『ゴジラvsコング』:2021、アメリカ

スカル・アイランドで暮らすコングは、大木を引き抜いて投げ付けた。コング収容所、モナーク第236前衛基地のルーフは破損し、現場に人類言語学者のアイリーン・アンドリューズが駆け付けた。同僚のベンはコングを移動させるべきだと進言するが、アイリーンは「島から出せばゴジラが襲って来る。王の座を懸けて。彼らは古代からの宿敵なの」と反対した。耳が聞こえない少女のジアは、コングが怒っていることをアイリーンに手話で伝えた。
バーニー・ヘイズは『大怪獣の真実』というポッドキャストの配信者で、フロリダ州ペンサコーラのエイペックス・サイバネティックス社に5年前から潜入していた。彼は配信で、会社の悪行の証拠をダウンロードして巨大な陰謀を暴くと予告した。エンジニア部員として出社したバーニーはパソコンから密かにデータをコピーし、何かが香港へ送られることを知った。ゴジラの出現で退避命令が出たので、社内は大混乱に陥った。ゴジラはエイペックス社を襲撃し、バーニーは赤い光を放つ謎の機械を目撃した。
女子高校生のマディソン・ラッセルは『大怪獣の真実』のリスナーで、バーニーの言葉で「他の怪獣がエイペックス社にいたからゴジラが怒った」と確信した。彼女はペンサコーラのモナーク救援キャンプへ赴いて父のマークに自身の考えを訴えるが、全く相手にされなかった。エイペックス社のウォルター・シモンズ社長は主任研究員の芹沢蓮を伴い、ペンシルベニア州フィラデルフィアのデナム論理科学大学を訪れた。彼は地球空洞説を唱えるネイサン・リンド博士と会い、同じ考えを持っていることを伝えた。
蓮は「地球の空洞には広大な生態系が存在し、莫大なエネルギー源がある」と解説し、ウォルターは「そのエネルギー源がゴジラのような巨大生物を生む。その生命エネルギーを利用すれば、ゴジラを倒す兵器が作れる」と話す。かつてネイサンの兄は空洞に入ることに挑戦し、重力の反転に押し潰されて命を落としていた。その事故の後、ネイサンはモナークを辞めていた。ウォルターは重力反転に耐えられる「ヒーヴ」という探査機を開発したことを明かし、調査隊のリーダーになってほしいとネイサンに要請した。
ネイサンは「遺伝子記憶によって、巨大生物が生誕地である空洞に導いてくれるはず」と言い、探査のためにモナークの元同僚でコングと話せるアイリーンに助けてもらおうと考えた。彼はアイリーンの元を訪れ、ゴジラを倒すために地下空洞へコングを連れて行きたいと話す。難色を示したアイリーンだが、コングのことは自分に任せるという条件で了承した。コングは鎮静剤で眠らされ、鉄の鎖でタンカーに縛られた。タンカーにはネイサンやアイリーンやジアたちも乗り込み、周囲は軍艦が護衛した。
マイア・シモンズは父であるウォルターの指令を受け、タンカーに乗船した。彼女はネイサンに、ヒーヴが南極大陸へ向かっていることを教える。ジアは目を覚ましたコングと手話で会話を交わし、アイリーンに「コングは悲しみ、怒ってる」と伝えた。マディソンは友人のジョシュ・ヴァレンタインに車を調達してもらい、バーニーの捜索に向かった。マディソンはバーニーが配信で口にした言葉を手掛かりに、彼の居場所を突き止めた。最初は警戒していたバーニーだが、マディソンがマークの娘だと知って受け入れた。「ゴジラに破壊された倉庫に、怪しい機械があった」とバーニーが話すと、マディソンは協力してエイペックス社に潜入すると言い出した。
タンカーがタスマン海を進む中、アイリーンはネイサンから「ジアがコングに指示を出せばゴジラを倒せる」と言われて「彼女は子供よ」と反対した。ゴジラが出現したため、アイリーンはネイサンにコングの鎖を外すよう要求した。タンカーはゴジラの攻撃を受けて転覆し、ネイサンはコングの鎖を外した。コングはタンカーを救い、ゴジラと戦い始めた。しかしコングは劣勢に陥り、ネイサンは爆雷でゴジラの気を逸らした。コングがタンカーの甲板に上がると、ネイサンは艦隊司令官のウィルコックス提督に全ての動力を切るよう命じた。彼の狙い通りにゴジラは敵が死んだと誤解し、その場を去った。
マディソン、バーニー、ジョシュはエイペックス社の倉庫に行くが、機械は無くなっていた。3人はエレベーターでサブレベル33に移動し、貨物ポッドを発見した。人が来たのでマディソンたちは貨物ポッドに隠れるが、そのまま閉じ込められて香港へ送られた。ネイサンたちは南極大陸の地下空洞発進基地に到着し、ジアはアイリーンに促されてコングに「空洞に貴方の家族がいるかも」と手話で伝えた。コングは空洞に飛び込み、ネイサンたちはヒーヴで後を追った。コングは地下世界に到達し、巨大生物に襲われた。ヒーヴが援護し、コングは巨大生物を倒した。コングは行き先が分かっている様子で、真っ直ぐに走り出した。一方、貨物ポッドは香港支社に到着し、マディソンたちはテスト区域に閉じ込められた。蓮はメカゴジラを操縦してテスト用のスカルクローラーと戦うが、充分な力を発揮できずに終わった。ウォルターは蓮に、「空洞からサンプルが届けば問題は解決する」と告げた。
マディソンと連絡が付かずに心配するマットは、ゴジラが進路を変えて香港へ向かっているというニュースを知った。コングは神殿に着き、斧を引き抜いて玉座に腰を下ろした。脱出口を探していたマディソンたちは、大量のケーブルに繋がれているギドラの頭蓋骨を見つけた。バーニーはマディソンとジョシュに、「生きてるスーパーコンピュータだ。頭の1つがメカゴジラの中にあり、精神感応で操作してる」と説明した。頭蓋骨の部屋には蓮がいたが、精神接続でトランス状態にあるためマディソンたちには気付かなかった。
ゴジラが香港に上陸し、街を攻撃した。コングは斧が光を発ししたのに気付き、床に置いた。すると光が広がり、ゴジラの背びれの形になった。マイアは地球のエネルギーを吸収していると悟り、サンプルを採取した。アイリーンが抗議すると、マイアはエイペックス社の物だと主張した。ウォルターは送られて来たエネルギーをダウンロードし、蓮にエンジンの起動を指示した。蓮はテストしていないことを理由に反対するが、ウォルターはメカゴジラを動かすよう命じた…。

監督はアダム・ウィンガード、原案はテリー・ロッシオ&マイケル・ドハーティー&ザック・シールズ、脚本はエリック・ピアソン&マックス・ボレンスタイン、製作はトーマス・タル&ジョン・ジャシュニ&ブライアン・ロジャーズ&メアリー・ペアレント&アレックス・ガルシア&エリック・マクレオド、製作総指揮はジェイ・アッシェンフルター&ハーバート・W・ゲインズ&ダン・リン&ロイ・リー&坂野義光&平謙二、共同製作はジェン・コンロイ&タマラ・ワッツ・ケント&リチャード・ミリシュ&マット・オールソップ、製作協力はザック・クライン、撮影はベン・セレシン、美術はオーウェン・パターソン&トーマス・S・ハンモック、編集はジョシュ・シェーファー、衣装はアン・フォーリー、特殊視覚効果監修はジョン・“DJ”・デジャルダン、特殊視覚効果プロデューサーはタマラ・ワッツ・ケント、音楽はトム・ホルケンボーグ。
出演はアレクサンダー・スカルスガルド、ミリー・ボビー・ブラウン、レベッカ・ホール、小栗旬、カイル・チャンドラー、デミアン・ビチル、エイザ・ゴンザレス、ジュリアン・デニソン、ランス・レディック、ハキーム・ケイ=カジーム、カイリー・ホットル、ロニー・チェン、ジョン・ピルチェッロ、クリス・チョーク、コンラン・カサル、ブラッド・マクマレイ、ベンジャミン・リグビー、ニック・トゥレロ、ダニエル・ネルソン、プリシラ・ドゥアイヒー、ケイ・クドウ、ブラッド・バックリー、ジョン・ウォルトン、ダニエル・トゥイアラ他。


ワーナー・ブラザースとレジェンダリー・ピクチャーズによる「モンスター・ヴァース」シリーズ第4作。
監督は『ザ・ゲスト』『ブレア・ウィッチ』のアダム・ウィンガード。
脚本は『マイティ・ソー バトルロイヤル』のエリック・ピアソンと『GODZILLA ゴジラ』『キングコング 髑髏島の巨神』のマックス・ボレンスタインによる共同。
ネイサンをアレクサンダー・スカルスガルド、マディソンをミリー・ボビー・ブラウン、アイリーンをレベッカ・ホール、蓮を小栗旬、マークをカイル・チャンドラー、ウォルターをデミアン・ビチル、マイアをエイザ・ゴンザレス、ジョシュをジュリアン・デニソン、ギラーミンをランス・レディック、ウィルコックスをハキーム・ケイ=カジーム、ジアをカイリー・ホットルが演じている。

これって前作の『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』から、ちゃんと話が繋がっているのかな。細かい部分まで内容を正確に覚えているわけじゃないけど、前作のラストにおける状況から、上手く繋がっていないように感じるんだよね。
もちろん前作から5年後の設定だから、その間に世界では色んなことが起きているんだろうと思うよ。でも、それを考慮しても、パラレル・ワールドみたいになってないか。
映画シリーズを「バース」構想にすると、基本的には作品ごとに監督や脚本家が異なるので、統一感や整合性を持たせるため、全体を統括する人間が丁寧な調整作業に当たる必要がある。でも、そこの作業をサボっているんじゃないか。
もしくは、最初から調整する気がまるで無くて完全に放棄しているのか。

ゴジラとコングが戦う理由が必要ってことで、序盤でアイリーンに「古代からの宿敵で、王の座を懸けて戦う」と説明させている。
だけど、古代からの宿敵なら、今まで戦いが勃発していなかったのは都合が良すぎるだろ。
っていうか今になって「古代からの宿敵」と言い出すのは、完全に後付けだよね。
いや実際に後付けではあるんだけどさ、台詞で説明した時点で「完全に後付けじゃねえか」とツッコミが入るような状態になっているのは、シナリオとして問題が無いとは言えないよね。

「とにかくゴジラとコングを対決させる」ってのが本作品の唯一と言ってもいい目的であり、セールスポイントになっている。
映画に持ち込まれている設定や展開は、その全てがゴジラとコングを対決させるための仕掛けと言っても過言ではない。スカル・アイランドを隔離しているバイオドームも、今回から登場するエイペックス社も、そのための存在だ。
色々と疑問は尽きないが、まるで答えてくれないまま話はどんどん進んでいく。細かいことを気にしてはいけない作品なので、「そもそも答えは必要ない」というスタンスなんだろう。
どれだけ疑問が多くても、「ゴジラとコングを戦わせるためには必要なことだから」ということで強引に一点突破を試みる。そして都合の悪いことには、目をつぶっている。

前作でも感じたことだが、どうやら「モンスターバース」シリーズは完全に「怪獣プロレスを見せる」という方向性で割り切ったようだ。
そのため、人間ドラマは呆れるほど希薄になっている。
前作から続投のキャラクターは、「前作の設定は何だったのか」と言いたくなるような状態になっている。
今回から新たに登場するキャラクターの中には、「何のために登場したのか良く分からない」と感じる面々が少なくない。
誰一人として足元が定まらず、所在無さげにウロウロしている。

ジアは前作までの内容に全く関連しない場所から急に登場したキャラクターだが、「コングと手話で会話し、心が通じ合う唯一の存在」という重要な役割を担っている。そんな役割と比較すると、キャラクター描写は薄い。
結果的にはコングを都合よく利用する形になっているが、そこに加担したことへの罪悪感を抱くとか、自分とコングの絆を利用したネイサンたちに怒りを向けるとか、そんな手順も無いし。
ただし、それは言わずもがな、彼女に限ったことではない。
表面的な設定やドラマの発端となる部分だけで何もかも放り出して、全ての力を「ゴジラとコングの怪獣バトル」に注ぎ込んでいるのだ。

ネイサンは艦隊の全動力を切ってゴジラを騙した後、何か策を思い付いた様子で「コングは高所恐怖症か?」とアイリーンに尋ねている。
なので、どんな策なのかと思ったのだが、それは良く分からないままだ。
次にネイサンが登場すると、ジアにコングを地下空洞へ入るよう話し掛けさせている。
でも、それは最初から決まっていた手順なんじゃないの。ゴジラが去った後で急に思いついたのだとしたら、逆に、「当初はどんな作戦だったのか」と言いたくなるし。

「ゴジラとコングを対決させるのが本作品の唯一と言ってもいい目的」と前述したけど、メカゴジラも登場する。そしてメカゴジラが暴走すると、ゴジラとコングは共闘する。
なので、そこも描きたい目的に入っていると言っていいだろう。
どっちにしても、怪獣プロレスではあるけどね。
あとギドラの頭蓋骨と繋いで精神感応させているのに、それをメカゴジラと呼んでいいのかと言いたくなるぞ。デザインの面でも、「なんか違うなあ」と感じてしまうし。

粗筋では触れていないが、蓮は「芹沢」という苗字から分かるように、『GODZILLA ゴジラ』と『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』でケン・ワタナベが演じていた芹沢猪四郎博士の息子だ。
芹沢はゴジラに愛情を覚え、救おうと考えて行動していた。しかし蓮はゴジラを倒すために動いており、父とは全く反対の立場を取る。
そんなキャラ設定を考えると、前作からのミッシング・リンクを解き明かす意味でも重要な存在のはずだ。しかし中身が空っぽなので、単に行動理念が分からないイカレポンチなだけの奴になっている。
そして、蓮をそんな風に扱うことで、前作まで遡って芹沢まで貶めるような結果に繋がっている。

「ハリウッド映画だから」なのか、「レジェンダリーが中国資本だから」なのかは分からないが、メインの怪獣はコングで「最初はコングの敵で、終盤では共闘する相手がゴジラ」という扱いになっている。
メカゴジラとの戦いでも、「ゴジラのサポートでコングが倒す」という形になっており、やはり主役はコングだ。
そしてメカゴジラが退治されると、今回は次作に繋げる布石を何も打たずに話を終わらせる。マーベル・シネマティック・ユニバースのような、エンドロールの途中や最後に何かしらの場面を入れることも無い。
でもモンスター・ヴァースを完結させるつもりは無くて、既に次回作の企画は進行している。

(観賞日:2023年3月20日)


2021年度 HIHOはくさいアワード:第2位

 

*ポンコツ映画愛護協会