『コイサンマン』:1989、南アフリカ
サン人のキコと子供たちは、カラハリ砂漠の奥で暮らしている。アンは同僚のジェフリーに頼まれ、代役としてアフリカの国際会議に出ることになった。キコは長男のカビから、熟したマルーラの実を取りに行こうと誘われた。娘のキサと次男のキリも、キコに頼んで付いて行く。実を取った帰り、キコは怪我をした象の足跡を発見した。彼はキサとキリを先に帰らせて、象を探すことにした。キサはタイヤの跡を見つけるが正体を知らず、美しい模様だと感じた。
美しい模様をキサとキリが辿ると、水を盗む一団のトラックが停まっていた。しかしキサとキリは車を見たことが無いので、それが何か分からなかった。2人は牽引車の貯水タンクを覗き込み、大量の水を見て驚いた。昼寝していた運転手のジョージが目を覚まし、トラックを走らせる。キサとキリは慌てて降りようとするが、怖くて荷台にしがみ付いた。キコが死んでいる象を見つけると、牙が持ち去られていた。キサとキリは荷台を覗き、大量の象牙が積んであるのを見つけた。
キコは子供たちの足跡を発見するが途中で消えており、連れ去られたのだと確信した。アンは国際会議の行われる基地に着くが、セミナーの発表準備があるのでサファリツアーには参加しなかった。操縦士のジャックが声を掛け、飛行機でサファリ見物に行かないかと誘った。30分しか掛からないと言うのでアンは飛行機に乗り、様々な動物を見た。トラックで寝ていたボスのブレナーが目を覚まし、早く目的地に着きたいのでジョージと運転を交代した。
ジャックは飛行機を着陸させ、動物学者のスティーヴンに頼まれていた荷物を渡した。スティーヴンは彼に、積乱雲が出ているので早く戻った方がいいと忠告した。「病気になったキリンを治療してほしい」とボブから無線が入ったので、スティーヴンは飛行機を操縦して戻ることにした。彼はアンが商売女だと誤解したまま、飛行機に乗せて離陸した。その直後、ジャックはボブからの連絡を受け、岩山の上空に突風が吹いているので離陸を待つよう告げられた。
キコは友人のワカと遭遇し、一緒に捜すと言ってくれた彼に象の肉を食べに行くよう告げた。スティーヴンは天候が悪化する中で飛行機を操縦し、高度を上げて雲を抜けた。途中でプロペラが止まると、彼はウイスキーで給油した。突風に煽られて飛行機が木に引っ掛かり、アンとスティーヴンはロープを使って地上に降下した。セミナーの時刻があるので焦るアンに、スティーヴンは助けが来るまで1週間は掛かるかもしれないと教えた。
キサは水を飲もうとして貯水タンクに入り、出られなくなった。キリもタンクに飛び込み、一緒に水遊びを楽しむ。スティーヴンは飛行機を修理するため、分解して下に移そうとする。野生の動物に怯えるアンに、彼は手を出さなければ何もしないと告げた。彼はアンに対して、冷淡な態度を取り続けた。スティーヴンはアンに手伝ってもらい、食料としてダチョウの卵を盗んだ。キサとキリは協力し、タンクから脱出した。アンとスティーヴンは行方不明者の捜索を報じるラジオのニュースを聞き、互いの職業を知った。
スティーヴンは修理した飛行機を飛ばそうと考え、底を抜いて車輪の代わりに走って加速を付けようとする。しかしアンに操縦させると、彼は置き去りにされた。アンは困惑しながら飛行機を飛ばし、プロペラを停止させて滑空に入った。パラシュートを出して何とか着陸した彼女は通り掛かったサン人に声を掛け、彼の自転車に乗せてもらう。アンは象の群れに遭遇し、自転車を捨てて木に登った。スティーヴンはラーテルに付きまとわれながら、砂漠を歩き続けた。
象の群れが通り過ぎると、サン人は壊れた自転車を担いでアンの前から去った。兵士のティミーは怪しいキューバ人のマテオを見つけて、捕まえようとする。しかし通り掛かったキコに邪魔され、マテオの人質になってしまった。マテオは銃で脅してティミーを走らせ、自分はジープを走らせて追い掛けた。キサはトラックから落ちてしまい、慌てて追い掛けるがキリを乗せたまま走り去った。ティミーは隙を見てライフルを奪い取り、今度はマテオを走らせた。
アンはキコと遭遇し、身振りを見て付いて行くことにした。キコはマテオたちと出会った場所に彼女を案内し、そこでの出来事を詳しく語る。しかしアンには彼が何が伝えたいのか、全く分からなかった。そこへティミーがマテオを走らせ、ジープで戻って来た。マテオはアンを人質に取り、キコは走り去った。ティミーはマテオを放置して、ジープで去ろうとする。マテオとティミーが格闘になると、アンは2人とも鞄で殴り付けた。アンが関与したこともあり、最終的にはマテオが銃を捨てた。「飛行機に乗り遅れる。キューバヘ帰りたい」とマテオが嘆くと、ティミーは「お前を基地へ連れて行く」と告げた。
ブレナーはジョージに、コンパスが狂って方角を間違えていると指摘した。彼がトラックを停めたので、ようやくキリは逃げ出すことが出来た。ブレナーは無線で仲間のラムジーに連絡し、到着時刻より遥かに遅れている事情を説明した。キコは力尽きて倒れたスティーヴンを発見し、穴を掘って水を与えようとした。アンから話を聞いたティミーはマテオにジープを運転させ、基地まで送って行こうとするが燃料が足りなかった。マテオは隙を見てティミーに襲い掛かり、2人は格闘になった。アンはライフルを構えて彼らを脅し、指示に従うよう命じた。彼女は2人に手を繋がせてジープに乗せ、飛行機のある場所まで行こうとする…。脚本&原案&監督はジャミー・ユイス、製作はボート・トロスキー、撮影はバスター・レイノルズ、編集はレニー・エンゲルブレヒト&アイヴァン・ホール、音楽はチャールズ・フォックス。
ナレーターはパディー・オブライエン。
出演はニカウ、レナ・ファルジア、ハンス・ストリドム、エイロス、ナディーズ、エリック・ボーエン、トレジャー・チャバララ、ピエール・ヴァン・プレッツェン 、ルーレンス・スワンポエル、リチャード・ロリング、レスリー・フォックス、サイモン・サベラ、ケン・マーシャル、ピーター・タンストール、アンドリュー・ディブ、シメイン・ムペペラ他。
1980年の映画『ミラクル・ワールド/ブッシュマン』の続編。
前作に引き続いて、ジャミー・ユイスが脚本&原案&監督を手掛けている。
前作からの続投キャストは、キコ役のニカウさんだけ。
アンをレナ・ファルジア、スティーヴンをハンス・ストリドム、キリをエイロス、キサをナディーズ、マテオをエリック・ボーエン、ティミーをトレジャー・チャバララ、ジョージをピエール・ヴァン・プレッツェン、ブレナーをルーレンス・スワンポエルが演じている。最初に邦題について触れておこう。前作の邦題は『ミラクル・ワールド/ブッシュマン』だったが、「ブッシュマン」が差別的だということで、この続編は『コイサンマン』と付けられた。
ブッシュマンは英語圏でサン人を表現する言葉だったが、コイサンマンはアフリカの部族である「コイコイ人」と「サン人」を組み合わせて作られた言葉だ。
ややこしいのが、「ブッシュマン」という言葉が使えなくなり、1作目が後にDVD化された際に『コイサンマン』と改題されたこと。それに伴い、この作品は最初のビデオタイトルが『ブッシュマン2/コイサンマン』だったが、『コイサンマン2』に改題されている。
つまり、1作目も2作目も『コイサンマン』なのだ。今はネットで検索すれば、すぐにアフリカの狩猟採集民族に関する情報を手に入れることも出来るだろう。
しかし『ミラクル・ワールド/ブッシュマン』が公開された当時は、アフリカの部族について全く分かっていなかった。多くの人にとっては、いわばエイリアンのような存在だったのだ。
そんな未知の存在に対する好奇心を刺激したこともあって、前作はヒットしたんじゃないだろうか。
世界的にもヒットしたが、特に日本では1982年の配給収入で年間1位となる大ヒットだった。しかし前作の公開によって、既にサン人やニカウさんは道の存在ではなくなっている。ニカウさんのキャラクターだけでは、前作のようなヒットは見込めない。
そのため、この続編では前作に無かったサン人の魅力や面白さを見せる必要があるはずだ。
ところが残念ながら、やってることは前作とほとんど変わらないのである。
前作で描かれなかったようなサン人の情報、人々の好奇心を満足させるような描写というのは、全くと言っていいほど見当たらない。アンの職業がハッキリしないのだが、たぶん弁護士だと思われる。
参加する国際会議が何の会議かも良く分からないけど、その辺りは話に関係ないので、どうでもいいっちゃどうでもいい。どうせアンが法律の専門家という設定も、スティーヴが動物の専門家という設定も、大して機能していないんだから。
まあ、そういうトコのディティールが粗いのは、作品の質を落とす一因ではあるんだけどね。
とはいえ、本作品の場合、そんなのは大したダメージじゃない。どうせ全体的に作りが雑なんだから。飛行機のプロペラが止まった後、その場で動かなくなるのは変だろ。墜落しないにしても、せめて滑空はするだろ。完全に停止するのは、理屈が通らないだろ。
あとスティーヴはともかく、アンがプロペラが動かなくなっても落ち着き払っているのは変だろ。
アンとスティーヴはラジオのニュースを聞いて、どちらも学者だと知る。だけど、スティーヴはアンが国際会議に出席する学者だと知っても驚く様子も無いし、今までの態度を詫びることも無い。
そうなると、「商売女だと誤解していた」という手順は全くの無意味になる。喜劇なので、もちろん幾つものギャグが盛り込まれている。
飛行機が雲を突き抜けて酸素が薄くなると、アンが失神しそうになる。アンは動物に驚き、何度も木に登ったりスティーヴに飛び乗ったりする。
アンがロープを使って木から降りる時、服が引っ掛かって下着が見える。卵を盗む時には、アンがダチョウに扮する。スティーヴはダチョウに追われて逃げ惑い、隠れていると踏み付けられる。
大半のギャグは、笑いの方程式としては間違っていないが、全体的にヌルい。
あと、とにかく物語の歩みノロいし、中身が薄い。「子供たちを捜索するキコ」「キリとキサと予期せぬ冒険」「アンとスティーヴのサバイバル」という3つの動きを、並行して描いている。
その中で、ニカウさんは基本的に、ただ走り続けているだけだ。彼のパートは、ホントに何のドラマも無い。
それはキリとキサのパートも大して変わらない。
例えばタンクから出ようとしたキリが誤ってライフルを発砲し、その音をジョージが耳にするが、そのままスルーしているし。
前作とは白人男女の役割を逆転させているが、その程度のアイデアしか持ち込まれていない。何しろサン人は芝居がマトモに出来ないので、基本的にはアンやスティーヴたちを使って喜劇を作ったり物語を進めたりするしかない。
ニカウさんは忘れた頃にチラッと出て来て、走っている様子が映るだけだ。
そしてニカウさんだけじゃ厳しいので、今回は彼の子供たちを大きく扱っている。キリとキサの方が(特にキリ)、ニカウさんよりも出番が多くなっている。
その判断は大正解。ぶっちゃけ、キリの可愛さぐらいしか、この映画にはセールスポイントが無いのよね。(観賞日:2025年6月10日)