『グレートレース』:1965、アメリカ

グレート・レスリーは集まった人々に離れ業を見せるため、拘束衣を着せられて気球で空高く飛んだ。フェイト教授と助手のマックスは失敗させるため、大きな矢を放って気球に穴をあけた。しかし拘束衣を脱いだレスリーは気球から飛び降り、パラシュートを使って無事に着地した。フェイトはマックスに飛行機で吊り上げさせ、空高く舞い上がる離れ業を人々に披露しようとする。しかし重くて持ち上がらず、農場の小屋に突っ込んでしまった。
レスリーはモーターボートに乗り込み、スピード記録に挑戦した。フェイトとマックスはエンジン音を追跡するミサイルを放ち、彼を失敗させようとする。しかしミサイルはフェイトとマックスが乗った車のエンジン音に反応して追跡し、爆発を起こした。フェイトとマックスはレールを走るマシンを操縦し、スピード記録を狙う。しかしマシンはレールから浮き上がってコントロールを失い、農場の泥沼に墜落してしまった。
レスリーはウェバー社の会議に出席し、アメリカ車の性能が世界一だと証明するためにニューヨークからパリまでのレースを開くよう提言した。ウェバー社は彼のために、「レスリー・スペシャル」という特別車を開発した。フェイトは自宅のガレージで、大砲と煙幕装置を搭載した「ハンニバル8」を開発した。レースには6台の参加が決定し、センチネル紙でも大々的に報じられた。大学新聞で編集長だったマギー・デュボアはセンチネル紙へ乗り込み、編集長のヘンリー・グッドボディーに記者として採用するよう迫った。レースの記事を書くと主張するマギーに困惑するヘンリーだが、結局は強引な交渉を受け入れた。
マギーは助手のヘゼカイアと準備中のレスリーを訪ね、記事を書くためレースに参加したいと告げる。しかしレスリーはマギーを口説こうとするだけで、真剣に相手をせずに追い払った。マギーはフェイト邸に押し掛けるが、こちらでも追い払われた。レースのスタート当日、マギーはヘンリーに車を用意してもらい、レースの参加者として現れた。マックスが他の車に細工を施したため、レスリーとマギーを除く4台の車が事故を起こしてリタイアを余儀なくされた。
オールドバニに一番乗りしたのはレスリーだったが、マギーがシカゴの西でトップに立った。砂漠でエンストを起こしたマギーは、暑さで気絶した芝居でレスリーを騙した。彼女は荷物をレスリーの車に積み込み、乗せて行ってもらおうとする。レスリーはボラーチョの町まで送ると告げ、そこからは1人で行くよう促した。フェイトがボラーチョの町に到着すると、町長は歓迎パーティーに参加するよう強要した。フェイトは町長を殴り付け、その場から逃走した。
レスリーがボラーチョの町に到着すると、またも町長はパーティーに参加するよう脅した。レスリーはパーティーへの参加を快諾し、歌手であるリリーのショーを見物した。ガソリンが無くて出発できないフェイトも、客に紛れて会場の酒場に来ていた。リリーはレスリーに声を掛け、抱き付いてキスをした。そこへリリーの恋人で荒くれ者のテキサス・ジャックが手下を率いて現れ、レスリーに殴り掛かった。レスリーは反撃し、周囲の面々も加わって大乱闘が勃発した。
フェイトとマックスは隙を見てガソリンを盗み、町から脱出した。マギーは車に隠れていたが、見つかって置き去りにされた。レスリーの車が通り掛かると、マギーは「グロメットまで送ってくれたら列車で帰る」と持ち掛けた。彼女がガソリンの手配を約束すると、レスリーは同乗を承諾した。しかし町に着くとマギーはガソリンの受取人を自分に指定しており、そのままレースに同行させるよう要求した。腹を立てたヘゼカイアは、「私は降りる」と告げた。
レスリーはマギーに、同行させる代わりにヘゼカイアを説得するよう要求した。マギーはヘゼカイアを騙して列車に乗せ、レスリーには「貴方が勝てないと思って、ニューヨークに帰ると言ってた」と嘘を吹き込んだ。フェイトとレスリーの車はアラスカに突入し、猛吹雪で立ち往生してしまう。凍死しそうになったフェイトたちは一時的に休戦し、体を寄せ合って毛布に潜る。翌朝、吹雪が去った一行は、流氷の上にいることを知った。
海を漂ったフェイトたちは、陸地に辿り着いた。そこにはヘゼカイアがいて、マギーの嘘を知ったレスリーは同乗を拒否した。フェイトは切り札になると考え、マギーを車に乗せた。カルパニア王国の首都ポッツドルフに入ったフェイトたちは、ロルフ・フォン・ステュッペ男爵に逮捕された。後からポッツドルフに着いたレスリーとヘゼカイアは、クースター将軍からハプニック皇太子との謁見を促された。宮殿へ赴いたレスリーは、皇太子がフェイトに瓜二つなので驚いた…。

監督はブレイク・エドワーズ、原案はブレイク・エドワーズ&アーサー・ロス、脚本はアーサー・ロス、製作はマーティン・ジュロー、製作協力はリチャード・クロケット、撮影はラッセル・ハーラン、美術はフェルナンド・カレル、編集はラルフ・E・ウィンタース、衣装はドン・フェルド、音楽はヘンリー・マンシーニ。
出演はジャック・レモン、トニー・カーティス、ナタリー・ウッド、ピーター・フォーク、キーナン・ウィン、アーサー・オコンネル、ヴィヴィアン・ヴァンス、ドロシー・プロヴァイン、ラリー・ストーチ、ロス・マーティン、ジョージ・マクレディー、マーヴィン・カプラン、ハル・スミス、デンヴァー・パイル、ウィリアム・ブライアント、ケン・ウェールズ他。


『ピンクの豹』『暗闇でドッキリ』のブレイク・エドワーズが監督を務めた作品。
脚本は『ガリバーの大冒険』『クリーピング・テラー』のアーサー・ロス。
フェイトをジャック・レモン、レスリーをトニー・カーティス、マギーをナタリー・ウッド、マックスをピーター・フォーク、ヘゼカイアをキーナン・ウィン、ヘンリーをアーサー・オコンネル、へスターをヴィヴィアン・ヴァンス、リリーをドロシー・プロヴァイン、ジャックをラリー・ストーチ、ステュッペをロス・マーティンが演じている。

映画の冒頭、「ローレル&ハーディーに捧げる」という文字が出る。
ローレル&ハーディーはスタン・ローレルとオリヴァー・ハーディーのコンビで、1920年代から1945年まで多くの喜劇映画で共演した。
この作品は、彼らが主演を務めたスラップスティック映画を意識して作られている。
だからオープニング・クレジットも、あえてクラシカルなルックにしてある。
「1965年バージョンのアップデート」ではなく、当時のスラップスティック映画をそのまま再現しようという作品だ。

なので古い喜劇映画が好きな人であれば、大いに楽しめるかもしれない。
例えばサイレント時代のチャールズ・チャップリンやバスター・キートン作品って、そういうのが大好きな人もいるけど、シンプルに「古すぎて笑えない」と感じる人もいるだろう。この映画も、そこの感覚の違いによって印象が真っ二つに分かれるんじゃないだろうか。
ただ、どっちにしろ上映時間が160分ってのは長すぎるよ。ローレル&ハーディーの映画って、長くても70分代前半だったんだから。
スラップスティックで160分とか、正気の沙汰とは思えない。
そういうトコなんだよなあ、ブレイク・エドワーズのセンスの無さって。

カーレースなので、もちろん複数の車が参加する。
しかし粗筋で書いたようにスタート直後に次々とリタイアし、早い段階で「フェイトとレスリーの対決」という図式だけに絞り込まれる。
そもそも他の参加者については、名前も紹介されず顔も分からないままで終わっている。
ちなみに『チキチキマシン猛レース』の元ネタになっていることは有名な話だが、あちらではブラック魔王のゼロゼロマシンがメインだったものの、他にも10台の参加者がちゃんと紹介されていた。

言葉が分からなくても、音声を消したとしても伝わるような、動きによるギャグが大半となっている。
レスリー・スペシャルのお披露目シーンでは、フェイトとマックスが空飛ぶ自転車から爆弾を落とそうとするが、車輪に引っ掛かって爆発してしまう。
フェイトは開発した車を操縦するが、マックスがボタンを間違えて大砲を撃ってしまい、ガレージが潰れる。
フェイトは潜水艦からレスリーのテントを観察するが、潜望鏡が壊れて足が下敷きになる。
マックスが助けようとすると、今度は潜望鏡に足が引っ掛かって逆さ吊りになる。

マギーがフェイト邸に押し掛けた時には、犬に追い掛けられてガレージに飛び込む。
防犯装置が作動する中、フェイトとマックスも含めた3人が犬から逃げ回る。マギーが勝手に車を操作し、大砲を撃ってガレージが潰れる。
レースが始まるとマックスの細工によって、2号車のハンドルが外れて商店に突っ込む。3号車はギアが壊れて動かなくなり、4号車はドアや屋根が外れて停まる。でもフェイトの5号車も、エンジンが落下する。
煙が出たのでマックスが消火しようとすると、フェイトの全身が消化液まみれになる。

ボラーチョの歓迎パーティーのシーンでは、スラップスティック映画の「ド」が付くぐらい定番である大乱闘が勃発する。
「些細なことで1対1の喧嘩が起き、そこに周囲の人間も次々に加わって大乱闘に発展する」というお約束が、何の捻りも無くストレートに描かれている。
言わずもがなだろうが、大規模な乱闘の中で発砲は無いし、死者も出ない。
「なぜ周囲の面々が喧嘩に参加するのか」という部分に、この映画は何の意味も持たせていない。
ザックリ言うと、「だってスラップスティックだから」ってことだ。

動きのギャグが大半を占める中、マギーが軸になるシーンは全く種類が異なり、言葉を使って笑いを取りに行く。
初登場シーンでは、男子トイレのドアに手錠で自分の手を繋ぎ、「記者にするまで動かない」とヘンリーを脅す。マギーは「単純な仕事から女性を解放したい」と主張し、窓の外に向かって「洗濯室から飛び出して」と大声で叫ぶ。
マギーというキャラは、婦人参政権を要求する活動家になっている。そういうのを馬鹿にするのはマチズモから来る差別意識じゃないかとは感じるが、時代が時代だけに仕方が無い部分もあるのかもしれない。
ともかく、マギーは徹底して身勝手で嫌な女として描かれており、本作品は「女性が権利を主張するなんて大間違い」というスタンスを取っている。

アラスカではフェイトがレスリーと一時的に休戦するが、相変わらずドジを繰り返すし、悪態ばかり口にする。
レスリーと仲良くしようという気は全く見せないので、その程度の一時的な呉越同舟なら一向に構わない。しかし、その後の展開は大いに問題だ。
ポッツドルフに入った後は粗筋に書いたような展開があり、男爵と将軍は皇太子を馬車で連行する。目撃したヘゼカイアは後を追い、マギーとマックスが監禁されている部屋を発見する。マックスは誤ってヘゼカイアを昏倒させると、そのままマギーを残して逃亡する。
一方、フェイトは男爵と将軍から、翌日の戴冠式に皇太子として出席し、将軍を首相に任命して退位するよう要求される。

マックスはスパイ容疑で監禁されたレスリーの元へ赴いて事情を説明し、協力してマギーとヘゼカイアを救い出す。そして翌日、彼らはフェイトの救出に向かう。
つまり、ここでも同じ目的のために共闘しているわけだ。
だけど、もう呉越同舟はアラスカの短いパートだけで充分なのよ。しかもポッツドルフのエピソードって、レースと全くの無関係だし。
「レースが続くと単調で飽きるから」と思ったのかもしれないけど、むしろポッツドルフのパートを全カットして全体の尺を短くしてくれた方がマシだよ。

ポッツドルフのエピソードでは、最後にスラップスティック映画では定番のパイ投げシーンが用意されている。
「1人が誰かの顔面にパイを投げ、ぶつけられた相手が反撃すると外れて別の人間に命中し、そいつが怒ってパイを投げて」という具合に、どんどん参加者が増えていくというギャグだ。
だけど大乱闘かパイ投げか、どっちか片方でいいよ。欲張り過ぎて、そのせいで尺が長くなっているという部分も大きい。
あと、ポッツドルフを脱出したら後はゴールに向けて畳み掛ければいいものを、「休息を取ってマギーが歌って」という展開を入れて完全に間延びしているのも大きなマイナスだ。

(観賞日:2025年9月12日)

 

*ポンコツ映画愛護協会