『コンボイ』:1978、アメリカ
アリゾナ、正午。トラック運転手のラバー・ダックは、ジャガーに乗った挑発的な女メリッサと競り合ってスピードを出し過ぎ、パトカーに止められてしまった。ラバー・ダックは「あの女が下半身丸出しだった」と告げて、保安官にメリッサを追わせた。
ラバー・ダックは同じトラッカーのピッグ・ペン&スパイダー・マイクと合流し、CBラジオの通信相手に挑発される形でスピードを上げた。だが、それは悪徳保安官ライルの仕掛けた罠だった。ラバー・ダック達は、ライルに金をむしり取られてしまった。
ラバー・ダックは仲間2人を連れ、馴染みのウェイトレス、ヴァイオレットが働く食堂に出向いた。店に入ると、そこにはメリッサの姿があった。店の外にライルの車が現れたため、ピッグ・ペン&スパイダー・マイクはCBラジオを使って彼をコケにした。
食堂に入ってきたライルは、ただ座っていただけのマイクを逮捕すると言い出した。怒ったマイクがライルを殴り倒し、それをきっかけに他の警官達とトラッカーの間で乱闘が始まってしまう。トラッカー達は警官を全てKOし、パトカーを叩き壊した。
ラバー・ダックがニューメキシコへ向かおうとすると、他のトラッカー達も同行すると言い出した。メリッサもラバー・ダックのトラックに同乗し、一行は食堂を出発した。ライルはトラッカーを追跡するが、ダックのトラックをかわそうとして事故を起こしてしまう。
ライルは応援を要請し、駆け付けた警官のブックマンと共に、再びラバーダック達のコンボイを追跡する。やがてコンボイは、ニューメキシコに入った。同じ頃、ライルの要請を受けたステイシー・ラヴ署長と部下達も、コンボイの追跡を開始する。
コンボイには、ビッグ・ナスティを始めとする3人のトラッカー達、さらにはスローン牧師と信者達も加わった。そこへライルがFBIのハミルトン捜査官と共にヘリで現れ、道路を封鎖したことをコンボイに告げる。ライルは銃撃による通行阻止を宣告するが、ラバー・ダックがトラックに化学薬品を積んでいると明かしたため、道路封鎖は解かれる。
コンボイが走行を続ける中、参加車は次第に増えていった。行く先々で、彼らは住民の歓迎を受けた。取材に現れたTVクルーは、上院選を目指す州知事がラバー・ダックとの会談を申し出たことを告げた。騒動に途惑うラバー・ダックは、会談に応じようとする。しかしコンボイを離れたマイクが逮捕されたと知り、ラバー・ダック達は救出に向かう…。監督はサム・ペキンパー、based on the songはC・W・マッコール、映画原案&脚本はB・W・L・ノートン、製作はロバート・M・シャーマン、製作総指揮はマイケル・ディーリー&バリー・スパイキングス、撮影はハリー・ストラドリングJr.、編集監修はグレーム・クリフォード、美術はフェルナンド・カーレル、音楽はチップ・デイヴィス、監修&作詞はビル・フリーズ。
出演はクリス・クリストファーソン、アリ・マッグロー、アーネスト・ボーグナイン、バート・ヤング、マッジ・シンクレア、フランクリン・アジェイ、ブライアン・ディヴィース、シーモア・カッセル、ウォルター・ケリー、キャシー・イエーツ、J・D・ケイン、ビリー・E・ヒューズ、ホイッティー・ヒューズ、ビルメクーンツ、トーマス・ハフ、ラリー・スポールディング、ランディー・ブレイディー他。
C・W・マッコールの歌から着想を得て作られた映画。
ラバー・ダックをクリス・クリストファーソン、メリッサをアリ・マッグロー、ライル保安官をアーネスト・ボーグナイン、ピッグ・ペンをバート・ヤング、スパイダー・マイクをフランクリン・アジェイ、州知事をシーモア・カッセル、ハミルトン捜査官をウォルター・ケリーが演じている。
この映画、どうやらサム・ペキンパー監督は撮影を進める内にイヤになってしまったらしく、途中で投げ出すような形となっている。なお、セカンド・ユニット監督として、ハミルトン役のウォルター・ケリーと俳優ジェームズ・コバーンの名前がクレジットされている。簡単に言うと、これはトラックが走り続ける映画だ。もう少し詳しく言うと、トラッカー達がトラックを走らせる映画だ。トラッカー達は、ひたすら道路を走り続ける。時にはジョークをかましながらノンビリと運転し、時にはスピードを上げて運転する。ただし、ずっと走っていると疲れるので、少しだけ休憩は入る。でも、またすぐに走り始める。
とにかく走り続けるわけだが、レース映画のように競争の醍醐味があるわけではない。個性的なキャラクターを揃えるとか、それぞれに特徴を持った車の能力を見せるとか、そういうことでもない。カースタントのシーンも、忘れた頃に出てくる程度。つまりは、ただダラダラとトラックが走り続けるだけの映画なのだ。物語はものすご〜く薄い。というか、無いに等しい。それでもアクションが充実していれば「頭をカラッポにして楽しむ」ということも可能だが、それも無理。頭をカラッポにしても、退屈なだけだ。
一応は警察が追っているという設定なのだが、すぐに近くにパトカー軍団がいて、スピードを上げないと逃げ切れないという感じではない。だから、ラバー・ダック達が勝手にスピードを出しているだけに見える。そもそも、走り続ける目的は何も無いわけだし。それなりに、カーアクション、カースタントのシーンを用意してある。ただし、「パトカーが接近しているわけでもないのに、勝手にスピードを落とさないままカーブを曲がろうとしたら転倒」とか、「つまらないことで運転を誤ったダックのトラックをかわそうとして、ライルの車が弾き出される」とか、迫力よりもバカっぽさばかりが目立つモノばかりだ。
しかも、カーアクションの大半は、流れの上に乗った「意味のあるシーン」ではなく、適当に放り込んでいるという印象が強い。そんなカーアクションを、サム・ペキンパーは得意のスローモーションを多用して演出しているのだが、スリルも何もあったものではない。話が進むに連れて、ライルの悪徳っぷりよりも、ラバー・ダック達のチンピラとしての振る舞いの方が目立つようになっていく。コンボイは悪徳保安官に立ち向かっているとか、そういうことではなく、ただのタチの悪いチンピラ集団に過ぎない。
ラバー・ダックは、マイクをリンチしたのは他の保安官なのに、ライルを恨んで暴走する。ライルが犯人じゃないと知らされても、「そんなの関係無い」と言い切る。ピッグ・ペンは、無関係の人をひき殺そうとする。ねっ、完全にチンピラ集団でしょ、こいつら。
ライルは悪徳かもしれないが、明らかにラバー・ダックの方が先に過剰な行動を起こしている。オツムが阿呆すぎるから、暴力的な行動に出るという感じ。男の美学とか、かっこいい男臭さとか、そんなの皆無。ただのデタラメな暴れん坊である。
1978年スティンカーズ最悪映画賞<エクスパンション・プロジェクト後>
受賞:【最悪の助演男優】部門[バート・ヤング]
受賞:【最も苛立たしいインチキな言葉づかい(男性)】部門[バート・ヤング]