『グリズリー』:1976、アメリカ

ジョージア州の国立公園には、観光シーズンが過ぎても大勢の客が訪れていた。公園警備隊の隊長マイケル・ケリーは、隊員にパトロールの強化を指示した。友人の娘で雑誌カメラマンをしているアリソンが来たため、ケリーは公園を案内することにした。
公園に来ていた2人の女性キャンパーが、熊の襲撃を受けた。ケリーとアリソン、警備隊員のトムは、キャンパーの死体を発見する。死体には、食い荒らされた形跡があった。ケリーは、高地に食料があるはずなのに、熊が人間を食べたことに疑念を抱く。
ケリーはドン・ストーバーが操縦するヘリコプターに乗り、上空から熊を捜索する。公園専属の動物科学者アーサー・スコットと遭遇したケリーは、キャンパーを襲撃したのが単なる熊ではなく、既に退治したはずのグリズリーだと聞かされる。
普通のグリズリーは体長が2メートル程度だが、スコットは木に残った爪痕から、公園に現れたグリズリーが5メートルを越えていると推測する。トムの恋人やキャンパーが犠牲となる中、公園管理責任者のチャーリー・キトリッジはグリズリーの存在を認めようとしない。そして彼はケリーの忠告を無視し、ハンターを公園に放った。
ハンター達は子供のグリズリーを囮に使って巨大グリズリーを誘い出そうとするが、あえなく失敗に終わる。ケリーは公園の閉鎖を要求するが、キトリッジは拒否し、宣伝のためにマスコミを呼び集める。ケリーはドンと共に、グリズリー退治に出向く…。

監督はウィリアム・ガードラー、脚本&製作はハーヴェイ・フラックスマン&デヴィッド・シェルドン、製作協力はリー・S・ジョーンズJr.、製作総指揮はエドワード・L・モントロ、撮影はウィリアム・アスマン、編集はバブ・アスマン、特殊効果はフィル・コーリー、メイクアップはジーン・ウィザム、音楽はロバート・O・ラグランド。
出演はクリストファー・ジョージ、アンドリュー・プライン、リチャード・ジャッケル、ジョーン・マッコール、ジョー・ドーシー、チャールズ・キッシンジャー、カーミット・エコルズ、トム・アークラジ、ヴィッキー・ジョンソン、キャサリン・リックマン、デヴィッド・ホルト、メアリー・アン・ハーン、スーザン・オーピン、マイク・クリフォード、ブライアン・ロビンソン、サンドラ・ドーシー他。


大ヒットした『ジョーズ』のプロットを拝借して、人食い鮫を熊に置き換えた動物パニック映画。
ケリーをクリストファー・ジョージ、ドンをアンドリュー・プライン、スコットをリチャード・ジャッケル、アリソンをジョーン・マッコール、キトリッジをジョー・ドーシーが演じている。

『ジョーズ』の亜流映画、似たような筋書きの映画というのは大量に存在するが、ここまでソックリなのも、ある意味では凄い。鮫が熊になったという以外は、ほとんど『ジョーズ』を丸写ししたような内容になっている。節操もヘッタクレも無い。
まあ、それだけ『ジョーズ』が動物パニック映画の王道パターンだということの証明ではあるが。

何しろ、メガホンを執ったのがウィリアム・ガードラー監督だ。
この人、とにかくヒット映画をパクるということしかやらなかった人。
そのパクリ精神は、ロジャー・コーマンよりも凄かったのではないだろうか。
ちょっと捻るとか、そういうこともしないんだから。

メインとなる3人の男の職業。主人公の閉鎖要求と、それを拒否する場所の監督者。などなど、ストーリーもキャラもソックリだ。
ここまで似せるなら、パロディーとして作った方が面白くなりそうな気もするのだが、そんな考え方はガードラーには通用しない。

『ジョーズ』との大きな違いは、主人公が人間を襲っている敵の正体に気付いた後も、何人もの犠牲者が出るということだろうか。
だから、主人公がデクノボーのように見える。
実際、あまり頭を使っている様子は無い。
何の対策も立てずに、ただボーッと捜索しているとしか思えない。
あと、バズーカ砲があるなら、もっと早く使いなさいって。

後半になるまで、グリズリーは手の部分しか画面に映されず、登場シーンではグリズリー視点での映像になる。
犯人視点でスリルを煽る演出かと思うかもしれないが、予算を安く抑えるためだろう。犯人視点にしておけば、グリズリーの登場時間が短くて済む。
予算の問題と、もう1つはグリズリーがホントは大きくないのを誤魔化すという意味もあるのだろう。
グリズリーが映されるシーンでも、なるべくフルショットを撮らずにしている。
ただ、一緒に画面に写る物体との縮尺を比較すると、簡単に大きさが分かるけどね。

本物のグリズリーを使っているというのがセールスポイントなんだろうけど、そのせいで、体長が約6メートルという「巨大な人食い熊」のはずが、せいぜいラジャ・ライオンと同じぐらいの体長の、ホントに「単なる熊」にしか見えない。
しかも、その熊が巨大に見えないというだけでなく、ちょっと可愛らしくも見えてしまうんだから困ったものだ。

 

*ポンコツ映画愛護協会