『恋は嵐のように』:1999、アメリカ

ニューヨークでコピーライターをしているベン・ホームズは、もうすぐブリジットと結婚することになっている。友人アランはバチェラー・パーティーを開くが、ベンは乗り気ではない。彼は他の女と遊ぶことに興味が無く、結婚できるだけでも幸せだと思っている。
バチェラー・パーティーには、ベンの父リチャードと祖父マックスも参加した。ノリノリだったマックスだが、ストリップに興奮して心臓発作で倒れてしまう。ベンは病院に運び込まれたマックスから、「自分を縛り付けるな。結婚は監獄だ」と告げられる。
ベンは、結婚式が行われるジョージア州サバナのブリジットの実家に向かうため、飛行機に乗り込んだ。だが、離陸しようとした飛行機が事故を起こし、出発できなくなってしまった。ベンは、隣の席で気絶したサラ・ルイスという女性を介抱した。
飛行機が苦手なベンは、今度は車を使ってサバナへ向かおうとする。だが、レンタカー乗り場は大勢の客で混雑していた。サラはヴィックという男に声を掛け、同乗させてもらう話を付けた。他に方法も無いため、ベンも同乗してサバナへ向かうことにした。だが、ヴィックがマリファナを吸ったことから、3人とも警察に捕まってしまう。
釈放されたベンとサラは、今度は列車に乗り込んだ。ところが、途中で停車した列車の屋根で遊んでいる内に、サバナ行きの車両が切り離されてしまう。シカゴ行きの車両に乗っていることに気付いた2人は、慌てて列車を降りた。一方、サバナでは、ベンを快く思っていないブリジットの父ハドリーが、娘の元恋人スティーヴを連れて来る。
財布を盗まれて一文無しになったベンとサラは、新婚夫婦に成り済ましてマイアミ行きのツアーに参加する。サラのウソで、ベンは脳外科医ということにされてしまった。しばらく2人で過ごす内に、ベンとサラは互いの存在を気にするようになる。そんな中、結婚式の介添え役を務めるアランとブリジットの親友デビーが、2人の様子を目撃する…。

監督はブロンウェン・ヒューズ、脚本はマーク・ローレンス、製作はスーザン・アーノルド&ドナ・アーコフ・ロス&イアン・ブライス、製作協力はスティーヴン・P・サエタ、撮影はエリオット・デイヴィス、編集はクレイグ・ウッド、美術はレスター・コーエン、衣装はドナ・ザコウスカ、音楽はジョン・パウエル。
出演はサンドラ・ブロック、ベン・アフレック、モーラ・ティアニー、スティーヴ・ザーン、ブライス・ダナー、ロニー・コックス、リチャード・シフ、アン・ヘイニー、ジャネット・キャロル、メレディス・スコット・リン、マイケル・フェアマン、デヴィッド・ストリックランド、ジョン・ドー、ジャック・キーラー、スティーヴ・ハイトナー、ジョージ・D・ウォレス、アフェモ・オミラミ、バート・レムセン他。


サンドラ・ブロックとベン・アフレックが共演したロマンティック・コメディー。サラをサンドラ・ブロック、ベンをベン・アフレック、ブリジットをモーラ・ティアニー、アランをスティーヴ・ザーン、ブリジットの母ヴァージニアをブライス・ダナー、父ハドリーをロニー・コックス、デビーをメレディス・スコット・リンが演じている。

ロマンティック・コメディーのはずなのだが、笑いは皆無に近い。ベンとサラは普通すぎるし、例えば大げさなリアクションをするとか、逆にスカすといったことも無い。何となく、ベン・アフレックがベンというキャラクターを上手くこなし切れていないような気もする。
ベンはこれっぽっちも浮気なんて考えていないような男なのだから、例えばサラから情熱的にキスをされた時に、もっと大げさに驚いてもいいはずだ。「オレも危険な男かも」とジョークを飛ばす時にも、もっとぎこちない態度を見せてもいいはずだ。

情熱的でワイルドなサラとのコントラストを生かすなら、もっとベンを真面目で実直なキャラクターにしてもいいんじゃないだろうか。ジョークを飛ばすような設定は避けて、ひたすらサラのペースに振り回されるという感じにした方が良かったのでは。そうしようと試みているのかと思えるようなトコロもあるのだが、だとしたら中途半端だ。
サラとベンのキャラクターが平板なので、その魅力で引っ張って行くことは出来ていない。道中で2人が経験する出来事にも、面白味があるわけではない。この話って、トラブルの連続に遭遇する中で、2人の関係が深まるというのを強調しないとダメなのでは。

実は、面白くなりそうなエピソードは幾つもある。列車に乗り間違えたり、財布を盗まれたり、ベンが脳外科医として倒れた老人を診たり。ところが、そこを淡々と描写してしまう。例えばベンとサラのリアクションで笑わせようという気配も無い。
おそらく多くの人々は、ベンとサラがくっ付くだろうと予想するはずだ。話の流れからすると、2人が結ばれるのが自然だからだ。しかし、完全なネタバレだが、最後の最後になって、ベンはサラとの関係を捨てて、ブリジットと結婚することを選ぶのだ。

この作品は、見事なぐらい、大半の観客の希望的観測を裏切るような結末を用意している。ミステリーやホラーならば、観客の予想を裏切るドンデン返しを持って来るのもいいだろう。しかし、これはロマンティック・コメディーだから、予定調和で一向に構わない。
ロマンティック・コメディーで、意外な結末を、それも観客を失望させるような結末を持ってきて、いったい何がしたいのか。大半の観客が納得できるような答えを最後に用意できなかったというのは、大きな失敗、致命的な失敗と断言しても過言では無い。

ただし、ベンとサラをくっ付けるとなると、ではブリジットはどうするのかという問題が生じる。例えば、スティーヴとヨリを戻させるとか、彼女をイヤな女にして観客に同情させないようにするといった方法が考えられるが、そういうことはしていない。
そうなると、ベンとサラをくっ付けてしまった場合、恋人の到着を待ち続けたブリジットが哀れな存在となってしまう。だから、ベンとブリジットをくっ付けるという結末は、仕方の無いものだとも言える。しかし、ではブリジットとの結婚を決意する直前まで、ベンがサラへの恋愛感情で一杯になっていたという事実に、どう決着を付ければいいのか。

たった2日でベンがサラに強烈な愛情を抱いてしまったことは、急な心変わりである。しかし、それよりも、それまで結婚式を中止しようと固く決意していたベンが、最後の最後になってブリジットを選んだことの方が、遥かに急な心変わりに思えてしまう。
そこを、「一瞬の気の迷いが、ブリジットに再会して解消された」ということで済ませるわけにはいくまい。ベンとサラが自分達の中で決着を付けたとしても、観客は2人の恋愛関係を引き摺ったままで、それとは違う恋の結末を見せられることになる。2人が結び付かない結末にするのなら、ベンとサラは良き友達として別れさせないとマズイだろう。

 

*ポンコツ映画愛護協会