『GOAL! ゴール!』:2005、アメリカ&イギリス

メキシコで生まれたサンティ・ムネスは、幼い頃からサッカーに親しんでいた。サンティが10歳の頃、一家はアメリカへ不法入国した。10年後、20歳となったサンティはロサンゼルスで父のエルナンと共に庭師として働いていた。彼はホヴェネスFCというラテン系が集まるチームに所属し、アマチュア選手としてサッカーを続けていた。エルナンは独立するためにトラックを購入しようと考えるが、値段が高いために断念した。サンティは庭師だけでなく、中華レストランの皿洗いとしても働いていた。
ある日、ニューカッスル・ユナイテッドの元選手であるグレン・フォイが、サンティの出場した試合を偶然にも見ていた。サンティに才能を感じた彼は、「君の試合を代理人に見せたい」と告げた。そのことをサンティから聞かされたエルナンは、「人間には二種類ある。豪邸に住む者と、我々のように豪邸の芝刈りをする者だ」と説く。「プロになれば違う」とサンティが言うと、エルナンは「目を覚ませ。お前がやってるのはボール遊びだ」と述べた。
グレンは代理人のバリー・ランキンと会い、サンティのことを話した。そして土曜日に大学チームと試合があることを告げ、観戦に行くよう求めた。しかし土曜日、バリーは会場に現れなかった。グレンが観戦する中、サンティはドリブル突破からゴールを決めた。グレンはニューカッスルのドーンヘルム監督に電話を掛け、サンティをテストしてほしいと頼んだ。グレンはサンティと会いニューカッスルへ行くよう促す。エルナンは反対するが、祖母のメルセデスはサンティを応援した。
サンティはニューカッスルへ行きたいと思うが、貯めていた金だけでは旅費に足りなかった。サンティは仕事に精を出すが、エルナンは勝手に彼の貯金を使ってトラックを購入した。一方、ニューカッスル・ユナイテッドにはスター選手のガヴァン・ハリスがシーズン途中で加入し、記者会見が開かれた。優勝の可能性が無い中で今シーズンの目標を記者から問われたドーンヘルムは、「4位以内に入ってチャンピオンズ・リーグに出場する」と答えた。それには残り試合の全勝が必要だが、ガヴァンは自信を見せた。
メルセデスはサンティのために大事な所持品を売り、メキシコ経由でロンドンへ行く航空券を購入した。ロンドンに到着したサンティはグレンに電話を掛け、彼の住むトゥーンの町へ電車で向かう。サンティを歓迎したグレンは、自分の家で泊めることにした。グレンは妻を2年前に癌で亡くしていた。かつてはニューカッスルでスカウトを担当していたグレンだが、人員整理で解雇されてからは自動車のレストア業で生計を立てていた。
次の朝、サンティはグレンの車に乗り、ニューカッスルの本拠地であるセント・ジェームス・パークへ赴いた。グレンからサンティを紹介されたドーンヘルムは、トライアルを受けさせるという約束を覚えていなかった。そこへ遅刻したガヴァンが高級車で悠々と現れたので、ドーンヘルムは注意した。しかしガヴァンは、まるで反省の色を見せなかった。ドーンヘルムは彼に、リザーブ・チームの練習に参加するよう指示した。
ドーンヘルムはサンティに対しても、リザーブ・チームの練習に参加するよう指示した。コーチのマルと挨拶を交わしたサンティは、緊張した面持ちで練習試合に加わった。しかし激しい当たりを受けて何度も転倒し、良いプレーを全く見せられなかった。サンティから「脚が上手く動かなかった。明日は大丈夫」と言われたグレンは、「明日は無い」と厳しい現実を告げた。しかしグレンはドーンヘルムと会い、1ヶ月の猶予が欲しいと頼み込んだ。
サンティはグレンの部屋で、彼の現役時代の記事を集めたスクラップ・ブックを見つけた。帰宅したグレンは、「妻が集めた」と教える。「一流選手だったなんて」とサンティが驚きを口にすると、グレンは「短い間だけだ。膝を痛めて引退した」と告げた。トライアルが1ヶ月後に延びたことを知らされたサンティは、翌日からのニューカッスルの練習に参加する。メディカル・チェックを受けた彼は、クラブの看護婦であるロズに好意を抱いた。サンティは喘息の持病を持っていたが、それを内緒にした。
ベテラン選手のヒューイは、サンティに対して強い敵対心を示した。そのことをサンティから聞かされたグレンは、「ヒューイは33歳だ。プレミアには出られないだろう。新入りの君が自分に無い才能を持っているから、キツく当たるんだ」と述べた。サンティは自分と同じ練習生のジェイミーに誘われ、ナイトクラブへ出掛けた。2人が列に並んで入店を待っていると、店員がガヴァンを案内するのが見えた。ロズが友人のロレインと歩いているのを目撃したサンティは声を掛け、彼女たちとレストランへ出掛けた。
サンティがボールを持つとドリブル突破ばかり試みるのを見たドーンヘルムは、「もっとパスを出せ。ウチはワンマンチームじゃない」と説いた。サンティがロッカールームで喘息の吸引器を使っている様子を、ヒューイが密かに覗き見ていた。シーズンの残りが3試合となる中、サンティはチェルシーとのゲームを観戦した。押される展開の中、ドーンヘルムは動きが良くないと感じてガヴァンを交代させた。ガヴァンが不満そうにベンチへ下がった後、クライファートの得点でチームは勝利した。
サンティが一人で居残り練習をしている様子を見たドーンヘルムは、彼をリザーブ戦に出場させることを決めた。喜んだサンティは病院へ行き、ロズに報告した。しかしヒューイが吸引器を踏み潰したため、サンティは全く活躍することが出来なかった。サンティは途中交代を命じられ、試合後にマルから「怪我でもしたのか」と問われたサンティは、真実を隠した。するとマルは、「イングランドでは体力不足かもしれん。このクラブには入れない」とサンティに通告した。
サンティはロズの家を訪れ、喘息持ちであることを打ち明けた。「みんなの期待を裏切った。明日には故郷に帰る」と漏らしたサンティは、励ましてくれたロズとキスを交わした。翌朝、彼はグレンに置き手紙を残し、タクシーに乗り込んだ。女と一夜を共にして寝過ごしたガヴァンは、慌ててタクシー会社に電話を掛けた。ガヴァンの要請を受けた本社からの連絡を受け、サンティを乗せたタクシーが彼を迎えに行く。サンティの事情を知ったガヴァンはドーンヘルムに報告し、「彼を残すべきだ。才能がある」と訴えた。「能力を実証したい。自信がある」とサンティが言うと、ドーンヘルムはリザーブ・チームへの残留を認めた…。

監督はダニー・キャノン、原案はマイク・ジェフリーズ&エイドリアン・ブッチャート、脚本はディック・クレメント&イアン・ラ・フレネ、製作はマイク・ジェフリーズ&マット・バーレル&マーク・ハッファム、製作総指揮はローレンス・ベンダー&ピーター・ハージテイ、共同製作はダニー・ステッパー&ジョー・バーン&クリス・オウインガ&ダーリン・ウェルチ、製作協力はアラン・ホプキンス&スティーヴィー・ハージテイ&ニコラス・ゴーティエ&ジョナサン・ハリス、撮影はマイケル・バレット、編集はクリス・ディッケンス、美術はローレンス・ドーマン、衣装はリンゼイ・ピュー、音楽はグレーム・レヴェル、音楽監修はジェイソン・アレクサンダー。
出演はクノ・ベッカー、スティーヴン・ディレイン、アンナ・フリエル、マーセル・ユーレス、アレッサンドロ・ニヴォラ、ショーン・パートウィー、ロバート・ディクソン、ゲイリー・ルイス、ミリアム・コロン、トニー・プラナ、スティーヴン・グレアム、リー・ロス、キーラン・オブライエン、アシュリー・ウォルターズ、フランシス・バーバー、アラン・シアラー、デヴィッド・ベッカム、ラウール・ゴンサレス、ジネディーヌ・ジダン、スヴェン=ゴラン・エリクソン、ブライアン・ジョンソン、マーティン・タイラー、ケヴィン・ナップマン、エマ・フィールド=レイナー、アルフレード・ロドリゲス、レオナルド・グエラ、ホルヘ・セルヴェーラ他。


国際サッカー連盟 (FIFA) が公認したサッカー映画3部作の第1作。ビデオ化された際には『GOAL! STEP 1 イングランド・プレミアリーグの誓い』というタイトルになった。
第1作では主な舞台がイングランドのプレミアリーグで、第2作はヨーロッパ・チャンピオンズリーグ、第3作はワールドカップでの戦いが描かれる。
監督は『ジャッジ・ドレッド』『ラストサマー2』のダニー・キャノン。
サンティをクノ・ベッカー、グレンをスティーヴン・ディレイン、ロズをアンナ・フリエル、ドーンヘルムをマーセル・ユーレス、ガヴァンをアレッサンドロ・ニヴォラ、エルナンをトニー・プラナが演じている。アラン・シアラー、デヴィッド・ベッカム、ラウール・ゴンサレス、ジネディーヌ・ジダン、スヴェン=ゴラン・エリクソンといった面々が、本人役で登場している。

最初に思ったのは、「これって年端もいかない子供たちを対象にしたファミリー映画なのかな」ってことだ。
そう思った理由は、その内容が、あまりにもヌルすぎるからだ。
全世界にサッカーを広めよう、サッカー人気を高めようという目的が込められた映画であり、だからベタベタなサクセス・ストーリーに仕上げているのは、まあ良しとしよう。しかし、それにしたって、そのサクセスっぷりが安易すぎて、ものすごく陳腐な映画になってしまっている。
そう考えると、仮にファミリー映画、子供向け映画だったとしても、褒められたモノではない。「子供騙しとしてもレベルが低い」と感じるぐらい、チープな話なのだ。

キャラクターの動かし方が、かなりユルい。
例えば、サンティはグレンに「代理人に試合を見せたい」と言われた時、相手がイングランドの元選手だと聞いても、軽く受け流すようにして立ち去る。その時点では、グレンの話を本気にしていないように受け取れる。
ところがエルナンと話す際には、分別をわきまえるよう諭す彼に対して「プロになれば違う」「代理人に会えば全てが変わるかも」と反論している。ってことは、グレンの話で「プロになれるかも」と感じていたってことだろう。
そうであるなら、それなりの反応を見せておいてほしい。あまりにも処理が淡白だ。

そこの処理が淡白だから、代理人が来なかったことを聞かされたサンティが「父の言う通りだった」と全く表情を変えずに告げた時も、その奥に潜む落胆が見えて来ない。
グレンがニューカッスルへ行ってテストを受けるよう促した時も、やはりサンティはリアクションが薄い。プロになりたいという強い思い、燃え上がる情熱ってモノが、サンティの態度からは見えて来ないのだ。
「ホントはプロになりたい気持ちが強いけど、夢を見て裏切られるのが怖いから隠している」というわけでもないのだから、もっと気持ちを表に出すべきだろう。
あまり気持ちが表に出ないキャラにしたところで、何の得も無いんだし。

グレンがサンティに才能を感じ、代理人のバリーを試合に呼んだり、彼が来なかったら監督と話を付けてトライアルを受けさせると約束させたりするのは、かなり無理がある。
確かにサンティは試合で活躍していたかもしれないが、そこまでするほど際立つ才能の持ち主には見えない。
周囲を無視してドリブル突破でゴールを決めているけど、それは身勝手すぎるプレースタイルだし、周囲がアマチュアばかりだから身勝手なプレーでも活躍できるという風にも思える。
サンティが試合でプレーする様子の見せ方が凡庸ってこともあって、「プロのレベル、しかもプレミアで通用するぐらい凄い選手」というインパクトには乏しい。

ガヴァンの加入が決まった記者会見で、ドーンヘルムは今シーズンの目標について訊かれて「4位以内に入ってチャンピオンズ・リーグに出場する」と答えている。それには残り試合の全勝が必要なのに、ガヴァンは自信を見せる。
シーズン途中の加入ってことは1月市場での移籍だろうけど、そこからの残り試合数が幾つあると思っているのか。
残り試合を全て勝つって、それは有り得ないだろ。全勝優勝した当時のアーセナルみたいな状態ならともかく、もう優勝の可能性が無くなっているようなチームなんでしょうに。
ガヴァンという人気選手が1人来ただけで、全て勝てるようにガラリと変わるわけがない。

ところが、サンティがニューカッスルの練習に参加した後、初めて試合の様子が描かれる時に、「チャンピオンズ・リーグ出場は3試合を全勝することが条件」とアナウンサーが言っているんだよな。
それはガヴァンが移籍してからサンティが練習参加するまでに、かなりの日数が経過したってことなのか。そして、その間は全て勝利していたってことなのか。で、残り3試合というぐらいの時期になってから、サンティは練習生として参加したのか。
もしもガヴァンの移籍が1月市場じゃなかったとしたら、残り3試合という状況設定も成立する。
ただし、その場合、ニューカッスルに加入するまでのガヴァンは無所属だったってことになる。でも、「ガヴァンは人気選手」という設定からすると、それは考えにくい。

ともかく、この映画、何から何までリアリティーを徹底的に無視しちゃってるんだよな。
娯楽映画だし、全てを現実的に描けとは言わないけど、それにしても非現実的な描写が多すぎて、バカバカしさを強く感じてしまう。
試合中の展開やプレーを誇張して描き、サンティに現実的には困難なプレーをやらせるとか、そういう部分だけを荒唐無稽にやっていれば、それは受け入れることが容易だったかもしれない。
しかし周囲のディティールなど、全てがテキトーで雑な描写になっているので、ただの安っぽい映画という印象になるのだ。

例えば、メキシコからアメリカに不法入国し、アマチュアとしてプレーしていたサンティがニューカッスルの選手になるってのは、かなり違和感が強い。
と言うのも、EUとEFTA加盟国以外の外国籍選手がプレミアリーグでプレーする場合、過去2年間でFIFAランキングの平均順位70位以上の国の代表選手として、代表Aマッチの75%以上に出場しなければ労働許可証を取得できないからだ。
特例が認められる場合もあるが、サンティに特例が認められるとは思えないし、特例が認められた気配も無い。しかし前述のように、通常の手続きでサンティがプレミアリーグに登録されることは絶対に有り得ないのだ。
そこは嘘をついちゃダメな箇所だわ。

グレンがトライアルを受けさせるためにサンティを連れて行く場所は、クラブハウスや練習場ではなくセント・ジェームス・パーク。
でも練習するのはセント・ジェームス・パークじゃないので、すぐに移動することになる。
そこにドーンヘルムがいるから、サンティを紹介する必要がある、という設定ではあるんだけど、それよりも「まずはセント・ジェームス・パークを見せたい」という都合が大きいんじゃないかと思われる。
で、その都合を物語の中で上手く消化できず、違和感のある展開になっているってことだろう。

練習参加を許可されたサンティが練習場へ行くと、いきなり紅白戦をやっている。そしてサンティは何の準備運動もしないまま、いきなり試合に途中投入される。
ただし、そこは違和感はあるもののの、「輝きを放てなかったから見切られる」ってのは当然のことだ。
ところが、グレンは「時差ボケだったし、ぬかるみのピッチも初めてだった」と擁護した上、「スカウトをしていた頃、ぬかるみの試合を見た。若者が必死にプレーしていたし、サンティのように目を見張るプレーも見せた」と1ヶ月の猶予をドーンヘルムに頼み込む。
そこまで彼がサンティに入れ込む理由が、サッパリ分からないのだ。

サンティと同じように、「貧乏だけど夢見る若者」なんてのは大勢いる。しかし、与えられたチャンスをモノに出来なければ、成功を掴むことが出来ないのは仕方が無い。完全に諦めるか、次のチャンスを貰えるまで地道に努力を重ねるか、どちらかを選ぶしかない。
しかし本作品の場合、本人が努力しなくても、周囲の人間が何とかしてくれるのだ。
父に金を使い込まれると、祖母が金を工面してくれる。最初のトライアルで失敗したら、グレンが監督に頼み込んで次のチャンスを用意してくれる。
喘息のせいでクビになっても、ガヴァンが監督に知らせたことでリザーブ・チームに残ることが出来る。

サクセス・ストーリーとして、ある程度は甘めの味付けにするのもいいだろう。しかし、あまりにも甘すぎる。
もっと「厳しい現実、高い壁」ってのを用意して、それをサンティが努力して乗り越えるという姿を描かないと、彼に感情移入することが難しいのだ。
トライアルに失敗したサンティが落ち込む様子を見せたり、「夢は最大の敵さ」とこぼしたりしても、そんなので同情心は沸かないよ。
落ち込んだり愚痴をこぼしたりしたら勝手にチャンスが転がり込んで来るなら、そんなに楽なことはないよ。

そりゃあ、サンティも彼なりに努力しているんだろうし、居残りで練習する様子なんかもチラッと描かれるが、こちらが「必死に努力して成長し、チャンスをモノにした」というところに心を揺り動かされるためには、その描写は全く足りていない。
しかし、ニューカッスルの選手たちはサンティの才能を高く評価し、ドーンヘルムに「彼を残すべきだ」と訴える。ガヴァンも「彼は充分に通用する」と口にする。
そこまで周囲の人間がサンティを絶賛する理由が、こっちにはサッパリ伝わって来ない。練習の中で彼がズバ抜けた才能を発揮しているとか、それにチームメイトが驚くとか、そういう描写は無いのだ。
あと、強い敵対心を見せていたヒューイが、サンティが控えチームに残留した後の試合で急に仲良くなっているのは違和感が強いぞ。「妹がファンだ」というのを態度を急変させた理由にしているが、むしろ妹がファンだと知ったら、余計にキツく当たってもおかしくないぐらいだろ。
あと、とりあえず今までの行動を謝れよ。

恋愛劇を入れるのも結構だが、最初のトライアルに失敗し、グレンの尽力で1ヶ月後に延ばしてもらった直後にロズをナンパするような態度を見せているのは、ものすごく軽薄な野郎に見えてしまう。
ただし、2人が出会うのが開始から48分ほど経過した辺りであり、恋愛関係を発展させていくことを考えると、そのぐらいでヒロインに好意を抱かせておかないと時間の余裕が無いのだ。
終盤にはサンティをニューカッスルのプロ選手として活躍せておく必要があるので、彼の選手としての成功劇も、やはり時間的に余裕が全く無い。そっちだけでも慌ただしいので、ホントは恋愛劇なんて描いている余裕は無いのだ。
それでも「娯楽映画として恋愛劇は必要だろう」ってことで盛り込んだ結果、恋愛劇は薄っぺらくてギクシャク感ありまくりの中身に仕上がっている。

前述したように、何か問題が起きたり壁にぶつかったりすると、すぐに周囲の人間が助けてくれるので、サンティは大きな苦労もせず、トントン拍子でチームとプロ契約を交わしたような印象になっている。
つまり、「才能のある奴は、そんなに努力しなくても簡単に夢を掴める」という内容になっているのだ。
しかも、なんとサンティは、そのシーズンの内にトップチームへ昇格し、すぐに試合で使われる。
幾ら怪我人が続出しているからって、それは無いわ。そこで真っ赤な嘘をついちゃダメだわ。完全に気持ちが萎えるわ。

あと、ニューカッスルとフルハムの試合映像をアメリカのスポーツバーがテレビで流し、ニューカッスルのユニフォームを着た多くのサポーターが応援しているってのは、かなり無理のある設定だろ。
それと、バーに来ていたエルナンが、サンティが途中投入された途端に「俺の息子だ」と誇らしげに言うのは、すんげえ不愉快だぞ。今までは電話があっても無視し、ずっと拒絶していたのに、有名になった途端に態度をコロッと変えた、ということになるじゃねえか。
そこは父親の見せ方を完全に間違えているぞ。
その後、エルナンが仕事中に心臓発作で死ぬ展開があるが、あまりにも唐突。それを使って、「サンティが父の葬儀には戻らず、試合に出場することを選ぶ」という手順に繋げているんだけど、父を死なせる段取りが下手すぎて、まるで心には響かない。

練習で独りよがりなプレーを繰り返すサンティを見たドーンヘルムは、「パスを出せ」と注意する。しかし、その後、リザーブ・チームの試合風景が描かれると、相変わらずサンティはパスを出さずにドリブル突破を繰り返している。
つまりドーンヘルムの指示に従っていないわけで、本来なら「サンティが成長していない」という描写になるべきだろう。
ところが、そこは「チームに留まったサンティが大活躍し、実力を証明する」という描写になっているのだ。それはダメだろ。
最終戦で「サンティのクロスにカヴァンが会わせて同点」という展開があるので、そこまでは独りよがりなプレースタイルを引っ張りたかったってのも分からんではないけど、それならドーンヘルムが重要な試合に彼を起用し続けるのは違和感があるし。他にも選手はいるんだから。
最後にガヴァンが倒されて得たフリーキックをサンティが決めて勝利するってのも、「それは無いわ。そこはシアラーに蹴らせるでしょ」と言いたくなる。

(観賞日:2015年1月22日)

 

*ポンコツ映画愛護協会