『カーズ2』:2011、アメリカ

油田プラットフォームに潜入していた英国スパイのリーランド・ターボは、仲間のフィン・マックミサイルに通信を入れて「正体がバレた。ここには重大な秘密が隠されている」と伝えた。油田プラットフォームに侵入したフィンは、武器デザイナーのザンダップ教授を発見する。彼は手下のグレムやエーサーたちにTVカメラを運ばせようとしており、「危険だから慎重に運べ」と命じていた。リーランドがスクラップにされているのを目にしたフィンは敵に気付かれて逃亡し、死んだように偽装した。
ピストン・カップで4連覇を飾ったライトニング・マックィーンは、ラジエーター・スプリングスに戻って来た。仲間たちは温かく迎え、親友のメーターは大喜びする。メーターがマックィーンに「計画があるんだ」と言い、遊びに連れ出した。マックィーンは「サリーと2人になりたいんだ」と彼に頼んだ。マックィーンがレストランでサリーとデートしていると、ウェイターとしてメーターが現れた。
レストランのテレビでは、メル・ドラドが司会をする番組が流れていた。番組では、マイルズ・アクセルロッド卿が巨大な油田を売却し、再生可能なクリーン燃料のアリノールを開発したことが取り上げられた。アクセルロッドはアリノールの性能を証明するため、それを使って各国王者が走行するワールドグランプリの開催を発表した。番組に出演したアクセルロッドは、マックィーンにも声を掛けたが「シーズンが終わったばかりで休みたい」と断られたことを明かした。
番組に出演したイタリア代表のフランチェスコ・ベルヌーイは、マックィーンをバカにした発言を口にする。メーターは視聴者として番組に電話を掛け、マックィーンの凄さを饒舌に語った。それに気付いたマックィーンは電話を代わり、フランチェスコへの対抗心を露わにしてワールドグランプリへの出場を宣言した。彼はサリーから促され、メーターをピットクルーとして連れて行くことにした。
マックィーンやメーターたちは、最初の会場である東京に赴いた。レセプション・パーティーに出席したマックィーンは、行儀良くするようメーターに告げる。しかしメーターが平気ではしゃいだので、マックィーンは他のレーサーたちの手前もあって恥ずかしくなった。マックィーンが「ここはラジエーター・スプリングスじゃないんだから、変わったらどうだ」と説いても、メーターは全く理解しなかった。マックィーンは溜め息をつくしか無かった。
パーティー会場にはフィンが潜入しており、東京支局の分析担当者であるホリー・シフトウェルと合流した。ホリーはフィンに、カメラの正体が分からないこと、潜入したプラットフォームの石油埋蔵量が世界最大であることを知らせた。さらに彼女は、プラットフォームに送り込まれていたアメリカのスパイ、ロッド・トルク・レッドラインが黒幕の写真を撮っており、ここへ届けに来ることを教えた。
プラットフォームで見掛けたグレムリンやペーサーたちが会場に来ているのを知ったフィンは、「私は姿を見られている。君がその写真を受け取るんだ」とホリーに指示した。メーターはアイスと間違えて大量のワサビを食べてしまい、マックィーンがアクセルロッドと話しているステージに乱入した。メーターがオイル漏れを起こしたので、マックィーンは「トイレに行けよ」と苛立ったように命じた。
メーターが個室に飛び込んだ直後、レッドラインが写真の受け渡しのためにトイレへ入って来た。ホリーは発信器でレッドラインの位置を確認し、トイレに向かう。グレムリンとペーサーがトイレに突入し、レッドラインと争いになった。メーターが個室から出て来ると、レッドラインは密かに自分の発信器を取り付けた。トイレから出て来たメーターを見て、ホリーはアメリカのスパイだと思い込む。偶然にもメーターが暗号の言葉を口にしたため、ホリーは完全に誤解してしまい、翌日のレース場で会うことを決めた。
メーターは仲間たちの元へ戻り、「デートの約束をした」と嬉しそうに話した。ザンダップ一味はレッドラインを捕まえ、アリノールを入れた。アリノールには、電磁波を浴びせると温度が上昇して爆発する性質があった。そして彼がプラットフォームから運び出したカメラは、電磁波を放出するように出来ていた。ザンダップは会場にいた面々の写真を見せながらレッドラインを脅し、誰が仲間のスパイなのか聞き出そうとする。レッドラインは黙秘を貫くが、その反応を見たザンダップはメーターが仲間だと確信した。
東京でのレースが開始され、マックィーンはダートセクションでフランチェスコを抜いてトップに立った。ザンダップの手下たちはカメラを使い、参加している車2台をエンジンブローに追い込んだ。一味はピットにいるメーターを発見し、捕まえに行く。それに気付いたホリーは彼に通信を入れ、ピットから逃げるよう指示する。メーターはホリーとのデートだと思い込んでノンビリとピットから出るが、そこへ一味が駆け付けた。フィンが一味を蹴散らすが、メーターは自分が助けてもらったと気付いていなかった。
メーターが無線を使ってホリーと喋っていたため、マックィーンはコース取りを誤ってしまい、そのせいでフランチェスコにトップを奪われた。レース後、ピットへ戻って来たメーターに、マックィーンは非難の言葉を浴びせる。メーターが呑気な様子だったことに腹を立てたマックィーンは、「こうなるから今まで君をレースに連れて来なかったんだ。もう君の助けは要らない」と声を荒らげた。
メーターは謝罪の手紙を残し、ラジエーター・スプリングスへ戻ることにした。メーターが空港から飛行機に乗ろうとすると、フィンが接触した。そこへザンダップの手下たちが来たので、フィンはメーターを引っ張って逃亡する。フィンはホリーが待つスパイ・ジェット機のシドレーに乗り込み、メーターが知らずに預かっていた写真を確認する。そこには車のエンジンが写っているだけだったが、メーターは「横にあるのは、なかなか手に入らない純正パーツだ」と口にする。フィンは「そこから辿れるな」と言い、パリにいるモグリのパーツ屋ならエンジンの持ち主を言い当てられるだろうと話した。
フィンはメーターに、仕事を手伝ってほしいと持ち掛けた。まだフィンもホリーも、彼がスパイではないと気付いていなかった。昔からスパイが好きだったメーターは、その依頼を引き受けた。パリに到着した3人は、フィンと顔見知りである情報屋のトンベと会った。写真を見たトンベは、お得意さんに多くのパーツを売ったこと、いつも電話注文なので相手の顔は見ていないことを語った。するとメーターは「ペッパー(故障ばかりしている車)はパーツが無いとやっていけない」と言い、グレムリンやペーサーもペッパーだと話した。
フィンから石油プラットフォームの写真を見せられたメーターは、そこにいる連中も全てペッパーだと指摘した。フィンは「歴史的な欠陥車ばかりが事件に関わっている。それを操っている奴がエンジンの持ち主だ」と口にする。トンベはフィンに、ペッパーたちが明後日に秘密の集会を開くことを教えた。その場所は、ワールドグランプリが開催されるイタリアのポルト・コルサだった。フィンは黒幕の正体を突き止めるため、メーターを偽装させて集会に潜入させることにした。一方、マックィーンとピットクルーは、ルイジの叔父であるトッポリーノの家を訪れた。メーターのことで落ち込んでいるマックィーンに、トッポリーノは友情の大切さを説いた。
ポルト・コルサではワールドグランプリの第2戦がスタートし、マックイーンが飛び出した。その近くで開かれた集会に、メーターは扮装して潜入した。フィンたちが目当てだった黒幕のビッグ・ボスは会場に姿を見せず、モニターの向こうに登場しただけだった。彼はレースでエンジンブローを起こす複数の車を見せ、高らかにペッパーの勝利を宣言した。フィンは電磁波を発射しているカメラを見つけて急行するが、巨大磁石でヘリコプターに吊り上げられてしまった。
マックイーンはフランチェスコをかわし、トップでゴールした。しかし他の車は全て、電磁波攻撃の影響でリタイアを余儀なくされていた。この事故を受け、アクセルロッドは最終戦でアリノールを指定燃料から外すと発表した。しかしマックイーンは、最終戦でもアリノールを使うことを宣言した。それを知ったビッグ・ボスは、マックイーンを始末するよう手下たちに命じた。メーターは危機が迫っていることをマックイーンに知らせようとするが、一味に捕まってしまう…。

監督はジョン・ラセター、共同監督はブラッド・ルイス、原案はジョン・ラセター&ブラッド・ルイス&ダン・フォーゲルマン、脚本はベン・クイーン、製作はデニス・リーム、製作協力はマーク・ニールセン、編集はスティーヴン・シェーファー、美術はハーレー・ジェサップ、ストーリー・スーパーバイザーはネイサン・スタントン、スーパーバイジング・アニメーターはショーン・クラウス&デイヴ・マリンズ、音楽はマイケル・ジアッキノ。
声の出演はラリー・ザ・ケーブル・ガイ、オーウェン・ウィルソン、マイケル・ケイン、エミリー・モーティマー、エディー・イザード、ジョン・タートゥーロ、ブレント・マスバーガー、ジョー・マンテーニャ、トーマス・クレッチマン、ピーター・ジェイコブソン、ボニー・ハント、ダレル・ウォルトリップ、フランコ・ネロ、デヴィッド・ホッブス、パトリック・ウォーカー、トニー・シャルーブ、ジェフ・ガーリン、マイケル・ミシェルス、ジェイソン・アイザックス、ロイド・シャー、ブルース・キャンベル、テレサ・ギャラガー、ジェニファー・ルイス、スタンリー・タウンゼント、ヴェリボー・トピック、シグ・ハンセン、グイド・クアローニ、ヴァネッサ・レッドグレーヴ他。


2006年の映画『カーズ』の続編。ピクサーが続編映画を製作するのは、『トイ・ストーリー』シリーズ以外では初めてだ。
メーターの声を担当するラリー・ザ・ケーブル・ガイ、マックイーン役のオーウェン・ウィルソン、サリー役のボニー・ハントなどは、前作から続投の声優陣。登場キャラクターとしては、他にダレル・カートリップ、ルイジ、フィルモア、フロー、グイド、ラモーン、サージ、ミニー、ヴァン、リジー、マック、シェリフが再登場。前作でフィルモアの声を担当していたジョージ・カーリンが死去したため、ロイド・シャーが後任を務めている。
他に、フィンの声をマイケル・ケイン、ホリーをエミリー・モーティマー、アクセルロッドをエディー・イザード、フランチェスコをジョン・タートゥーロ、ザンダップをトーマス・クレッチマン、トッポリーノをフランコ・ネロ、リーランドをジェイソン・アイザックス、レッドラインをブルース・キャンベル、トッポリーノの妻&英国女王をヴァネッサ・レッドグレーヴが担当している。 また、レーサーのルイス・ハミルトンが、ワールドグランブリに出場する同名の車の声を担当している。

この映画は、前作の失敗を繰り返している。
まあ前作は大ヒットを記録しているから、それを失敗とは思っていないんだろう。だから同じことを繰り返しているんだろう。
何が失敗なのかというと、「人間を車に置き換えただけ」ってことだ。
それは冒頭シーンから既に顕著な形で表れている。
フィンは敵の船に貼り付いてプラットフォームに潜入し、天井高くワイヤーを張って敵の様子を窺い、気付かれて逃げ出す。
その一連の動きは、人間がやっても全く同じことになる。「車だからこそ」のアクションは、そこには無い。

人間じゃなくても、例えば擬人化された動物キャラクターでも別に構わないだろう。っていうか、車でやるぐらいなら、そっちの方が面白くなりそうだぞ。どうしても車を登場させたけりゃ、喋る車をそいつの相棒ってことにしてもいいだろうし。
とにかく、車のキャラを主人公にして、この物語をやることのメリットってモノが見えて来ない。
それに、これは前作でも感じたことだが、『トイ・ストーリー』や『バグズ・ライフ』なら主人公のサイズが人間とは違うから見える風景も違うけど、車のキャラクターを使うと、描かれる景色は人間のキャラを使った時と変わらない。
人間が全て車に置き換えられているだけだ。

しかも今回は前作と比較しても、ますます車であることの意味が薄くなっている。
前作は一応、主人公がレースに出場するというのがメインの話で、そういう箇所に「車である意味」を持たせようとしていた。
それでもレースに行き着くまでの物語が長かったし、人間が乗っている車がレースをする様子を描けば同じような絵になるという問題はあったが、今回はさらに酷い。
というのも、スパイ映画として仕上げているからだ。
だったら、人間キャラで同じことをやればいい。それを車でやっても、そこに面白味を感じない。一応はレースの様子も描かれているが、オマケみたいなモンだ。

終盤に入ると、ホリーから翼が生えて空を飛んだり、メーターがロケットエンジンで空を飛んだりする。
いやいや、そりゃダメだろ。
「人間が主人公で、喋る車がパートナー」という話だったりするのなら、それは別に構わないと思うよ。
だけど、人間のいない世界観で、車たちが活躍するという話を作っておいて、その車に翼を生やして空を飛ばすってのは、ファンタジーの方向性を間違えている。

登場するキャラクターは非常に多く、当然のことながら描き分けが必要になるはずだ。
そこで問題になるのは、実在する車をモデルにしているってことだ。そのために、あまり大きな変化を付けられない。
しかも、同じ車体で別のキャラという連中もいて、ややこしいことになっている。
例えばAMCグレムリンを車体とするキャラはグレム、J・カービー・グレムリン、タイラー・グレムリンと3種類いる。同様に、AMCペーサーにもエーサー、タブス・ペーサー、フレッド・ペーサーの3種類が存在する。
これ、ちゃんと見分けられる人って、どれぐらいいるんだろうか。

しかし御心配なく、そこの見分けが付かなくても、映画を観賞する上では何の支障にもならない。
レースに参加する車もたくさんいるけど、そこもフランチェスコさえ分かっておけば大丈夫だ。前作から引き続いて登場するマックイーンのピットクルーも同様。
極端に言ってしまえば、メーター、マックイーン、フィン、ホリーの4キャラだけ認識しておけばいい。
ってことは裏を返せば、他のキャラは個性や存在感をそれほど発揮できていないってことだ。

前作はマックイーンが主役だったが、今回はメーターを主人公にしている。
これは大失敗だ。
メーターってのは、東映時代劇に例えるなら堺俊二みたいなポジションの役者なのだ。あくまでも、脇役としてコミカルな役回りを担当すべきなのだ。番外編やオマケとしての短編ならともかく、続編で普通に主役を張るようなタイプではないのだ。
それは『右門捕物帖』や『銭形平次』シリーズで、むっつり右門や銭形平次ではなく、おしゃべり伝六や八五郎が主役を張るようなモンだ(分かりにくい例えで申し訳ない)。

しかも、今回のメーターって、すげえ不愉快な奴なんだよな。そういう意味でも主人公にふさわしくない。
「ありのままの自分でいいじゃないか」というメッセージが込められているのかもしれないけど、メーターぐらいまで行っちゃうと、その生き方に賛同できないわ。
「いや、お前はもうちょっと変われよ」と言いたくなる。
周囲に迷惑を掛けているのに、「そのままでいい」とは思わんよ。TPOに合わせて態度や行動を変えるってのは、決して間違ったことじゃないはずだ。

どうやら「友情って大切だよね」というのが一番のテーマのようだ
だが、マックイーンとメーターの友情物語だけでなく、その他にもスパイ・アクション、陰謀ミステリー、カーレース、環境問題、成長劇、恋愛劇など、様々な要素が盛り込まれている。
ジョン・ラセター監督としては、石井輝男や鈴木則文のようなサービス精神のつもりだったのかもしれない(たぶん、その2人のことは知らないだろうけど)。
しかし色んな要素を詰め込みすぎて、どれも満足に消化したり観客に伝えたりという作業が出来ていない。

多くを詰め込み過ぎたせいで、肝心なはずの「友情ドラマ」が弱くなっている。
陰謀ミステリーにしても、終盤になってメーターが黒幕を指摘した時に「なるほど、あの時のアレは、そういうことだったのか」と腑に落ちるような形になっていない。それまで観客に提示されたヒントを積み重ねて推理した上で、答えに辿り着いているわけではない。
あと、「成長劇」と前述しけど、実はメーターって最後まで何も成長しちゃいないからね。
マックイーンが「そのままでいい」と言っちゃって、そのままで終わってるからね。

(観賞日:2013年12月16日)

 

*ポンコツ映画愛護協会