『ゴールド・パピヨン』:1984、フランス

ユクエンの港で盗みを働いていた3人の男は、木箱に隠れて密入国したフランス女性のグウェンドリンを発見した。彼らはグウェンドリンを袋に入れ、その場から連れ去った。市場で果物を盗んだ侍女のベスは港へ戻り、グウェンドリンが消えているのを知る。3人組は賭博場の支配人室へ行き、支配人のユキにグウェンドリンを売り渡した。グエンドリンはユキに質問され、修道院にいたこと、父親が危険な目に遭う予知夢を見て捜しに来たことを語った。
ユキがグウェンドリンを手籠めにしようとすると、そこへ密輸船の船長であるウィラードが窓かを突き破って乗り込んだ。彼は手下たちを叩きのめしてユキを脅し、金を渡すよう要求した。ウィラードは金を受け取り、それをグウェンドリンに渡す。彼はグウェンドリンの拘束を解き、その場を去った。3人組はベスを拉致して支配人室に来るが、手下たちが倒れているのを見て逃げ出した。グウェンドリンはベスに、ウィラードに惚れたことを語った。
グウェンドリンとベスはユキの殺害犯だと誤解され、彼の手下たちに追われる。賭博場でウィラードを見つけたグウェンドリンは助けを求めるが、冷たく拒否される。しかしウィラードはギャンブルを邪魔されたため、怒って手下たちを退治した。彼はグウェンドリンから蝶の収集家である父親の捜索を手伝ってほしいと依頼され、即座に断った。しかしグウェンドリンがギャンブルに勝ったため、ウィラードは彼女とベスを連れて賭博場を出た。
ウィラードはグウェンドリンとベスを連れて、シルクという男を訪ねた。シルクはグウェンドリンの父親から旅の案内役を頼まれたこと、危険だと忠告したが耳を貸さなかったことを語る。さらに彼は、ヤキヤクの砂漠に蝶がいること、そこから戻った者はいないことを話す。グウェンドリンはヤキヤクが予知夢に出て来た場所だと確信し、シルクは最後に父親を見たのがタコマだと教えた。ウィラードはタコマへの案内役をグウェンドリンから頼まれるが、冷たく断った。
警察署長はグウェンドリンとベスをユキ殺しの罪で、ウィラードを密入国の罪で逮捕した。ウィラードは見張りの男たちをおびき寄せて昏倒させ、鍵を奪って牢から脱出した。彼はグウェンドリンとベスに「船でヨーロッパへ帰れ」と告げ、その場を去った。グウェンドリンとベスは密かに尾行し、ウィラードがスコッチという男からブツを運ぶ仕事を引き受ける様子を目撃した。次の朝、ウィラードが船で目を覚ますと、2人が忍び込んでいた。ウィラードは2人を海に突き落とし、船室で眠った。しかし目を覚ますと再びグウェンドリンとベスが侵入しており、彼は怒って海へ突き落した。
グウェンドリンとベスはウィラードが眠っている間にブツを受け取ったことを明かし、案内役を引き受ければ隠し場所を教えると提案する。ウィラードは仕方なく取引を承諾し、船を出発させた。ウィラードは取引相手の一味と接触し、彼らの船に火を放って逃亡した。タコマに着いたウィラードは情報を入手するため、友人のトムと会った。トムはグウェンドリンの父親の遺体が木の根に引っ掛かっていたことを教え、「キオプス族に捕まったんだろう。あの日は砂嵐が吹いていた。迷信の犠牲になったんだ」と述べた。
ウィラードはグウェンドリンとベスに、巻き込まれると死に至る「カリビドゥー」という毒性の砂嵐があることを説明する。その上で彼は、風の怒りを鎮めるためにキオプス族がグウェンドリンの父親を生贄にしたのだろうと告げた。するとトムは、「キオプス族は生贄を蜘蛛の供え物にするのだが、彼は小銃で撃たれていた」と疑問を口にした。グウェンドリンは父の遺志を引き継ぐため、蝶を見つけて彼の名前を付けようと決意した。彼女はウィラードに「明朝には2千ドルを用意する」と約束し、ヤキヤクへの同行を要請した。グウェンドリンはトムを連れ出してブツを渡し、金を調達した。
翌朝、グウェンドリンたちはヤキヤクへ向かうが、ウィラードは苛立って途中で帰ろうとする。しかしグウェンドリンが渡していた金は偽物で、「帰ったら金は払う」と告げた。ウィラードはジャングルで木箱を見つけ、先客がいることを確信した。先へ進もうとした彼らはキオプス族に捕まり、集落へ連行された。族長が首から下げている双眼鏡に目をやったグウェンドリンは、父の物だと気付く。ウィラードはグウェンドリンとベスに、「女は明朝、野犬に追わせて殺させる。男は生贄にされる」と説明した。
グウェンドリンが生娘と知ったウィラードは話し掛け、セックスを妄想させる。しかしグウェンドリンは興奮するが、ウィラードの背後でベスも同じように喘いでいた。グウェンドリン、ウィラード、ベスは、声を合わせて笑った。翌朝、ウィラードは様子を見に来た見張り役を退治し、グウェンドリンとベスを連れて集落から脱出した。待ち伏せていたキオプス族が追い掛けて来るが、蜘蛛の巣の仕掛けを見るとグウェンドリンに近付こうとしなくなった。
ヤキヤクの砂漠に入ったウィラードはキオプス族が追い掛けて来なくなった理由を悟り、「カリビドゥーだ」とグウェンドリンとベスに教える。3人は息を止めて身を伏せ、カリビドゥーが通過するのを待った。予知夢の内容を思い出したグウェンドリンは、蝶を発見した。ベスが捕獲に向かうが、何者かに捕まって姿を消した。グウェンドリンとウィラードが壁を登って洞窟を進むと、女だけの王国があった。2人は女戦士に化け、ベスを捜索することにした。
巨大装置で大量のダイヤモンドを運んでいる人夫たちはウィラードが男だと知り、欲情して一斉に群がった。ウィラードは女戦士たちをおびき寄せて逃げ回り、グウェンドリンは牢屋に入れられているキオプス族を発見した。彼女は数名の女性が大きな拷問器具に拘束されている部屋へ入り込み、その中にベスの姿を発見した。グウェンドリンは拷問器具を外し、ベスを救出した。そこへ女王が兵隊を率いて現れ、グウェンドリンを捕まえた。女王は千年前の地震で滅びたと言われていた部族で、唯一の男性である科学者のダルシーを従えていた。彼女はウィラードも捕獲し、競技で勝利した女兵士との性交を命じた…。

監督はジュスト・ジャカン、原作はジョン・ウィリー、脚本はジュスト・ジャカン、製作はセルジュ・ラスキ、製作総指揮はジャン=クロード・フルーリー、撮影はジャン・ポール・ムリス、美術はフランソワーズ・デレウ、編集はミシェル・ボーム、衣装はダニエル・フリス、音楽はピエール・バシュレ。
出演はタウニー・キティン、ブレント・ハフ、ザブー、ベルナデット・ラフォン、ジャン・ルジェリエ、ローラン・アムスタッツ、ジャン・スタニスラス・カプール、チン・チェンチャン、ヴァーノン・ドブチェフ、アンドレ・ジュリアン、タカシ・カワハラ、クリストファー・クム、ダク・ロイラム、モーリス・ラミー、ジム・アドヒ・リマス、ジョルジュ・ライカン、ドミニク・マーカス、ロジャー・パスチー、フア・クアチ他。


ジョン・ウィリーのコミック・ストリップを基にした作品。
監督&脚本は『エマニエル夫人』『チャタレイ夫人の恋人』のジュスト・ジャカン。
グウェンドリンをタウニー・キティン、ウィラードをブレント・ハフ、ベスをザブー、魔界の女王をベルナデット・ラフォン、ダーシーをジャン・ルジェリエが演じている。
タウニー・キティンはラットやホワイトスネイクのアルバムやミュージック・ビデオに登場していたので、そちらで知っている人もいるかもしれない。

この映画が公開されたのは1984年。そこから遡ること3年前、1981年にスティーヴン・スピルバーグ監督の『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』が公開されている。
この映画の大ヒットを受け、二匹目のドジョウを狙う亜流作品が何本も作られた。
1984年の『ロマンシング・ストーン/秘宝の谷』、1985年の『ロマンシング・アドベンチャー/キング・ソロモンの秘宝』、1988年の『バイブス/秘宝の謎』などが挙げられる。
この映画は原作付きだが、たぶん二匹目のドジョウ狙いという意識はあったんじゃないかと思う。

舞台となっているのは架空の場所だが、どうやらユクエンは香港をイメージしているようだ。
そんなユクエンにある賭博場の支配人室でウィラードが戦うシーンで、ユキの手下の1人は上半身裸になってヌンチャクを振り回す。このキャラクターは、モロにブルース・リーを模倣している。
でも、そういう方向性の味付けをしているのは、そこだけに留まっている。なので、分かりやすく陳腐になっている。
まあ、この映画は他にも陳腐なトコが幾つもあるんだけどね。

グウェンドリンは「父親が危険な目に遭う予知夢を見た」という理由で、フランスから密入国してまでユクエンに来ている。でも、大きな危険を冒して密入国する行動理由としては、かなり脆弱だ。
そういう設定なら、せめてグウェンドリンが予知夢を見るシーンは必須でしょ。そんなのは最低条件と言ってもいい。
あと、彼女の父親の「蝶を見つけて自分の名前を付けるのが夢」という行動理由も、そのために命の危険を顧みないってのはアホすぎるわ。
だから、そんな奴を命懸けで救おうとするグウェンドリンの冒険にも同調できんよ。

ウィラードはグウェンドリンを助けに来たのか、彼女と知り合いなのかと思ったら、まるて無関係な赤の他人。
どうやら金が目当てだったらしいが、それにしてはユキから受け取った大金をグウェンドリンに渡すので「何がしたかったんだよ」と言いたくなる。
彼は「箱の中身や雑魚どもに興味は無いが、俺を馬鹿にするのはやめろ」と言うが、どういう意味か良く分からない。ユキとの間に、ギャンブルを巡って何か因縁でもあったのか。
あと、ウィラードは窓を突き破って突入するけど、そんな行動を取る意味なんて全く無いよね。普通にドアから入れば良かったよね。

警察署長はグウェンドリンたちを逮捕すると、なぜか家畜が飼われている納屋に設置された牢に収監する。ウィラードはグウェンドリンを強引に抱き寄せ、いきなりキスをする。それは「グウェンドリンに助けを呼ばせて、その声で見張りをおびき寄せる」という作戦だ。
でも、それならグウェンドリンに作戦を説明して悲鳴を上げてもらえば済むことでしょ。あるいは、本人が大声を上げれば見張りは気になって様子を見に来るでしょ。
で、ウィラードにキスされたグウェンドリンは抵抗せず、「もっとお願い」とリクエストするアバズレっぷりを見せる。
コメディーとしての描写ではあるが、ヒロインがビッチ設定なのは、さすがのジュスト・ジャカン監督だね。

ウィラードは自分の船にグウェンドリンとベスがいるのを見つけ、海に突き落とす。しばらく寝て起きると2人がいるので、また海に突き落とす。ここでそんなとベスはブツを預かっていることを明かし、取引を持ち掛ける。
でも、「2人に気付いたウィラードが海に落とす」という手順を繰り返す意味って、全く無いよね。1度で充分だよね。
最初に海に突き落とされた時点で、「ブツを預かっていて」という取引に入ればいいでしょ。
っていうか、初めて会った素性も知らないそんなとベスに大事なブツを預ける奴らは、どういう感覚なのかと言いたくなるけどさ。
あと、ブツを届けに来た時、まるで気付かず寝ているウィラードもどうなのかと。

ウィラードはグウェンドリンとベスから持ち掛けられた取引に応じるが、ブツを運ぶのはその日の仕事なので、タコマまで案内していたら全く間に合わない。それなのに取引相手と接触するので、どうするのかと思ったら船に火を放って逃げている。
「どういうつもりなのか」と言いたくなる。
で、それ以降は取引相手が話に絡んで来ることなんて全く無い。
そうなると、そもそも「取引が云々」という手順自体、別に無くても良かったんじゃないかと思うし。

トムはグウェンドリンの父親の死について、最初は「キオプス族の迷信の犠牲になった」と説明する。
ところがウィラードが詳しく解説すると、「小銃で撃たれていたのは不可解だ。奴らは銃を使わないし、誰とも取引しない」と疑問を口にする。
だったらキオプス族の迷信と関係ないことが濃厚でしょうに。銃を使ったのはキオプス族じゃなくて別の奴で、殺した理由も他にあることが濃厚でしょうに。
トムの喋っている内容は、完全に自己破綻しているぞ。

トムはグウェンドリンの父親の服を着ており、「遺体を見つけた」と説明する。でも、その遺体は見せてくれないので、彼の証言が真実かどうかは怪しいモノがある。
なので「嘘をついている可能性もあるのでは」と変な深読みをしたくなるのだが、実際に死んでいる設定だ。なので、父親の遺体を見せないのは、単純にシナリオが粗いだけだ。でも、どう考えても生かしておいた方が得策なんだよなあ。
あと、父の死を知ったグウェンドリンは「意思を継いでチョウを見つけて名前を付ける」と宣言してヤキヤクへ行くのだが、「なんでだよ」と言いたくなるわ。
そこは「死因に不審があるので調べて犯人を見つける」という目的にでもしておいた方がいいだろ。

グウェンドリンたちがジャングルに入ると、3人が立っている辺りにだけ降っていることがバレバレな雨が降り出す。するとウィラードは水を集める目的で、グウェンドリンとベスに服を脱がせる。
そうやってグウェンドリンとベスがオッパイを放り出す展開を用意する辺りも、さすがはジュスト・ジャカン監督だ。
で、ずっとウィラードに反発していたグウェンドリンだが、体を触られると恍惚の表情でもっと触ってもらおうとする。
ちょっと油断していたら、ちゃんとビッチぶりを思い出させてくれる。

グウェンドリンたちがキオプス族の集落から抜け出すと、族長が武器を構えた手下たちを率いて待ち受けている。
ベスはウンザリした様子で感情を爆発させ、愚痴をこぼして族長をビンタする。しばらく族長は茫然としたまま立ち尽くし、我に返ってグウェンドリンたちを追い掛ける。
ここだけは普通に面白い。
その後、グウェンドリンたちとキオプス族の追い掛けっこになり、同じ場所から出たり入ったりする様子が描かれるが、ここだけ別の監督が演出したかのような、ベタなスラップスティック喜劇のパターンをやっている。

カリビドゥーは巻き込まれると死に至る毒性の砂嵐のはずだが、グウェンドリンたちが息を止めて身を伏せていると、簡単にやり過ごせてしまう。そこを抜けて蝶を見つけた後、ウィラードは壁を登る時に誤って女戦士を殺してしまう。
そこまでにも取引相手やキオプス族と戦っているが、女戦士が死ぬシーンだけは「残虐な殺人」として強調されている。そんな演出の意図は不明だし、もちろん邪魔なだけだ。
グウェンドリンとウィラードは女戦士の衣装を着て変装するが、どこで手に入れたのかは不明。
1つは死んだ女戦士の物を使うとしても、もう1つが必要だからね。

女戦士に化けたグウェンドリンとウィラードは口論を始めるが、ドラマを盛り上げる力なんて皆無で、さっさと話を先に進めろと言いたくなる。女王の王国は何の伏線も無く唐突に出現し、歓迎できる驚きではなく陳腐なバカバカしさだけを与えてくれる。
その女王は王国存続のためという理由で、ウィラードに競技で勝ち残った女とのセックスを要求する。でも王国を存続させたいのなら、競技で勝った奴だけじゃなくて大勢の女とセックスさせて子供を増やした方が良くないか。
あと、王国を存続させるには後継者も必要で、そのことを考えると、まず自分がセックスした方が良くないか。
そう思っていたらラスト近くになって「王国では一度でもセックスした男は死ぬ」という理由が不明な設定が明らかにされるが、だったら絶対に女王がセックスすべきだろ。

王国は千年前の地震で滅びたはずが、少数の女性だけが生き残り、男は次々に死んだという設定だ。
でも、そんな種族が今まで生き延びて、それなりに人間の数もいるのよね。
ダルシーはセックスで役立たずの設定なので、かなり長きに渡って女だけの状況だったことになる。それで今までは生き延びているってのは、どういうことなのかと。
そんな場所まで入って来る男なんて、ほぼ皆無に等しいはずで。なので部族を増やす方法は無かったはずで、どういうことなのかと。

グウェンドリンはウィラードを救うため、3人の女が引っ張る人力車に乗る。そしてウィラードを救出し、『ベン・ハー』の出来損ないみたいなチェイスシーンになる。
でも車を引っ張る女たちは、女王の部下なのよ。幾ら鞭で叩かれたからって、なんでグウェンドリンたちのために走り続けるのかと。
しかも、ここから反撃に出るわけでもなく、ウィラードは連れ戻され、グウェンドリンは女兵士に化けて競技に参加する展開に入るのよね。それは展開としてモタモタしているなあ。
しかも、この競技で勝ってもクライマックスに畳み掛けるわけじゃなくて休憩を取っちゃうので、さらに間延びしているんだよね。
そうそう、ちなみに、この映画のクライマックスはグウェンドリンとウィラードのセックスだ。珍しい一般映画でも、ジュスト・ジャカン監督はブレないのである。

(観賞日:2021年8月12日)

 

*ポンコツ映画愛護協会