『コロンビアーナ』:2011、フランス

1992年、コロンビア。マフィアのボスであるドン・ルイスは、幹部のファビオと会っていた。ファビオが屋敷を去った直後、ルイスは腹心のルイスに彼の家族を始末するよう命じた。ファビオはルイスの動きを察知しており、帰宅するや否や妻のアリシアと娘のカトレアに逃亡を告げる。ファビオは10歳のカトレアにマイクロチップを預け、「もしもの時は、それがお前のパスポートだ」と告げる。彼は名刺を渡し、「その住所に行って門の守衛に見せろ。何かあったらシカゴの叔父さんを頼れ」と語った。
ファビオは娘に、自分が下げていたカトレアの花の首飾りを与えた。マルコの一味がやって来たため、ファビオとアリシアはカトレアを部屋に残して戦いに赴いた。2人は銃を手にしてマルコたちを退治しようとするが、多勢に無勢で殺されてしまった。マルコはカトレアに、マイクロチップを渡すよう要求した。カトレアはナイフでマルコの手を突き刺し、家から逃亡した。追っ手を撒いた彼女は米国大使館へ行き、守衛に名刺を渡した。中に通されたカトレアは、名刺に書かれていた大使館員にチップを渡した。
チップの中身を確認した大使館員は、カトレアを飛行機に乗せてマイアミへ移動させた。入国手続きを終えたカトレアは、トイレの窓から逃走した。彼女はシカゴへ辿り着き、裏社会の人間であるエミリオと会った。エミリオは息子を殺され、母と2人で暮らしていた。息子を殺した犯人についてカトレアが尋ねると、エミリオは「誰一人として生きちゃいない」と答えた。カトレアが「殺し屋になりたい。協力して」と頼むと、エミリオは困惑しながら「いいとも」と告げた。
翌日、エミリオはカトレアを小学校へ連れて行き、校長に大金を渡した。通常は学期途中の編入が認められていなかったが、校長は特例として許可した。小学校を出たカトレアは、エミリオに「学校は役に立たない。望みは言ったでしょ。手伝ってくれないなら一人でやる」と告げる。エミリオは通り掛かりの車に発砲し、「なりたきゃ教えてやるが、5年で死ぬぞ。生き延びたければ利口になれ。世の中の仕組みや人間の心理を学べ。そのために学校へ行くんだ」と諭した。
15年後、カリフォルニア。カトレアは酔っ払い運転でパトカーに突っ込み、警官に逮捕された。警察署に連行された彼女は免許証もIDも所持しておらず、ヴァレリー・フィリップスと書かれた図書館カードだけを持っていた。彼女はヴァレリーという人物として、翌朝まで留置所で過ごすことになった。その夜、連邦保安官のウォーレンがリッツォという犯罪者を連行して来た。彼はリッツォを留置所に入れ、部下のジョーに見張りを任せた。
酔っ払いを装っていたカトレアは牢から抜け出し、換気口を使って移動した。彼女はジョーを襲って昏倒させ、拳銃を奪ってリッツォの牢に入った。リッツォを射殺したカトレアは、その上半身にカトレアの花を口紅で描いた。カトレアはジョーに拳銃を握らせ、牢に戻った。翌日、FBIの捜査官のロスがカリフォルニアに到着し、リッツォの遺体を確認した。描かれた絵を見た彼は、「同じ絵だ。あいつだ」と口にした。現場検証のため、彼は警察署へ赴いた。ロスと入れ違いで、釈放されたカトレアが警察署を出て行った。
カトレアから電話連絡を受けたエミリオは、「いつ戻る?」と尋ねた。カトレアが「明後日よ」と答えると、エミリオは次の仕事が入っていることを告げた。カトレアは「1日待って」と言い、電話を切った。ロスはウィリアムズたちに、4年で同じ手口の殺人が22件も起きていることを説明した。殺されたのは、全て犯罪者だ。彼は「犯人のメッセージは我々宛てじゃない。マスコミに知らせるんだ。誰に対するメッセージか探るんだ」と告げた。
新聞記事を読んだCIA局員のリチャードは、ドン・ルイスの元へ赴いた。彼はルイスに、「この花はお前が汚れ仕事をさせていた男のトレードマークだよな。CIAを甘く見るな。15年前、お前をコロンビアから移動させ、終身刑になるのを見逃してやったのは情報を流す条件付きだ」と話す。ルイスが「流しただろ」と言うと、リチャードは「足りないね」と新聞を突き付ける。「俺は無関係だ」とルイスが告げると、彼は「では犯人を見つけろ」と述べて立ち去った。ルイスはマルコに、「あの娘だ。始末を付けろ」と命じた。
ロスは部下たちと共に、監視カメラの映像を確認した。カメラは1時55分に傾けられ、死角が出来るようになっていた。ロスは部下たちに、1時55分までに警察署に出入りした10人を徹底的に探るよう指示した。カトレアは恋人であるダニーの元を訪れた。カトレアはダニーの前ではジェニファーと名乗っており、もちろん殺し屋であることも明かしていない。外へデートに出掛けることは無く、画家であるダニーの家で会い、セックスをするだけの関係だ。
カトレアはコインランドリーでエミリオと密会し、次の仕事について聞かされる。殺しの標的は1年前にマルチ商法で500億ドルを稼いだ後に雲隠れしていたウッドガードという男で、現在はカリブで暮らしているという。エミリオはリッツォの殺害事件を報じた新聞記事をカトレアに見せ、「ルイスを炙り出せるとでも思ったのか?お前一人の問題じゃない。俺やママ、家族に関わるんだ」と叱責した。
「叔父さんは手を汚してない。仕事の手配と集金だけ」とカトレアが反発すると、エミリオは「来る仕事を吟味して、お前を守ってる」と告げる。しかしカトレアは「止めても無駄よ」と言い、遺体に絵を描く行動を続けることを宣言した。カトレアは自動車修理工であるペペの元へ赴き、偽造パスポートを手に入れた。カリブへ飛んだ彼女はウッドガードの豪邸に忍び込み、深夜のプールで彼を射殺した。
ロスはカトレアの絵を描く犯人について検索するが、CIAのブロックに引っ掛かった。調べを進めるとリチャードに行き当たったため、ロスは彼に電話を掛けた。捜査協力を求められたリチャードは「正式な申請があれば情報を提供する」と告げ、荒っぽく電話を切った。彼はマルコに連絡し、「FBIが嗅ぎ付けた。早く始末しろ」と命じた。コロンビアに入ったマルコは手下たちに、カトレアの身内を捜索するよう指示した。
カトレアはダニーの家へ行き、彼とセックスした。翌朝、ダニーはカトレアの寝顔を携帯電話で撮影した。目を覚ましたカトレアは慌てて着替え、エミリオが待つ図書館へ向かった。エミリオは新聞記事を見せ、「コロンビアで8人が殺された。1人は俺の友達だ」と険しい表情で告げる。エミリオが「連中はお前を捜してるんだ。もう仕事はさせない」と言うと、カトレアは「息子の敵を何人殺したの?」と訊く。エミリオは声を荒らげ、「何も知らないくせに。復讐は無意味だ。息子が死んで、俺は人生の全てを失った。お前には新しい人生を歩んでほしい」と告げた。
エミリオは「いいか。もう家には近付くな。教会にも来るな。ママを悲しませたくない」とカトレアに述べた。ダニーは友人のライアンに携帯の写真を見せ、ジェニファーについて何も知らないことへの寂しさを吐露した。ダニーが席を外している間に、ライアンは勝手に携帯の写真を3分署で働く義姉のシャーリに送信し、女性についての調査を依頼した。シャーリがデータベースにアクセスし、それを知ったロスはダニーをマークする。ロスはカトレアがダニーの携帯に掛けた通話を逆探知し、彼女の居場所を突き止めた…。

監督はオリヴィエ・メガトン、脚本はリュック・ベッソン&ロバート・マーク・ケイメン、製作はリュック・ベッソン&アリエル・ゼトゥン、撮影はロマン・ラクールバ、編集はカミーユ・デラマール、美術はパトリック・デュラン、衣装はオリヴィエ・ベリオ、音楽はナサニエル・メカリー。
出演はゾーイ・サルダナ、ジョルディ・モリャ、レニー・ジェームズ、クリフ・カーティス、マイケル・ヴァルタン、アマンドラ・ステンバーグ、カラム・ブルー、シンシア・アダイ=ロビンソン、ジェス・ボレッゴ、オフェリア・メディーナ、アンヘル・ガルニカ、サム・ダグラス、グレアム・マクタヴィッシュ、マックス・マルティーニ、ベト・ベニテス、シャルル・マクイグノン、アフィフ・ベン・バドラ、デヴイッド・クラーク、ビリー・スローター、ニケア・ガンビー=ターナー、アンドレア・ヘレネ、ジョン・マッコネル他。


『トランスポーター3 アンリミテッド』のオリヴィエ・メガトンが監督を務めたヨーロッパ・コープの作品。
カトレアをゾーイ・サルダナ、マルコをジョルディ・モリャ、ロスをレニー・ジェームズ、エミリオをクリフ・カーティス、ダニーをマイケル・ヴァルタン、10歳のカトレアをアマンドラ・ステンバーグ、リチャードをカラム・ブルー、アリシアをシンシア・アダイ=ロビンソン、ファビオをジェス・ボレッゴ、エミリオの母をオフェリア・メディーナ、ペペをアンヘル・ガルニカが演じている。

リュック・ベッソンは『レオン』でナタリー・ポートマンが演じたマチルダが成長してからの物語を構想していたが、その企画が潰れてしまったため、別のヒロインを主人公に据えた映画を企画した。それが本作品というわけだ。
『レオン』の続編であれば、あれを見ている観客ならマチルダの少女時代を知っているので、詳しく描かなくても脳内補完が可能だ。その背景や過去を知っていることが、ヒロインへの感情移入や、物語に入り込むことを大いに手助けするだろう。そこが使えないってのは、かなりのハンデだ。
っていうか、「最初に企画されていた『レオン』の続編」と比較するからハンデだと感じるのであって、全く無関係な企画として考えると、この1本の中だけでヒロインに厚みを持たせたり共感しやすくしたりする作業が必要となってくる。
この映画では10歳のカトレアを描写し、そこから15年後へ飛ぶ構成にしてある。つまり主人公の少女時代も描いているので、そこが『レオン』の代わりというわけだ。

本来ならファビオは全面的に「哀れな犠牲者」であるべきなのだが、そこに少々の傷がある。
それは「なぜルイスがファビオの始末をマルコに命じたのか」ってことだ。
理由の説明が無いので推測するしかないのだが、たぶん裏切ったということなんだろう。で、裏切る理由が何かあったんだろうけど、そこも説明されないので「裏切ったから狙われた」ということだけが伝わる。
そうなると、「裏切ったら殺されても仕方が無いんじゃないの」と思えなくもない。
もちろんカトレアまで命を狙われるってのは全面的に「罪の無い被害者」であるわけだが、彼女は両親を殺された仇討ちに燃えて行動するわけだから、そこで「父親は殺されても仕方が無い裏切り者だった」ということになると、その復讐劇に余計な引っ掛かりが生まれてしまう。

とは言うものの、この映画の導入部には観客を惹き付ける力が充分すぎるほどに備わっている。
少女のカトレアはマルコと対峙しても全く臆することがなく、無表情で接する。
それは決して大人びているわけでもなく、マシーンのような態度というわけでもなく、あくまでも「幼い女の子が強気に振る舞っている」という様子になっている。
いきなりナイフでマルコの手を突き刺し、パルクールを使って逃亡する。
この辺りは、とてもパワーがあってテンポも良い。

マイアミに入ってトイレから脱出したカトレアは、エミリオの元へ向かう。エミリオに抱き締められた時、カトレアは号泣する。
それまで必死に耐えて来た緊張の糸が切れて、少女としての弱さを見せる。
だが、その一方で殺し屋になりたいと言い出し、エミリオを困惑させる。
この辺りまでの展開においては、前述したファビオに関する問題なんて完全に打ち消してくれるぐらいカトレアが魅力的だ。

ところが残念なことに、15年後に飛んでカトレアが成長してしまうと、彼女のヒロインとしての魅力も、映画としての面白さも、一気に減退してしまう。
ずっと最後までカトレアの少女時代にして、少女のカトレアがエミリオの手助けを得ながら復讐を果たそうとする内容にした方がいいんじゃないかと思ってしまう。
それだと『レオン』の焼き直しになっちゃう可能性は大いに考えられるけど、でも本作品のカトレアが成長してからの話だって『ニキータ』の焼き直しに近いモノがあるしなあ。

っていうか、これを見て、改めていかに『レオン』が面白い映画だったかを再確認させられたよ。
『レオン』の頃のリュック・ベッソンは、まだマトモに面白い映画を作れる人だった。しかしヨーロッパ・コープを設立した頃から、「質より量」の人になってしまい、粗製濫造を繰り返すようになった。
この映画も、そういうことだわ。
やっぱりナタリー・ポートマンに続編の出演を断られた時点で、『レオン』の続編として考えていたアイデアを流用するのではなく、完全に捨て去った方が良かったんじゃないの。

ファビオがカトレアに渡したマイクロチップは、ルイスの逮捕に繋がる有力な情報が入っていたはずだ。後からリチャードが登場して、CIAが手を回したことで、ルイスが終身刑を免れていたことが明らかになる。
ただ、そもそもチップの情報が元でルイスが逮捕されていたことさえ、そこまでは分からない。そこは、もうちょっと上手く使えるはずだし、使った方がいい。
例えばエミリオが「ルイスはチップが証拠となって逮捕される。きっと終身刑になるから仇討ちなんて考えない方がいい」とカトレアを説得し、終身刑にならなかったので彼女が殺し屋になる協力を承諾する流れにするとか。カトレアが「終身刑にならなくて良かった。これで復讐できる」と考えるとか。
ルイスが終身刑を免れた経緯を描かず、その時のカトレアの反応も見せないのは、勿体無いんじゃないかと思ってしまう。
まあ、そこを描こうとすると、テンポ良く15年後に飛べないという問題は生じるんだけどさ。

この映画の大きな失敗は、少女のカトレアに「殺し屋になりたい。協力して」と言わせてしまったことだ。
そして成長したカトレアは実際に殺し屋として活動しているのだが、そうなると当然のことながら、命じられた任務を遂行する必要がある。
しかし彼女の目的は両親を殺した連中への復讐で、そのために行動している。
だから、「復讐のために行動しているのに、殺しの標的は復讐と無関係な連中」という、おかしなことになってしまうのだ。

しかも、カトレアが復讐のためにやっている行動ってのが、あまりにも愚かしいのだ。彼女はルイス一味へのメッセージとして標的の遺体に絵を描いているのだが、その情報をFBIや警察は公表していないので、まるで伝わっていない。4年が経過して22件の殺人で同じ絵を描いて、ようやく公表されるのだ。
もう最初の何件かで公表されなかった時点で、そのやり方を諦めろよ。他の方法を考えろよ。なんで愚直に4年間もやり続けているんだよ。
そもそも、カトレアが自分の存在をルイス一味に知らせたいのなら、他に方法は幾らだってありそうだぞ。
っていうか、その気になればルイスの居場所を突き止めることも出来るんじゃないかと思うんだよな。裏社会の人間になったわけだし。
4年間も同じ絵を描いてルイスにメッセージを送ろうとするよりは、彼の居場所を突き止めることに精力を注いだ方が早く成果が出たんじゃないかと思うんだが。

復讐に燃えているカトレアだが、ダニーという恋人と付き合っているのは脇の甘さを感じてしまう。
自分に関する情報を隠していても、寝ている間に写メを撮られることは容易に想定できるはずで、そこは危機管理に対する感覚がヌルすぎやしないかと。
それと、好きな相手がいちゃダメだとは言わんけど、「デートに出掛けない」とか「個人情報を明かさない」といったことには気を付けているものの、何の迷いも無く男と付き合っているのは、いかがなものかと。
「男からアプローチされて好意を抱くものの距離を置こうとするが、相手の熱意にほだされて」みたいな揺らぎや葛藤があればともかく、そういうのがゼロで交際しているのは不用意に思える。

絵を描いていることを知ったエミリオから注意を受けても、カトレアは「関係ない、止めても無駄」と聞く耳を貸さない。それは、あまりにも身勝手だ。
彼女は家族を殺された怒りに燃えて復讐を目論んでいるはずで、それなのに新たな家族を危険にさらすようなことを平気でやらかしているってのは、どういう神経なのかと。それはヒロインとしての魅力をゼロにしてしまうわ。
コロンビアの殺人事件を知っても全く反省せず、教会に来るなと言われても平然と来て祖母の隣に座るってのも無神経が過ぎる。エミリオとママが殺されるのは、明らかにカトレアのせいだ。
その2人の死を、カトレアが改めて復讐心を燃やす動機に使っているけど、完全にマッチポンプじゃねえか。

カトレアはロスの家に乗り込んで拳銃で脅し、「23人も殺した理由は?」と問われて「これは子供の頃に夢見てた生き方じゃない。正義の味方になりたかった」と告げ、両親を殺したルイスをおびき寄せるために絵を描いていたことを話す。
だけど、それは23人も殺した理由の説明になってないのよ。
23人が両親の殺害事件に関わった復讐相手ってことなら理解できるけど、そうじゃないんだから、筋が通らない。
そんでロスに「協力しないと家族を殺す」と脅しを掛けるんだから、サイテーだぜ、この女。

(観賞日:2014年9月11日)

 

*ポンコツ映画愛護協会