『ゲーム・プラン』:2007、アメリカ
ボストン・レベルズのQBとして活躍するNFLプレーヤーのジョー・キングマンは、プレーオフ進出を懸けた試合に出場していた。逆転勝利を目指すラストプレーで、彼はフリーになっているサンダースにパスを出さず、自らのランプレーでタッチダウンを決めた。観客の大声援を受け、彼は得意満面にポーズを決めた。その夜、自宅マンションで盛大な大晦日のパーティーを開き、チームメイトのサンダースやウェバー、クーパー、モンローたちを招待する。それ以外にも大勢の客を招き、ジョーは楽しい時間を過ごした。仕事でパリへ行くという恋人のタチアナには、シャネルのバッグをプレゼントした。他にも大勢の女性のために同じ物をストックしてあるジョーだが、何も知らないタチアナは喜んだ。サンダースは「大晦日は妻や子供と過ごしたい」と言い、途中で退席した。
全ての客が帰った後、ジョーは愛犬のスパイクに自分のプレーを自慢するが寂しくなった。翌朝、彼は自分の特集番組を見るが、司会者のスチュアート・O・スコットが「才能があるのに優勝を逃し続けているのは利己主義だからという分析もある」とコメントしたことに腹を立てた。ドアマンのラリーから「ペイトン・ケリーという女性が受付に来ています」という連絡が来るが、その名前にジョーは聞き覚えが無かった。しかし「可愛い子か」という問い掛けにラリーが「ものすごく」と答えたので、彼は「入れてやれ」と指示した。
ジョーが玄関のドアを開けると、そこにいたペイトンは8歳の少女だった。困惑したジョーはガールスカウトか何かだと思い、サインか金で追い払おうとした。するとペイトンは「サラ・ケリーと結婚してたでしょ。私は貴方の娘です」と告げて母からの手紙を渡す。そこには「ペイトンは貴方の娘です。事情があって1ヶ月面倒を見て下さい。戻ったら理由を説明します」と記されていた。ジョーは娘の存在を否定するが、ペイトンは落ち着いた態度で出生証明書を差し出した。そこには確かに、ジョーの名が書かれていた。
ジョーは代理人のステラを呼び、事情を説明した。ステラに「なぜ黙ってたの?結婚してたことも知らなかったの?」と責められたジョーは、「大昔のことだし、1年も持たなかった。それに子供はいない」と告げる。しかし「完全に否定できるの?」と訊かれた彼は、身に覚えがあることを思い出した。ステラから嫌味っぽい態度で「母親は娘を置いて出掛けたの」と言われたペイトンは、「干ばつに遭った子供たちのために印象水を浄化するための計画に参加するため、アフリカへ行って1ヶ月は戻らない」と語った。
サラを偽善者呼ばわりするステラに、ペイトンは「私がお父さんの家へ行きたいって頼んだの」と話す。ジョーはサラの姉であるカレンに預けようと考えるが、ペイトンは「もう死んだ」と言う。ステラがサラに連絡しようとすると、携帯が繋がらずインターネットも使えない場所へ行ったとペイトンは語る。ステラの攻撃的な言葉を受けたペイトンは、「親子鑑定する?」と持ち掛けた。ジョーは「やろう」と同意するが、ステラはファニーズ・バーガーとの契約があることに触れて「マスコミに騒がれると困る」と反対した。
ジョーは高級スポーツカーにペイトンを乗せ、練習場へ赴いた。その途中でペイトンはジョーに幾つも質問し、手作りクッキーを渡した。しかしクッキーにシナモンが含まれていたため、ジョーはアレルギーで舌が麻痺してしまった。練習場では宣伝用の撮影が待ち受けていたが、ジョーは用意された台詞を上手く話せなかった。帰宅したジョーは大盛りのパスタを夕食に作り、ソファーで寝るようペイトンに指示した。ペイトンが「お話は?」とせがむので、ジョーは適当に短く切り上げる。ペイトンが「そんなの、お話じゃない。教えてあげる」と言うので、ジョーは仕方なく付き合う。ペイトンが話し始めると、すぐにジョーは眠り込んだ。
翌日、ステラは練習場にベビーシッター候補の女性を連れて来た。中年女性ばかりが並ぶ中、ジョーは若い美女のシンディーに決めた。その夜、ジョーは経営するナイトクラブの開店パーティーに出席し、招待客と話した。車で店を出た彼は、ペイトンを置いて来たことに気付いた。慌てて店へ戻ったジョーだが、翌朝のゴシップ紙には「娘を置き去りに」という大きな記事が掲載されてしまった。ステラは彼の悪化したイメージを払拭するため、記者会見をセッティングした。さらに彼女は、ジョーに「子供大好き」というステッカーを貼ったステーションワゴンで移動するよう命じた。
ジョーとステラはペイトンに、プレーオフまでは協力するよう要求した。ペイトンが代わりにシンディーを解雇するよう求めると、ジョーは却下した。しかしペイトンが「お酒を飲まされたとマスコミに話す」と脅したので、ジョーは承諾した。会見で記者から非難された彼は、軽い調子でコメントするが反応は芳しくなかった。すると同席したペイトンが彼を擁護して「まだ父親としては見習い中だけど、世界一のお父さん」などと発言し、記者の心を掴んだ。
ペイトンはジョーから礼を言われると、協力する代わりにバレエ学校へ通うことを了承させた。ジョーがバレエ学校にペイトンを連れて行くと、校長のモニークは「もう生徒のオーディション終了しています」と告げる。しかしペイトンの筋がいいと知ったモニークは入学を認め、3週間後の発表会を目指すよう促した。ジョーは彼女から「ここは託児所じゃありません。保護者も協力して下さい」と言われると、「私は例外にしてもらえるはずだ。ジョー・キングマンだからね」と得意げに告げる。しかしモニークは相手が何者か知らなかったため、ジョーは唖然としながらも「協力します」と口にした。
ジョーが自宅でウェバー&クーパー&モンローとNBAの試合をテレビ観戦している時、ペイトンは1人で遊んでいた。同点で迎えた試合終了間際、ブザービーターかというシュートのシーンで、突如として画面が児童向け番組に切り替わった。ジョーは慌ててチャンネルを戻すが、既に試合は終了していた。ジョーはペイトンを睨み付け、「リモコンは触るなと言っただろ。風呂に入って寝ろ」と指示した。ペイトンはバブルバスを作ろうとするが、量が多すぎて溢れ出す。泡だらけのスパイクが現れたので、ジョーはペイトンが大変だと感じて救出に行く。しかしペイトンは入浴しておらず、ジョーは服のまま泡まみれになった。怒りを抑えていたジョーは、大事な記念ボールにペイトンがデコレーションしたことを知って仰天した。
ジョーがプレーオフ決勝に向けてトレーニングしていると、その傍らでペイトンはバレエの稽古を始めた。ジョーがノリのいい音楽を流すと、すぐにペイトンはクラシックへ切り替えた。デンバー・ブロンコスとのプレーオフ決勝当日、ペイトンはステラと共に観戦する。そこへファニーズ・バーガーの社長であるサミュエルが現れ、ステラに声を掛けた。試合はレベルズがリードし、終盤を迎えた。最後のプレーでジョーはサンダースへのパスを選ばず、自らのランでタッチダウンを決めた。
ある日、モニークはバレエ学校での練習を終えて2時間が経ったのにペイトンが残っている様子を目にした。ペイトンは彼女に、「練習が長引いてるみたい」と言う。怒ったモニークがレベルズの練習場へ乗り込むと、ジョーはテレビを見ながらマッサージを受けていた。彼はは全く悪びれる様子も無く、「練習が長引いてね」と軽く告げる。モニークが「貴方は自分の人生が誰よりも重要だと思っている人よ」と非難すると、ジョーは「どんな親かは分からないが、この街の全員が俺を頼ってる」と述べた。
モニークが「貴方の娘も頼ってる。大事にしなきゃ」と言うと、ジョーは「大事に思ってるさ」と告げる。モニークは「証明して」と言い、発表会で大木を演じるよう要求した。「俺は一流のスポーツマンだ。バレリーナじゃない」とジョーは反発するが、モニークの指導でレッスンを受けると疲労困憊になった。彼はペイトンに「寝室を返してもらう」と言い、子供部屋と特注の可愛いベッドを用意した。彼が「お前は子供としてベテランだが、俺はまだ父親として見習い中だ。アメフトと同じで、人生でも予想外のことが起きた時は作戦変更する。経験しながら学ぶんだ。俺たちもね」と話すと、ペイトンは「分かった」と答えた。
タチアナがマンションへ来ることが分かったので、ジョーはペイトンに隠れているよう指示した。しかしペイトンは言うことを聞かず、彼女の前に姿を見せて怒らせるような言葉を並べ立てた。ジョーは慌てて取り繕い、タチアナをディナーに連れ出そうとする。彼は隣人のジェンセン夫人にペイトンを預け、レストランへ行こうとする。しかしペイトンが犬アレルギーだと嘘をついたため、ジェンセン夫人はジョーに彼女を引き渡した。
タチアナが怒って帰った後、ペイトンは「あんな人たちと遊ぶためにママを捨てたなんて、信じられない」とジョーを責めた。ジョーが「捨てたんじゃない、ママが離れたんだ」と反論すると、彼女は「ママが言ってた、ショーは勝手で自分のことしか考えてないって」と口にした。ジョーが「お前はママにそっくりだ。いつも自分が正しいと思ってる」と声を荒らげると、ペイトンは「こんな家にいたくない」と寝室へ向かう。ジョーが「何が欲しいんだよ」と言うと、彼女は「ママ」と答えて寝室に入った。ジョーはプレスリーの真似でギターを弾きながら熱唱し、ペイトンの機嫌を取った…。監督はアンディー・フィックマン、原案はニコール・ミラード&キャスリン・プライス&オードリー・ウェルズ、脚本はニコール・ミラード&キャスリン・プライス、製作はゴードン・グレイ&マーク・シアーディー、製作総指揮はリチャード・ルーク・ロスチャイルド、撮影はグレッグ・ガーディナー、美術はデヴィッド・J・ボンバ、編集はマイケル・ジャブロウ、衣装はジュヌヴィエーヴ・ティレル、音楽はネイサン・ワン、音楽監修はジェニファー・ホークス。
主演はドウェイン・“ザ・ロック”・ジョンソン、共演はキーラ・セジウィック、モリス・チェスナット、ロゼリン・サンチェス、マディソン・ペティス、ゴードン・クラップ、ペイジ・ターコー、ブライアン・ホワイト、ヘイズ・マッカーサー、ジャマール・ダフ、ケイト・ノータ、ロバート・トーティー、ジャッキー・フリン、ローレン・ストーム、マーヴ・アルバート、ブーマー・アサイアソン、ジム・グレイ、スチュアート・O・スコット、スティーヴン・レヴィー、エリック・オグボグ、クリスティーン・レイキン、エリザベス・チェンバース、ブライアン・カリー他。
『アメリカン・ピーチパイ』のアンディー・フィックマンが監督を務めた作品。
製作会社はウォルト・ディズニー・ピクチャーズ。
脚本のニコール・ミラードとキャスリン・プライスは、いずれも本作品が映画デビュー。
ジョーをドウェイン・“ザ・ロック”・ジョンソン、ステラをキーラ・セジウィック、トラヴィスをモリス・チェスナット、モニークをロゼリン・サンチェス、ペイトンをマディソン・ペティス、カレンをペイジ・ターコー、ウェバーをブライアン・ホワイト、クーパーをヘイズ・マッカーサー、モンローをジャマール・ダフ、タチアナをケイト・ノータ、サミュエルをロバート・トーティーが演じている。粗筋では触れなかったが、ジョーが眠り込んだ後でペイトンが飛行機へ乗り込もうとする女性に電話を掛けるシーンがある。
この段階では、その女性がペイトンの母、つまりサラであるように思わせている。実際、ペイトンは「ママはアフリカへ仕事で云々」と説明しているし、観客の誰もが彼女をサラだと解釈するはずだ。
しかし、その女性はカレンであり、既にサラは死去していることが後半になって判明する。
裏を返せば、その真相を隠してサプライズの効果を狙うために、ミスリードとして「ペイトンが飛行機に搭乗する直前のカレンと電話で話す」というシーンを用意しているのだ。そんなシーンが無かったとしても、進行の上では何の支障も無いからね。ジョーは利己主義で自分が大好きな男として描かれている。
確かに、マンションには自分の写真を何枚も飾っているし、「誰もが自分を知っている」という態度を見せているのでナルシストで自信過剰ってことは分かる。
一方、利己主義という性格に関しては、最初のシーンでパスを出さずランでタッチダウンを決めるという様子が描かれている。ただし、ランニングバックを囮にしてQBが自ら走るブレーは、そんなに珍しくもないプレーだ。その時点ではサンダースがフリーでも、パスを出した直後に捕まる可能性だって充分に考えられる。
だから、表面的に「利己主義的なプレー」として描いていることは分かるが、ちょっと無理があるんじゃないかと感じる。それに、ジョーはランプレーで逆転のタッチダウンを決めている上、それを「自分勝手なプレー」としてチームメイトやコーチ陣が非難したり不快感を示したりすることも無い。
つまりチームが喜んで納得しているんだから、それは別にいいんじゃないかと思ってしまうのよ。利己主義的なプレーによって大事な試合に負けたとか、そういうことも描かれていないし。
特集番組では「何度も優勝を逃している」と語っているけど、それがジョーのせいかどうかも分からんしね。アメフトは個人スポーツじゃなくて団体スポーツだから、チームとして問題があるのかもしれないし。
それに、ホントにジョーのプレーに問題があるのなら、ヘッドコーチが注意したり外したりするはずでね。なぜか終盤に入るまで、コーチ陣の存在は完全に無視されているけどさ。ジョーは大晦日のパーティーで、サンダースから「これが人生か?君は間違ってる」と指摘される。
でも大晦日なんだし、大勢の仲間を呼んでパーティーで楽しむのも別に悪いことじゃないでしょ。
家族を持つことの素晴らしさをアピールしようとする映画なのは分かるよ。
だけど、そのための比較として「独身男が仲間と盛り上がる」という行為を全否定されちゃうと、映画が訴えようとしているるメッセージへの反発心が湧いてしまうわ。ジョーはパーティー客が全て帰った後、寂しそうな様子を見せる。これもまた、「結婚した方が幸せだよ」ってことをアピールするための策略だ。
しかし、チームメイトが「まだ宵の口だ」と残ろうとしたのに、彼は帰らせているのだ。
自分で帰らせておいて「1人になったら寂しい気持ちを抱く」ってのは、見せ方として変でしょ。ホントに孤独を嫌っているなら、残って楽しもうとした仲間と盛り上がればいいわけでね。
そこは訴えようとするメッセージに対して、ジョーの行動が合っていない。「子供を押し付けられた主人公が最初は嫌がるが、次第に父性に目覚めていく」という筋書きになることは、誰でも序盤で容易に予想が付くはずだ。そして、その予想通りのストーリーが待ち受けている。
ファミリー映画だし、何しろディズニー作品なので、ベタベタな物語になっていることは構わない。
ただし、そういうベタなハートウォーミング・コメディーとしての質が低いし、上手く描写できていない。
何よりダメなのは、「主人公が娘を嫌がり、冷淡に、あるいは邪険に扱う」というパートが弱すぎることだ。ジョーを少しでも悪者にすることを嫌ったのか、この映画はステラというキャラクターを配置し、彼女に「ペイトンを嫌悪して冷淡な態度を取る」という役回りを担当させている。
ジョーは悪態をついたり面倒そうな態度を取ったりするものの、早い段階でペイトンに歩み寄る。押し付けられた直後には、車に乗せて練習場へ行く。夜になると、ちゃんと夕食も用意する。「お話を」と求められると渋々ながらもOKするし、「お話を教えてあげる」と言われると「1回だけだ。そしたら寝るんだ」と条件を付けながらも話を聞く。
その翌朝には、ペイトンに悪臭を嫌がられるものの、自分が飲んでいる特製ジュースを彼女の分も作る。そんな必要なんて全く無いのに、サービスとしてやっているわけだ。夜になると、ナイトクラブに置き去りにしたと気付くと慌てて戻るが、これもペイトンを心配してのことだ。「放っておいたら自分の評判が落ちるからマズい」とか、「店で面倒を起こされるとマズい」とか、そういう気持ちで慌てたわけではない。
つまりジョーはペイトンと接する時、ちっとも利己主義ではないのだ。
常に彼女のことを考えて行動しているので、「ジョーは利己主義」という設定までもブレさせることに繋がっている。初めての夕食の説き、ミートソースがジョーの口元に付着すると、気付いたペイトンが拭い取るというシーンがある。そのタイミングでBGMが流れ、感傷的な雰囲気を醸し出すという演出になっている。
つまり、「ジョーはペイトンの行動によって、心を動かされた」ってことを表現しているわけだ。
だけど、そういうのを入れるタイミングが早すぎるわ。
何しろ、それってジョーがペイトンから「貴方の娘」と言われた日の夜なのよ。まだ「娘と認めず、冷たくあしらう」という状態を保つべき時期でしょ。中盤辺りで、NBAのテレビ中継の大事な時にチャンネルを切り替えるとか、風呂場を泡まみれにするとか、記念ボールにデコレーションするとか、そういう行動をペイトンが取るシーンが連続する。だが、そこまでは「子供じみているジョーと、大人びた態度を取る賢明なペイトン」という関係系だったのに、そこに来て「子供っぽいイタズラを繰り返すペイトンと、彼女に翻弄されるジョー」という関係性へ急に変化するので、流れがギクシャクしていると感じる。
ペイトンはデコレーションを知られても謝らずにイタズラっぽい表情を浮かべるけど、そこまでの彼女って、そんなキャラじゃなかったはずでしょ。ペイトンはジョーがプレーオフに向けたトレーニングを積んでいる時も勝手にBGMを変更して邪魔しているけど、もはや単なる厄介なガキでしかない。
一方のジョーも、記念ボールをデコレーションされても怒りを抑えているけど、そんなキャラじゃなかったはずでしょ。そこは激怒してもいいシーンじゃないかと。
怒りを押し殺さなきゃいけない理由は何も無いでしょ。改めて「だったら協力しない」とペイトンに脅されたのならともかく、そうじゃないんだし。プレーオフ決勝のシーンでは、冒頭と同じく「フリーのサンダースにジョーがパスを投げず、ランプレーでタッチダウンを決める」という様子が描かれる。
ただ、そこまでにリードしていたみたいだから、「ラストプレーでダメ押しの得点」という意味では、エゴイスティックになるのも許容範囲じゃないかなと。
しかも、そこまでにはサンダースが相手じゃないけど、パスを通しているシーンもあるのよね。「俺の手柄だ」とは言ってるけど、何から何まで自分だけで決めようとしているわけではないのよ。
まあQBのランだけで勝つなんて絶対に不可能だから、当たり前だけどね。ジョーがモニークからバレエの発表会で大木を演じるよう言われ、それを引き受けるという展開は無理があり過ぎる。
断れない理由なんて、何も無いでしょ。弱みを握られたわけでもないし、取引の条件があるわけでもないし。
そもそも「ペイトンを迎えに行かず、テレビを見ながらマッサージを受けている」という時点で不自然なのよね。
そこに来て急に、保護者としての仕事をサボってしている印象なのよ。そこまでは文句を言いながらも、ちゃんと面倒を見ていたわけでね。しかもジョーは迎えに行くのをサボった直後、今度はペイトンに子供部屋やベッドを用意し、父親として努力しようという様子を見せているのだ。どういうことなのかと。モニークと話して考えが変わったってことなのかもしれないけど、なぜかは全く分からない。
さらに、そうやって「ペイトンと仲良くしよう、父親として勉強しよう」という意識を見せた直後、今度は「タチアナが来るから隠れろ」と言ってペイトンを邪険に扱うのだ。
一方で「経験しながら学ぶんだ。俺たちもね」というジョーに「分かった」と言っていたペイトンの方も彼を邪魔するので、デタラメなシナリオだなあと。
ホントなら「ジョーが少しずつ父性に目覚め、ペイトンとの絆が深まっていく」というドラマ進行にならなきゃいけないはずなのに、その場に合わせてコロコロと状態が変化し、進んだり戻ったりするのだ。終盤、カレンがアフリカから戻り、ペイトンを連れてジョーの元を去る。ジョーは優勝決定戦に臨むが激しいタックルを受け、肩を脱臼して肋骨にヒビが入る。彼はチームの勝利を考え、控えQBのダンヴィルに後を任せる。
怪我の症状を考えれば、それは理解できる判断だ。
ただ、それだと大事なクライマックスで主人公が活躍できないことになるので、そのままで終わるはずもない。
もちろん誰もが簡単に予想できるだろうが、「ジョーが試合に戻ってチームを勝利に導く」という展開が用意されている。その展開自体は、予定調和であっても一向に構わない。っていうか、それ以外の選択肢なんて無いだろう。
ただし問題は、そこへ話を運ぶための筋道だ。
ジョーはロッカー室へ来たペイトンから「大事な試合なのに出ないの?諦めちゃうの?練習して来たのに、無駄にしないで。パパは決してノーと言わないはずよ」と告げられて試合に戻るのだが、それは単に「ペイトンが何も分かっちゃいない」としか感じない。
ジョーは諦めたとか、弱気になったとか、そういうことで交代したわけではない。怪我で満足に動けないから、チームのために交代することを選んだのだ。
そりゃあ結果的にはタッチダウンパスを通してチームを勝利に導いているけど、用意された結末に対して、ジョーが交代した理由は合っていないんじゃないかと。(観賞日:2017年11月25日)