『GAMER』:2009、アメリカ

テレビ局“テルネット”の番組司会者を務めるジーナ・パーカー・スミスは、ケン・キャッスルの出演交渉に成功した。これまで1度しかテレビ出演の無いキャッスルは、ネット上の仮想環境「ソサエティー」とオンライン・ゲーム「スレイヤーズ」のクリエーターだ。スレイヤーズはアメリカ国民に大人気で、6億5千万人の視聴者がいる。ソサエティーはプレイヤーが生身の人間を操作する仮想環境であり、そのソサエティーが9ヶ月前に発表した新しいゲームがスレイヤーズだ。
スレイヤーズではプレイヤーが生身の人間を操作し、銃で戦わせる。生身の人間なので、弾が当たれば怪我を負ったり死んだりする。殺人ではないかというジーナの指摘に、キャッスルは「スレイヤーは全て死刑囚で、彼らにチャンスを与えてるんだ。30回のクリアで自由になれる。スレイヤーズはアメリカ政府の協力と認可によって完成し、その利益によって刑務所は運営されているんだ」と話した。
ジーナが「一般囚はプログラムされた動きしか出来ない。誰も操作しないのなら、生き残れる確率はゼロよ」と言うと、キャッスルは「スレイヤーになれない囚人にもチャンスを与えた。1バトルに耐えればいい」と説明した。ゲームの仕組みについて訊かれたキャッスルは、「ナノ細胞を脳の運動皮質に移植すると、増殖を続けて特殊な細胞に姿を変える。リモコンで操作できる細胞、ナノックスだ。ただし操作環境はゲームの範囲に限定される。ソサエティーの外に出たらキャストがプレイヤーと切り離されるのと同じだ」と述べた。
番組が終わった直後、ヒューマンズと名乗る組織が放送局をハッキングした。スタジオのモニターにはリーダーのブラザーが写し出され、「キャッスルの世界は偽物だ。騙されるな。このままだと、この国は奴に支配されるぞ」と警告した。キャッスルは余裕の態度で、その訴えを聞いていた。スレイヤーズではケーブルという戦士が27回の勝利を重ねていた。その正体はジョン・ティルマンという囚人である。ケーブルはフリークという囚人から話し掛けられるが、何も反応しなかった。
ケーブルが独房にいると、医療職員の女が彼の妻アンジーと娘ダリアの写真を差し入れた。ケーブルは顔の見えない女にサインを求められ、それに応じた。すると女は、注射器を使ってケーブルの血を採取した。アンジーはソサエティーの世界でニカという名前のキャストを演じていた。プレイヤーはホルヘという肥満体のオタク男である。ホルヘはニカにケバケバしくて露出度の高い服を着せ、ソサエティーでデイルという男性キャストに色目を使った。ヒューマンズの妨害でソサエティーの機能が一時的に停止し、75万人のプレイヤーに影響が出たが、3時間後に修復された。
ケーブルは28回目のゲームに出撃し、プラウン・チームとしてサンドラを始めとする仲間たちと共に戦った。またも勝利を収めたケーブルのプレイヤーは、サイモンという17歳の少年である。ただし、ケーブルはプレイヤーの正体を知らない。サイモンの部屋のスクリーンには、熱烈なアピールをする女性ファンや、逆に批判的なプレイヤー、ケーブルの譲渡を申し入れるプレイヤーなどが通信して来る。そんな中、あるスクリーンに「ケーブルと話す方法を教える」というメッセージが表示された。
キャッスルはケーブルを始末するため、ハックマンというプレイヤーの存在しない戦士を用意した。キャッスルは部下に、「ケーブルの唯一の弱点はナノックスのピングだ。サイモンの命令とケーブルの動きに遅れが出る」と話す。29回目のゲームに出撃したケーブルは、サイモンの声が聞こえて来たので驚いた。ゲームの途中でフリークの死亡を目にしたケーブルはハックマンに襲われるが、またも勝ち残る。ケーブルはサイモンに、「奴らは俺を殺す気だ。勝ってほしければ俺を自由にしろ」と要求した。
プラザーはサイモンと通信し、「ケーブルはキャッスルの秘密を知った。だから外に出られると困るキャッスルは、彼を殺そうとしている。ケーブル無しだと、君は落ち目になる。ピングを解放しろ」と語る。アンジーは里親に出しているダリアを引き取りたいと考えて役所に行くが、職員は冷淡な態度を取った。ケーブルの独房には医療職員の女が現れ、「サイモンは必ず貴方の要求に応じるはずよ。だけど自由になっても、キャッスルがいるからセーブポイントまでは行けない。家族のために、脱出のための方法を考えて」と告げた。
30回目のゲームに出撃したケーブルは、駐車場の車を盗んで戦闘地域を抜け出した。立ち入りが禁じられている制限区域に突入した彼が攻撃を受ける中、『スレイヤーズ』の映像が乱れて回線が途切れた。多くの視聴者が困惑する中、運営側はケーブルの死を発表する。だが、ケーブルは生き延びて脱出に成功していた。医療職員として接触していたヒューマンズのメンバー、トレースが彼と接触し、アジトへ案内した。ブラザーから協力を求められたケーブルは拒否するが、「彼女に会わせてやる」という言葉に振り返った。
ホルヘはニカを着替えさせ、ソサエティーのクラブへ向かわせた。リック・レイプというキャストがニカに声を掛け、ホテルに連れ込んだ。ニカが尻を突き出して犯してもらおうとした直後、ケーブルが部屋に乗り込んでリックを投げ飛ばした。ケーブルはニカのプレイヤーに向かって、「彼女と喋らせろ。解放しろ」と怒鳴った。彼はニカを連れてホテルを脱出しようとするが、ハックマンが襲って来た…。

監督はネヴェルダイン/テイラー、脚本はネヴェルダイン&テイラー、製作はトム・ローゼンバーグ&ゲイリー・ルチェッシ&スキップ・ウィリアムソン&リチャード・ライト、共同製作はロバート・ベナン、製作総指揮はネヴェルダイン/テイラー&エリック・リード&デヴィッド・スコット・ルービン&マイケル・パセオネック&ジェームズ・マクウェイド、撮影はエッケハート・ポラック、編集はピーター・アムンドソン&フェルナンド・ヴィレナ&ドゥービー・ホワイト、美術はジェリー・フレミング、衣装はアリックス・フリードバーグ、音楽はロバート・ウィリアムソン&ジェフ・ザネリ。
主演はジェラルド・バトラー、共演はマイケル・C・ホール、アンバー・ヴァレッタ、キーラ・セジウィック、クリス・“リュダクリス”・ブリッジス、ローガン・ラーマン、テリー・クルーズ、ジョン・レグイザモ、ゾーイ・ベル、ジョン・デ・ランシー、アーロン・ヨー、ジョナサン・チェイス、ノエル・グーリーエミー、アリソン・ローマン、ラムジー・ムーア、ダン・キャラハン、ブリード・フレミング、ジョニー・ホイットワース、キース・ジャーディン、マイケル・ウェストン、ジョー・ライトマン、マイロ・ヴィンティミリア他。


『アドレナリン』『アドレナリン:ハイ・ボルテージ』のネヴェルダイン&テイラーが監督&脚本&製作総指揮を務めた作品。
ケーブルをジェラルド・バトラー、キャッスルをマイケル・C・ホール、アンジーをアンバー・ヴァレッタ、ジーナをキーラ・セジウィック、ブラザーをクリス・“リュダクリス”・ブリッジス、サイモンをローガン・ラーマン、ハックマンをテリー・クルーズ、フリークをジョン・レグイザモ、サンドラをゾーイ・ベル、トレースをアリソン・ローマンが演じている。

一言で表現するなら、設定が雑な映画である。
まずソサエティーに関する設定が雑。
例えばキャッスルは「ソサエティーの外に出ればキャストは自由になる」と説明しているが、そこに入っている間はプレイヤーが操作しているわけで、だから操作されている側は自分の意思で行動できないってことになる。
だったら、自分が外に出たいと思っても、出ることは出来ないはずだ。
プレイヤー次第では永遠にソサエティーに閉じ込められる可能性もあるはずだが、そこの問題はどうなっているのか、それはサッパリ分からない。

操作されているのが生身の人間であるならば、ソサエティーは世の中に実在しなければ成立しないはずだが、どうやらネット上に用意されている仮想環境らしい。
だったら、操作されているのは生身の人間ではないってことになるはずで、そこの仕組みが良く分からない。
生身の人間の姿だけをコピーしたアバターということであれば、操作されている間、生身の人間はどういう状態にあるのか。仮死状態なのか。
でも、姿だけをコピーした別物ってことなら、生身の人間も普通に暮らしていて構わないはずだ。

しかし、そうであるならば、ケーブルがソサエティーに入ってニカを助け出そうとするのは、整合性が取れなくなってしまう。
ケーブルは生身の体なのだから、彼が接触できるということは、ニカも生身の体のはずだ。ってことは、そこは実在する場所じゃないと成立しなくなる。
それと、生身の人間が操作されているとのであれば、そいつが尿意や便意を催したとしたら、どうなるのか。プレイヤーは操っている人間の尿意や便意など分からないはずで、ってことは垂れ流しになっちゃうのか。
あと、操作されている人間が途中で眠くなったら、どうなるのか。

それと、「ホントにソサエティーって、ビジネスとしてちゃんと成り立っているのか」と感じてしまう。
途中で回線がヒューマンズに妨害された時、「75万人に影響が出た」と言っているが、全世界で遊ばれているソサエティーの会員が75万人ってのは、どう考えても少ないんじゃないか。
あと、そもそも「生身の人間を操作する」って、アニメ的なアバターを操作するのと比べて、そんなに楽しいだろうか。
所詮は架空の環境であり、架空のキャストとして登場するんだから、生身の人間であっても大して面白味があるように思えない。著名人や知っている人間を操れるってことなら、話は別だけど。

スレイヤーズに関しては、まずルールがサッパリ分からない。どういう条件をクリアすれば勝利なのか、それが全く説明されていない。
それと、これはソサエティーと共通する疑問だが、「生身の人間を動かしているから弾が当たれば死ぬ」ということであれば、戦場は実在する場所でなければ成立しないはずだ。
だとすれば、どこに用意されている戦闘区域なのか。架空環境という設定だとすれば、どうやって生身の人間が架空の環境に入り、そこで弾が当たって死ぬという状況が起きるのか。
その仕組みが理解不能だ。

スレイヤーズではプレイヤーが戦士を操作しているはずだが、そんな風には全く見えない。ケーブルは自分の意思で動いているようにしか見えない。自分の意思とは違う動きをさせられているようには見えない。
29回目のゲームのシーンでは、「サイモンがゲームをプレイしている」という様子が描かれるが、それでもケーブルが彼に操作されているようには見えない。実際、サイモンは「時々、プレイヤーに支配されるが、撃つのは俺だ」と言っている。
支配されるのは時々なのかよ。やっぱり、テメエの意思で大半は動いてるんじゃねえか。
その29回目のゲームでも、サイモンが「戻れ」と言ったのにケーブルが「こっちだ。信じろ」と先へ進む様子が描かれているし。
ちっとも操作されてねえぞ。
だったら何のためにプレイヤーは存在するんだよ。

スレイヤーズでは死刑囚だけが戦士に選ばれるはずだが、ジーナとキャッスルの会話かるすると、どうやら一般囚もゲームに参加しており、1つのバトルを耐えれば解放されるらしい。
だけど、一般囚は武器も持っておらず、操作もされていない状態でゲームの中に放り込まれ、戦闘に巻き込まれて死ぬ可能性があるってことでしょ。
死刑囚なら「そのままなら死ぬけど、ゲームに勝てば自由になれるチャンスがある」ということになるけど、一般囚は普通に刑期を務めりゃ釈放されるはずなのに。
そんなゲームに巻き込まれて死ぬ可能性があるって、すげえ理不尽じゃないのか。

スレイヤーズの戦闘シーンは、カメラが揺れまくり、カットを細かく割りまくりの映像表現になっており、ゴチャゴチャしていて何がどう動いているのか分かりにくい。
そういう映像の問題に加えて、前述した「ルールが全く分からない」という問題も重なって、ハラハラもワクワクも無い。
だって、何だか良く分からないゲームが行われている様子を、何だか良く分からない映像で見せられるんだからさ。
そりゃあ、気持ちが乗っていかないわ。

ケーブル(ティルマン)って死刑囚だからスレイヤーズの戦士になっているのかと思ったら、役所の職員は「終身刑で服役中」と言っているし、アンジーは「刑期が違う。もうすぐ出て来られる」と言っている。
そもそもケーブルが収監された理由が終盤まで謎のままだが、そこをミステリーとして引っ張っている効果を感じない。さっさと明かして話を進めた方がいい。
キャッスルがケーブルを始末しようとする理由も同様だ。
っていうか、キャッスルはケーブルを始末したいのなら、終身刑だった奴を、わざわざ死刑囚と同じ扱いでスレイヤーに選んで自由になれるチャンスを与えた意味は何なのか。
わざわざゲームの中で始末しようとしなくても、刑務所に刺客でも差し向ければ済んだことじゃないのか。

ケーブルを自由にしたことによって、もはやサイモンの存在意義ってゼロになる。
で、自由になったケーブルは何の同情心も感じさせないアンジーを助けた後、ダリアを里親になっているキャッスルから奪還しようとするのだが、待ち受けていたキャッスルは、なぜか部下をバックダンサーに従えて珍妙なミュージカルシーンを披露する。
さらには、なぜかテメエが生身で戦い始める。
一応、「ケーブルの動きをコントロールしているから圧倒的に優位」という形ではあるんだが、これっぽっちも強そうに見えないギーク野郎との肉弾戦を最終決戦に用意されても、ちっとも高揚感が沸かないわ。

(観賞日:2013年10月8日)

 

*ポンコツ映画愛護協会