「今の職場では男と 巡り合えずに年老いていく」と警告する。だが、アマンダは今の職場が気に入っている。彼女はルネッサンス時代の絵画が大好きで、 優れた絵を見ると腰を抜かしてしまうほどだ。アマンダは今まで交際した恋人に必ず裏切られており、男運が無いことを自覚している。 新しい恋人マイケルも、浮気相手をアマンダの部屋に連れ込んでいたことが発覚して別れた。
新しい住まいを探すことにしたアマンダは、同居人募集の広告を見て、そのアパートメントへ向かう。アマンダがエントランスにいると、 エレベーターから現われた男性が連れていたグレート・デンが飛び掛かってきた。慌てて駆け付けた男性を見て、アマンダは腰を抜かした。 その犬ハムレットは男性のペットではなく、世話をしているだけだという。
アマンダは、同居人を募集していたホリーに会った。アマンダに用意された部屋を見ると、まるでクローゼットだった。一方、ホリーが クローゼットとして使用している部屋は広く、大量の服が収納してあった。アマンダは、ホリーの他の同居人3名とも顔を合わせた。 ホリー、ジェイド、ロクサーナ、キャンディーの4人は、全員がファッション・モデルだった。
ホリーたちはエージェントから無料で部屋を与えられており、小遣い稼ぎに余っている部屋をアマンダに貸したのだった。4人はモテモテで、 多くの男性がデートの申し込みにやって来る。ホリーたちは、デートに行っても絶対に金は払わない。それだけでなく、女性陣だけで食事を して男は離れた場所に立たせておき、支払いの時だけ呼び付けるのだ。
アマンダは、隣のアパートにエントランスで出会った男性が住んでいることを知った。しかも彼の部屋は、ちょうどアマンダの部屋の 向かい側だ。ジムはカーテンを開けっ放しなので、中の様子がバッチリ見える。アマンダはキャンディーから、その男性がファッション業界 で働くジム・ウィンストンだと聞かされる。
ホリーたちはアマンダがジムに興味を持っていると知り、アプローチするようけしかけた。しかしアマンダは素直にならず、「自分が好きに なったのだから何か問題があるに決まっている」と告げる。「欠点を見つけるため」と称してアマンダはジムの部屋を覗いて観察し、 ホリーたちも面白がって付き合った。だが、全く欠点や問題は見当たらない。
ホリーたちはアマンダをモデル風に変身させ、ジムの部屋で開かれたファッション業界人のパーティーに連れて行く。ジムの軽薄な振る舞い を目撃したアマンダは、呆れて立ち去ろうとする。そんなアマンダにジムが声を掛け、軽薄な振る舞いは仕事のための芝居だと告げる。 アマンダはジムとデートの約束を交わし、キスをした。
浮かれて帰宅したアマンダは、向かいの部屋を見てショックを受けた。ジムがモデルのメーガンと2人きりになり、ブラインドを下げた のだ。次の瞬間、アマンダはジムが棒でメーガンを殴り殺すシルエットを目撃した。ブラインドが上がると、メーガンの遺体は消えていた。 アマンダは警察に連絡するが、やって来た警官ロドリゲスはバカにした態度で全く信用せず、帰ってしまう。
翌日、ジムが警察に捕まらず普通に生活しているのを見たアマンダは、ロドリゲスに会って問い詰める。するとロドリゲスは、「メーガン はつまづいて転んだだけだとジムが証言した。疑いの余地は無い。メーガンは仕事でニューヨークを出た」と告げる。ホリーたちは、ジムが 無実だと判明したのならデートすべきだと勧めるが、アマンダは「殺人犯に間違いない」と反論する。
アマンダはホリーたちと共に、ジムの留守中に彼の部屋へと忍び込んだ。アマンダは殺人の証拠を探すが、何も見つからない。それでも アマンダは納得せず、ジムを尾行する。そんな様子を、ハロランという男と彼の一味が目撃していた。ハロランは「第2のメーガンに なっては厄介だ」と考え、絵画修復の依頼者としてアマンダに接近する。
大きな袋を持って公園へ行くジムを尾行したアマンダは、遺体を処理するのだと思い込む。だが、彼は子供たちを集めて野球を始めた。その 様子を見て、アマンダはすっかり感動する。アマンダはジムとデートし、肉体関係を持つ。一方、ホリーはジムが仕事仲間からメーガンの ことを聞かれて動揺する様子を目撃し、殺人犯だと確信する・・・。

監督はマーク・ウォーターズ、原案はジョン・J・ストラウス&エド・デクター&デヴィッド・キッド&ロン・バーチ、脚本はロン・ バーチ&デヴィッド・キッド、製作はロバート・シモンズ、製作協力はアイラ・シューマン、製作協力はリタ・スミス、製作総指揮は トレイシー・トレンチ&ジュリア・ドライ&エド・デクター&ジョン・J・ストラウス、撮影はマーク・プラマー、編集はカーラ・ シルヴァーマン、美術はペリー・アンデリン・ブレイク、衣装はシーラ・ホワイト、 音楽はランディー・エデルマン&スティーヴ・ポーカロ、音楽監修はゲイリー・ジョーンズ&ハッピー・ウォルターズ。
出演はモニカ・ポッター、フレディ・プリンゼJr.、シャロム・ハーロウ、イワナ・ミルセヴィッチ、サラ・オハラ、トミコ・ フレイザー、チャイナ・チャウ、ジェイ・ブラゾー、スタンリー・デサンティス、 ジョー・パスクアル、ベティー・リンド、ノーマ・マクミラン、ベソー・シャーコフ、ターニャ・ライヒェルト、J・B・ビヴェンス、 ゲイリー・ジョーンズ、トム・ショートハウス、ジェリー・ワッサーマン、セオドア・トーマス、コリン・ローレンス、ティモシー・ オリファント他。


『コン・エアー』『パッチ・アダムス』のモニカ・ポッターが主演したコメディー映画。
アマンダをモニカ・ポッター、ジムをフレディ・ プリンゼJr.、リサをチャイナ・チャウ、ジェイドをシャロム・ハーロウ、ロクサーヌをイワナ・ミルセヴィッチ、キャンディーをサラ・ オハラ、ホリーをトミコ・フレイザー、ハロランをジェイ・ブラゾーが演じている。
アマンダの同居人4名は、スーパーモデルのシャロムを始めとして、全てモデルとして活動するメンツを揃えている。

当初はヒロイン役にクレア・デーンズが予定されており、いわばモニカ・ポッターは「外れ1位」みたいなモンなのだが、しかし彼女が 輝いているのだ。犬に押し倒されて慌てる様子や、「デカい犬」を「デカチン」とか「急がないと遅れる」を「急がないと漏れる」と いった言い間違いとか、その表情や動きがキュート。
魅力的なコメディエンヌぶりを披露している。
そのようにモニカ・ポッターのコメディエンヌぶりが良いからこそ、この映画の出来の悪さは残念だ。

この映画は、2つの大きなミスを犯している。
1つは、ヒロインがファッション業界に深く関わらないこと。
せっかく同居する4人全員をモデルにしてあるのに、彼女たちがモデルとして大げさにステレオタイプな行動を取るというだけで、アマンダが翻弄されるとか感化されるということが皆無に等しい。
門外漢の冴えないアマンダが、ファッション業界に首を突っ込む話にすれば良かったのに。
もう1つの失敗(こちらの方がダメージは大きい)は、途中で路線変更してしまうこと。
最初はロマコメとして始まったのに、なぜか途中でヒッチコックの『裏窓』を持ち込み、後半はサスペンス・コメディーになってしまうのである。
せっかくモニカ・ポッターがロマコメのヒロインとして魅力的だったのに、その路線変更は全く解せない。

アマンダがジムを探るという展開になると、ホリー達も単なる尾行や見張りの同行者となり、ファッション・モデルとしての設定を 全く活かせなくなる。
ロマコメにしておけば、男を誘惑する恋のテクニックをアマンダに手ほどきするとか、モデル風のオシャレの技術を 教えるとか、そういう部分でモデルとしての存在価値があったのに。
しかも前半はアマンダが犬に押し倒されたりジムに会って腰を抜かしたりというコメディー芝居を多く担当していたのに、後半に入ると ホリーたち4名の方がコメディー芝居を担当することが多くなる。最初に提示された「アマンダが美しい絵画を見ると腰を抜かす」という設定も、最初にジムを見て腰を抜かすシーンで使った後は、全く利用されていない。

モニカが恋に浮かれてジムとデートするようになると、それをホリーたちが見張るということで、中心の位置が移動している。
モニカがジムを殺人犯と確信して調べ始めたのに、数十分後には「モニカは無実だと断定し、ホリー達が犯人だと確信する」という風に立場が逆転している。
その逆転も上手くやってりゃともかく、ギクシャク感ありまくりだし。
終盤に入り、「実はジムはFBIの囮捜査官で、ロシアのダイヤ密輸組織の頭領ハロランを信用させるために同じ囮捜査官のメーガンを 殺したように見せ掛けた」という真相が明らかにされる。
で、ジムとアマンダたちが、ハロランに捕まったり逃げたり退治したりという展開になる。
でもさ、そんなのどうでもいいから、素直にロマコメをやっておけと言いたい。言い含めたい。言いくるめたい。


第24回スティンカーズ最悪映画賞

ノミネート:【最も苛立たしいグループ】部門[スーパーモデルたち]

 

*ポンコツ映画愛護協会