『恋のミニスカウエポン』:2004、アメリカ

大学進学適性試験には秘密の目的があり、成績優秀者は秘密の準軍事学校へ勧誘された。エイミー、マックス、ドミニク、ジャネットは勧誘を受け、「DEBS」と名乗るスパイになった。同居している4人は朝からモニターに写るミスター・フィップスに起こされ、アカデミーへ行く準備をする。エイミーはヨリを戻そうとする元カレのボビーから電話を受けるが、冷たくあしらった。4人はアカデミーに到着し、フィップスと会った。そこへミセス・ペトリーが来て、ルーシー・ダイヤモンドが帰国したことを告げる。ルーシーは犯罪組織の生き残りメンバーで、父の死後に後を継いでいた。
ペトリーはルーシーが元KGBで殺し屋のニノチカに会うため帰国したと言い、監視して目的を探るようエイミーたちに命じた。ルーシーは隠れ家で側近のスカッドから、ニノチカと会うレストランについて教えられる。ルーシーは「急病で行けなくなったことにして」と言うが、スカッドは「2年ぶりにデートしろ」と告げる。ルーシーが帰国したのは、新恋人を作るためだった。スカッドは彼女に、「世界を破壊したいのは気を紛らすためだ。失恋を引きずるな」と説いた。
ルーシーは酷い振られ方をしてショックを受け、しばらくアイスランドに潜んでいた。スカッドに説得された彼女は、ルーシーと会うことを承諾してレストランへ向かった。DEBSの4人が店で張り込んでいると、ボビーがやって来た。ヨリを戻そうとする彼に、エイミーは「恋してない」と冷たく告げた。ルーシーは店を訪れ、ニノチカとの見合いを始めた。ニノチカは彼女に、ダンサー志望で月謝のために殺し屋の仕事をしていることを語った。
ボビーはエイミーに、プレゼントしたブレスレットを返すよう要求した。彼はブレスレットを外そうとするが、誤ってルーシーのスープ皿に落としてしまう。エイミーたちはルーシーに気付かれて発砲し、銃撃戦が勃発した。ルーシーが店から逃げ出したので、エイミーたちは手分けして捜すことにした。エイミーはルーシーと鉢合わせし、彼女が見合いをしていただけだと知った。彼女はルーシーに、「貴方をテーマに論文を書いていた」と打ち明けた。
エイミーが仲間の呼び掛けで目を逸らした隙に、ルーシーは姿を消した。ドミニクはエイミーに、「ルーシーと戦って殺されなかったのは貴方だけよ」と告げた。ルーシーはスカッドの車に乗り込み、エイミーに惹かれたことを話す。彼女は「向こうも私に気がある」と言い、DEBSの寮に赴いた。ルーシーはエイミーの部屋に忍び込み、「貴方に会いたくて来た」と言う。「一緒に来て」と誘われたエイミーは武器を向けるが、奪われたので要求を受け入れた。
寮を出たルーシーはジヤネットに見つかり、彼女も連れていくことにした。スカッドは3人を乗せて車を運転し、秘密のトンネルを通ってクラブへ赴いた。ルーシーはエイミーと2人になり、「質問したいんでしょ。論文の話を」と言う。エイミーが「女の貴方が犯罪社会で生きていくためには、冷静になるしか無かった。心理的な抑圧が重なって、恋から遠ざかった」と分析すると、ルーシーは「アンタに何が分かるの」と腹を立てた。エイミーが彼と別れたばかりだと明かすと、ルーシーは同情心を示した。
ルーシーから別れた原因を問われたエイミーは、「激しい恋がしたいの。身も心も捧げ尽くしたい」と答える。ルーシーは今までに1人も殺していないことを打ち明け、エイミーと楽しく会話を交わす。エイミーは彼女に惹かれ、「また会いたいわ」と口にする。ルーシーのキスを受け入れようとしたエイミーだが、気付いたジャネットの声に邪魔された。エイミーはルーシーに寮まで送ってもらい、「もう二度と会わないわ」と告げた。ルーシーは「また会いに来るわ」と返し、その場を去った。彼女はジャネットに「今夜のことがバレたら永遠に卒業できないわよ」と言い、内緒にするよう釘を刺した。
翌日、エイミーが登校すると、ルーシーと戦って生き延びたヒーローとして注目の的になっていた。ピートリーはカメラマンを伴って学校に現れ、エイミーと2ショット写真を撮影した。彼女は「ウチの学校の名前が上がるわ」と喜び、エイミーにルーシーとの対決について質問した。ピートリーはエイミーの個人ファイルを事前に読んでおり、「貴方はルーシーに一体感を持ち、彼女も貴方を憐れんだ。危険な共生思想よ。これで優位に立てる」と述べた。
ピートリーはエイミーに、捜査を指揮するチームリーダーへの昇格を通告した。リーダーのマックスが抗議すると、ピートリーは「エゴを捨てなさい」と一喝した。マックスはエイミーに腹を立て、謝罪を受けると「必ずルーシーを捕まえるのよ」と要求した。ルーシーたちが人質を取って銀行に立て籠もっているという連絡が入り、エイミーたちは出動した。マックスは金庫室に罠が仕掛けられていると確信するが、エイミーは「様子を見に行く」と告げた。
エイミーたちが金庫室に入ると、ドアが封鎖された。4人は閉じ込められ、エイミーだけがダストシュートでルーシーの元へ落とされた。エイミーが「貴方が好きよ。でも貴方みたいな人が嫌いなの」と言うと、ルーシーは「貴方の気持ちを確認したくて呼んだの」と告げる。その場からエイミーが去ろうとすると、ルーシーは「私が消えるわ。付き合えるわけないわよね」と口にする。エイミーは彼女を引き留め、キスを交わした。「一緒に来て」と誘われた彼女は、迷わずに承知した。
マックスたちはエイミーがルーシーに拉致されたと誤解し、捜索を開始した。ボビーも懸命に捜し回る中、ジャネットはスカッドとメールのやり取りをして事実を知った。エイミーはジャネットからのメールを無視し、ルーシーとの日々を楽しんだ。マックスはニノチカの密告電話でエイミーの居場所を知り、ドミニク&ジャネット&ボビーを引き連れて隠れ家へ向かう。エイミーとルーシーがベッドで一緒にいる姿を目にしたマックスたちは、幻滅して立ち去った。
エイミーが寮に戻るとピートリーが来ており、激怒して「反逆罪で世界の果てに送る」と通告した。マックスは「今回のことはアカデミーにとっても恥です」と言い、回避する方法があると告げる。彼女は「エイミーを最優秀DEBSに選び、生徒には救出したと話します」と語り、エイミーに視線を向けて「私の知ってるエイミーは仲間を裏切ったりしない」と口にする。彼女が「洗脳されたのね。惑わされたのね」と問い掛けると、エイミーは「ええ」と答えた。
マックスはエイミーに、卒業パーティーにはボビーと一緒に出席するよう指示した。ピートリーはマックスの提案を承諾し、エイミーには監視を付けることにした。ルーシーはエイミーの部屋に侵入し、戻って来るよう求めた。エイミーはボタンを押してマックスたちを呼び、ルーシーを追い出してもらった。スカッドは落ち込むルーシーを見て、「犯罪から足を洗うんだ。彼女を取り戻す」と告げる。ルーシーは今まで盗んだ金や絵画を全ての元の場所に戻し、スカッドは「第二段階へ移る」と言う…。

脚本&監督はアンジェラ・ロビンソン、製作はアンドレア・スパーリング&ジャスミン・コソヴィッチ、製作総指揮はラリー・ケナー、共同製作はステイシー・コディコウ&パット・スキャンロン、製作協力はアレクサンドラ・マルティネス・コンドレイク&ダグラス・サルキン、撮影はM・デヴィッド・ミューレン、美術はクリス・アンソニー・ミラー、編集はアンジェラ・ロビンソン、衣装はフランク・ヘルマー、視覚効果監修はデヴィッド・テクソン&マーク・トンプソン、音楽はスティーヴン・スターン、音楽監修はハワード・パール。
出演はサラ・フォスター、ジョーダナ・ブリュースター、ミーガン・グッド、デヴォン青木、マイケル・クラーク・ダンカン、ホランド・テイラー、ジル・リッチー、ジェフ・スタルツ、ジミー・シンプソン、ジェシカ・コーフィール、クリスティーナ・カーク、J・B・グーマンJr.、スクート・マクネイリー、ジーン・セント・ジェームズ、エリック・ディアボーン、ジェニー・モレン、エイミー・ガルシア、ロジャー・ファン、クリスタ・コンティー、ジーナ・サレミ、ケイシー・スティーヴンス、ジェニファー・カーペンター、エリック・バクニアース、ライアン・ゼイヴィア、マイケル・デヴィッド・マスターズ、アンソニー・セセレ他。


アンジェラ・ロビンソンが2003年に発表して数々の映画賞を獲得した11分の短編映画『D.E.B.S.』を、自らの監督&脚本で長編化した作品。
エイミーをサラ・フォスター、ルーシーをジョーダナ・ブリュースター、マックスをミーガン・グッド、ドミニクをデヴォン青木、フィップスをマイケル・クラーク・ダンカン、ピートリーをホランド・テイラー、ジャネットをジル・リッチー、ボビーをジェフ・スタルツ、スカッドをジミー・シンプソン、ニノチカをジェシカ・コーフィールが演じている。

始まって早々、「ルーシーが帰国した目的は恋人を作ること」ってのが明らかにされる。
その時点では、まだエイミーたちの技能を示さず、キャラクター紹介もせず、4人の関係性も見せず、スパイとしての活躍も描いていない。それなのに、もう「エイミーたちが犯罪組織と戦う」という図式が崩れているのだ。
そりゃあ帰国の目的が新恋人を作ることであろうと、ルーシーが犯罪組織のボスなのは確かだよ。でもレストランでニノチカと会うのは単なるデートだから、そこを探るのは無意味ってことになるわけで。
幾らコメディーであろうとも、それは種明かしが早すぎるわ。

この映画は女性同性愛者の芸術活動を支援するアメリカのNPO団体の「POWER UP」が制作しており、最初から「同性愛映画を作る」という企画だったことは明白だ。
つまり「スパイ映画に同性愛の要素を持ち込んだ」ってことではなく、レズビアンの恋愛映画を作る上で、その背景に「スパイ組織と犯罪組織」を用意したわけだ。
でも順番はともかく、まずは「若い女子グループが制服姿でスパイとして活躍する」という基本を描いてから、崩しに掛かるべきなのよ。
いきなりゼロの状態で崩してしまったら、「スパイ映画と見せ掛けてベンベン」という趣向としての面白さが死んじゃうのよ。

レストランのシーンでは、エイミーたちが天井から吊るされたブランコに乗って張り込んでいる。
だけどギャグとしては完全に外しているし、合成映像も安っぽい。
そこへボビーが来てエイミーと揉めるのも、まるで笑いに繋がっていない。ボビーのミスからのアクションも、そのネタ自体が外しているし、テンポが悪くてモタモタしている。
そもそも、「ルーシーとニノチカの密会が悪巧みではない」と分かった後で「悪党を倒す目的のアクション」を見せられても、無駄で愚かしい争いでしかないでしょ。

エイミーの前からルーシーが一瞬で姿を消すと、後には大量のダイヤが散らばっている。そんなケレン味のある演出も、完全に上滑りしている。
ひょっとすると小粋でオシャレなスパイ・コメディーを狙ったのかもしれないけど、まるで成功していない。
最大の原因は、スパイ映画としての土台を最初から壊しちゃってるからだ。
レズビアンの恋愛コメディーを前面に押し出した後で「トンネルの脇道を高速で突き抜けると秘密の場所」というネタをやられても、もうスパイ映画じゃないと分かっているので、何のワクワク感も無い。しかも、到着した場所は隠れ家でも何でもなく、ただ若い連中が踊って楽しんでいるだけのクラブだし。

かなり早い段階で、「これってDEBSじゃなくてルーシーを主人公にした方が、面白くなる可能性があったんじゃないか」と思ってしまう。
そう思ってしまう理由は簡単で、DEBSに魅力が無いからだ。
彼女たちは制服姿で活動していることが、まるで活用されていない。せっかく「学生」という設定なのに、それも大して意味が無い。
個人としてもグループとしても「女性スパイの魅力」に乏しく、掛け合いの面白さがあるわけでもない。
「ただ若いネーチャンたちがダラダラ喋っているだけで楽しい」と感じさせることの出来るケースもあるとは思うが、そういうのも無い。

エイミーとルーシーが両思いになると、ますます話はつまらなくなる。2人が一緒に行動するようになると、もはやトドメと言ってもいい。
レズビアンの恋愛要素を取り扱ったことが、この映画を完膚なきまでに叩き潰している。
ビアンの要素が絶対にダメってことじゃなくて、組み込む方法の問題だ。
エイミーとルーシーがラブラブで一緒に行動するようになると、エイミーはヒロイン、ルーシーはヴィランとしてのアイデンティティーを喪失するのよ。そこは保った上で、ビアンの要素を取り込むべきなのよ。

マックスたちは隠れ家へ乗り込み、エイミーが裏切ったことを知る。するとエイミーは寮へ戻るのだが、なぜだかサッパリ分からないぞ。
彼女は全てを捨てる覚悟で、ルーシーの元へ走ったんじゃないのか。マックスたちにバレたから戻るってのは、ワケが分からん。
むしろ、ずっとバレないで済むとでも思っていたのか。
あと、バレて寮に戻ったら処分を受けることは明白なので、余計に戻らない方がいいだろ。どう考えても、寮に戻る行動は理解し難い。

一方、マックスはエイミーの裏切りを知って幻滅したはずなのに、ピートリーが追放しようとすると彼女を擁護する。これも理解に苦しむ行動だ。
なぜエイミーを仲間として再び迎え入れる気になれるのか。
「DEBSは団結」と言うけど、まるで団結なんかしてなかっただろうに。そして、その団結を崩壊させたのがエイミーの裏切り行為だろうに。
あとさ、寮に戻ったエイミーがルーシーを追い払うのも、これまた「なんでだよ」と言いたくなるわ。そんなに簡単に諦められるぐらいなら、最初から仲間を裏切って彼女の元には走らないだろ。

(観賞日:2021年6月2日)

 

*ポンコツ映画愛護協会