『CUBE2』:2002、カナダ

アイゾンの社員証を首から下げた女性ベッキー・ヤングが気付くと、白い部屋の中にいた。そこは立方体の空間で、4面の壁と天井と床、それぞれにドアがあった。別の部屋にいる国防総省ハイテク部門担当のマグワイアは、ベッキーの悲鳴を聞いた。
立方体の空間をさまよっていた心理療法医ケイトは、経営コンサルタントのサイモンにナイフで脅された。誰かがドアを開いて覗き込むが、すぐに消えた。ケイトは隙を見て隣の部屋に逃げ込み、ドアが自動開閉するとサイモンの姿は消えていた。
ケイトが次の部屋に進むと、怯えている盲目女性サーシャと出会った。そこへエンジニアのジェリーが現れ、何時間も迷っていることを語った。どのドアを通っても、同じ部屋に辿り着いてしまうらしい。誰も、なぜ立方体にいるのかを分かっていなかった。
ケイト達は隣の部屋に行き、そこで首を吊っているマグワイアと助けようとしているゲームデザイナーのマックスを目撃する。そこにサイモンも現れ、皆で力を合わせてマグワイアを引き摺り下ろした。マグワイアの体には、何者かに拷問されたような形跡があった。そこへヘイリーという老女が来るが、彼女は痴呆のようだった。
サイモンはマグワイアを詰問するが、彼は「何も知らないが、暗号を解けば外に出られるだろう」と告げただけだった。その時、ケイト達は壁が何度も波打ち、近付いて来るのを察知した。彼女達は隣の部屋に逃げるが、マグワイアは居残って死亡した。
ジェリーは他の面々に、ドアのタッチセンサーは自分が開発した物だと告げた。彼は、他のことは知らないが、物質転送装置の実験という噂があることを話した。ヘイリーの言葉で、ジェリーは自分達がいる立方体がテッセラクト、4次元立方体だと気付いた。
ケイト達は重力の向きが違う部屋で、弁護士のジュリアと出会った。その部屋でジェリーは、自分の物と同じ時計を発見した。時計の裏に刻んだ文字までが、全く同じだった。隣の部屋に移動したケイト達は、そこで理論物理学の世界的権威ローゼンズバーグ博士の死体を発見した。その胸の部分には、幾つもの数字が書かれていた。
ヘイリーが漏らした言葉から、ジェリーとマックスは天才ハッカーのアレックス・トラスクがテッセラクトを作り出したのではないかと推理する。やがてケイト達は、かつてヘイリーが兵器製造会社アイゾンに勤務していたことを知る。サイモンはジェリーに、自分の本当の仕事が私立探偵であり、アイゾンの社員ベッキーを探していることを告げた。
テッセラクトを移動するケイト達は、あるドアの向こう側でサイモンが部屋のトラップに首を切断される様子を目撃する。その様子を見たジェリーは、テッセラクトにパラレルワールドを生じており、別の自分達が存在しているのではないかと推理する。
テッセラクトを移動するケイト達は、ある部屋で浮遊する立方体に襲われる。ジェリーがズタズタに切り裂かれ、サイモン達は隣の部屋に移動する。取り残されたサーシャを救うためにケイトは引き返すが、動きを止めると立方体は消滅した。
サイモンはヘイリーを拘束して詰問するが、部屋のトラップに襲われる。マックスとジュリアは先に隣の部屋へ逃亡し、サイモンもヘイリーを殺して逃げ出した。マックスとジュリアはサイモンから逃亡し、こうして一行は3つのグループに別れることになった…。

監督&撮影はアンジェイ・セクラ、原案はショーン・フッド、脚本はショーン・フッド&アーニー・バーバラッシュ&ローレン・マクローリン、製作はアーニー・バーバラッシュ、共同製作はスザンヌ・コルヴィン=グールディング、製作総指揮はマイケル・パセオネック&ピーター・ブロック&ベティー・オール&マーラ・マー、編集はマーク・サンダース、美術はダイアナ・マグナス、衣装はドナ・ウォン、視覚効果監修はアーロン・ワイントローブ、視覚効果プロデューサーはデニス・ベラーディー、音楽はノーマン・オレンスタイン。
出演はカリ・マチェット、ジェラント・ウィン・デイヴィス、ニール・クローン、バーバラ・ゴードン、マシュー・ファーガソン、グレース・リン・カン、リンゼイ・コーネル、ブルース・グレイ、フィリップ・エイキン、グリーア・ケント、ポール・ロビンス、アンドリュー・スコアラー。


低予算ながらヒットしたカナダ製SFサスペンス『CUBE』の続編。
ただし、前作の物語と直接的な繋がりは無いし、登場人物も全く違う。
スタッフも一部分は同じだが、監督や脚本家は違う。
メガホンを執ったのは、タランティーノ作品の撮影監督アンジェイ・セクラ。

前作は、キューブというワン・アイデアと美術の勝利だった。もはや何をやろうとも、続編を作れば必ず失敗するだろうとは思っていたが、予想通りだった。仮に前作と同じ監督と脚本家が携わったとしても、やはり失敗作に終わっただろうと思う。
単なる焼き直しになることを嫌って、前作と違うことをやろうとしたのであれば、その心意気は悪くない。しかし、この映画は単なる手抜きにしか見えない。全てにおいてレヴェル・ダウンしている。前作の焼き直しを避けようとする意識が強すぎたのか、前作で良かった部分のパワー・アップ、ヴァージョン・アップまで避けてしまっている。

前作にあったサイケデリックな色彩と奇妙な模様は、いずれも無くなっている。全て白で統一しているのは、面白味に欠ける。前作では、様々な色を使っていた。色を変えるだけでも、かなり印象は違ってくる。さらに、部屋の模様も、かなりシンプルになっている。
今回の立方体は前作と違い、テッセラクト、ハイパーキューブ、4次元立方体らしい。4次元が時間なのか何なのかは知らないが、それを映像で表現しようとした場合に、科学的なモノではなく、どこかファンタジーの世界のようなモノになってしまっている。さらに部屋のトラップまでもが、いかにもCGですという映像表現によって、科学的、機械的な仕掛けではなく、マジックのようなモノになっている。

前作でもキャラクター描写が大して重視されていたわけではないが、今回は軽視がエスカレート。その場その場で物語進行に必要なセリフを言わされたり、行動を取らされたりするだけ。特にヘイリーなどは、ボケているという設定をいいことに、「展開が息詰まったら、唐突にヒントを口にする」という、都合の良すぎる扱いになっている。
パラレル・ワールドを中盤で言い出すが、それなら、それ以前から伏線を張っておくべきだろう。パラレル・ワールドのヒントが出てくると、その場で謎解きが行われている。一方で、色々なことが起きても、その度に場当たり的な推理を述べるだけで、先へ進む中でその考えが正しいかどうかを立証しようとする作業は全くやる気配が無い。

闇雲に進むだけで観客の興味を引っ張れるのは、最初の内だけだ。ところが、この映画は終盤まで延々と、登場人物が深く考えずに適当に移動しているだけ。早い段階で暗号やら数字やらという話が出て来ているのに、法則探しを全くやろうとしない。
次の部屋に行く時に、ドアを開けた向こう側に何が待ち受けているのかというハラハラした感覚は無い。ドアを開けたらトラップが仕掛けてあるということは皆無で、みんな平然と入って行く。何の恐れも無く、サクサクと次の部屋へ移動できてしまう。

序盤でマグワイアが死んだ(それも自らの意志で)後、なかなか次の犠牲者が現れない。出口が見つからない不安はあろうとも、「キューブに殺されるかも」という身に迫る恐怖が無い。だから、安心して先へ進める。隣の部屋に行けば、とりあえずは安心なのだ。ドアを開けて入った瞬間に何かの仕掛けで殺されるとか、そういうトラップは全く無い。
重力の向きが変わる仕掛けがあろうと、パラレルワールドになっていようと、時間速度が違う部屋があろうと、それは命に危険を及ぼすトラップではない。それが謎解きに関わるわけでも、大きな危機、あるいは危機回避に繋がるわけでもない。ただ風変わりな仕掛けというだけだ。サスペンスのはずが、不思議の国のアリスになってしまっている。

後半に入り、ようやくジェリーという新たな犠牲者が生まれる。しかし、そこでグループを3つに分けてしまう。そもそもケイトが命を危険にさらしてまでサーシャを助ける行動が理解不能だが、それよりも、これら終盤に入って行く辺りでグループを分裂させるシナリオが理解不能だ。なぜ視点を1つにして、法則探し、出口探しに集中しないのか。
ハイパーキューブよりも、サイコパスになったサイモンの方が恐怖の対象になってしまっている。終盤に近付くに従って、キューブの法則や謎解きなど忘却の彼方へ行ってしまい、どんどん殺人鬼ホラーの方向へと引っ張られて行く。

そして、それまで謎解き作業など皆無だったのに、最後の最後になって、いきなり「60659は、6時59分になれば時間が限界に到達し、空間が崩壊するのだ」とピンと来てしまう。ってことは、ただ時間経過を待っていれば良かったということか。なんだ、そりゃ。
しかし、その答えだと、妙なことになる。ハイパーキューブには、パラレルワールドが生じているはずだ。そして、別の世界では、別の時間が動いている。だとすれば、その6時59分は、どの世界の6時59分なのだ。ある世界で6時59分に空間が崩壊したとしても、別の世界では6時59分になっていないわけだから、おかしなことになるぞ。

 

*ポンコツ映画愛護協会