『ゴーストバスターズ』:2016、アメリカ&オーストラリア

ニューヨーク。19世紀に建てられたオルドリッジ邸を訪れたツアー客に、ガイドのギャレットは「長女のガートルードが家の人間を惨殺し、父親が彼女を地下室に幽閉した」という話をする。ツアー客が帰った後、ギャレットは怪奇現象に襲われた。コロンビア大学の講師であるエリン・ギルバートは、かつて友人のアビー・イェーツと共に『過去からのゴースト』という幽霊に関する本を執筆したことがあった。エド・マルグレイヴという老人は絶版となった本をエリンに見せ、「オルドリッジ邸には幽霊がいる」と調査を要請した。エリンは老人に入手方法を質問し、アビーがアマゾンに本を出品したと知った。
終身雇用の審査を控えているエリンにとって、その著書は黒歴史でしかなかった。エリンはハロルド・フィルモア教授から、審査のために優秀な大学の推薦状を用意するよう求められた。エリンはアビーに会うため、彼女が勤務しているヒギンズ理科大学へ出向いた。彼女は超常現象研究室へ行き、アビーの行為を非難した。アビーは全く悪びれず、逆にエリンを責めた。彼女は相棒のジリアン・ホルツマンと共に実験を繰り返し、本に書いた理論を実証しようとしていた。
オルドリッジ邸について相談に来た人がいたことをエリンが明かすと、アビーとジリアンは調査へ行くことにする。エリンが本の販売中止を頼むと、アビーは相談に来た人に取り次ぐよう要求した。3人はオルドリッジ邸へ行き、エドとギャレットに会う。屋敷に入った3人は、ガートルードのゴーストを目撃した。ゴーストは外へ飛び去るが、3人は「ゴーストを見た」と興奮する。その様子を撮影した動画をアビーがユーチューブにアップしたため、エリンはフィルモアから解雇を通告された。
エリンから非難されたアビーは「この大学は私たちの味方」と言い、一緒にゴーストを研究しようと持ち掛けた。しかし学部長のディーンは「研究室があったことも知らなかった」と告げ、「ゴースト研究は大学の名誉を汚す。他で研究しろ」と解雇を通告した。アビーとジリアンは全く落胆せず、大学の備品を盗み出した。地下鉄のシュワード駅で駅員をしているパティー・トランは、ローワン・ノースという不気味な男から「みんな無視するだろ。奴らはゴミの塊だ。終末戦争になれば、労働者は人類終焉の最後を飾る」と告げられる。適当に相手をしたたパティーだが、ローワンが線路に降りるのを見たので後を追った。
ローワンは線路脇に謎の装置を取り付け、パティーの眼前に囚人服のゴーストを出現させた。メルカド・ホテルの設備係をしている彼は、全世界に復讐する機会を狙っていた。エリンたちは超常現象の調査会社を始める場所を探すが、最初に案内された消防署は家賃が高すぎて無理だった。そこで中華料理店の2階に間借りし、アビーはチラシを作成した。新聞で募集した受付係にケヴィンという男が訪れ、エリンたちは面接する。エリンたちはケヴィンが底抜けのバカだと気付くが、他に候補者がいないので採用することにした。
パティーは3人の事務所を訪れ、地下鉄でゴーストに追われたことを話す。エリンたちはパティーに案内され、ゴーストが出現した場所へ行く。放電現象があったことをエリンたちが知った直後、囚人服のゴーストが出現した。エリンたちはゴーストを捕獲しようとするが、列車が走って来たので失敗に終わった。3人は動画をアップするが、書き込まれるのは否定的なコメントばかりだった。パティーはエリンたちの仲間に入れてほしいと頼み、荷物を運ぶために叔父のビルから借りた霊柩車を用意した。
ローワンは女性客の肩に小さなゴーストを寄生させ、他にも大勢のゴーストを部屋で待機させていた。彼はロックフェスが開催されているストーンブルック劇場へ行き、騒がしい客を見ると「この世は急いで浄化しないと」と呟いた。テレビのニュース番組ではエリンたちが「ゴーストバスターズ」として取り上げられ、マーティン・ハイス博士が動画の超常現象を完全に否定した。ストーンブルック劇場でゴーストが出現したという知らせを受け、4人はパティーが職場から持ち出した作業着で出動した。
ロック・フェスが続く中、支配人の案内で劇場に入った4人は、手分けしてゴーストを捜索する。アビーは地下鉄の時と同じ装置を発見し、パティーはマネキンに襲われる。4人が攻撃すると、マネキンからゴーストが出現した。ゴーストはロックバンドが演奏している会場へ飛び出し、演出だと思った観客は盛り上がる。大勢の観客が見ている前で、エリンたちはゴーストの捕獲に成功した。会場を出たエリンたちは取材を受け、会社に戻って有頂天になった。
そこへマーティンが現れ、ゴーストを見せるよう要求した。馬鹿にする態度に腹を立てたエリンは、アビーの制止を無視してゴーストを入れた器を開けてしまう。ゴーストはマーティンを窓の外へ弾き飛ばし、そのまま逃亡した。エリンたちが警官に事情を問われていると、FBI捜査官のホーキンスとロークがやって来た。エリンたちはブラッドリー市長の元へ連行され、ゴースト退治は捜査官に任せて手を引いてほしいと要請された。ブラッドリーは「君たちがインチキだと世間に思わせることに決めた」と述べ、秘書のジェニファー・リンチは「起きていることを知れば世間がパニックになる」と補足した。
エリンたちは超常現象が起きた場所を線で繋ぎ、超自然エネルギーが流れるX型のレイラインになることを知る。彼女たちは何者かが強力な装置で霊界と人間界の間のバリアを破壊し、ゴーストを呼び寄せているのだと確信した。エリンたちは交差しているのがメルカド・ホテルだと知り、パティーはローワンの写真を見て「変なことを言っていた男」と気付いた。アビーはホーキンスとロークに連絡を入れ、エリンたちと共にメルカド・ホテルへ赴いた。4人はローワンのいる地下室へ行き、装置を止めるよう告げる。しかしローワンは世間から蔑まれていると感じて強い恨みを抱いており、自らがゴーストとなって復讐する計画を実行に移す…。

監督はポール・フェイグ、オリジナル版脚本はダン・エイクロイド&ハロルド・ライミス、脚本はケイティー・ディポルド&ポール・フェイグ、製作はアイヴァン・ライトマン&エイミー・パスカル、製作総指揮はポール・フェイグ&ジェシー・ヘンダーソン&ダン・エイクロイド&トム・ポロック&ジョー・メジャック&アリ・ベル&ミシェル・インペラート・スタービル、製作協力はアレックス・プラピンジャー&ジェームズ・ポール&エリック・ライヒ、撮影はロバート・イェーマン、美術はジェファーソン・セイジ、編集はブレント・ホワイト&メリッサ・ブレザートン、衣装はジェフリー・カーランド、視覚効果監修はピーター・G・トラヴァーズ、音楽はセオドア・シャピロ、音楽監修はエリカ・ワイス。
出演はメリッサ・マッカーシー、クリステン・ウィグ、レスリー・ジョーンズ、ケイト・マッキノン、クリス・ヘムズワース、チャールズ・ダンス、マイケル・ケネス・ウィリアムズ、ニール・ケイシー、セシリー・ストロング、マット・ウォルシュ、エド・ベグリーJr.、アンディー・ガルシア、ビル・マーレイ、シガーニー・ウィーヴァー、ダン・エイクロイド、アーニー・ハドソン、アニー・ポッツ、スティーヴ・ヒギンズ、ザック・ウッズ、アダム・レイ、マイケル・マクドナルド、ケイティー・ディポルド、カラン・ソーニ、アル・ローカー、トビー・ハス、ネイサン・コードリー他。


アイヴァン・ライトマンが監督&製作を務めた1984年の同名映画のリメイク。
今回の監督は、『ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン』『デンジャラス・バディ』のポール・フェイグ。
脚本は『デンジャラス・バディ』のケイティー・ディポルドとポール・フェイグ。
アビーをメリッサ・マッカーシー、エリンをクリステン・ウィグ、パティーをレスリー・ジョーンズ、ジリアンをケイト・マッキノン、ケヴィンをクリス・ヘムズワース、ハロルドをチャールズ・ダンス、ホーキンスをマイケル・ケネス・ウィリアムズ、ローワンをニール・ケイシー、ジェニファーをセシリー・ストロング、ロークをマット・ウォルシュ、エドをエド・ベグリーJr.が演じている。
他に、市長をアンディー・ガルシア、ディーンをスティーヴ・ヒギンズ、ギャレットをザック・ウッズが演じている。

オープニングで例の主題歌が流れるが、すぐにフェードアウトしてしまうという雑な使い方だ。そんな形で使うぐらいなら、オープニングには使わない方がいい。もっと勿体ぶって引っ張り、「いよいよクライマックス」という直前辺りにでもフルコーラスを流した方が絶対に効果的だろう。
そんな風に思っていたら、エリンたちがストーンブルック劇場へ向かうシーンで、今回のためにアレンジされたバージョンの主題歌が流れる。
ところが、このアレンジが「だったら流さない方が遥かにマシ」という残念な出来栄えなのよ。
もちろん本人たちはイケてるアレンジだと思ってるいるんだろうけど、原曲の良さを台無しにしているとしか思えない。

まず序盤、アビーが身勝手な女にしか見えないという問題がある。自分が研究を進めるためなら、エリンが職を失おうと知ったこっちゃないという態度だ。
本人としては「エリンは研究を途中で捨てて自分を裏切った」という思いがあるようだが、それは全く共感の要素に繋がらない。
エリンが終身雇用を望むのは、責められるようなことではない。アビーが自分の生き方として「終身雇用なんて要らない」と思っていたとしても、それをエリンにも要求するのは間違っているしね。
エリンが一緒に会社を始めることで、なし崩し的にアビーの行為が肯定されちゃってるけど、彼女自身がリカバリーのための行動を取ったわけではないからね。

あと、アビーに限らず、今回のゴーストバスターズ4名って、まるで魅力を放っていないんだよね。
演じている女優の問題じゃなくて、明らかにキャラクター造形や動かし方の問題が大きい。ポール・フェイグが「女性版のゴーストバスターズ」というアイデアを提案したんだから、お得意のウーマンス映画(ブロマンスの女性版ね)にするのかと思ったら、そういう色付けも薄いし。
旧シリーズのファンから批判されるリスクを負ってまで女性に変更しているのに、その意味が全く見えない。
「オリジナル版は男性メンバーだったので性別を変えてみた」というトコで、思考停止に陥っている感じなのよね。
そのせいで、男性キャラのケヴィンがダントツで存在感を発揮するという皮肉な結果になっている。

余計なシーンが多すぎるってのも、厄介な問題だ。
例えばエリンたちがパティーの案内で地下鉄構内へ行くと、ある男がいる。「ゴーストを見た?」と問われた彼は「見た」と言い、壁にスプレーで落書きを始める。パティーが追い払うと、後には旧『ゴーストバスターズ』のマークが描かれている。
でも、それって全く後の展開には繋がらないのよね。
そのマークを見せたいだけで用意されているシーンであり、その男は全く無意味なのだ。
でもマークを見せたいだけなら、「地下鉄を移動する途中で、そんなマークが落書きされているのを見る」という形で済ませればいいわけで。

4人がピザを食べるシーンで、パティーがエリンとアビーの仲良くなったきっかけを尋ねる。エリンはアビーが転校して来て意気投合したこと、8歳の時に隣人が死んで幽霊になったのを見たが両親は信じてくれずセラピーに通わされたこと、同級生に知られてバカにされたがアビーだけが信じてくれたことを語る。
でも、そこで申し訳程度に2人の関係を説明しても、何の効果も無い。
その後には高校時代の写真が見つかり、その時の音楽に合わせて踊りながら当時のプレゼンを再現するシーンがあるが、これも無意味に時間を浪費しているだけだ。
そこに笑いでもあればともかく、何も無い。

余計なシーンを幾つも盛り込んでいる一方で、伏線らしく触れた要素を回収しないまま放り出している。
エリンはケヴィンが来た時点で惚れた様子を見せており、その後も明らかにメンバーの中で1人だけ彼に対する好意を示す描写がある。だったら、それが実るかどうかは別にして、その片想いは何らかの形で着地させるべきだろう。
ところが、いつの間にかエリンのケヴィンに対する恋心なんて忘れ去られ、そのまま映画は終わってしまうのだ。途中で製作体制が変わって脚本が書き直されたり、監督が交代したりという事態でも起きたのかと。
仮にそうだとしてもダメな現象なのに、そうじゃないにも関わらず伏線を回収せず放り出しているんだから、どうにもならんでしょ。
そもそもエリンにはフィルという恋人がいたはずだし(ただの同僚かもしれんが)、「ケヴィンに簡単に惚れる」というシーンも取って付けたようにしか見えないんだよね。
どうせ放り出すんだったら、最初から持ち込まなきゃいいのよ、そんな要素。

ローワンが死んだ後、ブロガーの馬鹿にする質問に腹を立てたエリンがパンチをお見舞いし、それが新聞記事になり、フィルモアがテレビの取材で「彼女を雇っていたのは間違いだった」と冷たく言い放つ展開がある。
だったら、エリンがゴーストバスターズを抜けようとするとか、アビーと仲違いするとか、そういう流れになるのかと思ったら、特に何も無い。すぐに「エリンがローワンの計画に気付き、アビーはゴーストに憑依される」という展開へ移行する。
だったら、その暴力事件って何の意味も無いでしょ。
エリンが窮地に陥ったアビーたちの元へ駆け付けるという展開にしても、その前に喧嘩でもしていればともかく、そうじゃなくて単に「1人だけ別の場所にいたので後から駆け付けた」というだけなので、何の意味も無いのよね。
ドラマを作れるトコが幾つもあるのに、それを雑に放棄している。

オリジナル版の主要メンバーの内、役者業から距離を置いているリック・モラニスと死去したハロルド・ライミス以外はゲスト出演している。
ビル・マーレイはマーティン役、シガーニー・ウィーヴァーはジリアンの恩師役、ダン・エイクロイドはタクシー運転手、アーニー・ハドソンはビル、アニー・ポッツはメルカド・ホテルのフロント係だ。
もちろんファンサービスの意味がある起用だけど、全く嬉しいとは思えなかった。
その理由は、「オリジナル版と同じ役柄で登場してほしかった」と感じるからだ。
当初の企画では、オリジナル版のメンバーが若い面々と絡む話になる予定だったのだ。
それを知っているので、リック・モラニスとハロルド・ライミスが出ないのは残念だけど、それでも他のメンバーで作ってほしかったなあと。

何でも食べちゃうスライマーと、オリジナル版のアイコンでもあるマシュマロマンも登場する。スライマーはエリンたちの車を奪い、それを乗り回す。スライマーの方は、その程度の顔見世でも別に構わない。っていうか、ちゃんと使っている。
問題なのは、マシュマロマンの扱いだ。バルーン人形がエリンたちの上に乗り、アビーが破裂させるという形で出番が終わってしまうのだ。
そんな扱いなら、出さない方がマシだわ。いっそのこと、前作と同じくマシュマロマンがラスボスでもいいぐらいなのに。
今回のラスボスはオリジナル版のマークを基にしたゴーストなんだけど、こいつは実体化&巨大化した時点で怖い顔なのよね。
マシュマロマンは「見た目は可愛いのに怖くなる」ってのも重要なポイントだったのに、そういう大事なトコは踏襲しないんだよなあ。

(観賞日:2018年2月6日)

 

*ポンコツ映画愛護協会