『グリーン・ランタン』:2011、アメリカ

数十億年前、不死の種族が宇宙最強の力を手に入れた。グリーンの意志の力だ。彼らは宇宙の守護者、ガーディアンであり、宇宙を監視する拠点を惑星オアに置いた。そして全銀河を3600のセクターに分割した。グリーンの意志の力を帯びたリングが、各セクターでメンバーを選ぶ。リングに選ばれるのは、恐れを知らぬ者だけ。選ばれた3600人が、宇宙の平和維持軍となる。その名は「グリーン・ランタン・コア」である。
グリーン・ランタン・コアにとって最大の敵は、恐怖の化身、パララックスだ。伝説の戦士であるアビン・サーは、この宿敵を捕まえ、荒野の惑星ライウットに閉じ込めた。ライウットの無人セクターに不時着した第6探査隊の3名は、突然の地崩れで転落した。落下した深い穴には、パララックスの姿があった。パララックスは3名の恐怖を取り込んでエネルギーに変え、ライウットを飛び出した。
それから6ヶ月後、セクター2814。グリーン・ランタンの戦士アビン・サーは、リーダーであるシネストロと通信した直後、パララックスの襲撃を受けた。重傷を負った彼はコアにメッセージを送り、小型宇宙船で逃亡した。アビンは新しいメンバーを選ぶため、近くの星へ向かう。そこから最も近い星は地球だった。その地球では、ロバート・ハモンド上院議員の部下たちとフェリス・エアー社が共同開発した戦闘機“セイバー”が将軍にお披露目されていた。セイバーは、人工知能を備えた最新鋭の戦闘機だ。
フェリス・エアー社のカール・フェリス社長や将軍たちが見守る中で、実戦形式のテストが行われることになった。フェリス・エアー社の腕利きパイロット2名が戦闘機に乗り、セイバー2機と交戦するのだ。そのパイロットとして選ばれたのは、カールの娘で次期社長候補でもあるキャロルと、ハル・ジョーダンだ。しかしハルは女と一夜を共にして遅刻してしまい、慌ててフェリス・エアー社に向かった。テストに間に合ったハルはキャロルから咎められるが、軽く受け流した。
実戦形式のテストが開始されると、ハルはキャロルを騙して囮にした。彼はルール違反の限界高度まで上昇し、セイバーに勝利した。だが、機体を立て直そうとした時、彼の脳裏にテスト・パイロットだった父マーティンが死亡した時の出来事がよぎった。マーティンはテスト飛行で事故を起こし、着陸直後に機体が爆発して死亡していた。その一部始終を、少年時代のハルは目撃していた。それを思い出したハルは恐怖に見舞われて体が硬直するが、何とかパラシュートで脱出した。
ハルは大事なテストを台無しにしただけでなく、戦闘機も破壊したため、カールから厳しく叱責される。解雇を宣告されたハルは、「辞職しますよ」と告げる。キャロルは「解雇も辞職も無しよ。謹慎して、調査を待つの」と口にした。かつてハルと交際していたキャロルは、別れた今でも彼に好意を抱いていた。上空で何があったのか尋ねるキャロルに、ハルは「機体が故障したんだ」と嘘をついた。一方、地球の海辺に不時着したアビンは、「しっかり選べ」と告げ、飛んで行くリングを見送った。
ハルが実家に戻ると、兄のジャックや弟のジムたちは、テレビのニュースで事故のことを知っていた。ジャックはハルに「親父と同じことをして命を落とす気か」と激怒した。ハルは自分を慕うジャックの息子ジェイソンの部屋へ行き、誕生日プレゼントを渡した。ジェイソンから「事故の時、怖くなかった?」と問われたハルは、「怖くなんかないさ」と強がった。実家を出た直後、ハルは緑の光に包まれて空に浮き上がり、海辺まで飛ばされた。宇宙船の中で倒れているアビンを見つけた彼は、慌てて砂浜へ引き上げた。
アビンは「リングがお前を選んだ。受け取れ」と言い、リングを差し出した。彼は「リングをランタンにかざせ」と言い、宇宙船の中にあるランタンの存在をハルに示した。そして「誓いの言葉を唱えろ。栄誉と責任のある役目だ」と言い残し、息を引き取った。ハルはフェリス・エアー社の技術者である友人のトム・カルマクに電話を掛け、砂浜へ来てもらう。トムが到着すると、ハルはアビンの遺体を埋め、ランタンを宇宙船から回収していた。政府のヘリが飛んで来るのを目にしたハルは、トムの車で逃亡した。
シネストロはガーディアンたちの元へ行き、アビンが死んだこと、4人の同志が殺されたこと、2つの惑星がイエロー・パワーを持つ未知の敵に破壊されたことを話す。「相手は無人セクターから現れ、戦う度に強さを増している。アビン・サーは正体を知っていたようです。パララックスとだけ言い残した」と語るシネストロに、ガーディアンたちは「危険は認識している。状況は分析中だ」と言う。シネストロが「急がねば犠牲者が増えます。私が戦います」と語ると、ガーディアンたちは「お前は分かっていない」と彼が勝てないことを示唆した。シネストロは反発し、「最強のメンバーを集め、我々の力を証明する」と口にした。
生物学の研究者であるヘクターは、自宅で「キャロルが次期社長に」という新聞記事を見ていた。そこへ政府関係者が押し掛け、目隠しをして車で連行した。ヘクターが連れて行かれた場所は、政府のラボだった。そこに待ち受けていた研究者のアマンダは、ヘクターに政府が回収したアビンの死体を見せ、生理機能の調査を依頼した。ヘクターはアビンの体を調べ、アマンダに分析データを渡す。興奮した様子のヘクターに、アマンダは「この施設の所有者は力尽くで秘密を守るでしょう」と言い、口外せぬよう釘を刺した。
自宅アパートに戻ったハルは、リングを指に装着してランタンにかざしてみる。しかし誓いの言葉が分からず、何も起きない。腹を立てて怒鳴った刹那、ランタンが緑色に輝いた。するとハルの両目が緑に輝き、誓いの言葉が口から発せられた。言い終えた直後、キャロルがハルを訪ねて来た。ハルは「飲みに行こう」とキャロルをバーへ連れ出した。キャロルが「飛行データに問題は無かった?何があったのか教えて」と求めると、ハルは顔を強張らせてバーを出て行った。
ハルが車に乗り込もうとすると、3人の男たちが殴り掛かってきた。彼らはセイバーのテスト失敗に伴って職を失った連中で、ハルに恨みを抱いていたのだ。ハルが小石を投げ付けると、それは緑色に光り、3人は後方へ激しく吹き飛ばされた。ハルが驚いていると全身が緑の光に包まれ、オアへ飛ばされた。意識を取り戻すと、彼は緑色のコスチューム姿になっていた。目の前には、同じコスチュームをした魚のような宇宙人がいた。彼はズダリアンという種族のトマ・レーという男で、セクター2813を担当するグリーン・ランタンだった。
トマは「地球人初のメンバーを迎えに来た」と言い、ハルを連れて緊急集会の場所へ向かう。トマはハルに、「遥か昔から、ここは拠点となっている。オアはガーディアンによって創造された。ガーディアンは宇宙で最も古い不死の種族だ。塔の上にいた、我々を監視している。大昔より、グリーン・ランタンは宇宙の平和と秩序を守り続けてきた。3600のグリーン・ランタンが各セクターを守っている」と説明した。集会の場に現れたシネストロは、アビン・サーか殺されたことを話し、「パララックスを倒すため、最強のチームを編成する」と述べた。大勢のグリーン・ランタンたちが士気を高める中、ハルは戸惑った。
トマはハルに「意志の力が思考を物体化する。リングに意志を集中させ、心に描く物を作り出せ」と言い、自ら実践してみせた。そこに教官役のキロウォグが駆け付け、ハルは彼と訓練を行う。ハルがキロウォグと戦っていると、シネストロがに現れ、「お前が選ばれた時、間違いだと思った。私が訓練する」と述べた。シネストロの圧倒的な力の前に、ハルは恐怖で体がすくんでしまう。シネストロは「お前が後継者では、アバン・サーへの侮辱になる」と冷淡に告げ、その場から去った。「俺はただの人間だ。宇宙を守るなんて出来ない」とハルが言うと、トマは「リングは間違わない。リングが選んだのなら、お前には何かがあるのだ」と告げた。
ヘクターが大学で講義をしていると、マイケルという男子生徒の心の声が聞こえて来た。自分を侮辱する悪口にヘクターが腹を立てると、マイケルは吹き飛んだ。血を採取して調べようとしていたヘクターは、父のハモンドから呼び出された。ハモンドは「お前は素晴らしい仕事をした」と言い、アバンの分析データを見せた。ハモンドが「私は、その組織の監査委員をしている」と言うと、ヘクターは自分が調査担当者として選ばれたのは父親の手回しがあったからだと悟った。
ヘクターが「他に適任の科学者がいたはずです」と告げると、ハモンドは「しかしコネが無い。それが世の中の仕組みというものだ。目の前のチャンスを掴め」と述べた。ヘクターは、ハモンドが「一族の恥だ」と自分を侮蔑している心の声を聞いた。シネストロはチームを編成し、セクター2312へ赴いた。彼らはパララックスに戦いを挑むが、全く歯が立たなかった。シネストロはオアに戻り、「パララックスは戦士たちの恐怖をエサにしており、オアへ向かっています」と報告した。
対策を求めるシネストロに、ガーディアンたちは「意志の力が唯一の武器だ。それが通用しないのであれば、もう1つの力を使うか?永遠に使わないと誓った恐怖の力を」と問い掛けた。彼らは「恐怖の力は制御が難しく、自滅の可能性が高いために封印された。だが、1人のガーディアンが反対し、禁断の部屋に入った。彼は力を必ず制御できると思っていたが、逆に取り込まれて恐怖の化身となった。それがパララックスだ」と語った。
ガーディアンたちが「宇宙を守るため、アビン・サーはパララックスを無人セクターに閉じ込めた。しかしパララックスは恐怖をエサにして巨大化し、力を増した」と話すと、シネストロは「奴は復讐のため、オアを滅ぼす気だ。恐怖の力には、恐怖の力をで対抗する。宇宙の平和を守るため、イエロー・リングを作るのです」と告げた。フェリス・エアー社が軍とセイバーの契約を締結し、祝賀パーティーが開かれた。ハルも招待を受け、会場へ赴いた。ヘクターはキャロルに声を掛け、宇宙人の遺体を解剖したことを話そうとするが、それに気付いたハモンドが歩み寄って「またSF話か」と暗に口止めした。
ハモンドがヘリコプターで会場を去ろうとした時、怒りの感情をたぎらせたヘクターの両目が黄色に光った。彼はイエロー・パワーを使い、ヘリコプターを墜落させる。しかしハルがグリーン・ランタンに変身してハモンドを救出し、照明装置の下敷きになるところだったキャロルも助けた。パーティー客が驚く中、ハルは会場から立ち去った。その出来事をテレビのニュースで見たトムは、ハルに変身姿を見せるよう促した。ハルが変身すると、トムは「スーパーヒーローには恋人が付き物だ」と告げた。
ハルはグリーン・ランタンの姿のまま、キャロルの家を訪れた。すぐにキャロルは、その正体がハルだと見抜いた。ハルは彼女に、「宇宙の平和維持軍だ。でも、この任務は、もう辞める」と告げた。アマンダがヘクターの元を訪れると、彼の顔面は変形していた。ヘクターがアマンダに連れられて政府のラボに赴くと、ハモンドがいた。彼は息子の姿に驚き、「私の責任だ。必ず治してやる」と告げた。
ヘクターはアマンダから、「宇宙人の体内に、別の宇宙人の痕跡が見つかった。貴方はそれに感染したのよ」と告げられる。ヘクターは「とても気分がいい。このままでいい」と言い、ハモンドたちに抵抗する。科学者たちは彼に注射を打って眠らせた。手術台に拘束されたヘクターは目を覚まし、パワーを使って脱出した。彼は科学者たちを始末し、ハモンドも抹殺しようとする。そこへグリーン・ランタンに変身したハルが駆け付け、ヘクターと戦う。しかしヘクターは彼にダメージを負わせ、ハモンドを殺害した…。

監督はマーティン・キャンベル、映画原案はグレッグ・バーランティー&マイケル・グリーン&マーク・グッゲンハイム、脚本はグレッグ・バーランティー&マイケル・グリーン&マーク・グッゲンハイム&マイケル・ゴールデンバーグ、製作はドナルド・デ・ライン&グレッグ・バーランティー、共同製作はリュシエンヌ・ペイポン&ジェフ・ジョンズ、製作総指揮はハーバート・W・ゲインズ&アンドリュー・ハース、撮影はディオン・ビーブ、編集はスチュアート・ベアード、美術はグラント・メジャー、衣装はナイラ・ディクソン、視覚効果監修はジム・バーニー&ケント・ヒューストン&カレン・グーレカス、音楽はジェームズ・ニュートン・ハワード。
出演はライアン・レイノルズ、ブレイク・ライヴリー、ピーター・サースガード、マーク・ストロング、ティム・ロビンス、アンジェラ・バセット、テムエラ・モリソン、ジェイ・O・サンダース、ジョン・テニー、タイカ・ワイティティ、マイク・ドイル、ニック・ジャンドル、ディラン・ジェームズ、ガトリン・グリフィス、リアン・コクラン、ジェフ・ウルフ、レナ・クラーク、ジェナ・クレイグ、ディーク・アンダーソン他。


DCコミックスのスーパーヒーローを主人公とする映画。
ハルをライアン・レイノルズ、キャロルをブレイク・ライヴリー、ヘクターをピーター・サースガード、シネストロをマーク・ストロング、ハモンドをティム・ロビンス、アマンダをアンジェラ・バセット、アビンをテムエラ・モリソン、カールをジェイ・O・サンダース、マーティンをジョン・テニー、トムをタイカ・ワイティティが演じている。
監督は『レジェンド・オブ・ゾロ』『007/カジノ・ロワイヤル』のマーティン・キャンベル。
コミックでは地球人のグリーン・ランタンが何人か登場するのだが、この映画では二代目のハル・ジョーダンのキャラクターを使っている。

ライアン・レイノルズは2004年の『ブレイド3』でハンニバル・キング、2009年の『ウルヴァリン: X-MEN ZERO』でデッドプールと、2つのアメコミ映画でキャラクターを演じて来た。
アメコミ映画が好きなのか、映画プロデューサーに「アメコミのキャラが似合う俳優だ」と思わせるのか、その辺りは良く分からんが、異なる3つのシリーズでアメコミのキャラを演じるってのは、かなり珍しいと思う。
キャスティング関連でついでに触れておくと、ピーター・サースガードがティム・ロビンスの息子役ってのは、違和感があったなあ。親子ほど年齢が離れているようには見えないのだ。
実際はサースガードが1971年生まれ、ロビンスが1958年生まれなので問題は無いんだけど、今回のサースガードは老けて見える髪型やメイクをしており、一方のロビンスは実年齢より若く見える顔付きなので(老けメイクはしているけど)、変に感じてしまったんだろうなあ、たぶん。

上述した粗筋の「数十億年前」から「荒野の惑星ライウットに閉じ込めた」までは、全てナレーションとテロップで説明される。フォローのための映像も入らない。
でも、情報量が多い上にボンヤリしているので、あまり頭に入って来ない。
「最初に初期設定を説明しておいた方が分かりやすいだろう」ってことかもしれんが、分かりやすくなっていない。
どうせトマ・レーがハルに説明するシーンがあるんだから、そこまでは詳しい説明をしないまま進めて、ハルがレクチャーを受ける際に、もっと丁寧にやればいいんじゃないかと。

それと、その冒頭の説明があることによって、本編が始まってから、整合性が取れていないんじゃないかと感じる箇所が幾つか出て来る。
例えば、パララックスは「宿敵」として説明されているのに、なぜグリーン・ランタンのリーダーであるシネストロはパララックスのことを知らないのか。
なぜアビン・サーだけがパララックスのことを知っていて、その情報はシネストロと共有されていないのか。
「グリーン・ランタンには恐れを知らない者が選ばれる」と説明されているのに、なぜ怖がっているハルが選ばれるのか。

アビン・サーは特に優れた戦士だったようだが、それにしてはパララックスの封印が甘すぎる。
たった3人の恐怖エネルギーで復活してしまうような奴なのに、何かしらのパワーで体を縛り付けているわけでもないし、ただ地下に落としているだけ。だから、パララックスは調査隊員を穴に落として、簡単に脱出できている。
しかも、脱出したことがすぐにアビンやコアに分かるような仕掛けも用意されていない。
アビンがパララックスのことをコアに伝えていないから、シネストロたちは情報も無いまま戦う羽目になっているし。
コアの組織系統や警備体制はどうなっているんだよ。

かつてワーナー・ブラザーズは、『グリーン・ランタン』をコメディー路線にしようと考えて企画を進めていた時期があった。
しかしファンの反応が悪かったことから、その企画を断念している。
ところが、よりシリアスな作風として仕切り直したはずの本作品は、コメディーじゃないと上手く行かないような内容になっている。
でもコメディーじゃ受けないのは分かっているので、コメディーじゃない映画として演出しているわけだが、どうしても無理が生じている。

一つ例を挙げると、グリーン・ランタンのコスチューム姿で目を覚ましたハルに、トマ・レーは「マスクは正体を隠すためだ」と説明する。
しかし、グリーン・ランタンのマスクは顔全体を隠すタイプではなくて小さなアイマスクなので、正体はバレバレだ。変装用の道具としては、サングラスよりも使い勝手が悪い。
実際、ハルはグリーン・ランタンの姿でキャロルと会った時、すぐに正体がバレている。
それだけを取っても、「コメディーじゃないと無理だろ」と感じさせる。

明朗快活な映画として作るのは、別に構わないと思うのだ。しかし、この映画はコメディーとしての要素が強すぎる。
しかも、明朗快活な映画として演出しているわけじゃなくて、むしろシリアス度数が強いんだよな。
脚本の中でも、コメディー要素とシリアス要素がどちらも含まれているのだが、それが上手く融合していない。
ただし、じゃあ割り切ってコメディーとして作ったら良かったのかというと、それは間違いなくコケていたと思うけどね(っていうか、この映画もコケているんだが)。

ハルはアビン・サーを見ても大して驚かず、すぐに宇宙人として受け入れる。
彼から後を託されると、リングだけでなくランタンも自宅へ持ち帰り、言われた通りにリングをかざして誓いの言葉を告げようとする。
コスチューム姿になっていても、オアの様子を見ても、驚愕したりパニックに陥ったりすることは無い。
トマ・レーからグリーン・ランタンやガーディアンに関する説明を受けると、すぐに納得している。「嘘だ、有り得ない」と否定することは無い。
まるでメルヘンの主人公のように、ものすごく順応性が高い。

ハルがリングをランタンにかざす時には何の迷いもないし、「信じてないけど、冗談半分でやってみよう」という感じも無い。
つまり、アビンの跡を継ぐ意思があるってことだ。
実際、オアまで飛ばされてトマ・レーから「責任のある役目だ」と言われると、「分かってる」と答えている。
その割には、コスチューム姿を見た時には、浮かれてポーズを取っている。そして訓練を受けてシネストロに厳しいことを言われると、「俺はただの人間だ。宇宙を守るなんて出来ない」と逆ギレ気味に言う。
なんか、色々と浅薄に感じる。

ただ、キロウォグと戦う際、状況に応じたアイテムを瞬時に出現させることが出来ているんだから、それだけでも大したモンだと思うけど。それに、いきなり戦うことも出来ているんだし。
彼は戦闘機のパイロットであって、格闘のスペシャリストってわけじゃないんだから。
それにしても、トマ・レーは「リングが選んだんだから、君には何かある」と言うのだが、ハルには何も無いぞ。
「恐怖を乗り越える力がある」ってことは後半に説明されるけど、それは特殊な能力じゃなくて、「恐れない」ってのはグリーン・ランタンとしての最低条件に過ぎない。
結局、ハルのスペシャリティーってのは、最後まで分からないままなのだ。

ハルはグリーン・ランタンを辞めるつもりなのに、トムから「スーパーヒーローには恋人が付き物だ」と言われると、その姿でキャロルの元へ行く。それはカッコ付けたいだけだ。
ひょっとすると、「ただカッコ付けたいだけの軽薄な男が使命感や正義感に目覚め、本物のスーパーヒーローになる」という成長物語を狙っているのかもしれないが、だとしても上手く描写できていない。
「過去のトラウマで恐怖に捉われているハルが、それを克服する」というのが物語の芯になっていて、そこをシリアスなタッチで描いているが、そちらも上手く行っているとは言い難い。
他の要素が多すぎて、まるで消化できていない。

後半に入ると、「ハルが友人であるヘクターと戦うことになる」という展開が待っているが、ハルとヘクターの友情、ヘクターとハモンドの親子関係、ヘクター&キャロル&ハモンドの三角関係の描写が薄いのが大きなマイナス。
そこをキッチリと描写しておいてこそ、「ハルがヘクターと戦うことになって苦悩する」とか、「ヘクターがハモンドへの反発心で暴走する」とか、「ハモンドがキャロルへの横恋慕で彼女を拉致する」とか、そういうことが活きてくるはずでしょ。
ところが実際には、まずヘクターとハモンドが親子関係にあることさえ、なかなか明らかにされない。だから、もちろんヘクターの父に対する反発や、ハモンドのヘクターに対する侮蔑的感情も、そこまでは分からない。ハルやキャロルがヘクターと面識があることも、パーティーのシーンまでは分からない。
どうやらヘクターがキャロルに好意を抱いているようだってのも、パーティーのシーンで何となく匂わされるのが初めてだ。

そういう要素が薄い分、何よりも重要である「ハルの精神的成長」というドラマは充実しているのかというと、ここもやっぱり薄いのだ。
ハルとキャロルのロマンスも、まるで盛り上がらない。
どの要素も、まんべんなく薄っぺらい。
とどのつまり、色々と盛り込みすぎたんじゃないかと。
ガーディアンの存在とか、パララックスの復活とか、その辺りはもっと扱いを小さくするか、いっそのこと、バッサリとカットしても良かったんじゃないか。
シネストロがイエロー・リングを作り出すってのは、明らかに続編への伏線なのだが、そこに重きを置きすぎているのもバランスが悪いし。

後半、ハルは恐怖と向き合うが、そこのドラマは全く深みも厚みも無い。彼は簡単にトラウマを克服し、唐突に使命感への目覚めが訪れる。で、ヘクターと戦うのかと思いきや、ヘクターはパララックスに吸収されてあっさりと死亡する。
ちなみに、戦いが終わった後で彼に言及するキャラは誰もいない。友情ドラマも皆無だったし、ホント、活かされてないキャラである。
で、ヘクターが簡単に退場した後、大勢のグリーン・ランタンが束になっても歯が立たず、ガーディアンでさえ恐れる存在だったパララックスを、ハルが倒す。
ほんの少し前にグリーン・ランタンの仲間入りをした新人で、ほんの少し前にトラウマを克服したばかりの奴なのに、勝ってしまうのだ。
もうパワー・バランスがメチャクチャである。

っていうか、パララックスが地球に襲って来るってのは、話のスケールをデカくしすぎだわ。
今回はグリーン・ランタンの誕生編として、割り切った方が良かったんじゃないか。
「アビン・サーから後を託されたハルが地球に襲来した敵と戦う」という話に絞り込んで、グリーン・ランタンがガーディアンに統括されているとか、パララックスという巨悪が復活しているとか、そういう所を掘り下げれば良かったんじゃないか。
スケールの大きな話にするのは、2作目以降に回しても良かったんじゃないか。

(観賞日:2013年11月17日)

 

*ポンコツ映画愛護協会