『カウボーイ&エイリアン』:2011、アメリカ

荒野の真ん中で目を覚ました男は、自分が傷だらけで腹部を撃たれ、左腕に奇妙な腕輪が装着されていることに気付いた。男は腕輪を外そうとするが、どうやっても取ることが出来ない。足元に目をやると、一人の女性を撮影した写真が落ちていた。そこへ、ならず者のクレイボーン3兄弟が男の元に現れ、「アブソリューションの町まで、どれぐらいだ」と問い掛けた。男が黙っていると、3兄弟は彼が賞金首ではないかと考えて銃を向けた。しかし男は軽く返り討ちに遭わせ、3兄弟の衣装と所持品を奪い取った。
男が馬を奪ってアブソリューションへ向かうと、3兄弟の連れていた犬が付いて来た。男は馬を柵に繋ぎ、町に足を踏み入れた。彼は一軒の家へ上がり込み、誰もいない様子を確認した後、勝手に両手や顔を洗った。腹部の傷口を水で濡らそうとしていると、ショットガンを構えた住人が現れて「両手を上に挙げろ」と要求した。拳銃を奪われた男は、自分が記憶を失っていることを説明した。そこは教会で、住人はミーチャムという牧師だった。
男の傷口を見たミーチャムは、「変わってるな。焼いて塞いであるみたいだ」と言い、酒で応急手当てを施した。「ここは炭鉱町か」と尋ねる男に、彼は「そのはずだったが、みんな他の町へ移った。黄金(きん)が出ない」と告げた。ミーチャムは傷が銃痕ではないと感じ、「何でやられた?」と訊く。だが、男は何も覚えていなかった。発砲音が聞こえて来たので、ミーチャムは外に出た。すると町の支配者であるウッドロー・ダラーハイドの息子であるパーシーが、酒場に向けて銃を撃っていた。
酒場の主人であるドクが出て来て、「何してんだ」とパーシーに怒鳴った。妻のマリアが「誰もいないから、いいわよ」となだめるが、ドクは「良くない。酒代を踏み倒された上に、店をハチの巣にされちゃたまらん」と告げる。パーシーは「何て言った?ウチに対して感謝の気持ちは無いのか?親父の家畜が無いと、この町に金は入って来ないぜ」と言い放つ。「親父さんに失礼な態度を取るつもりは無い」とドクが釈明すると、パーシーは「だったら、なぜ俺から金を取る?」と不遜な態度を取った。
パーシーは「清算してやる」と言い、ドクを招き寄せる。「騒ぎを起こしたいわけじゃない」と喧嘩を避けようとするドクだが、パーシーは彼の眼鏡を地面に落とし、威嚇発砲した。ミーチャムが「ドクは悪気があったわけじゃない」と仲裁に入ると、パーシーは「この哀れな男のために金を出すんだ」と住民たちに告げ、ドクへの見舞金という名目で金を脅し取る。男はパーシーから金を渡すよう要求されるが、膝蹴りをお見舞いした。
激怒したパーシーは立ち去る男を撃とうとするが、拳銃を持った右手は別の方向に曲がり、近くにいた保安官代理を撃ってしまう。その様子を、エラという謎の女が見ていた。そこへ保安官のジョン・タガートが駆け付け、「今回はやり過ぎだ。逮捕する」とパーシーに通告した。ダラーハイドの手下であるナット・コロラドは「やめといた方がいいぜ」と警告するが、タガートは「今回は仕方が無い」と告げた。ナットはパーシーに「このことは親父さんに伝えておく」と言い、その場を後にした。
ダラーハイド牧場で牛の世話をしているエド、ミッキー、マーフィーの3人は、コーヒーを飲んで休憩を取っていた。酒を飲んで調子に乗ったマーフィーが川で排便しようとした時、閃光が走った。川に落下したマーフィーが慌てて陸に上がると、近くの土地が焼き尽くされ、エドとミッキーの姿が消えていた。一方、パーシーはタガートから「保安官代理を撃ったんだ。連邦保安官がサンタフェに連行する」と言われ、「もうすぐ親父が来るぞ。俺を釈放した方が身のためだ」と怯えながら脅した。
パーシーの言葉を聞き流していたタガートは、壁にあるジェイク・ロネガンという賞金首の手配書に目を留めた。すぐにタガートは、あの男がロネガンだと気付いた。一方、酒場ではドクが苛立ち、必死でなだめるマリアに八つ当たりしていた。「貴方は今のままでいいのよ」とマリアが優しく告げても、ドクは「子供扱いするな」と声を荒らげた。店に来たロネガンは、マリアにウイスキーを注文した。店内にはエラの姿もあった。彼女はロネガンに近付き、じっと凝視した。
「知り合いか?」とロネガンが尋ねると、エラは「いいえ」と答えた。エラは名乗った後、「その腕輪、どこで?」と触れようとする。ロネガンは左腕を引っ込めて、「俺のこと、何か知ってるのか」と尋ねた。するとエラは「何一つ覚えてないのね。探し物があるでしょ。私もよ」と言う。訳の分からないロネガンは、見つかるといいな」と冷たく突き放した。そこへタガートが現れ、ロネガンに同行を求めた。ロネガンは保安官助手たちを叩きのめし、奪ったライフルをタガートに向けた。
タガートの孫であるエメットは一部始終を外で見ており、酒場に駆け込んで「駄目!」とロネガンに叫んだ。隙を見せたロネガンを、エラが背後から殴って昏倒させた。遠のく意識の中で、写真の女が草むらに横たわっている姿がロネガンの脳裏をよぎった。彼が牢で意識を取り戻すと、隣に収監されているパーシーが「親父はゆっくり人を殺す。楽しみだなあ」と不敵に笑った。ロネガンは無言のまま、彼の首を掴んで鉄格子に押し付けた。パーシーは反動で後ろに倒れ込み、失神した。
ダラーハイドは牧場の牛が惨殺されていたため、マーフィーを犯人と決め付けて拷問する。マーフィーが身に降り掛かった出来事を説明しても、ダラーハイドは全く信じようとしなかった。ナットからパーシーが逮捕されたことを知らされたダラーハイドは、マーフィーを馬に引きずらせた後、町へ向かおうとする。ナットは「もっと人が必要です。ジェイク・ロネガンが町に戻ってきました」と告げた。
タガートはロネガンとパーシーを連邦保安官に引き渡すため、牢から出した。自分の罪を尋ねるロネガンに、タガートは「放火、暴行、傷害、強奪だ。先月も駅馬車を襲ってる。パット・ドーランやブル・マッケイドも一緒だった。つまり、奴らの幇助犯でもある」と告げて手配書を見せた。さらに彼は「殺人もだ。隣町で売春婦のアリスを殺した」と言い、ロネガンが荒野で拾った写真を渡した。そこに写っている女性が、そのアリスだった。「俺が殺したのか?」とロネガンが尋ねると、タガートは「こっちが訊きたい」と告げた。
タガートはロネガンを手錠で拘束し、助手たちは銃を構えて警戒態勢を取った。ロネガンとパーシーが馬車に乗せられたところへ、エラが現れる。彼女はロネガンに近付き、「貴方を行かせるわけには行かなかった。貴方がどこから来たのか知りたいの」と話し掛ける。するとロネガンは「俺もだ」と答えた。タガートはロネガンとパーシーの両腕を鎖で繋ぎ合わせた。タガートはエメットから「行かないで。この町は嫌いだ」と言われ、「父さんの仕事が軌道に乗ったら迎えが来る」と答える。エメットが「もう1年だ」と不満そうに告げると、彼は「来てくれるよ。私はよそへは行けない。娘の墓もあるしな」と述べた。
タガートが出発しようとしていると、ダラーハイドが大勢の手下を率いて駆け付けた。ダラーハイドは息子の返還を要求し、ロネガンの姿を確認して「あいつは俺の馬車から金貨を盗みやがった。渡してもらおう」とタガートに告げる。タガートは「サンタフェの判事に交渉するんだな」と告げ、引き渡しを拒否した。ダラーハイドはタガートを睨み、「渡さないなら力尽くでも奪うぞ」と言い放った。
その時、アブソリューションの人々は、謎の飛行物体が近付いて来るのを目撃した。ロネガンの装着されている腕輪は音を発し、光が点滅した。数機の飛行物体は町に飛来し、いきなり爆撃を開始した。宇宙船は爆撃するだけでなく、ワイヤーで住人たちを引っ張り上げる。マリアもワイヤーに捕獲され、宇宙船で連れ去られた。人々がパニック状態に陥る中、ロネガンはパーシーの手首を骨折させて鎖を外した。軒下に隠れていたエメットを連れ出そうとしたタガートは、ワイヤーで捕獲された。
エラはエメットに近付き、「捕まって」と告げる。エメットは「嫌だ」と拒否するが、エラは「いいから、手を出して」と恫喝し、彼を連れて屋内に避難した。ロネガンの腕輪は強い光を発し、謎の映像が浮かび上がった。ロネガンが腕輪を構えると、そこから衝撃波が発射されて馬車を壊した。ロネガンは馬車から脱出し、拳銃を手に取った。ダラーハイドはパーシーを連れ出すが、目の前で息子はワイヤーに捕獲される。呆然としているダラーハイドを、ナットが屋内に避難させた。
ロネガンは腕輪を構えて衝撃派を発射し、宇宙船の一機を撃ち落とした。住民たちがゆっくりと外へ出て来る中、変形していたロネガンの腕輪は元の状態に戻った。ロネガンとダラーハイドは拳銃を構え、墜落した宇宙船に近付くが、中には誰もいなかった。その時、ある家屋で女性の悲鳴が上がった。ロネガンたちが近付くと、屋内で何者かが住人を襲い、その場から逃亡した。ナットはダラーハイドに「あっちへ行きました」と言い、足跡が残っているのを教えた。それは住人を捕獲した宇宙船が去ったのと同じ方角だった。
ダラーハイドは「暗い内は追跡できない。馬を集めろ。明日の朝一番で出発する」と手下たちに告げた。彼はロネガンに「私に付いて来い。敵に通用するのはその武器だけだし、私に借りがあるだろう」と言う。ロネガンは「借りなんて無いね」と告げ、ダラーハイドと一発ずつパンチを入れ合って立ち去った。翌朝、ロネガンは1人で馬に乗り、足跡の方向を目指す。エラがその後を追った。ロネガンは彼女を取り押さえ、「何が狙いだ?」と凄んだ。エラは「私の家族も奴らにさらわれた。居所を突き止めたいの」と告げた。ロネガンは「俺に近付くな」と告げ、馬を走らせてその場を去った。
ダラーハイドが結成した追跡団には、ミーチャムやドクも加わる。ミーチャムは付いて来ようとするエメットに「お前は連れて行けない」と言うが、ダラーハイドの手下が「俺が面倒見てやる。馬の世話をさせりゃいい」と告げた。町に戻って来たエラも、追跡団に加わった。一方、ロネガンは荒野にポツンと建つ空き家を見つけ、中に入った。彼の脳裏に、アリスが「お帰り」と告げてキスをした時の出来事が浮かんだ。ロネガンが奪った金貨を見せると、彼女は「返して来なきゃ」と困惑した表情で告げた。アリスが「血にまみれたお金よ」と言うと、ロネガンは「この金で暮らしていけるだろ」と怒鳴った。その時、机の上に置いてあった金貨が激しく揺れて一ヶ所に集まり、それが溶けて天井に浮かび上がった。天井に穴が開き、アリスはワイヤーで連れ去られた。
追跡団が荒野を移動していると、ロネガンがやって来た。「奪った金貨はどうした?」とダラーハイドが言うと、彼は「まずはみんなを見つけてからだ」と告げた。夜になって雨が降り出す中、一行は逆さになった難破船を発見する。雨宿りするため、一行は船内に入った。ダラーハイドはネッドから「陸軍に応援を要請しては?」と提案され、「あんな奴らに任せられるか。かつて私は、戦地で奴らの指示を待って、大勢の部下を死なせてしまった」と告げた。
エラはロネガンの元へ行き、「貴方は自分で分かってる。思い出せるわ」と告げる。腕輪の光が点滅すると、エラは「あいつだ」と口にした。ダラーハイドの手下たちが休憩している部屋にエイリアンが現れ、全員を始末した。エメットはエイリアンに遭遇するが、そこへミーチャムが駆け付けた。ミーチャムがエイリアンに捻じ伏せられているところへ、ロネガンとエラが現れた。ロネガンが腕輪で攻撃しようとすると、エイリアンは逃亡した。ミーチャムは「みんなを助け出してくれ。神は君をお許しになる。過去よりも今が大切だ」とロネガンに告げ、息を引き取った。
翌朝、ロネガンたちはミーチャムを埋葬する。エメットは連れて来た犬が見当たらないことを気にするが、ダラーハイドは構わずに出発した。エイリアンの足跡を追っていた一行は、強盗団の襲撃を受けた。その強盗団を率いているのは、かつてロネガンの子分だったハントだった。ロネガンに気付いたハントは、「また会えると思わなかった」と歩み寄る。ロネガンは「うるさい」と言ってハントを殴り、仲間の数を尋ねる。「30人だ」とハントが答えると、ロネガンは「野営地まで案内しろ」と命じた。
ロネガンが野営地へ行くと、ドーランやマッケイドの姿もあった。ドーランはロネガンを睨み付け、「いい度胸だな。何も無かったように戻って来るとは」と凄んだ。ロネガンが無視して「みんな、銃を取れ。出発だ」と昔の仲間たちに告げると、ドーランは「お前の命令は受けない。これから馬車を襲撃する。こっちにも予定がある」と述べた。ドーランはエラを見つけて「お前か、ジェイクな足を洗う決意をさせた売女は」と言い、仲間たちに銃で彼女を狙わせた。
ドーランは「何かあったら女を撃て」と仲間に命じ、ロネガンから銃を奪って殴り掛かった。マッケイドがロネガンを捕まえ、ドーランが「金貨はどこだ?」と問い詰めた。ロネガンは足を洗う直前の仕事で手に入れた金貨を独り占めし、仲間を裏切っていたのだ。「金貨は悪魔に取られた。地獄に落ちたら返せって頼めよ」とロネガンが馬鹿にしたように笑うと、ドーランは頭突きを食らわせた。ドーランが「女を殺せ」と命じた直後、ロネガンの腕輪が起動した。ロネガンは腕輪を使い、ドーランを始末した。
ロネガンは強盗団に銃を置くよう命じ、追跡団と共に逃亡した。すぐに強盗団が追って来るが、そこへ宇宙船が飛来して爆撃を開始した。エラはワイヤーで釣り上げられ、ロネガンは彼女を連れ去った宇宙船を追う。ロネガンは宇宙船に飛び乗り、腕輪で攻撃する。宇宙船を撃墜した彼は、エラと共に川へ落下した。だが、そこへ操縦していたエイリアンが現れ、エラに襲い掛かった。ロネガンが腕輪で敵を倒すが、エラは腹部に致命傷を受けていた。ロネガンはエラを追跡団の元へ連れ帰るが、既に息を引き取っていた。
追跡団はチリカワ・アパッチ族に包囲され、彼らの集落に連行された。アパッチ族はエラの死体を火に投げ入れた。酋長のブラック・ナイフは、エイリアンの襲撃は白人のせいだと決め付けた。その時、炎の中からエラが蘇った。彼女は襲撃して来た連中とは別の場所から来たエイリアンであることを明かし、「この姿は貴方たちに溶け込むため」とロネガンに告げた。エラは追跡団とアパッチ族に、敵の狙いが黄金であること、捕まった人々が生きているとしても長くは無いことを話した。
エラは「彼らは弱点を探る斥候に過ぎない。生きて返せば仲間を連れて帰って来る。そうなったら終わり。私の一族も滅んだ。同じことを起こさないために来たの。みんなで協力しないと」と説いた。ブラック・ナイフが一族で協力することを承諾すると、ダラーハイドはエラに「何をするんだ?」と問い掛ける。エラは「奴らを見つけ出す。彼なら出来る」とロネガンを指差した。「何も思い出せないのに」とロネガンが困惑すると、ブラック・ナイフは記憶を取り戻させることを告げた。
アパッチ族の薬を飲んだロネガンは、自分とアリスがエイリアンに拉致されたことを思い出す。アリスは実験によって殺され、ロネガンはエイリアンの腕輪を盗んで逃げ出した。彼はエイリアンの居場所を思い出し、一行を崖地へ案内する。崖地の中には、奇妙な建物があった。「どうやって作ったんだ?」とダラーハイドが驚くと、エラは「乗って来たの。これは船よ。ここがてっぺんで、残りは地下。そうして黄金を掘るの」と説明した。
「ここに黄金があるのか。中から見えるのか」とダラーハイドが訊くと、エラは「奴らは明るいのが苦手。だから地下の薄暗い洞窟の中にいる」と告げた。宇宙船が飛来し、船の中へ入って行った。ドクが「近付くのは無理だ。少しでも近付いたら空飛ぶ機械に捕まる」と弱音を吐くと、ロネガンは「出入り口は地下にもある。俺はそこから脱出した」と述べた。ダラーハイドは「奴らをおびき出し、外に出す。その間にお前は中へ入り、みんなを助け出せ」とロネガンに告げた。
ロネガンが「上手く行くはずがない」と言うと、ブラック・ナイフはダラーハイドに望遠鏡を貸すよう求めた。崖地をじっくり眺めた彼は、「アパッチ族は山の戦士。高い場所から攻撃するのがいい」と口にした。「高い場所なんて無い。敵は空を飛べるんだ」とダラーハイドが吐き捨てていると、エメットが「ジェイクが行っちゃう」と言う。ロネガンは他の面々に相談せず、1人で強盗団の元へ向かった。彼は逃げ出そうとしているハントたちに「逃げても同じだ。いずれ奴らに捕まる」と言い、自分に協力するよう促した…。

監督はジョン・ファヴロー、原作はスコット・ミッチェル・ローゼンバーグ、映画原案はマーク・ファーガス&ホーク・オストビー&スティーヴ・オーデカーク、脚本はロベルト・オーチー&アレックス・カーツマン&デイモン・リンデロフ&マーク・ファーガス&ホーク・オストビー、製作はブライアン・グレイザー&ロン・ハワード&アレックス・カーツマン&ロベルト・オーチー&スコット・ミッチェル・ローゼンバーグ、共同製作はクリス・ウェイド&ダン・フォーシー&カレン・ギルクリスト&K・C・ホーデンフィールド、製作総指揮はスティーヴン・スピルバーグ&ジョン・ファヴロー&デニス・L・スチュワート&ボビー・コーエン&ランディー・グリーンバーグ&ライアン・カヴァナー、撮影はマシュー・リバティーク、編集はダン・レーベンタール&ジム・メイ、美術はスコット・チャンブリス、衣装はメアリー・ゾフレス、視覚効果監修はロジャー・ガイエット、特殊メイクアップ&アニマトロニクスはシェーン・マハン、音楽はハリー・グレッグソン=ウィリアムズ。
出演はダニエル・クレイグ、ハリソン・フォード、オリヴィア・ワイルド、サム・ロックウェル、アダム・ビーチ、ポール・ダノ、ノア・リンガー、キース・キャラダイン、クランシー・ブラウン、ウォルトン・ゴギンズ、アビゲイル・スペンサー、アナ・デ・ラ・レゲラ、ラウル・トルーヒオ、デヴィッド・オハラ、トロイ・ギルバート、チャド・ランドール、トビー・ハス、フリオ・セザール・セディージョ、ギャヴィン・グレイザー、ワイアット・ラッセル、バック・テイラー、マット・テイラー、クーパー・テイラー、クリス・ブラウニング、ブレンダン・ウェイン他。


2006年に発表された同名グラフィック・ノベルを基にした作品。
監督は『アイアンマン』『アイアンマン2』のジョン・ファヴロー。
ロネガンをダニエル・クレイグ、ダラーハイドをハリソン・フォード、エラをオリヴィア・ワイルド、ドクをサム・ロックウェル、ナットをアダム・ビーチ、パーシーをポール・ダノ、エメットをノア・リンガー、タガートをキース・キャラダイン、ミーチャムをクランシー・ブラウン、ハントをウォルトン・ゴギンズ、アリスをアビゲイル・スペンサー、マリアをアナ・デ・ラ・レゲラ、ブラック・ナイフをラウル・トルーヒオ、ドーランをデヴィッド・オハラが演じている。

脚本に大勢の人間が携わっている映画はヤバいってのが、私の持論だ(携わった全ての人が表記されるわけではないので、クレジットが1人や2人なら大丈夫ってわけでもない)。
それは、最初の脚本ではOKが出ずに(もしくは企画が頓挫し)、大勢の人々によって何度も改変されたということだ。
1人が何度も推敲するのはともかく、大勢が手を加えるのは、あまり良い結果に繋がるケースが多くないと私は思っている。
この映画の場合、原案と脚本で表記されるのが6名、他にも複数の人間が関わっており、ヤバい部類に入る。

色んな脚本家が手を加えまくっているはずなのに、結果としては、「西部劇の世界にエイリアンが襲来する」というアイデアの段階で完全に思考が停止している。
どうやら原作とは全く違う内容になっているらしいんだけど、余計な手を加えるよりも、なるべく原作に忠実なシナリオに仕上げるってことを最優先で考えた方が良かったんじゃないのかな。
ワシは未読だけど、スティーヴン・スピルバーグは「なぜ映画化されていなかったのか不思議なほど素晴らしい原作」と絶賛したらしいし。
っていうか、そんなに絶賛したのなら、なぜ原作と全く内容の違うシナリオでOKしてるのかって話だが。

開始から30分強が過ぎて宇宙船が襲撃して来るまでの時間は、ごく普通の西部劇として進行する。そこまでの時間帯に、SF的な要素は全く無い。
ロネガンが装着されている腕輪は西部劇の世界に似つかわしくないが、だからと言って、そこにSF的要素を感じるわけではない。
もっと問題なのは、じゃあ純然たる西部劇として面白いのかというと、大して面白くないのだ。
ここからSFに入って行くという予兆で期待させるでもなく、純然たる西部劇としての魅力も無いのでは、導入部で観客の気持ちを掴むことが難しい。

やはり、もっと早い段階から、「これはSFと西部劇の混合作品ですよ、後からエイリアンが襲って来ますよ」ということを匂わせるネタを分かりやすく散りばめておいた方が良かったのではないか。
どうせ本作品を観賞する観客の大半は、どんな映画なのかという概要を理解しいるはずなんだし。
何しろ、タイトルからして『カウボーイ&エイリアン』なんだからさ。
ってことは、エイリアンが襲ってくることを隠しておいても、まるで意味は無いわけで。

宇宙船が登場して、「長らく退屈な時間を強いられたけど、ようやく盛り上がって来るのか」と思いきや、そこからも相変わらず低調。
まず、宇宙船の襲撃方法にゲンナリ。爆撃の一方、住人を捕まえる方法は「ワイヤーを垂らして引っ張り上げる」というアナクロな方法。
光線で吸い上げるとか、ワープシステムを使うとか、もうちょっと他の手は無かったのか。
そりゃあ、ワイヤーは手動じゃなくて高度なテクノロジーで操作されているんだろうけど、でも見た目は「ワイヤーで釣り上げる」ってことだからなあ。
それを「喜劇テイスト」ということで使っているのなら、別にいいと思うのよ。でも、マジに描かれちゃうと、ただ陳腐なだけなのよね。

腕輪の奇妙な動きに気付いたロネガンの反応も引っ掛かる。
まず、なんで馬車の底に向かって腕輪を構えようと思ったのか。
構えるってことは、「そこから何かが発射される」と予感したからだよね。でも、そう予感する理由が全く分からない。「そこから何かが発射されるのを前に見た」というフラッシュバックが入るわけでもないし。
で、馬車から出た彼は泰然自若とした態度を取り、腕輪を構えて宇宙船を撃ち落とすのだが、それも違和感があるなあ。
そこは、「腕輪から衝撃派が発射されて馬車が壊れたのでビックリする。困惑しながらも宇宙船に向かって腕輪を構えたら、また衝撃波が発射されて撃ち落としたのでビックリ」という感じでもいいんじゃないかと。
この男が落ち着き払っているのは、映画をつまらなくさせている原因の1つだと思う。

ロネガンの落ち着きぶりもそうなんだけど、どのキャラクターも、総じてクソ真面目なのよね。例えるなら、全員が『クイック&デッド』のシャロン・ストーン状態。
まあ脚本や演出もマジなんだから、そりゃあ出演者はマジで芝居をやらにゃあ仕方がないわな。でも、これって、設定からしても、おバカなノリでやった方がいいと思うんだけどなあ。
もう『カウボーイ&エイリアン』というタイトルからして(原題も『Cowboys & Aliens』)、おバカっちな匂いがプンプンするでしょ。
それで「シリアス一辺倒、荒唐無稽なノリを完全に排除した重厚な作品」として描くのって、なんか違うんじゃないかと。

ひょっとするとジョン・ファヴローは、これがB級魂に溢れたバカ映画であることを頭で理解していたかもしれない。でも、スピルバーグ御大の目が光っている中で、縮こまっちゃったのかもしれない。
『ポルターガイスト』の時ほどではないにしても、スピルバーグは演出の方向性に関して口を出したようだし。
いや、別にさ、『ワイルド・ワイルド・ウエスト』みたいな、お気楽コメディーにしろってことじゃないのよ。
ただ、『宇宙戦争』みたいなノリで描くのは、いかがなものかってことよ。

宇宙船の襲撃シーンが終わった後、追跡団が捜索に向かう行程に入ると、しばらくは宇宙船もエイリアンも登場しないので、また普通の 西部劇になる。
ダラーハイドがエメットに彼が気に入ったナイフをプレゼントするとか、ミーチャムがドクに銃の撃ち方を教えるとか、そういうのが描かれ、襲撃シーン終了から25分ほど経過した頃に、エイリアンが登場する。そしてエイリアンの襲撃シーンが終わると、また普通の西部劇がしばらく続く。
エイリアンの船を見つけても、攻撃を仕掛けるまでには、しばらく時間が掛かっている。
とにかく、SF要素の薄いことと言ったら。
あと、そんな風にダラダラと無駄に時間を費やすから、119分も掛かるのよ。
100分程度で終わることの出来る話だと思うぞ、これって(しかもワシが見たのはロング・ヴァージョンなので135分もあり、さらに冗長)。

エラは中盤で死ぬのだが、直後にあっさりと復活する。死の余韻に浸っている暇も無い。で、復活した彼女はエイリアンであることを話し、「言って欲しかった」と告げるロネガンに「この体を治せるかどうか分からなかったから」と釈明する。
でも、意味が分からない。
その体を治せるかどうか分からなかったら、なぜ「だから正体を明かさない」ってことになるんだろう。少なくともロネガンには、早い段階で明かせばいいでしょ。
あと、エラは序盤から、ロネガンに対してイカれた女みたいな発言を繰り返していたんだけど、「実は宇宙人」ということが分かっても、そのイカれた発言に関して「あれは、そういうことだったのか」という納得が得られないぞ。
意味ありげに「貴方は思い出せる」とか「分からないの?」とか言わず、アブダクトされたのだと教えてやればいいのに。

これって結局、普通の西部劇における盗賊をエイリアンに変えただけなんだよね。主人公たちの戦う相手が、強盗団かエイリアンかという違いだけだ。
ただし、だから完全にダメというわけじゃない。
そこを変えただけというシンプルなアイデアで勝負するのなら、いかにエイリアンとの戦いを面白く見せるか、魅力的に飾り付けるかというのが重要になる。そこが著しく不足しているのだ。
まず前述したように、エイリアンや宇宙船が登場する時間が短い。そして時間が短いだけでなく、エイリアンや宇宙船が凡庸。
もちろん、西部劇にエイリアンや宇宙船が登場するのは珍しいが、「SF映画におけるエイリアンや宇宙船」として捉えた場合には、「他の映画で何度もしゃぶって、もう味がしなくなったモノを、そのまんま持って来た」という感じだ。

ロネガンたちとエイリアンの戦いは、「圧倒的な戦闘力を持つエイリアンに対して、人間が知恵と工夫で立ち向かう」という図式になることを予想していたら、まるで違っていた。ロネガンたちが宇宙船を襲撃する作戦を開始すると、なぜかエイリアン側が戦闘力を落としてくれるのだ。
まず、人間側が宇宙船に宇宙船に登ってダイナマイトを仕掛けるのだが、それが爆発するまでエイリアンは全く気付かない。
そして外に出て来ると、何の統制も無くて、ただバラバラに戦うだけ。
エイリアンは高度なテクノロジーを持っているのに、それと整合性が取れないぐらい、オツムが悪いんだよな。

しかもエイリアンは腕輪の武器があるのに、ほとんど使わず、素手で捕まえて殺そうとする。高いテクノロジーに頼らず、自分たちの腕力で制圧しようとする。
っていうか、宇宙船を使えよ。
で、ダラーハイドは「敵を倒せるのは腕輪だけ」ということでロネガンに同行を求めたのだが、いざ総力戦が開始されると、人間側はライフルや槍や弓矢しか持っていないのに、それで普通にエイリアンを倒すことが出来ている。
しまいには、エメットがナイフ一撃でエイリアンを殺すシーンまである。
パワー・パランスがメチャクチャだ。

あと、エラが「奴らは明るいのが苦手。だから地下の薄暗い洞窟の中にいる」と説明していたのに、エイリアンは何の躊躇も無く外に出て来てるぞ。
しかも光に弱いなら防護服を着用すればいいのに、裸のままだ。
色んな脚本家が手を加えている間に、用意された設定を忘れてしまったのか。
それとも、ひょっとして「明るいのが苦手だから、外での戦いでは人間が勝てるぐらい弱体化している」という設定だったりするのか。
だとしても、それは見ているだけだと全く分からんぞ。

(観賞日:2013年10月27日)


2011年度 HIHOはくさいアワード:7位

 

*ポンコツ映画愛護協会