『グレムリン2/新・種・誕・生』:1990、アメリカ

ニューヨークのチャイナ・タウン。複合企業クランプ・エンタープライズの建築部門の部長フォースターが部下を引き連れ、ウィン老人が 営む骨董店に現れた。クランプ・エンタープライズの会長ダニエル・クランプはニューヨーク最大のビル“クランプ・チャイナタウン・ センター”建設に意欲を燃やしていたが、ウィンだけが立ち退きに反対していた。
フォースター達が説得を試みるが、ウィンは拒絶した。店を出たフォースターは、ウィンが咳き込んでいたことから、「もう長くない。 死ぬのをまとう」と部下に告げた。ウィンの店では、珍獣モグワイのギズモが飼われていた。ギズモはテレビで『ランボー/怒りの脱出』 を見た。6週間後、ウィンは死亡し、チャイナタウン・プロジェクトは着工された。解体される骨董店から逃げ出したギズモは、下町で 生物探索をしていた遺伝子研究所の双子の所員、マーティンとルイスに捕獲された。
故郷キングストン・フォールズからニューヨークに出て来たビリーと恋人ケイトは、出勤するためクランプ・トレードセンターへ向かった。 コンピューター管理された巨大ハイテクビルであるトレードセンターでは、クランプ・ケーブルネットワークの番組制作も行われている。 ビリーは建築部門のデザイナーとして働いており、ケイトはトレードセンターのツアーガイドを務めている。
クランプ・チャイナタウン・センターのデザイン画を担当しているビリーは、課長のマーラから締め切りを早めると言われて焦った。そこ へフォースターが現れ、規則違反として、ビリーの机の上の鉢植えを捨てた。コントロール室に赴いたフォースターは、隠れてタバコを 吸う社員が監視カメラに写っていることを部下から告げられ、その社員にクビを宣告した。
ビリーは、ホラー映画を放送する低予算番組の撮影が行われているセンター内のスタジオに足を向けた。ドラキュラに扮したホストの グランパ・フレッドは、放送時間が夜中の3時半になってガッカリしている。彼はビリーに「報道がやりたくて入社したのに」と愚痴を こぼし、クランプへの文句を並べ立てた。フレッドは「クランプはワケの分からないテナントを入れている。51階には遺伝子研究所が あって、動物をいじくり回している」と語った。
その遺伝子研究所では、カテーテル所長や所員キャスパーらが働いている。マーティンとルイスは「妙な生き物を捕まえました」と言い、 カテーテルにギズモを見せた。カテーテルは生体解剖の日取りを決めた。一方、メッセンジャーの口笛を耳にしたビリーは、「その曲を どこで聞いたのか」と尋ねる。遺伝子研究所で誰かが吹いていたというので、ビリーはギズモがいると察知した。
ビリーはコピー機の修理を装い、遺伝子研究所に潜り込んだ。彼はギズモを連れ出し、自分の引き出しに隠した。視察に来たクランプは、 ビリーのデザイン画を見て絶賛した。ただし、マーラの命令で書き足したニレの木には煙たい顔をした。マーラは「出世は間違いないわ」 とビリーに声を掛け、強引に夕食へと誘った。ビリーはケイトに会い、ギズモを連れ帰るよう頼んだ。
ケイトが行く前に、ギズモは引き出しから脱走していた。作業員が水飲み場の点検をした際、ギズモは飛び散った水を浴びてしまった。 ギズモの体からは、モホーク、ダフィー、ジョージ・レニーという4匹のモグワイが誕生した。ダフィーは笑いながら暴れ回り、残る3匹 はギズモを排気口へ閉じ込めた。モホーク達はエレベーターで1階へ移動し、ケイトは部屋に残っていたダフィーをギズモと間違えて家に 連れ帰った。ビリーはレストランでマーラに誘惑され、狼狽して立ち去った。
家に戻ったビリーは、ケイトが連れ帰ったモグワイがギズモではないと知った。ビリーはダフィーを会社へ連れて行こうとするが、故郷の 知人マーラとシーラのファッターマン夫妻がやって来たため、慌てて隠した。夫妻に帰ってもらった後、ビリー達はトレードセンターへ 向かう。同じ頃、センター1階のフローズン・ヨーグルト店にはモホーク達が出現し、店員や客を驚かせていた。
トレードセンターに到着したビリーとケイトは、「大きなネズミみたいな化け物がいた」と人々が騒いでいるのを知った。水道バルブを 締めるために、ビリーは金網を破壊した。そこへ警備員が現れ、カバンを見せるよう要求した。中からダフィーが飛び出し、どこかへ 逃げ去った。ビリーは警備員に怪しまれ、警察署に連行された。その頃、モホーク達は繭を作っていた。
翌朝、保釈されたビリーは急いでトレードセンターへ向かうが、既にモグワイは孵化してグレムリンへと変貌していた。出社したビリーは フォースターに事情を説明して「全員を避難させるべき」と言うが、相手にしてもらえなかった。しかしコントロール室にグレムリンが 出現したため、ビリーは懐中電灯の光を浴びせて追い払った。
ケイトはツアー客を連れて、料理番組の撮影スタジオへ向かう。ホストのマイクロウェーヴ・マージが料理をしている最中、モホーク達が 現れて暴れ出した。彼らが電子レンジに金属の鍋を放り込んだため、爆発して火事になった。スプリンクラーが作動し、その水を浴びた モホーク達から何匹もの仲間が増殖した。ケイトはビデオを撮るツアー客カツジを連れて、スタジオから退散した。
ケイトはエレベーターで移動しようとするが、グレムリンによって閉じ込められた。エレベーターが墜落し、底にくっ付いていた大勢の グレムノンは下敷きになった。ケイトは無事に脱出した。クランプはグレムリンに襲われるが、シュレッダーに押し込んで退治した。 ビリーはクランプに、「奴らは日没を待って外に出る。そうなればニューヨークは絶滅する」と危機を訴えた。クランプから陣頭指揮を 命じられたフォースターは、ビリーを連れてコントロール室へ向かった。
遺伝子研究所では、所員のウォーリーがマーティン&ルイスに頑丈なトマトを見せていた。そこにグレムリンが現れ、野菜の素を飲んだ。 すると、そのグレムリン“ベジタブル”の体からトマトなどの野菜が生え出した。研究所にカテーテルが入ってくると、その眼前で一匹の グレムリンが脳ホルモンを飲んだ。すると、そのグレムリン“ブレイン”はメガネを掛け、人間の言葉を喋り始めた。
ブレインは「バイオ遺伝子ドリンクに感謝する」と告げ、近くにいた仲間を指し示した。すると、そのグレムリン“バット”にはコウモリ のような羽が生えた。ブレインが日焼け止めドリンクを注射はたことで、バットは太陽の下でも行動できるようになった。バットは研究所 の窓を破り、外へと飛んでいく。シーラと共に観光をしていたマーレイはバットに襲撃されるが、セメントで固めて退治した。一方、 ビリーはカテーテルから強力な銃があると教えられるが、それをモホークに奪われて逃げ出すハメになった…。

監督はジョー・ダンテ、脚本はチャーリー・ハース、製作はマイケル・フィンネル、共同製作はリック・ベイカー、製作総指揮は スティーヴン・スピルバーグ&キャスリーン・ケネディー&フランク・マーシャル、撮影はジョン・ホラ、編集はケント・ベイダ、美術は ジェームズ・スペンサー、衣装はロザンナ・ノートン、音楽はジェリー・ゴールドスミス。
出演はザック・ギャリガン、フィービー・ケイツ、ジョン・グローヴァー、ロバート・プロスキー、ロバート・ピカード、クリストファー ・リー、ハヴィランド・モーリス、ディック・ミラー、ジャッキー・ジョセフ、ゲディー・ワタナベ、ケイ・ルーク、 キャスリーン・フリーマン、ドン・スタントン、ショーン・ネルソン、アーチー・ハーン、レスリー・ニール、ロン・ファスラー、タイム ・ウィンタース他。


1984年に公開された映画『グレムリン』の続編。
監督は前作と同じジョー・ダンテ。
ビリー役のザック・ギャリガン、ケイト役の フィービー・ケイツ、 ファッターマン夫妻役のディック・ミラー&ジャッキー・ジョセフ、ウィン役のケイ・ルークは前作からの続投。
また、映画館の母親役のベリンダ・バラスキーは、前作では別の役で出演していた。この人は『ピラニア』『ハウリング』にも出演して おり、ジョー・ダンテ組と言ってもいい女優さんだ。
クランプをジョン・グローヴァー、フレッドをロバート・プロスキー、フォースターをロバート・ピカード、カテーテルをクリストファー ・リー、マーラをハヴィランド・モーリス、カツジをゲディー・ワタナベ、マージをキャスリーン・フリーマン、マーティン&ルイスを ドン・スタントン、ウォーリーをショーン・ネルソンが演じている。

ヨーグルト店の客として音楽担当のジェリー・ゴールドスミス、研究所の所員キャスパーとして脚本家チャールズ・S・ハースが出演。
フレッドの番組の演出家は、この映画の監督ジョー・ダンテだ。映画史研究家レナード・マルティン、プロレスラーのハルク・ホーガン、 俳優ババ・スミスと元アメフトのラインバッカーで俳優のディック・バッカスは、それぞれ本人役で登場。
ヨーグルト店の男性店員は『エクスプローラーズ』のジェイソン・プレッソン。喫煙でクビになる社員は、『ケンタッキー・フライド・ ムービー』などのヘンリー・ギブソン。研究室の受付係ペギーはジュリア・スウィーニー。
ギズモに水を浴びせてしまう作業員は、TVシリーズ『アダムズのお化け一家』で父親を演じていたジョン・アシュトン。
映画館のオーナーは『デス・レース2000年』の監督で俳優でもあるポール・バーテルで、映写技師は『遊星よりの物体X』の主演俳優 ケネス・トビー。

前作のヒットを受けて、すぐにワーナー・ブラザーズは続編の製作を企画した。しかしジョー・ダンテは1作目で作品として完結している と考え、オファーを断ったらしい。
そこで、脚本家を雇って他の監督で続編を作るつもりだったワーナーだが、なかなか企画が前に進まない。
そんな中、再び会社から監督を依頼されたジョー・ダンテは、それを承諾した。
ワーナー・ブラザーズがジョー・ダンテに出した条件は、「2時間以内の上映時間で『グレムリン』の続編を作る」というものだった らしい。
つまり、「完全に自由にやってくれていいよ」という白紙の委任状を渡したのと同じだ。
しかも、製作費は前作の数倍だ。
そういう時に腰が引けてしまう人もいるだろうが、ジョー・ダンテは好き放題に遊ぶことの出来る人だ。

ってなわけで、ジョー・ダンテと脚本家のチャーリー・ハースは、まとまりなんて二の次で、思い付いたアイデアをどんどん放り込んだ。
だから中身は、見事に「乱痴気騒ぎ」と化している。
ジョー・ダンテは本作品を、あえて1作目を茶化すような内容に仕上げようとしている。
その結果、彼の持ち味である「行き過ぎた悪ふざけスピリット」が、存分に発揮された作品となった。
前作と比べると、アナーキーでスラップスティックなノリが格段にアップしている。

グレムリンは好き放題に暴れ回るが、決して残酷な所業には手を出さない。
フローズン・ヨーグルトのトッピングの中から顔を出したり、食材を投げ付けたり、コピー機で何枚もコピーをしたり、レゴを使って 大きなグレムリンを作ったりと、せいぜい「タチの悪いイタズラ」という程度に留まっている。
だから悪い奴らではあるのだが、安心して楽しく見ることが出来る。
マーレイは襲われて頭から血を流すが軽傷だし、モホークは銃を乱射するが誰にも当たらない。この映画では何匹ものグレムリンが 暴れ回るが、人間サイドの犠牲者はゼロだ。
グレムリンは、心底から憎らしいとか、本気で不愉快になるとか、そういう対象ではない。

モグワイからグレムリンに変身すると顔付きは悪くなり、ブレインが自分たちの目的を「人間の文明を手に入れること」と述べているが、 実際にやっていることは「バカ騒ぎ」に過ぎない。
料理番組のスタジオに現れたグレムリンはコック帽とエプロンを身に着けており、エレベーター室にいる奴はノースリーブのジージャンと ヘルメットの作業員風、その他にも、グレムリンは様々なコスチューム姿になっている。
そういう愛嬌のある奴らなのだ。
性ホルモンを飲んで女性化したグレムリン“ガール”が緑色のカツラを着けて口紅をベッタリと塗り、フォースターに迫ってチュー しまくる姿の、なんてブサイクでキュートなことか。
一方で、ただパペットによるモグワイの可愛さだけを売りにしているわけじゃなくて、グロテスクな描写もある。
モグワイが繭から孵化する際に粘液が滴り落ちるのも、エレベーターの底に張り付いていた何匹ものグレムリンが潰れてグチャグチャに なるのも、クランプにシュレッダーへと押し込まれたグレムリンが緑色の液体を飛び散らして消滅するのも、ロビーに集まったガール以外 のグレムリンがビリーの計画によってドロドロに溶けていくのも、かなりグロテスクだ。

最初にギズモから誕生するモグワイは4匹で、モホークはネイティヴ・アメリカンのモホーク族から、ダフィーはワーナーのアニメ 『ルーニー・テューンズ』のダフィー・ダックから、ジョージとレニーはスタインベックの小説『二十日鼠と人間』から名前を取って いる。
所員のマーティン&ルイスは、ディーン・マーティンとジェリー・ルイスの底抜けコンビから名前を拝借。
バットが飛んでいくセント・エヴァ・マリー寺院は、女優エヴァ・マリー・セイントのもじり。
モグワイは全てパペットで、「いかにもヌイグルミですよ」という開き直った動きを見せてくれる。バットが空を飛ぶ時の動きは、レイ・ ハリーハウゼンを思わせるカクカクとしたストップモーション・アニメだ。
ジョー・ダンテはレイ・ハリーハウゼンへの思い入れが強いらしく、セメント攻撃を受けたバットは寺院の屋根で固まり、『アルゴ探検隊 の大冒険』の石像のようなガーゴイルになる。また、グレムリンが『原子怪獣現わる』を観賞するシーンもある。

この映画には、幾つものパロディーや風刺が盛り込まれている。
例えばグランパ・フレッドのキャラクターは、1964年に放送されたTV番組『The Munsters』でアル・ルイスが演じたGrandpa Munsterを 模している。
ビリーが行った時に放送されているのは、本作品の特撮担当リック・ベイカーが最初に手掛けた映画『吸盤男オクトマン』。
クランプは不動産王ドナルド・トランプとCNNの創業者テッド・ターナーをミックスさせたキャラクター。ビリーから「白黒時代の古い ホラー作品を放送すればいい」と言われたフレッドが「クランプはカラー作品しか放送しない」と言っているが、それはテッド・ターナー が白黒の名作映画を次々にカラー化していたことを皮肉っている。

ケイトが建築部門のオフィスへギズモを捜しに行った時、ダフィーはクランプ・タワーの模型に登っており、その頭上にオモチャの飛行機 が吊り下がっているが、これは『キング・コング』のパロディー。
遺伝子研究所でカテーテルが巨大サヤエンドウを抱えているのは『SF/ボディ・スナッチャー』のパロディー。
バットが窓を突き破ると、『バットマン』のバットマン・マークの形に穴が開く。
ビリーが拘束され、歯科医コスプレのグレムリンに歯を抜かれそうになる場面は『マラソンマン』。

仲間から塩酸を顔に浴びせてもらったグレムリンがアイマスクを着けたりパイプオルガンを演奏したりするのは、『オペラ座の怪人』。
クモの怪物に変身したモホークを、ギズモは『ランボー/怒りの脱出』のランボーのようにクリップで作ったボウガンで退治する。
最後にグレムリンが全て溶けていく中、一匹が「溶けている、なんて世界だろう」と口にするのは『オズの魔法使い』のパロディーで、 こいつは西の魔女の服装をしている。 

ビリーの作戦でロビーに集合したグレムリンたちは、ブレインがフランク・シナトラばりの服装になって『ニューヨーク、ニューヨーク』を 歌い、他の連中はリズムを取って陽気に踊る。
そこから音楽が『ラプソディー・イン・ブルー』に変わり、バズビー・バークレーがミュージカル場面の演出を担当した1934年の映画 『泥酔夢』を模したミュージカルになる。
そんな風に、ジョー・ダンテが好き勝手に遊んでいるだけなんだから、そりゃコケるわな。
ワシは好きだけど。

(観賞日:2009年11月11日)

 

*ポンコツ映画愛護協会