『グレンとグレンダ』:1953、アメリカ
女装趣味を持つパトリックという男が、何度も警察に逮捕されたことを苦にして自殺した。ウォーレン警部補はオルトン博士の元を訪れる。パトリックの自殺を防げたかもしれないと考え、女装趣味を持つ男についての助言を求めに来たのだ。
オルトン博士はグレンという男の例を挙げる。グレンはバーバラという婚約者がいたが、自分が女装してグレンダという女に変身する趣味を持っているという秘密があった。そのことをバーバラに話すべきか悩んだグレンは、同じ趣味を持つ友人ジョニーに相談する。
ジョニーは自分自身の体験をグレンに話した。ジョニーは新婚当時、妻に女装しているところを見られ、それによって破局してしまったのだ。女装趣味は愛では越えられない問題だとグレンに告げるジョニー。グレンは女装趣味を隠したまま、バーバラとの結婚を決めるのだが…。監督&脚本はエドワード・D・ウッドJr.、製作はジョージ・ワイズ、撮影はウィリアム・C・トンプソン、編集はバド・シェリング、音楽はサンドフォード・H・ディッキンソン。
出演はベラ・ルゴシ、ライル・タルボット、ティモシー・ファレル、ドロレス・フラー、トミー・ハインズ、ダニエル・デイヴィス、チャールズ・クラフツ、コニー・ブルックス他。
史上最低の映画監督と呼ばれるエド・ウッドの長編デビュー作。「女装趣味は悪くないんだ、みんな理解してくれ」と訴える映画。エド・ウッド自身も女装趣味を持っており、ダニエル・デイヴィスという変名を使ってグレン役で出演。エド・ウッド以外にも、実際に女装趣味を持つ男達が何人も登場する。
当初は性転換したクリスティン・ジョーゲンセンという男のドキュメンタリーを作る企画だったらしい。ところが彼に出演を拒否されたことから方向がおかしくなっていく。監督の「自分の女装趣味を理解して欲しい」と願う気持ちが強すぎたのか、完全に内容が変わってしまった。
ベラ・ルゴシ演じる科学者が冒頭に登場し、何やら薬品を調合して煙を発生させ「生命の誕生だ」と意味ありげな台詞を吐くが、ストーリーには何の関係も無い。グレンが幻覚を見る場面があるが、意味は全く不明。
おそらく、深い意味は無いだろう。ストーリーは全てナレーションによって進行するので、俳優の演技はあまり意味が無い。提示される映像は、単にナレーションを補足するための絵でしかない。女装趣味の正当性を訴えるのが目的なので、娯楽性を期待してはいけない。
心象風景を映像化するために統一性の無いフィルムを繋ぎ合せており、下手とか上手いとかいうレベルを通り超えた俳優たちの姿が入り乱れる。まるで狂ったお遊戯会とでも言うべき状態である。
その糞っぷりは、もはやシュールですらある。