『グリース』:1978、アメリカ
ダニー・ズーコとサンディー・オルセンは、夏休みに避暑地で知り合い、恋に落ちた。夏が終わり、ダニーは高校生活に戻った。彼は“T−バーズ”というグループのリーダーだ。仲間はケニッキー、ドゥーディー、ソニー、パッツィーといった面々だ。
一方、オーストラリアに戻ったはずのサンディーは、父親の仕事の関係でライデル高校に転校してきた。彼女は”ピンク・レディース”のリッゾ、フレンチ、ジャン、マーティーと知り合う。サンディーは生徒会副会長候補のパティーに誘われ、チアガールになった。
ダニーはサンディーと再会するが、仲間の手前、冷たい態度を取ってしまう。だが、すぐにダニーはサンディーに謝り、仲直りした。2人は、ライデル高校の体育館からテレビで生中継される、全米高校バンド・スタンドのダンス・コンテストに参加する。しかし、ダニーの元恋人チャチャが強引に割り込み、ダニーとコンビを組んで優勝してしまった…。監督はランダル・クレイザー、原作はジム・ジェイコブズ&ウォーレン・ケイシー、脚本はブロント・ウッダード、改作はアラン・カー、製作はロバート・スティグウッド&アラン・カー、製作協力はニール・A・マクリス、撮影はビル・バトラー、編集はジョン・F・バーネット、美術はフィル・ジェフリーズ、衣装はアルバート・ウォルスキー、振付はパトリシア・バーチ、音楽監修はビル・オークス。
出演はジョン・トラヴォルタ、オリヴィア・ニュートン=ジョン、ストッカード・チャニング、ジェフ・コナウェイ、バリー・パール、マイケル・トゥッチ、ケリー・ウォード、ディーディー・コーン、ジェイミー・ドネリー、ダイナ・マノフ、イヴ・アーデン、フランキー・アヴァロン、ジョーン・ブロンデル、エド・バーンズ、シド・シーザー、アリス・ゴーストリー、ドディー・グッドマン、シャ・ナ・ナ他。
1977年に『サタデー・ナイト・フィーバー』をヒットさせた製作者ロバート・スティグウッドが、再びジョン・トラヴォルタを主演に据えて作った映画。ブロードウェイのミュージカルを映画化した作品。ダニーをトラヴォルタ、サンディーをオリヴィア・ニュートン=ジョン、リッゾをストッカード・チャニング、ケニッキーをジェフ・コナウェイが演じている。
ダンス・コンテストのシーンでは“ジョニー・カジノ&ザ・ギャンブラーズ”というバンドが登場して演奏するが、これはシャ・ナ・ナのメンバー。トム・チーサムという役でロレンツォ・ラマスが出演しているが、これが名前がクレジットされた初めての作品。また、アンクレジットだが、バスケット選手の役でマイケル・ビーンが出演している。撮影当時、トラヴォルタが24歳で、オリヴィアは29歳。
いやあ、オリヴィアの高校生役ってのは、さすがにキビシーでしょ。まあ、そのキャスティングの時点で、「ああ、これはリアリティーなんか無視したバカバカしい話なんだな」と気付かせる効果はあるけど。
実際、話そのものは、ミーチャンハーチャンの惚れた腫れたを緩いテンポで描いた、他愛も無い内容だ。普通のドラマとして作っていたら、そりゃあもう、目も当てられない状態になっていたかもしれない。
しかし、ミュージカルってのは、時に恐ろしい魔力を発揮するようだ。
なんと、このユルユルな映画は、大ヒットしてしまったのだ。お手軽お気軽な内容が、ミュージカル形式によって上手い方向に転がったらしい。ハイスクールを舞台にしたティーンエイジャーの話ってのも、軽くて良かったのかもしれない。普通のドラマとしてだけでなく、ミュージカルとしてもスカスカだと思うのだが、このノー天気なユルユル感が、当時の風潮とマッチしたのかもしれない。
正直、ダンスのクオリティーは高いとは思えない。カメラワークやカット割りにしても、そんなに面白さは感じない。ダンス・コンテストのシーンもバラバラだし、集団でのミュージカル・シーンもビシッと決まらない。ここが見せ場だと言えるような場面も見当たらない。これは振付、個人のダンス技術、見せ方、全てに問題があるのだろう。話は散らばったままだし、波瀾のハの字も無い内に問題は解決する。というか、問題が起きても、そこを描こうとしない。ダニーとサンディーがケンカしても、すぐに仲直り。ダニーがサンディーのことなんか放っておいてカーレースに行っても、それが終わると仲直り。
中心の2人のドラマが薄いのを補おうためか、脇では将来を考える女や妊娠に悩む女が出てくるが、深く突っ込んで描く意思は無いようだ。とりあえず脇も飾ってみたという程度だろう。
まあ、しかし1970年代を代表する作品の1本とは言えるかもしれない。