『ギャングスターズ 明日へのタッチダウン』:2006、アメリカ

ロサンゼルスのキルパトリック少年院に収容されている17歳のロジャー・ウェザーズは、深夜に同室のケヴィンを襲撃した。すぐに他の少年たちがロジャーを取り押さえ、看守が独房へ連行した。保護観察官のショーン・ポーターに厳しく叱責されたロジャーは、「あいつが馬鹿にしたからだ」と反発した。ショーンはロジャーに、「このままだと4年後、お前は死んでる。お前は明日、ここを出る。死にたくなければ元の仲間と縁を切れ」と説いた。
少年院を出たロジャーは、従弟のウィリーや彼の恋人であるダニエール・ロリンズと再会した。ロジャーたちが町を歩いていると、少年ギャング「エイティー・エイト」の仲間たちがやって来た。仲間たちは「ナインティー・ファイブ」の連中に自転車を盗まれたので取り戻しに行くと言い、撃ち合いに備えて拳銃を差し出した。ウィリーはロジャーに「行こうぜ」と持ち掛け、ダニエールは呆れて立ち去った。その直後、車に乗ったナインティー・ファイブのクイックたちが襲撃し、ロジャーは命を落とした。ウィリーはエイティー・エイトのフリーから、「クイックは俺が殺す。お前は奴の兄弟のアンソニーを殺せ。スーパーで夜勤してる」と告げられた。
ショーンは同僚のマルコム・ムーアから、ロジャーが殺されたことを聞く。ジュニア・パライタが今週に入って3度目の喧嘩を始めたため、彼は独房行きを命じた。ウィリーはスーパーへ行き、アンソニーに拳銃を向ける。しかし「やめてくれ、子供がいるんだ」と懇願されると、殺せずに逃亡した。ウィリーが帰宅すると、母のシャロンは愛人から暴力を受けていた。ウィリーは母から金を奪って暴力を振るう男に激怒し、出て行けと怒鳴った。男が止めようとするシャロンを殴ると、ウィリーは拳銃を構えた。「俺を殺す度胸なんて無いくせに」と男が余裕を見せると、ウィリーは彼を射殺した。
翌日、ショーンは院長のポール・ヒガーに「子供たちを立ち直らせるためには心の穴を埋めてやらないと」と言い、生活態度を改善させるためにフットボールチームを作ることを提案した。ポールは「ここでは互いに体を接触しないのが原則だ」と告げ、ソーシャルワーカーのテッド・デクスターも賛成しなかった。しかしショーンは若い頃にフットボール選手だったポールを説得し、チーム結成を許可してもらう。ショーンは病気で入院している母のボビーと会い、チーム結成について話した。
少年院に収容されたウィリーは他の少年たちに生意気な態度を取り、フィフティー・ファイブのケルヴィン・オーウェンズと睨み合いになった。ショーンはチームのことを説明し、ケニー・ベイツやミゲル・ペレスが参加を決めた。レオン・ヘイズは経験があると言い、QBを希望した。ジュニアが「俺もやる」と告げると、ショーンは「お前は目を離すと喧嘩を始めるからダメだ」と却下した。高校時代にDBだったケルヴィンや少しだけ経験のあるジャマール・エヴァンスは、ショーンが半ば強制的に参加させた。
ショーンは意欲を示すバグ・ウェンダルにウォーターボーイとしての参加を勧め、来週には出て行くドナルド・マドロックが「俺もやる」と言うと「相談してみよう」と約束した。ショーンは参加を渋るウィリーにも、「ロジャーみたいに死なないためにやるんだ」と参加を強制した。ショーンとマルコムは近くの高校に練習相手や場所の提供で協力を依頼するが、ことごとく断られる。2人は学生フットボール協会のフランク・トーランスに会うが、やはり協力を拒まれた。しかしマルコムが聖書の言葉を引いて説得すると、クリスチャンであるフランクは協会に連絡してリーグ戦への参加を取り付けてくれた。
ショーンはチームを「マスタングス」と名付け、少年たちに「寮生活」「学校」「グリッド・アイアン」という3つの柱について説明する。そして彼は、「これにチャレンジすれば、お前たちはリーグが終われば勝利者になれる」と告げた。ショーンは少年たちに厳しい練習を貸し、ジャマールが疲れて「もう抜ける」と去ると「チャレンジしない奴にマスタングスを名乗る資格は無い」と厳しく言う。他の面々が1週間の練習を終了すると、ショーンは彼らを褒めた。
3週間後に控えた強豪のバリントン高校との試合に向けて、ショーンは作戦を立てた。夜中にジュニアが1人で練習する様子を見た彼は、「何やってる?」と声を掛けた。ジュニアが「息子が2歳になった。なのに一緒にいてやれなかった。俺もチームに入れてくれ。もう面倒は起こさない。俺にも何か出来るって息子に見せてやりたい」と言うと、ショーンは彼をチームに加えた。練習中にウィリーとケルヴィンが喧嘩を始めたので、ショーンは制止して叱責する。争いの原因を聞いた彼は、「これを永遠に続けるのか。違うチームというだけで殺し合うのか」と説教する。「終わりにしろ」とショーンが言うと、ウィリーは「外で戦争してるのに意味ねえよ」と告げた。
テッドはウィリーが殺人罪を犯していることに触れ、ショーンに「人殺しはチームに入れない約束だったはずだ」と指摘する。ショーンは「だから二度と殺さないように始めたんでしょ」と反論し、激しい苛立ちを示した。ドナルドが戦術を覚えられそうにないので、ショーンは記憶力の高いレオンに「このままだと、お前のガードに付けられない」と言って対処を任せた。ショーンは勝手に少年院の1万ドルを使ってチームの防具を購入したため、テッドから「君に権限は無い。停職処分になるぞ」と言われる。ショーンは全く気にせず、「じゃあ書類を回してください。それで聴聞会の日が決まる。俺は家族の病気を理由に延期してもらう。そんなことをしている内に、シーズンは終わるでしょう」と言い放った。
ダニエールが面会に来たので、ウィリーは喜んだ。喧嘩して独房に連行されるピーヴィーがダニエールをからかうと、ウィリーは憤慨して怒鳴り付けた。「心配するな、後で思い知らせてやる」と彼が告げると、ダニエールは「帰る。思い知らせるって、殺すの?」と幻滅して去った。ケニーの母も面会に来ていたが、「どうしろって言うの?ここにいるのは私のせい?アンタのせいでしょ」と息子を責めて立ち去った。ショーンはケニーに声を掛け、「いつも母さんと喧嘩になる。ホントは愛してほしい」と話す彼に「分かるよ」と言う。ショーンはケニーに、レシーバーになるよう勧めた。ウィリーはダニエールに、「変わろうと思ってる」と手紙を書いた。
試合5日前の練習で、ショーンはチームに激しいプレーを要求した。タックルを受けたジュニアは倒れ込み、病院に運ばれた。ジュニアはすぐに退院したものの、椎間板を痛めてバリントン高校との試合には出場できなくなった。ジュニアが「チームは俺の家族みたいなモノだ。試合には出られないけど、俺も行く。敵を倒してくれ」と語ると、チームは団結した。試合の当日、スクールバスでバリントン高校へ向かう準備をしていたショーンは、じっと見ているジャマールに気付いた。彼はジャマールを呼び寄せ、「チームに戻りたいか?」と問い掛ける。「もちろん。でも運動じゃ付いていけないし」とジャマールが答えると、ショーンは「選手じゃなくてもチームの一員になれる」と用具係を任せた。
バリントン高校に着いたショーンは、「今こそ根性を見せる時だ。自分自身を見せ付けてやれ。お前たちには大きなことが出来るんだと。行って勝利を掴め。全力でチャレンジしてこい」とチームに熱く語り掛けた。フィールドに飛び出したマスタングスは、最初は素晴らしいプレーを見せて奮闘する。だが、すぐに力の差が露呈し、0対38で完敗を喫してしまった。試合後、ショーンはチームに「今日は全員が多くのミスをした。俺もだ。相手は強い。3年間もやってきたチームだ。俺たちは3週間だ。下を向くな。まだ9試合もある」と告げる。しかしウィリーは「やってらんねえ。俺は抜ける」と吐き捨て、その場を後にした。
ショーンは母の病室を訪れ、「やる気をくじいてしまった。突っ走ってしまった」選手を怒鳴り散らすなんて、親父と同じだ」と後悔を口にした。選手たちが辞めたがっている様子を見たポールは、ショーンに「自尊心を植え付けてやりたかったが、逆効果だった。ここまで打ちのめされたら、彼らは耐えられないだろう」とプログラムの中止を通告する。しかし翌日、選手たちは自主的に集まって練習を始めた。ショーンたちが驚いて歩み寄ると、ジュニアは「負けるのはウンザリだ」と告げた。
次の試合でもマスタングスは勝てず、ショーンは途中で気持ちの切れたウィリーを成長させる必要があると考えた。彼は練習で自ら相手を引き受け、ウィリーを挑発してタックルさせる。何度も叩きのめされるウィリーだが、ついにショーンを吹き飛ばした。チームメイトは歓喜でウィリーに駆け寄り、ショーンは倒れ込みながらも満足そうな笑みを浮かべた。そして3試合目に挑んだマスタングスは、ウィリーの活躍で初勝利を収めた…。

監督はフィル・ジョアノー、脚本はジェフ・マグワイア、製作はニール・H・モリッツ&リー・スタンリー、製作総指揮はマイケル・ラックミル&シェーン・スタンリー&ライアン・カヴァナー&リンウッド・スピンクス、共同製作はアマンダ・コーエン、撮影はジェフ・カッター、美術はフロイド・アルビー、編集はジョエル・ネグロン、衣装はサーニャ・ミルコヴィッチ・ヘイズ、音楽はトレヴァー・ラビン。
出演はドウェイン・“ザ・ロック”・ジョンソン、イグジビット、ケヴィン・ダン、レオン・リッピー、ジェイド・ヨーカー、セツ・ターセ、トレヴァー・オブライエン、デヴィッド・トーマス、モー、ブランドン・マイカル・スミス、ダニー・マルティネス、マイケル・J・ペイガン、ジャーニー・スモレット、ジャマール・ミクソン、ジェームズ・アール二世、マイケル・ジェイス、L・スコット・コードウェル、アンナ・マリア・ホースフォード、ブレット・カレン、ダン・マーティン、オマリ・ハードウィック他。


1992年に製作されたTVドキュメンタリーを基にした作品。
監督は『愛という名の疑惑』『ヘブンズ・プリズナー』のフィル・ジョアノー。
脚本は『ザ・シークレット・サービス』『タイムライン』のジェフ・マグワイア。
ショーンをドウェイン・“ザ・ロック”・ジョンソン、マルコムをイグジビット、テッドをケヴィン・ダン、ポールをレオン・リッピー、ウィリーをジェイド・ヨーカー、ジュニアをセツ・ターセ、ケニーをトレヴァー・オブライエン、ケルヴィンをデヴィッド・トーマス、レオンをモー、バグをブランドン・マイカル・スミス、ミゲルをダニー・マルティネス、ロジャーをマイケル・J・ペイガンが演じている。

冒頭、ロジャーは深夜に同室のケヴィンを襲撃し、制止されるまで殴り続ける。もしも誰かが止めなかったら、彼はケヴィンを殺していたかもしれない。
そんな様子を最初に描いてしまったら、「ロジャーは少年院で更生した」ってことが全く伝わって来ない。
でも本来なら、「ロジャーはショーンのおかげで更生し、少年院を出たら二度と犯罪には手を染めないつもりだった」という形で始まらなきゃダメなのよ。
そういうキャラとして描いておいて、「でも昔の仲間の誘いを断り切れずに命を落とした」という流れにしておかないと、悲劇としての色が薄くなるのよ。

少年院を出たロジャーが仲間の誘いに難色を示しているシーンはあるので、「彼は撃ち合いに消極的だった」ってことは伝わるのよ。
彼はショーンの説教を素直に聞き入れ、仲間とは縁を切ろうと思っていたんだろう。
ただ、前述した「ケビンを暴行して殺す恐れもあった」という最初の描写は、そういうキャラとして描く上で間違いなく邪魔でしょ。そんなシーンから始めても、何の得も無いでしょ。
もし「最初に少年院の荒れた様子を描きたかった」ってことなら、ロジャーを制止する側に置くとか、同室の連中の争いを見ているポジションにするとか、そういう形でもいいんじゃないかと。

ロジャーが命を落とすシーンの描写にも、疑問が残るんだよね。
まず、最初にフィフティー・ファイブの連中が襲って来た時に発砲するが、ここではロジャーが殺されておらず、誘って来た仲間が死んでいる。その後、ロジャーはウィリーと共に逃走を図るが、フェンスを乗り越えられず、車でひき殺される。
ここって、最初の発砲で殺されてりゃいいんじゃないかと。そこで変にアクションシーンを繋げる必要性を全く感じない。
あと、こういう形で殺されちゃうと、「仮にロジャーが仲間の誘いを断っていても殺されたよね」と言いたくなるのよ。まだ仲間と抗争の場所へ行く前に、ただ一緒にいる状態の時に襲われているんだからさ。
これだと仲間に「もう縁を切る」と言っていたとしても、そこを狙われる形になっちゃうでしょ。

ショーンはフットボールチームを結成するが、希望者だけを参加させるわけではなく、強制的に入れるケースもある。ウィリーに対しても、「ロジャーみたいに死なないためにやるんだ」と言う。
だけど「フットボールをやれば死なずに済む」ってのは、どういう方程式なのかサッパリ分からない。
仮にフットボールをやることで気持ちが変化し、ちゃんと更生したとしよう。でも前述したようにロジャーは「更生した」という設定で少年院を出たのに、あっさりと殺されているわけで。
つまり、前述したロジャーの死亡シーンで「更生しても無意味」と感じさせてしまったら、もう実質的には「終了」ってことになっちゃうんだよね。

ショーンが「子供たちを立ち直らせるためにフットボールチームを作るべし」と提案した時、「なんでフットボール?」と言いたくなる。
そりゃあフットボール(そうそう、書き忘れていたけど、ここでのフットボールってのはアメフトのことね)はアメリカの4大スポーツの1つだし、他の3つと比較しても道具や練習場所の面で取り入れやすいという利点がある。
ただ、「立ち直らせるためなら、他にも方法はあるでしょ。スポーツに限らなくてもいいし」と言いたくなるのよね。

その指摘は難癖っちゃあ難癖なんだけどさ、「フットボール」という選択肢に行き着くための手順に弱さを感じるのよ。
何しろ、ショーンがフットボールの練習風景を見ているシーンがチラッと入るだけで、その翌日には彼が「フットボールチームを作ろう」と言い出しているからね。なので、「なんか安易だなあ」と感じてしまうのよ。
そこは「ショーンがフットボールで輝かしい経歴を持つ元選手」「高校でコーチの経験がある」みたいなことを早い内に明示しておけば、かなりの助けになるんじゃないかと。
30分ぐらい経ってから「ショーンは大学のスター選手だった」という情報が出るけど遅すぎる。あと情報が薄いし。

マスタングスの練習が始まると、少年たちは途中でジャマールが抜けるだけで、他のメンバーは真面目に取り組む。ジュニアも最初から参加を志願するし、その情熱を見たショーンも途中加入を認める。
彼がチーム結成を提案した時には「スタッフによると、ここの子供たちは時間にルーズで協調性に欠け、言うことを聞かず、批判を嫌う」と言っているが、そういう様子は全く見られない。
「最初は言うことを聞かない奴も多いし真面目に練習しない奴もいたけど、次第に変化していって」みたいな流れは皆無だ。
最初から真面目に練習をして指示に従っているので、「だったらフットボールチームとか要らなくね?」と言いたくなるわ。

30分ぐらい経ってウィリーとケルヴィンの喧嘩があるけど、そこまでは順調そのものなんだよね。
しかも、その争いからチームが上手く回らなくなるのかというと、今までと何も変わらない。
ウィリーとケルヴィンも、その後は喧嘩を始めることもなく、ちゃんと練習に取り組んでいる。
試合を離れたトコでは「ウィリーがダニエールに幻滅される」「ケニーが母と口論になる」というシーンがあるが、これがチームに影響を及ぼすことも無い。

ジャマールが練習にウンザリした様子で去った時点で、しばらくすれば復帰するというシナリオを誰でも簡単に予想できるだろう。
ただ、以外に長い間、彼はチームに戻って来ない。それどころか、バリントン高校との練習試合の日まで、その存在を忘れ去られている。そして試合の朝になり、ようやくジャマールはチームに復帰する。ただし選手ではなく、用具係としてだ。
本人は喜んでいるけど、物語の流れとしてはダメでしょ。
練習を嫌がって離脱し、ショーンに「チャレンジしない奴にマスタングスを名乗る資格は無い」と言われたんだから、「厳しい練習にチャレンジする」という姿を見せないとダメでしょ。

試合5日前の練習で、ショーンは「今みたいなプレーじゃ負けるぞ」とチームに告げる。
その直後にジュニアがタックルを受けて椎間板を痛めるので、「ショーンのせいじゃないのか」と言いたくなるわ。
でも、そこで彼が責任を感じる様子は皆無なのよね。
で、次の試合には出場できなくなったジュニアが「チームは家族で云々」と語ると、チームは心を打たれて一致団結する。
この流れだったら、試合での勝利は必須でしょ。ところが実際には、惨敗を喫するのだ。

そりゃあ冷静に考えると、チーム結成から間もない素人集団だから、強豪に負けるのは当然っちゃあ当然なのよ。
ただ、直前に「退院したジュニアの言葉でチームが1つになって」という様子を描いているから、流れとして変になっちゃってんのよね。そこはジュニアが入院したままにでもしておけば良かったんじゃないかと。
っていうか、そもそも「ジュニアが怪我で出場できない」という展開そのものを排除すればいいんじゃないの。
単純に「未熟なチームだから惨敗した」ってことにしておけばいいんじゃないの。ジュニアが怪我で欠場すると、「彼の不在が大きかった」みたいな印象になっちゃうし。

ジュニアの言葉だけでなく、ショーンの試合直前の演説も勝利へのフラグにしか思えない。粗筋にも書いたような熱いスピーチで、チームを鼓舞するのだ。
そんなシーンを用意しておいて「手も足も出ず、圧倒的な力の差を見せ付けられて惨敗」って、なんちゅうシナリオだよ。思わず苦笑しちゃうぐらいだわ。
ホントは「最初の試合には勝利する。でも、そこで浮かれて調子に乗り、次は惨敗する。これによってチームがバラバラになるが、また結束してやり直す」みたいなドラマがあればいいと思うんだよね、ただし、そこまで描ける時間は無い。なので「試合に負けてチームが崩壊の危機を迎えるが、選手たちが練習に励んで次で勝利」という流れにするのは構わない。
だけど、惨敗する試合の見せ方を大きく間違っているのよ。なぜか勝利のフラグを立てちゃってるのよ。

しかも、その惨敗する試合も、最初は調子がいいんだよね。見事なプレーを見せて、チームは盛り上がっている。
ところが2分ほど経つと力の差がハッキリと見えるようになり、前半を0対21で折り返す。ハーフタイムにショーンは激しい口調で指示を出すが、まるでチームは変わらず、そのまま無得点で完敗する。
でも、それならハーフタイムとか要らないんだよね。もっと言うと、「最初は調子がいい」という部分も要らない。
「力の差を見せ付けられる」「ショーンは怒鳴り散らすばかりで冷静に指示が出せない」ってのを描いて、ハーフタイムを挟まずに「完敗で終わった」ってのを見せれば済む。そこで無駄に時間を使い過ぎてんのよ。

惨敗にショックを受けた選手たちは、チームを辞めようとする意志を見せる。ところがポールがプログラムの中止を決めた直後、選手たちが自主的に練習する様子が描かれる。そこからシーンが切り替わると次の試合になっており、マスタングスは勝利する。
それは時間の配分を間違えている。
選手たちが惨敗にショックを受けたら、「チーム崩壊の危機」という部分でドラマを作るべきだ。そして、再びチームが結束し、練習に励み、それを経て「初勝利」という結果を与えるべきだ。
そうじゃないと、初勝利が簡単なモノに見えてしまい、そこに何の高揚感も達成感も抱けないのよ。

意外に早くからチームの大半がまとまっているのも、あっさりと初勝利を迎えるのも、「その後も順調には進まず問題が起きて」という展開があるからだろう。そこのドラマを描くためにも、それまでの経緯で刈り込んでいる部分があるんだろう。
でも、全体の構成を考えた時、「いっそのこと初勝利をクライマックスにしても良くないか」と思ってしまうんだよね。
「リーグ戦での優勝」ってのをラストに配置したいのも分からんではないけど、限られた時間の中で多くを描かなきゃいけないから、色んなトコが犠牲になっている感じなのよね。チームの面々を1人ずつ掘り下げる余裕も無くて、「ウィリーだけで精一杯」という印象だし。
あとショーンと母親のパートって、丸ごとカットでもいいでしょ。

(観賞日:2021年5月24日)

 

*ポンコツ映画愛護協会