『コンスタンティン』:2005、アメリカ&ドイツ

聖なる槍を手にした者は世界の運命を握る。だが第二次世界大戦終結後、そのありかは不明となっていた。メキシコで地面を掘っていた 2人組の男の内、1人の男が布に包まれた聖なる槍を発見した。急に駆け出した男は、暴走してきた車と衝突して動かなくなった。直後、 男の手首に紋章が浮かび上がった。その途端、男はガバッと起き上がり、槍を持って勢い良く走り出した。
ロサンゼルス。ある少女の悪魔祓いを依頼されたヘネシー神父だが、彼の手には負えないケースだった。そこでヘネシーは、探偵ジョン・ コンスタンティンに助けを求めた。助手チャズの運転する車で現場に赴いたコンスタンティンは、大きな姿見を使って悪魔祓いを成功 させた。だが、彼は今回の一件が今までと異なっていることに気付いた。今回の悪魔は、こちらの世界に来ようとしていたのだ。少女の 部屋を去ろうとした時、彼は聖なる槍が描かれた絵を発見した。
ヘビースモーカーのコンスタンティンは吐血し、病院で診察を受けた。肺ガンで余命が長くないと宣告されたコンスタンティンだが、 タバコをやめようとはしなかった。ある病院で、入院患者イザベル・ドッドソンが屋上から飛び降りて死んだ。イザベルの双子の姉である ロサンゼルス市警察の刑事アンジェラは、妹は自殺など絶対にしないと考えた。
コンスタンティンは仲間のビーマンに悪魔祓いの一件を説明し、文献を当たって前例が無いかどうか調べてくれと依頼した。教会を訪れた アンジェラは妹の葬儀を求めるが、自殺なので無理だと断られた。同じ教会に赴いたコンスタンティンはガブリエルと会い、寿命を 延ばしてくれ、天国へ行かせてくれと要求した。しかしガブリエルは「信仰心が無いので無理」「能力を利己的に使って無駄にしている」 と冷たく接した。コンスタンティンは過去に自殺を図っているため、このまま死ねば地獄へ行くことになる。
夜の街に出たコンスタンティンは悪魔に襲われるが、何とか追い払った。元祈祷師のパパ・ミッドナイトが営む酒場へ赴いた彼の前に、 バルサザールが現れた。挑発的な態度を取るバルサザールに怒りを覚えるコンスタンティンだが、中立的立場を主張するミッドナイトが 店での争いを制止した。アンジェラはコンスタンティンの元を訪れ、敬虔なカトリックだった妹は自殺などしないと語る。彼女は妹が何者 かに洗脳されて飛び降りたと推察していたが、コンスタンティンの無礼な態度に怒って立ち去った。
悪魔の出現に気付いたコンスタンティンは、アンジェラを追い掛けた。コンスタンティンは「神とサタンが人間を使って賭けをしている」 と言うが、アンジェラは全く信じなかった。そこへ悪魔が出現するが、コンスタンティンが退治した。コンスタンティンはアンジェラの 部屋から地獄へ魂を移動させ、そこにいるイザベルの姿を確認した。やはりイザベルは自殺したのだ。
コンスタンティンはアンジェラに、子供の頃から見てはいけないものを目にする強い霊力を持っていたことを語った。さらに彼は、過去に 自殺未遂を起こしたことを明かした後、ハーフブリードという存在について説明する。ハーフブリードとは、天使と人間、もしくは悪魔と 人間の中性的な存在だ。外観は人間と全く変わらず、人に混じって暮らしているが、コンスタンティンには見分けることが出来る。そこで 彼は、ルール違反を犯した悪魔のハーフブリードを地獄へ送り返し、神の恩赦を得て天界へ行こうとしていた。
ヘネシーがコンビニで殺害され、掌に紋章が残されていた。コンスタンティンはアンジェラを連れてイザベルの病室へ行き、双子だけに 分かるような手掛かりが残っていないか確かめるよう求めた。ガラス窓を調べたアンジェラは、コリント書17章第1節という文字を発見 した。コリント書に17章など無い。だが、地獄の聖書では17章が存在していた。
コンスタンティンはビーマンに電話を掛け、17章第1節の内容を確認してもらった。そこには、サタンの息子マモンが父の支配に耐えかね 、自分の王国を作ろうとしていると記されていた。本来ならば、悪魔が人間界に来ることは不可能だ。しかし強い霊力を持つ者に憑依し、 さらに神の助けがあれば可能だと17章第1節には書かれていた。コンスタンティンとアンジェラがビーマンの隠れ家に赴くと、彼は何者か に殺害されていた…。

監督はフランシス・ローレンス、原案はケヴィン・ ブロドビン、脚本はケヴィン・ブロドビン&フランク・カペロ、製作はローレン・シュラー・ドナー&ベンジャミン・メルニカー& マイケル・E・ウスラン&アーウィン・ストフ&ロレンツォ・ディボナヴェンチュラ&アキヴァ・ゴールズマン、製作協力はジョシュ ・マクラグレン&シェリルアン・マーティン、製作総指揮はギルバート ・アドラー&マイケル・アギラー、撮影はフィリップ・ルスロ、美術はナオミ・ショーハン、編集はウェイン・ワーマン、衣装はルイーズ ・フロッグレー、視覚効果監修はマイケル・フィンク、音楽はブライアン・タイラー&クラウス・バデルト。
出演はキアヌ・リーヴス、レイチェル・ワイズ、シャイア・ラブーフ、ピーター・ストーメア、ティルダ・スウィントン、プルイット・ テイラー・ヴィンス、ジャイモン・フンスー、ギャヴィン・ロズデイル、マックス・ベイカー、フランシス・グイナン、ホセ・ズニーガ、 ジェシー・ラミレス、ラリー・セダー、エイプリル・グレイス、スザンヌ・ワン、ジョアンナ・トリアス、アリス・ロー、ニコラス・ ダウンズ、タノアイ・リード、クイン・バニエル他。


DCコミックス社の大人向けレーベル「ヴァーティゴ」のグラフィック・ノベル『ヘルブレイザー』を基にした作品。
コンスタンティンをキアヌ・リーヴス、アンジェラ&イザベルをレイチェル・ワイズ、チャズをシャイア・ラブーフ、サタンをピーター・ ストーメア、ガブリエルをティルダ・スウィントン、ヘネシーをプルイット・テイラー・ヴィンス、ミッドナイトをジャイモン・フンスー 、バルサザールをロックバンド「ブッシュ」のギャヴィン・ロスデイル、ビーマンをマックス・ベイカーが演じている。
監督はミュージック・フィルムの世界で活躍してきたフランシス・ローレンスで、これが映画デビュー作。

元々、ジョン・コンスタンティンはアラン・ムーアのコミック『スワンプ・シング』の脇役として登場したキャラクターだ。
しかしアラン・ムーアは『フロム・ヘル』や『リーグ・オブ・レジェンド/時空を超えた戦い』における経験で「もう自身の作品の映画化 に関わりたくない」と嫌気が差したらしく、クレジットされることを拒否した(原案料も受け取っていない)。
原作は『ヘルブレイザー』だが、映画版と共通しているキャラクターはコンスタンティン、チャズ、ミッドナイト、ガブリエルの4人だけ で、後のキャラクターは全て映画版オリジナルらしい(もう1人、ミシェル・モナハン演じるエリーという女性もコミックと共通のキャラ だが、編集でカットされてしまった)。
で、主役のコンスタンティンは利己主義者という性格設定らしいんだが、そういう風には全く見えないぞ。
最初から「突っ張っているけど根はいい奴」にしか見えない。

冒頭、少女の悪魔祓いをしようとしたコンスタンティンは「どうなってるんだ?」と言うが、こっちが「どうなってるんだ?」と言いたく なる。
だって、何に対してコンスタンティンが疑問を抱いたのか、サッパリ分からないんだから。
「通常ならこうなる」という基本の形が提示されていないので、それと比較して今回は何か違うということが、見ただけでは全く分からん のよ。
それ単独で「何かが変だ」と観客に分からせるような描写があるわけでもないし。

コンスタンティンがガブリエルを訪問する場面で、初めて彼が過去に自殺を試みたこと、今のままでは地獄へ送られることが 示される。
だが、それは主役の基本設定を説明するタイミングとしてイマイチだし、また軽いとも感じる。
ガブリエルのセリフだけで簡単に処理すというのは、いかがなものか。
そこは回想も挿入しつつ、もう少し厚みを持たせるべきだろう。コンスタンティンの抱える不安を示し、ある意味ではアイデンティティー に関わる重要なポイントのはずなんだから。

この映画は、かなり分かりにくい。というか、「伝わりにくい」と表現した方が適切だろう。
設定がややこしいからとか、キリスト教の教義に関わる内容なので宗教的知識の無い人には馴染みが薄いとか、そういう問題では ない。
単純に伝え方、説明が下手なのだ。
やたら情報を隠したり出し惜しみして引っ張ったりしている。ミステリアスにしすぎだ。
土台が霧の中で良く見えないのに、どんどん上に建物を積み上げていくような感じ。
だから足元がフワフワして不安定なのだ。

なんせコンスタンティンがハーフブリードを地獄へ送り返していることさえ分からないまま、どんどん話が進んでいく。
ガブリエルやバルサザールがハーフブリードであることも、やはり分からないまま話が進んでいくことになる。
ミッドナイトが何者なのかも説明不足だ。
ガブリエルにコンスタンティンが陳情しているってことは、ハーフブリードは天界における強い影響力を持っているということになるのか 。それともガブリエルだけは大天使だから(それも断定は出来ないが)、特別なのか。

基本設定の伝え方が下手なのと同時に、ストーリーテリングも上手くない。
例えば、コンスタンティンがアンジェラから依頼を受けるシーン。怒ったアンジェラが立ち去り、それをコンスタンティンが追い掛けると いう手順は、スンナリと受け入れ難い。
アンジェラが去った後、コンスタンティンは窓の外を悪魔が通過したのに気付くが、それと彼女を追い掛ける行為がスムーズに 繋がらない。
他にも、少しずつではあるが、変な間を取ったり、無駄な寄り道をしたり、そういうことがギクシャク感を生んでいる。

コンスタンティンが地獄へワープした時、そこにいたイザベルは彼を見て「コンスタンティン」と言う。
なぜ初対面のはずなのに、名前を知っているのか。そして、相手が自分の名を知っていることに、なぜコンスタンティンは 驚かないのか。
ヘネシーやビーマンが殺害されたのは、どういう理由なのか。別に放っておいても、どうってことない気がするが。
結局、イザベルが地獄行きになったことには何の意味があったのか。そんなことしなくてもマモンの計画は成立したんじゃないか。

イザベルが地獄へ行ったことを確認した後、コンスタンティンはアンジェラに自分が特殊能力を持っていること、自殺未遂を起こしたこと、 天界へ行くための点数稼ぎとして悪魔祓いをしていること、ハーフブリードという存在のことを一気に説明する。
タイミングとして、それは遅すぎるんじゃないのかと。
それら全ての情報を、そこまで引っ張るメリットを感じない。

冒頭で聖なる槍についての記述があるんだが、この仕掛けが全く活用されていない。
一応、後半になって「マモン復活に聖なる槍が使用される」というところで使われているが、別に槍が無くても普通に成立してしまうん だよね。マモンが槍の入手に必死になっているわけでもないし、コンスタンティンが槍を守ったり奪ったりするために行動するわけでも ないので。
意味が無いといえば、チャズの存在も意味が無いなあ。
終盤で無駄死にするためだけに出てきたようなモンだな。

サタンは終盤になって「真打ち登場」とばかりに登場するんだが、それが単なるオッサンに過ぎないので、ほとんどギャグのようになって しまう。
そこまで緊張感を煽って盛り上げてきたのに、その場面で脱力感は違うでしょ。
そういう脅威や凄味が全く無いキャラクター造形にするのであれば、前半の内にサタンを登場させておいて、観客を慣らしておく べきだ。
あと肝心なクライマックスでコンスタンテインは全くの無力で、サタンが出てきて全て解決ってのは、話の作りとしてどうなのよ。

(観賞日:2008年5月25日)

 

*ポンコツ映画愛護協会